#637 アジ・ダハーカ、イエローオッサ草原戦
お昼ご飯を食べてログインするとリリーたちの精神的な介護をする。どうやらご飯を求めてキッチンにやってきたら、いきなり全裸の九尾に遭遇したらしく、かなりの衝撃のようだ。特に恋火の負ったダメージは深刻だ。
「…」
目が死んでいる。和狐が必死に目を閉じようとしたようだが、流石の和狐も対処不可能だったようだ。恋火を膝に乗せて、椅子に揺られているとようやく気持ち良さそうに寝た。
すると攻撃の音が聞こえてきた。草原で戦いが始まったようだ。草原には雪森に参加出来なかった人たちが参加している。指揮はルインさんとサバ缶さんだ。頼んだぞ、みんな。
「カルバリン砲! 撃て!」
「アーバレスト! 発射!」
シリウスさんたちのカルバリン砲とアーバレストの矢がアジ・ダハーカに迫るとその攻撃をアジ・ダハーカは止めてしまう。
『異星の機械人形を持っている召喚師と先程我を挑発した魔法使いを出せ! 貴様らでは話にならん!』
そういうとアジ・ダハーカは攻撃をそのまま返した。その一撃で一気にアーバレストは壊された。カルバリン砲を守ったシリウスさんたちは流石だ。
「カタパルト! 撃て! 退避~!」
『そのような攻撃、効かぬと証明したはずだ!』
『わぁ~!?』
全員が穴に逃げ込み、助かるがカタパルトは破壊された。その後、穴を使ったヒットアンドウェイ戦法が行われる。こういう戦法で光るのは個人戦で見事なアクロバットを披露した槍使いや『ブルーフリーダム』のメンバーだ。
彼らは完全にアジ・ダハーカの攻撃タイミングを見切り、斬りかかり、穴に逃げ込む作戦を完璧にこなしている。
「ふぅ~…今のは危なかった…」
「改めてこんなのと戦うタクトさんたちの凄さを実感するね」
「それに応えようとするフリーティアのプレイヤーみんなもね。ボクらも負けられない! いくよ!」
すると光線が飛んできた。それを銃士の女の子が全員をしゃがませ難を逃れる。
「…やる気の空回りはダメ」
『はい』
ここにも女性に頭が上がらないパーティーがいた。更に召喚師を中心にした飛行部隊も加わり、暫くゲリラ戦をしていたら、流石のアジ・ダハーカもイラつきが限界に達した。
『鬱陶しい蟻とハエ共が! いいだろう! 纏めて一掃してくれる! 地殻変動!』
アジ・ダハーカが地面を踏みつけると草原フィールド全体の地面がひび割れる。更にアジ・ダハーカは手を持ち上げるように動かすと地面全体が浮き上がる。それに巻き込まれる形で地面にいたプレイヤーと空にいた人たちはまるでSF世界の宇宙人に連れ去られるシーンを体験する。
『な…』
『随分隠れていたようだな。だがこれで終わりだ』
アジ・ダハーカがそう言うがその超常現象の中で高速で動く小さな影があった。
「ネコパンチ!」
猫状態のカインさんが渾身のネコパンチでアジ・ダハーカを僅かに下がらせた。その瞬間、浮いていた地面が落下する。更にカインさんがアジ・ダハーカに近接戦を挑む。
その間にプレイヤーたちは全員落下していたが獣魔ギルドの職員たちが全員を召喚獣に乗せて、地面の激突を回避した。
『ふん!』
アジ・ダハーカが羽ばたくと強烈な斥力が発生し、全員仲良く遥か後方の岩山に激突した。
「くぅうう! レギオン召喚!」
カインさんが所持している召喚獣が召喚される。
『ほぅ…これはこれは。中々楽しませてくれそうなメンツだな』
「僕は獣魔ギルドマスターのカイン! 悪いけど、ここでお前を仕留めさせてもらう!」
『やれるものならやってみるがいい!』
カインさんと召喚獣たちが戦闘開始と同時に全員が撤退する。これは邪魔になるからだ。
そしてサバ缶さんがその報告を受けるとブリュンヒルデさんたちと桜花の武将たち、フリーティアの精鋭部隊に声をかけた。
暫くするとカインさんから連絡が来る。
『…ごめん。そろそろ限界だ』
『わかりました』
カインさんと変わるように歴代の英雄たちとフリーティアの精鋭部隊が投入された。そして帰ってきたカインさんの姿はボロボロだった。本当にギリギリまで戦ってくれたことが伝わってくる。ネフィさんが言う。
「ギルマスのそんな姿、見たくありませんでした」
「はは…失望させちゃったかな?」
「いいえ、違います。そんなに頑張った姿を見せられたら、怒りにくくなるじゃないですか」
「…はは。それなら頑張った…甲斐が…あった…かな」
獣魔ギルドの職員さんたちが回復魔法を掛けて、運ばれていった。
一方その頃、アジ・ダハーカは安倍晴明の登場に歓喜していた。
『来たか!』
そういうとアジ・ダハーカは無数の魔方陣を展開する。
「はぁ!」
シグルドさんが俺が貸した聖剣グラムとバルムンクでアジ・ダハーカの魔方陣を吹き飛ばす。
『貴様…我の邪魔をするか』
