第三章 ④
そこには、昨日用務員のおじさんから聞いた情報が載っている。
「さて、みなさんは、この学校に監視カメラが設置されているのをご存知でしょうか?」
本来、監視カメラの情報は公にしてはならないということだったらしいが、校長に、「会長の頼み」と言ったら、即OKを出してくれた。
どれだけ会長に甘いんだよ。あのタヌキおやじ。
「そんなものがあったんですか?」
「うん、公にはされてないみたいだけどね。先生方は、ご存知でしたか?」
「いや、知らなかった」
「俺も同じく」
「会長と藤倉先輩は?」
「……私は、知らない」
「私は知っていたわよ? 正面玄関についてるあれでしょ?」
「……っ!?」
おいおい、何で知ってるんですか。
「あんなバレバレの位置に設置したんじゃ、意味ないじゃない。ねえ? 春秋」
「……あ、あはは」
すいません。
僕、気付きませんでしたよ。まったく。
「……コホン。さて、その監視カメラに、ある映像が映っていました。それは、ジャージを着てフードを深くまでかぶり、手にはバットを持っている人物が、正面玄関から出てくる場面です」
「なっ!? ほ、本当か?」
「ええ。本当ですよ、小林先生」
「な、なら、そいつが犯人じゃないか! 他に怪しい映像は映ってなかったのか?」
「今から話すんですから、少し落ち着いてくださいよ」
「あ、ああ……」
はしゃぐ担任を黙らせて、僕は推理を続ける。
犯人が気になるのはわかるけど、少し黙っていてほしい。
「このジャージの人間が犯人だと思われますが、この人物が正面玄関から出てくる少し前に、監視カメラにある人物が校舎に入っていくところが映っていました」
「……ある人物、だと?」
「わわっ!?、だ、誰なの、それは?」
「それはもちろん」
僕はゆっくりと腕を上げていき、天井を指さしてから、勢いよくその人物の方に腕を振り下ろした。
「会長、貴方ですよ」
「か、かいちょーさん……?」
「……黒咲……だと」
驚く小唄と権堂先生。
権堂先生の驚いた顔は、かなりレアだ。
正直、見ることができても、ちっとも嬉しくないけど。
ま、どうでもいいか、そんなことは。
とにかく僕は、会長を倣って、不敵な笑みを浮かべながら、言葉を続ける。
「さて、どう思います? 会長」
「……どう、思ってほしいのかしら?」
「そうですね、何で会長が映っているか、教えてほしいですね」
「それは無理よ。教えちゃったら、つまらないもの」
「つまらないって……」
「ちゃんと、推理小説の探偵役のごとく私を追い詰めて、自白させてみなさい。もっとも、私は春秋に追い詰められるほど、馬鹿でもないけどね。どう? 春秋に私を自白させること、できる?」
悪戯を成功させたときの子供のように笑いながら、会長はそう言った。
「…………」
そんなこと、できるわけがない。
当たり前だ。
だって――
「黒咲、認めたらどうだ?」
横から、担任が声を出した。
「認める? 何を、ですか?」
「お前がやったんじゃないのか?」
担任の言葉に、権堂先生と、それに轟さんも頷いた。
小唄は、迷っているようだ。会長は、怪しいけど、でも会長が犯人だとは思えないってところかな。
藤倉先輩は、相も変わらず無表情。
そんなみんなを見渡しながら、会長は担任に尋ねる。
「……何故、そう思うのですか? 今までの相沢の話の中には、私が犯人だという証拠は、何一つなかったように思いますけど?」
流石会長。
まったく動じていないや。
そんな会長に、担任はさらに話を続ける。
「その映像がなによりの証拠じゃないか。映っている赤いジャージの男。それ、黒咲じゃないのか?」
「そうだ黒咲。白状して、しっかり謝罪すれば、お前なら大事にならないだろうよ」
教師二人は、会長に近づき自白の強要(って言ったらおかしいか)を迫る。
会長は、そんな二人の声を華麗に聞き流しながら、僕を見つめてきた。
その目にからは、会長の思いが読み取れる。
『答えまであと少しだ。頑張れ』
と。




