#638 パッラースの盾とイエローオッサ山消滅
夕飯を食べてからログインするとへーパイストスがブランの新しい盾を完成させた。
「わ、私も見にーーあう」
「まだ調子が戻ってないんだからそのまま寝てろって」
「うぅ~…どうしても…ダメですか?」
むぐ…布団で顔を半分隠しながら言ってくるか。まさかブランまでこんなことをしてくるようになるとはな。だがしかし動いて苦しむのはブランだ。それを許可は出来ない。
「ダメだ。今は寝ているんだ」
「うぅ~…はい」
俺はへーパイストスのところに行き、新しいブランの盾を受け取る。
パッラースの盾:レア度9 盾 品質S
重さ:80 耐久値:1000 防御力:800
効果:天使装備時全ステータス+10、絶対防御、英雄障壁、堅固、巨人の加護
ギガースのパッラースの加護が宿った盾。筋力をかなり増加させる効果があり、鉄壁の守りと共に武器の威力を上げる効果で攻防一体の強さを誇っている盾。
絶対防御、堅固、巨人の加護は初だな。どんな効果かはブランが回復してからだな。流石にユウェルで確認したら、すねられそうだからな。
俺はへーパイストスにセフォネの鎌を注文した。やはり不死殺しの武器は優先度が高いだろう。アジ・ダハーカは当然としてハイドラも見ているから余計にそう思ってしまう。素材はアダマンタイトと金剛石、魔素石を使うそうだ。これだけでやばい武器になりそう。
ブランをこのまま放置するもの可哀想だから俺はパッラースの盾をブランに持っていく。
「それは! あう!?」
「ほら。まだ癒えていないんだからじっとしていろって。盾は見えるように置いておいて上げるからさ」
「はい。ありがとうございます。主」
じっと盾を見つめちゃっているよ。余程気に入ったようだ。持ってきて、正解だったかな。
一応セフォネに新しい鎌を作っていることを伝える。
「何! のじゃ!?」
「だから興奮しないように言っただろう? まだ完成していないんだから今はゆっくり休んでくれ」
「どんぱち音がする中、休めるはずないのじゃ」
ごもっとも。それでも今は二人は休む時だ。俺はイエローオッサ山を見る。
アジ・ダハーカはイエローオッサ山の最後の山岳エリアに進行してきた。このエリアは人間の攻撃は厳しい。よって、フリーティアの飛行部隊と召喚師、猛獣使いの人たちが中心となる。
更にイエローオッサ山の入口付近に夜メインの部隊、トレントの森の砦に兵器を配置している。
『アジ・ダハーカ捕捉しました!』
『了解。波状爆撃! 第一波攻撃開始!』
アルさんの指示でグリフォン、ユニコーンなどの足が速い召喚獣たちに騎乗した召喚師たちがアジ・ダハーカの正面から攻撃態勢になるとアジ・ダハーカは光線と魔法で落としにかかってくる。
『くぅぅ…誘導に成功! アルさん!』
『急降下爆撃! 開始!』
ワイバーンや大型の騎乗出来る召喚獣に乗った人たちから魔法阻害煙幕が落とされる。するとアジ・ダハーカが展開していた魔方陣が消える。
『魔法を阻害する煙か。小癪な物を作ったものだ』
『魔方陣の消滅を確認!』
『全員攻撃方法自由! 一気に畳みかけます!』
召喚師たちの通常攻撃が開始させ、更にここで切り札が投入された。
「竜化!」
竜騎士パーティーだ。魔法が効かないこの状況ならかなり有効に戦えるんじゃないかと考えた結果だ。やはり魔法のあるなしでは危険度が低く、近接戦に持ち込めたが、やはり障壁が突破出来ない。それでも少しでも時間を稼ぐため、力の限り押し込む。
『ふん。力勝負が望みか?』
『ぐぅぅ!! あぁあああ!?』
逆に潰され、噛み付かれる。全員が助け出そうと必死に攻撃するが見向きもしない。すると地面からドラゴンが現れる。マヤさんのドラゴニュートだ。
『別の土のドラゴニュートか! 我の邪魔をするな!』
アジ・ダハーカの尻尾の一撃を受けるが踏みとどまる。
『いや! 邪魔をさせてもらう!』
両手と尻尾をドリルに変化させ、襲いかかると流石のアジ・ダハーカも標的を変えた。竜化した人を放り捨てる。
『竜騎士全員へ。まともな力勝負では無理よ。連続のドラゴンダイブが一番有効だと思うわ。他の全員も近接戦をするなら相手にぶつかる技が一番効果があると思うから参考にしてみて』