「あぁ。この剣を預かったからには負けるわけにはいかない! これでもファフニールを倒した実績があるからな。お前もこの剣たちで殺してくれる」
『ほぅ…ファフニールを倒したか。なるほど。確かに力が宿っているな。しかしあのような引きこもりと悪の根源たる我らを一緒にするとは身の程を知るがいい!』
その瞬間、ガルーさんが空脚で移動し、拳を握る。
「獣王連爆拳!」
ライオンのオーラが宿った拳の怒涛のラッシュがアジ・ダハーカを襲うと更にブラスが二本の魔法剣を構える。
「グランドサザンクロス!」
十字に放たれた斬撃が命中し、爆発するが無傷だ。
『何かしたか?』
「チッ。話には聞いていたがこれはちとショックだな」
「あなたはまだいいじゃないですか…こっちは魔法を使えないんですよ。おっと!」
二人がアジ・ダハーカの光線を回避する。その隙に桜花の武将たちが攻撃に出た。そしてガルーさんは指示を出す。
「いいか! お前ら! まともに戦闘をしようとするな! とにかく近づいて攻撃、それから全力で回避だ! じゃないと死ぬぞ!」
『はい!』
「桜花の戦士たちに続け!」
『おぉ!』
流石に精鋭部隊だけあって、全員俺たち第四クラスレベルに強かったがやはりダメージは与えられない。するとルインさんの合図で全員が下がるとアジ・ダハーカに爆撃が開始される。エアティスさん率いるフリーティアの飛行部隊だ。
何発も爆弾は無効化されるが流石のアジ・ダハーカも次々落とされる爆弾と油たっぷりの樽全てを対処することが出来なかった。次々、爆弾が大爆発し、油でアジ・ダハーカが大炎上する。
「クラウソラス!」
「ヴァルハラの槍よ敵を貫け!」
『ぬるい! 獄炎旋風!』
燃え上がるアジ・ダハーカにレギンの光の斬撃を放ち、ブリュンヒルデさんが槍を投げるとアジ・ダハーカが炎を吸収し、翼を羽ばたかせると超巨大な炎の竜巻が発生する。
すると真田幸村が真紅の槍を回転させる。
「炎の竜巻なら望むところ! 紅蓮旋風!」
しかしあっさり飲み込まれてしまう。
「あ、あれ?」
「真田の坊主は引っ込んでろ! うごかざること山の如し! 風林火山!」
武田信玄がそう言うと地面を踏みつけると地面が盛り上がり、山を作ると炎の竜巻を防ぐ。しかしこの瞬間、地面にいる人たちはアジ・ダハーカの姿を確認できなくなってしまった。
「こりゃ、まずい! 半次郎!」
「任せろ! キィエーイ!」
半次郎と呼ばれた人が上段から刀を振り下ろすと山が斬れた。
恐らく彼は西郷隆盛の話でよく登場する中村半次郎だろう。彼は『人斬り半次郎』と呼ばれ、示現流の使い手とされている。
示現流は一撃必殺を信条にしている剛剣で知られている。新撰組局長、近藤勇が『薩摩の初太刀は必ず外せ』と言ったエピソードが有名だ。これは外せと言っているのだが、実際は防御はするなという意味らしい。
なんでも防御をするとその剛剣で受けた刀ごと頭を割られるそうだ。流石に山を斬ったエピソードはないがかなり強い剣術の流派だったことは間違いない。
山が斬れたことでアジ・ダハーカの姿を見えると身体全体が光っており、次の瞬間、無数の光線が放たれた。
「ヴァルハラキャスタリン!」
ヘリヤが必殺技を使うと全員に光の壁が発生し、光線を破壊することで防御した。
『破壊の力か…面白い能力ではあるが破壊出来ぬ攻撃をすれば良いだけだ!』
「伝説解放! 魔剣解放! 聖剣技! シュトルムヴォータン! 魔剣技! ドラゴトード!」
『ぬぅうう!』
「それをさせないのが我々の役目だ」
皆が必殺技を使用し、一度は引いたプレイヤーたちも戻り、必殺技を使い終えると狐のセリアンビーストたちが放射熱線を浴びせて、時間を稼ぐ。流石は九尾専属の巫女たちだ。
しかし時間はあまり稼げないと考えた官兵衛さんが撤退の指示を安倍晴明さんに出す。しかしアジ・ダハーカは放射熱線を浴びながら、新しい転移魔法を早くも無効化してくる。しかも安倍晴明さんがまた即興で作ったものまで無効化してきた。
『同じ手が何度も通用すると思ったか?』
「化物め! だが陰陽術では俺のほうが上だ!」
新しい魔方陣の展開とその破壊の応酬になる。しかしこのままでは安倍晴明さんが負けるのは必然であったため、官兵衛さんは俺を呼んだ。
完全に安倍晴明さんと戦いに集中していたアジ・ダハーカにミサイルランチャーが炸裂する。
『ッ!? 邪魔をするか!』
「悪いがまた俺の勝ちだ」
安倍晴明さんが勝利宣言をすると俺たちは転移した。怒りのアジ・ダハーカの咆哮が聞こえた。
「相当お怒りですね」
「邪魔された挙句、また逃げられたからな…次戦う人は大変だぞ」
次戦うのは満月さんや与一さんたちの夜メインの人たちだ。どんまいとしか言えないな。




