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第二章 ⑤

「はい、あーん」

「あーん、なんてするか馬鹿」

「なんでさ!」

「なんでも」

 屋上には僕達以外誰もいなかった。

 そりゃそうだ。本来、屋上は立ち入り禁止なのだから。

 でも、生徒会役員である僕たちには、屋上のカギなんて簡単に手に入れられる。

 ちょっとした、生徒会役員の特権を駆使すれば。

 ま、生徒会で働く報酬だということにしておけばいいさ。

「そういえば、事件はどう? 解決しそう?」

 話題を変えて、小唄が尋ねてくる。

 僕は、首を左右にふるふると振る。

「さっぱりだよ」

「ふうん……ま、頑張ってね~」

「……うん」

 頑張るさ。

 会長の頼みなんだから。

「何かあったら、わたしも手伝うよ!」

「…………」

「あれ? なんで顔を背けるの?」

 いや、だって、ねえ?

「ひどいよハル君! わたしだって、やればできる子だって言われ続けたんだから!」

 それ駄目じゃん。

「……もう事件のことは忘れて、楽しくお昼を食べようよ」

「誤魔化してるでしょ!」

「違うよ」

「そう? ならわかったよー」

 小唄は一瞬で怒った顔から笑顔にチェンジして、弁当の卵焼きをおいしそうに頬張っていた。

 相変わらず扱いやすいけど。

 将来、詐欺とかに引っかかりそうで、ちょっと心配だ。



 放課後。

 僕は、HR終了と同時に生徒会室に向かっていた。

 昨日の夜に布団の中で事件について考えていたけど、何もわからない。

 だから、会長に事件解決のヒントをもらうことにした。

 ヒントなら、答えを教えるわけじゃないし、言ってくれるかもしれない。

 ……と言っても、望み薄なのだけど。

 藁をもつかむ思いなのだ。

 会長は、藁というには立派すぎるけど。

「……あれ?」

 その途中の廊下で、見知った人物を見かけた。

 黒髪のショートボブに、地味な眼鏡。小柄な身体。

 藤倉先輩だった。

 手には、何か大きな荷物を抱えている。

「先輩」

 スルーするのもどうかと思ったので、とりあえず声をかける。

「……相沢? 何?」

 藤倉先輩は、相変わらずの無表情でそう答えた。荷物のせいで顔全てが見えたわけではないけど、先輩の表情に変化が見えないのはわかりきっていることだ。

「何やってるんですか? そんな大きな荷物抱えて」

「……生徒会室にあった、いらない本の処分」

「手伝いましょうか?」

 女性一人で運ぶには、少々重すぎるのではないかと思って、そう言ってみる。

「……いい。私一人で問題ない」

 僕の気遣いは無用とでも言いたげに、藤倉先輩はそう言って歩みを再開した。

「……そうですか」

 まあ、そう言われるってのは予想できたけどさ。

 あの人、なんでも一人で抱え込む癖があるし。

 っと、藤倉先輩の後ろ姿を見ている場合じゃなかった。

「それでは、また」

「……ん」

 短く答えた藤倉先輩の姿が見えなくなったところで、僕もくるりと方向転換して、生徒会室に向かって歩き出した。


 僕は、事件の調査をしなければいけないのだから。


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