イザベルと魔物。そして蜘蛛⑥
「本当よ。怪我をした箇所、つまり臭いをつけられた部分を無くしたら、群れが離れていった。結果がでてるんだから間違いないわ」
「それは、確かにそうだ。けど、まさか、俺が原因だったなんて……」
未だにこちらに向かってきている群れを振り払いながら、コメツチが落ち込むように肩を落とす。群れを呼び寄せている原因が自分にあったことに、罪悪感を感じているみたいだ。
「そんなに落ち込まないで。魔物にしか知覚できない臭いをつけられたなんて、誰も気づけないわ。コメツチのせいじゃないでしょ」
「……無茶して毒をもらって、俺は死にそうになっていた。そんな俺を助けてくれたお前を、自分の不注意で招いた危険に晒した。俺は最低だな」
「気にしてないから、そんなに自分を卑下しないで。それより、ちょっと休憩していいかしら?ずっと気を張っていたから、少し疲れたわ」
「え、ああ。今来ている分を捌いたら、それで終わりだからな。別に構わないが」
「ありがとう。じゃ、ちょっと楽にしとくわねー」
すとんと、地面に腰を降ろし、手に持っていたライムちゃんを地面に放る。それからふーと息を吐いて、私は気を抜いたふりをした。
コメツチとラビラビはまだ、前から迫ってくる魔物の対処をしていて、後ろの蜘蛛にまでは気がまわせない状態だ。あの蜘蛛の相手は、私がしないといけないだろう。
あの蜘蛛がコメツチに臭いをつけたのは、他の魔物を使ってコメツチを殺すためだろう。多分あの魔物には、生きている獲物には警戒して近づかず、死んだ後にその肉を食らう習性がある。そうじゃないと、毒と臭いだけつけて、こちらを監視している理由が説明できない。
私が臭いを取り除いたことに、あの蜘蛛もじきに気がつくはず。そして毒でコメツチが死んでいない理由も、さっき再生を見せたからわかっているはずだ。
なら、次は私を殺そうとするだろう。毒も臭いも消してしまう私を倒さない限り、ずっと食事にありつけないのだから。
「ライムちゃん。あの光っている石を集めてきてくれる?」
コメツチとラビラビが戦っている場所から少し離れた場所に、砕けて小さくなった魔鉱石が幾つも散らばっている。それに向かって指を指すと、ライムちゃんは軽くぴょんと飛び跳ねて、コロコロと転がるように移動を始めた。
「マナ。そこから一歩も動かないで、視線も前に向けたままにして」
「え、あ、はい」
コメツチとラビラビにも聞こえないくらいの小声で、マナに話しかける。アレからは、かなり距離は離れていると思うけど、怪しい動きはできるだけ見せないようにしたい。
「探知で後ろの蜘蛛の位置を教えて。近づいてきたら、私が倒すから」
「え!?い、イザベルさんが!?ど、どうやって!?」
「すぐにわかるわ。ふふっ。きっとびっくりするわよ」
小さな鉱石をたくさん頭にのせて戻ってきたライムちゃんを撫でながら、私はコッソリとナイフを取り出した。
次回は蜘蛛VSイザベルです。お楽しみにー。




