ノビル
帰り道に有るスーパーで食材を買って帰ることにした。
お店の中に入ると、やっぱりアリシアが驚いていた。
「え? え? 朝の市場じゃないのに、こんなにも食料が!?
しかも肉や魚も? 大丈夫なんですか?」
「何をそんなに驚いている。」
「だって、収穫するのは朝じゃないですか、野菜はともかく、肉や野菜は調理しないで置いておいたら痛んじゃうじゃないですか。」
そう言うことか、納得した。
「アリシア、この世界には冷蔵技術って物が有るんだよ。」
「冷蔵技術?」
「ああ、肉や魚は冷やすと長期間保存出来るようになるんだよ。
冬は傷みにくいが、夏場は傷みやすいだろ? それと同じことを機械でやっているんだよ。」
「確かに寒いと長持ちしますね。」
アリシアが思い出したようにそう言ってきた。
「ほら、肉を置いて有る所に手を近づけてみると分かるぞ。」
俺がそう言うと、アリシアが恐る恐る手を肉の所に近づけた。
「ひんやりしています。これって魔法で冷やしているのでしょうか?」
「この世界に魔法は無いよ、これは冷蔵庫って道具だ。」
「へぇ~」
なにやら感心しているみたいだ。
「それと同じ様な物だったら、俺の部屋にも有るぞ。」
「え? そうなんですか?」
「ああ、形は違うが同じ冷蔵庫って名前だな。同じく物を冷やす道具だ。」
「やっぱりヨシカズさんはお金持ちなんですね。」
「勘違いしている所悪いが、冷蔵庫なんてどこの家にも有るぞ?」
「えぇ~!!」
物凄く驚かれてしまった。
「…とりあえずアリシアはその辺の常識を覚える必要が有るな。」
「はい…」
会計を済ませて俺達は家に帰ることにした。
・・・・
「ただいま。」
「ヨシカズさん、ただいまって何ですか?」
言われて気が付いたが、何となく習慣で言っていたみたいだ。
「えっと、帰ってきた人は『ただいま。』、帰ってきた人を迎えた人は『お帰りなさい。』って言うんだ。
まぁ、挨拶みたいなもんだな。」
「そうなんですね。」
「ああ。」
「じゃあ、ヨシカズさん、お帰りなさい。」
「って、アリシアも帰ってきた人だろ?」
「そうでした。あははっ。」
そう言ってアリシアは笑っていた。
俺は何も言わなかったが、実はお帰りなさいと言われた瞬間、胸に暖かい物が広がり、涙が出そうになったのは内緒だ。
どうやら『お帰りなさい。』と言われたことが凄く嬉しかったみたいだ。
さて夕食を作る前に、摘んできたノビルの処理をしてしまおう。
ザルに入れて、水で良く洗う。
鍋に水を入れて火にかける。沸騰した所でザル毎鍋に入れて数秒、直ぐに取り出した。
食べる部分は根の部分らしいので、皿からはみ出る部分は切り落とした。
皿の隅に味噌を盛り付けてっと。
「出来たぞ。」
「わ~い♪」
「向こうではどう食べたのかは知らんが、こっちでは味噌を付けて食べるのが多いみたいだ。」
俺が1つノビルを取って味噌をつけて食べてみた。
見た目はラッキョウに近いが、味はタマネギの方が近いか?
味噌に合うし、こりゃ旨いな。ビールにも合いそうだ。
残念なことに冷蔵庫にビールは入って無い。さっきスーパーに行ったときに買っとくんだった。
ふと、アリシアが俺を見て止まっているのに気が付いた。
何か信じられない物を見たって顔をしている。
「どうした、食べないのか?」
「あ、あの、えっと、ヨシカズさん大丈夫なんですか?」
「何のことだ?」
「えっと、その…今ヨシカズさんが食べたのって、う〇ちですよね?」
「ブッ! ゲホッ! ゲホッ! 突然何を…って、ああ! そう言うことか!!」
確かに味噌は茶色くて、知らない人が見たらう〇こに見えなくも無いか?
「アリシア、これは味噌と言って豆から作られた調味料なんだ。決してう〇こでは無いぞ!」
「そうなんですか? でも見た目が…」
俺は日本人だから違和感が無かったが、他の国の人から見るとゲテモノ料理なのかもしれない…
「まぁ、好みってのも有るだろうし、無理して食べることも無いぞ。」
「はい。」
とりあえず返事はしたみたいだが、俺が味噌をつけて旨そうに食べているのを見て、決心したみたいだ。
「私も食べてみます!」
「大丈夫か?」
「今までヨシカズさんが食べさせてくれたものは全部美味しかったです。
だから、これもきっと美味しい物だと信じています!!」
そこまで覚悟を決めてまで食べなくても良いと思うんだけどなぁ。誰にだって嫌いな物や苦手な物って有るしね。
覚悟を決めたアリシアは、ノビルに味噌を付けて少し葛藤した末、ギュッと目を瞑ってから口に入れた。
「!!」
カッ! っと目を見開き、驚いている。
「何これ!! 美味しい~!!」
どうやら味噌は、アリシアの味覚にも合ったみたいだ。
美味しいと分かると、躊躇なく味噌を付けてパクパクと食べ始めた。
おっと、このペースだと全部食べられてしまうな、俺も食べることにした。
用意したノビルはあっという間に無くなってしまった。
「ふぅ…、その辺に生えている雑草だったけれど、悪くなかったな。」
「そうですね。でも私の知ってる草じゃ無かったみたいです。」
どうやら形は似ては居たが、同じ草では無かったみたいだ。
まぁ、食べられる草だったから良いけどね。




