魔法使いの寄る①
星が瞬くこんな夜に。
危ない危ない。見つかったかと思ったよ。
視線が外れたのを確認してから、私は彼らの後を追うために移動を始めた。透明化と沈黙を使っていたから絶対バレないと思って油断した。透明化をした後につけた指輪が光ったときは、本当に焦った。
ボケているのかな、と自分でも思う。透明化はどんなものでも、人が視認できないようにするための膜を貼ることができる魔法だけど、当然後から身に着けた者には効果がない。指輪をはめてからやれば、何も問題はなかったのだけど、全然気がつかなかった。
私もだいぶ爺だからね。老いによる思考能力の低下というやつがきているのかもしれない。
しかし、まさかあの蜘蛛を倒したのが、あんな若い女の子だとは思わなかった。
あの蜘蛛、つけた名前はバーデスというのだけど、アレは私が作った改造生物だ。この森にいたポイズンスパイダーを捕獲して、魔物にだけ反応する臭いを付与できるよう改造して、私の言うことを聞くよう調教した。
バーデスに襲われた人間は、仕掛けに気づかない限りほぼ死ぬし、仕掛けに気づいたとしても臭いを付与された部位を失うはめになる。奇襲を一度許したら、必ず後に響く後遺症を負う。厄介度で言えばただ強いだけのドラゴンなんかよりも数倍上だろう。
良い物ができたと思った。私は他にも改造生物をたくさん作ったけど、その中でもあの蜘蛛の性能はトップクラスだと推測している。
とはいえ、本当にあの蜘蛛が上手く動くのかはわからない。性能が良いと思ったのはただの予想。だから本来の性能を確かめてみようと、あのコメツチとかいうやつを襲わせてみたわけだ。
一人でこの森に来るなんて馬鹿がすることだ。魔物に襲われて殺されても、文句は言えないだろう。
蜘蛛は私の思った通りに動き、コメツチを追い詰めていった。地下に逃げられはしたものの、十分成功だと私は判断した。毒の性能は本来の者よりも凶悪にしてあるから、市販の薬では解毒は不可能。奇襲が成功した時点で、勝ちは決まったようなものだ。
だから監視をその時点でやめて、自分の工房へと転移して、バーデスの帰りを待っていた。だけど、バーデスは何時間たっても戻ってこなかった。
これはただの予想でしかないけど、バーデスには死体を確認しない限り、ずっと獲物を追いかける習性ができていたみたいだ。実験の副作用で、魔物に変な性質が付与されることはよくあることなので、そこまで驚きもせずに、私はバーデスを迎えにいった。
透明化と飛行の魔法を使い、上からバーデスの元に向かうと、大量の魔物が一直線にある場所に向かっているのが良く見えた。悪あがきで地下から出てきてたのかな、と思って魔物の進行方向を見ると、元気に武器を振り回すコメツチの姿が見えた。
あれ、解毒できたんだ。なんでだろう。私は空中で、何度も首を捻ることになった。




