イザベルと魔物。そして蜘蛛⑤
「……それは本当か?」
コメツチが苦い顔をしながら、マナに問いかける。それに対してブオンブオンと、音が鳴りそうなほどに、マナは首を縦に振った。
「は、はい!もう数分でここまでやってきます!」
「そっか……。クソ。なんでだ?どうして俺たちの方へと向かってくる?これじゃあキリがない」
コメツチの言う通りだ。どれだけ敵を倒しても、これでは意味がない。後ろの蜘蛛糸を切る暇すら与えられず、この場で延々と立ち往生することになる。
魔物がこちらに向かってきているのには、なにか理由があるはずだ。早く何とかして、それを取り除かないと!
「コメツチ!なにか、魔物を呼び寄せるようなものを持っていない!?どう考えても、今の状況はおかしいわよ!」
「そんなことはわかってるよ!だが俺はもちろん、マナもラビラビも、お前も何も持っていないだろ!なにか別に原因があるはずだろ!」
「あの蜘蛛は!?私たちの真後ろにいるあいつが原因ってことはない!?」
「その可能性は高いが、だったらなんであいつには魔物が向かっていかないのかわからない。魔物が寄ってくるような臭いがだせるとしても、群れの動きをコントロールすることなんてできないはずだろ?」
確かにそうだ。魔物を呼んでいるのがあの蜘蛛なら、そっちにも魔物が向かっていかないとおかしい。
でも、あの蜘蛛が無関係ということはほぼありえない。あの蜘蛛が何かしているから、私たちは追い詰められている。だがここに来るまでの間に何かされた覚えはない。攻撃を受けたのはコメツチだけで、そのコメツチももう回復している……待った。
コメツチは毒を受けたと言ったけど、本当にそれだけなのだろうか?
「とにかく、今は耐えるしかない。最悪ラビラビに武器をとりに行かせれば、まだ何本かは浸食できるはず。俺が足止めしている間にあの蜘蛛を倒せれば、もしかしたら」
「……コメツチ。ちょっと、足を止めてもらってもいいかしら」
「なんだ。なにかに気づいたか?」
群れを一度薙ぎ払い、くるりと体ごと振り返ったコメツチに向けて、私はナイフを振るった。私がさっき治した右腕の肩へ、骨に達する一歩手前までナイフを刺しこみ、肩から肘までえぐるように振りぬいた。
するするとナイフは進み、服ごと肉をちぎり飛ばす。それを見たコメツチは一瞬驚いたような顔をして、すぐに憤怒へと表情を変えた。
「なっ、なにすん、」
「再生!そしてライムちゃん!あの肉を溶かして!」
コメツチに回復魔法をかけながら、ライムちゃんに指示を出す。宙に浮いた肉へ、ライムちゃんの体が触手のように伸びていき、掴んで中に取り込んだ。するとしゅわしゅわと泡立ちながら、肉はすぐに姿を無くした。服が少し残っているが、こちらはたぶん問題ない。私の考えが正しければ、これで群れは来なくなる。
「マナ探査をお願い!群れはどう!?」
「え、えっ!?ちょ、ちょっと待ってください、ええっと、あ!?さっきまでこちらに向かってきていた群れが、急に離れていきます!?」
「よし!予想通りね!これでもう、焦る必要はないわ!」
「な、なに?予想通り?どういうことだ、説明してくれ!」
「コメツチ。あなたは攻撃をされた時に、体に二つ嫌な物を打ち込まれていたの。一つは毒、そしてもう一つは、魔物を呼び寄せる臭い。群れが私たちの方へと向かってきていたのは、その臭いのせいだったのよ」
「なっ!?そんな、嘘だろ!?」
サドンデス終了。ス○ブラと同じくらい早かった。




