第二章 ④
とちゅう
彼女と■ともう一人は、友達だった。
少なくとも、■はそう思っていた。
でも、どうやらそれは違ったようだ。
彼女は、孤独だった。
表面上では笑っていても、心の中では泣いていた。
天才と呼ばれ、周りから期待される。
それが重しになっているのだと、■ともう一人は考えた。
でも、彼女は、そんな期待なんて何とも思っていなかった。
なら、なんで彼女はあんなに悲しげな顔をするのだろうか?
■ともう一人は、気付いた。
天才の悩みは、凡人には理解できないと。
「はっるく―――ん!」
翌日。
木曜日の昼休み。
一年三組の教室に、小唄がやってきた。
ちなみに、小唄は隣の二組だ。
「何? 小唄」
「お弁当、一緒に食べない?」
「えー」
「露骨に嫌がられたっ!?」
「おいコラ相沢! なんでてめえ小唄ちゃんの頼みを断るんコラ!」
とクラスメイトA。
「でも、断ってくれた方がうれしいじゃん。オレらにもチャンスがあるってことだろう? なあ、兄弟」
とクラスメイトB。
「もうてめえが死にゃあいいんだよぉ! いっそのこと我が貴様をぶち殺してやろうかぁ? あぁん?」
とクラスメイトC。
「……はぁ」
普段は僕の友人たちなんだけど、小唄がこのクラスに来たときにだけ、敵になる。
こいつらだけじゃない。
クラスメイト全員が敵だ。
といっても、クラスメイトたちはまだマシな方なんだけど。
他のクラスの小唄の友人は、僕のことを本気で嫌ってるから。
ホント、勘弁してほしい。
「で? 一緒にお弁当食べてくれるの? くれないの?」
小首を少し傾げながら、そう尋ねてくる小唄。
そんな仕草がまた男心をくすぐるのだが、それを無自覚でやっているあたり、小唄はたちが悪い。
「……わかったよ」
「やった!」
「てめえコラ! ぶっ殺すぞコラ!」
とクラスメイトA。
「結局、オレらみたいなモブキャラには、出会いなんてないってことじゃん。……頑張れよ、兄弟」
とクラスメイトB。
「くっそがぁ! 小唄ちゃんを泣かせてみろぉ! 我がてめえの喉掻っ捌いてカラスの餌にしてやるからなぁ!」
とクラスメイトC。
そんな騒がしい面々から離れるために、僕は小唄を連れて屋上に向かった。