『了解!』
全員が攻撃態勢を取る一方でアジ・ダハーカは土のドラゴニュートに襲いかかっていた。両手のドリルを素手で握り止めるとそのまま持ち上げ、山にぶつける。
『死ね』
「ドラゴンダイブ!」
『全軍突撃!』
『ふん!』
ウィンドドラゴンと進化した雷電さん率いるドラゴンテイマー部隊と第一陣の召喚師たちが突撃すると障壁で止められる。
そして障壁が動き、全員が障壁に押される状況となり、そのまま山まで押し込まれて標本のように潰されてしまった。
『同じ手が通用すると思ったか? 死ね』
アジ・ダハーカに稲妻が走る。その時だ。予想外の一団が現れた。
『雷波動!』
夜空の闇から無数の雷波動がアジ・ダハーカを襲った。空にいたのはオプス率いるレイブンたちだった。
『貴様らも我の邪魔をするか?』
「するかじゃないだろう? したんだ」
『そうだな。ならば死ね!』
アジ・ダハーカのドラゴンブレスをオプスたちは回避し、連携してアジ・ダハーカを攻撃する。
『第一陣撤退! 第二陣攻撃開始!』
フリーティア騎士団による魔法阻害煙幕の再使用とダイナマイトによる爆撃が始まる。プレイヤーたちは全員砦に逃げ、回復を受ける。その間に狐のセリアンビーストたちが放射熱線で攻撃し、プレイヤーたちは再度出陣する。
しかし確実にアジ・ダハーカは進み、トレントの森にいる部隊の射程範囲に入った。砦のカタパルトから樽が投げられる。
『効かぬと証明したはずだ』
アジ・ダハーカは樽を止めると火矢や銃撃が襲うがそれが樽に届く前に止められる。
『残念だったな』
「花火!」
「竜化!」
『ドラゴンブレス!』
花火ちゃんのドラゴンブレスで強制的に樽や火矢などを破壊する。これは最後の手段として取っておいたものだ。
樽に入った酒がアジ・ダハーカの障壁にかかり、再び炎上する。そして満月さんが同時に必殺技を浴びせると花火ちゃんが更なる追撃をしようとした時だ。異常を察知した。
『ッ!? タクマ! 全員を避難させて! とんでもない攻撃が来る!』
『花火が何かやばい攻撃が来ると言っている! 全員逃げろーーー!』
アジ・ダハーカの体が真っ赤になる。すると周囲の熱量が急上昇し、山が溶岩となり、溶けていく。
『勘のいい火のドラゴニュートだな。敵は逃がしてしまったが我らが力を知らしめてくれよう。見るがいい! これが我らの力だ! ハイパーノヴァ!』
一瞬静寂が支配する。次の瞬間、世界が光に包まれる。それは星が最後を迎える光。人類が到達し得ない終焉の光だった。
次の瞬間、視界を全て覆う超爆発が発生し、それと同時に凄まじい衝撃波がフリーティアの王都まで届いた。
「…何が起きた? 全員無事か?」
『ビックリした』
ホームでそれを味わった俺たちはその程度のもので終わったが間近で味わった人たちは寿命が縮まったことだろう。俺は通信を送るが無反応。みんな、消し飛んだか?いや、ルインさんたちまで反応がないからさっきの攻撃で通信がいかれていると見るべきか。
とにかく俺は爆心地の方向を見る。そこにあったはずのイエローオッサ山がなくなっていた。
その後、暫くすると通信が回復し、ギルドで状況確認をする。ギルドでは花火ちゃんがみんなから褒められていた。
「ふふん」
何を自慢しているのか状況がわからない俺にはさっぱりだ。その後、俺は花火ちゃんがみんなを助けたことを知った。
「ふふふん」
「はいはい。よく頑張ったな。一連の騒動が終わったら、タクマに多めに報酬を渡すから好きなものを買ってもらえ」
「やった! 服にアクセサリーに武器に」
「ちょっと待て! 花火! ギルマスは多めにと言っているがいくらか言ってないぞ!」
よく気がついたな。タクマも成長している。
それにしてもハイパーノヴァ…極超新星か。宇宙創生レベルの大爆発を起こすなよ。重力崩壊が出来るならこれぐらいは出来るのかも知れないが普通なら星どころか銀河終了レベルだぞ。山一つと建物のガラスが割れた程度で済んだのはこれがゲームだからだろうな。
そして俺はオプスたちと再会し、救援に感謝した。
