第三章 ⑤
「……ようやく、しっぽを出しましたね」
僕はこれまた会長を倣って「くくく」と、笑いながら、みんなに聞こえるように、そう言った。
「? どういうこと、ハル君?」
「小林先生に権堂先生。会長を口説くのは、僕の推理が終わってからにしてくださいよ」
「口説いてねえよ!」
「はいはい、少し黙っててくださいよ、小林先生」
みんなが口を閉じて僕に視線を集める。
十二の瞳が、僕を見た。
緊張する。
吐きそうだ。
もう、轟さんのことなんか放っておいて、楽になれよと、僕の心の弱い部分が囁く。
アホか。
推理ショーを始める前に、言っただろ。
絶対、轟さんを助けるんだって。
「……真犯人の正体が、わかりました」
「……どういうことだ?」
「言った通りの意味です、権堂先生」
「なおさら意味がわからん。お前、さっき真犯人は黒咲だって言ったじゃないか」
「僕は一言もそんなこと言ってないですけどね。言いましたか? 犯人は会長だって」
「最初に言ってたじゃないか」
「僕は、視線を会長に向けただけですよ。その後も、会長を疑ってる、とは言いましたけど、犯人だ、とは言ってません」
多分、言ってないはず。
もし言っていても、勢いでごまかす!
「なら、真犯人は誰なんだ! 今度そんなこと言ったら、文化祭当日に生徒指導室に閉じ込めるぞ」
勘弁してくださいよ。
「さて。僕が思う真犯人は――」
コ○ン君みたいに、僕は犯人を指さす。
ちょっと、気持ちいいな。コナ○君はいつもこんな快感を味わっていたのか。
「犯人は、貴方ですよ。小林先生」
「……っ!? お、おいおい、こんな時に何冗談言ってるんだよ!」
「冗談? そんなこと言いませんよ」
「な、なら何で俺が犯人だって思うんだよ! 証拠はあるのか!」
「……さっき、小林先生はこんなことを言いましたよね。『その映像がなによりの証拠じゃないか。映っている赤いジャージの男。それ、黒咲じゃないのか?』って」
「い、言ったか? そんなこと」
「言いましたよ、これが証拠ですね」
僕は、ポケットに入れていた携帯電話を取り出し、今まで作動させていた録音機能を停止させる。
そして、それをさっきの部分まで早送りして、再生させる。
『……何故、そう思うのですか? 今までの相沢の話の中には、私が犯人だという証拠は、何一つなかったように思いますけど?』
『その映像がなによりの証拠じゃないか。映っている赤いジャージの男。それ、黒咲じゃないのか?』
『そうだ黒咲。白状して、しっかり謝罪すれば、お前なら大事にならないだろうよ』
よかった。ちゃんと録れていたようだ。
「そ、それがどうしたって言うんだ!」
「僕、ジャージの人物が監視カメラに映っていた、とは言いましたけど、そのジャージが赤いとは一言も言っていませんよ?」
「な、何を言っているんだ相沢!」
「ではそろそろ、相沢春秋の推理を披露しましょうか」
キリッ!
フッ……決まった!
「さて、小林先生。何故、犯人のジャージが赤色だとわかったのか、説明願えますか?」
「ぐっ! ……監視カメラの映像を見たんだよ。一応、俺だって事件のこと調べていたんだ。そうしたら、監視カメラにたどり着いたんだよ」
「先ほどは、監視カメラの存在なんて、知らないと言っていたじゃないですか」
「そ、そういう風に演じてたんだよ」
「ふむ……では、用務員のおじさんは、監視カメラのこと、誰にも話していないって言ってましたけど……それは?」
「おじさんに、そう言うように頼んだからな」
「なるほど。監視カメラの映像を見た。だから犯人が来ていたジャージが赤だとわかった。そうですね?」
「ああ」
よし。
なんとか、繋がった。
正直なところ、『赤って言ったのは、俺の勘違いだ』みたいなことを言われていたら、もうお終いだった。
でも、まだいける。
「なら、これを見てもらいましょうか。小唄」
「は、はいっ!」
「ビデオデッキ、セットしてくれる? これ、テープね」
おじさんから借りていた監視カメラのテープを手渡す。
「わ、わっかりました!」
小唄は敬礼のポーズをして、生徒指導室にあるテレビに、あらかじめ用意させていたビデオデッキをセットする。
「終わったよ~。はい、これリモコン」
少しして、小唄が立ち上がり、僕にビデオデッキのリモコンを渡すと、元の立ち位置に戻っていった。
「お待たせしました。では、再生させます」