「礼はいい。助けられた借りを返しただけだ。俺たちは用事が済んだから帰らせてもらうぞ」
そう言うと飛んでいった。ありゃ、参加してくれないんだ。するとギルメンがニヤニヤしている。
「ツンデレ?」
「クーデレじゃないかな?」
オプスの色々な疑惑が浮上している中、俺はまずアジ・ダハーカの現状を知るため、調査隊を送った。幸い、砦は無事らしく、すぐに報告が来た。
「沈黙して動かない?」
「技の反動か…何かの準備をしているのか…とにかく攻撃してみますか?」
現状動かないのは助かるが一応攻撃をしてみるか。ここで倒せるならそれに越したことはない。
というわけで全員動かないアジ・ダハーカの攻撃に向かい、俺は城で現状の報告をする。するとフリーティア騎士団も攻撃に向かった。
俺はその後、九尾にも状況を伝えると山ぐらい簡単に元通りに出来るそうだ。流石九尾といったところだろう。
その後、アジ・ダハーカへの攻撃が不発に終わったことが知らされる、惑星魔法などもぶっぱなしたらしいのだが、無傷だったらしい。しかもチロルたちのエクスマキナシリーズの攻撃もダメだった。
そもそも彼らは未だにバトルシップを発見できていない。その理由が暗黒大陸の難易度の高さだ。フィールドのトラップからモンスターレベル、そして数が全然違うらしい。
「手伝って下さいよ」
「自分たちで見つけると言ってたじゃないか。まぁ、このイベントが終わった後にでも向かわせてもらうよ」
ただし、復興とか色々優先するものが出てくると思うけどな。
というわけでイクスを連れてエネルギーキャノンを撃つがダメージなし。ダメだこりゃ。
「恐らく今日はここまでということでしょうね」
「やることは山済みよ。砦や防衛ラインの壁の建設、兵器も被害は受けちゃったから、その修復にアイテムの補充ね。みんなで役割を分けて、明日までに態勢を整えるわよ!」
『おぉ!』
俺はバトルシップに向かい、現状の修理状況と食堂施設で作ったエネルギードリンクを頑張っているみんなに渡す。すると腰に手を当て、一気に飲む。
「マスターの魔力補充を完了」
「作業を続行します」
「あ、あぁ。それよりもなぜその飲み方なんだ?」
「マスターがお風呂上がりにこのように飲んでいたからです」
…確かに飲んでいた気がする。しかしどうやって見たんだ?ちょっと怖いぞ。それに変なことを教えるなよ。
まぁ、作業に気合が入ったなら良かった。俺はホームに向かうと料理をする。俺の生産作業はやはりこれだからな。俺が料理をしているとセチアが超反応した。
「この匂いはコンテストの時の!」
正解。セチアはファストの町でのコンテストに参加していたからしっかりシチューの匂いを覚えていたんだな。しかし今、作っているシチューはあの時のシチューを遥かに凌駕しているシチューだ。
材料は狐のセリアンビーストから受け取った最適の野菜だし、使うミルクもヘイズルーンの乳だ。更にセーフリームニルのベーコン、隠し味にはロコモコのバターとチーズ、植物性生クリームを使った俺渾身の力作がこちら。
クリームシチュー:レア度9 料理 品質A+
効果:満腹度100回復、二時間満腹度減少無効、魔力二時間アップ(究)、筋力二時間アップ(究)、耐寒二時間、二時間状態異常無効、魔力一時間自動回復(究)、魔力100回復、二時間蘇生付与
季節の野菜とセーフリームニルのベーコン、ヘイズルーンの乳を使った栄養満点のスープ。隠し味に金羊毛のチーズ、バターが使われたことでまろやかで濃厚な味わいになっており、植物性生クリームも加わり、高級店顔負けのシチューとなっている。
どうだ!これが俺のシチューだ!やりきったぞー!説明で高級店顔負けと表示させたことはでかいし、効果も滅茶苦茶ある。これは切り札だな。明日のために取っておこう。
『え?』
リリーたちや九尾たちまでお皿を用意して完全待機体制だった。結局グレイたちを含む全員に味見させて、解散させた。九尾までいるから始末が悪い!
まぁ、代わりに九尾の補佐をしている狐のセリアンビーストたちが料理を手伝ってくれることになったから結構量が揃えられた。明日みんなに振舞おう。




