第二章 ⑫
小唄と別れた僕は、再び用務員室を訪れていた。
今回は張り紙は張っていなかった。助かったよホント。
コンコン、とノックして、中に入る。
用務員室の中は、畳張りの六畳間だった。
その六畳間の中心に、中くらいの大きさのこたつが置いてあり、そこに一人のおじさんが座っていた。
「おや? なんの用だい?」
どうやら、この人が用務員のおじさんらしい。
白髪混じりの髪に、優しそうな顔。
年齢は、五十近くってところかな。
とにかく、怖い人じゃなくてよかった。
この人なら、事件の調査にも協力してくれそうだ。
「えと、ちょっと聞きたいことがあるんですけど……」
「聞きたいこと?」
僕は、事件のことについて用務員のおじさんに話す。
用務員のおじさんは、事件のことをほんの触りくらいしか知らなかったようだ。
それなのに、職員室の片付けを手伝うなんて、なんていい人なんだろう。
でも、事件のことは知らないのか……。
どうするかな。
「……とりあえず、事件当日の行動について教えてください」
「ああ、いいよ」
そう答えた後、こめかみに手を当てて、うーんと唸るおじさん。
多分、記憶をひねり出してくれてるんだろう。
「ああ、そうそう。たしか、その日はいつもよりも少し早く、朝四時から学校に来て、中庭の簡単な掃除と正面玄関の鍵を開けてたね。最近は、年のせいか起きるのが早くてね。家にいても仕方ないから早く学校に来ることにしてるんだ。
昔は五時に開けていた正面玄関のカギも、最近だと四時四十分頃開けるようにしてるんだ。
五時を少し過ぎた頃に、ここに戻ってきたよ。
その後、ここで少し休憩してから、教職員の車なんかが停まっている裏門の掃除をしに行ったんだけど、その途中、小林先生に職員室のカギを渡したね。職員室のカギは、用務員が開けちゃいけないことになってるから」
「そうですか……」
やっぱり、別段怪しいことはない。
このままいくと、犯人は轟さんということになってしまう。
それは何とかして阻止しないと。
「……何か、怪しい人物とか、見ませんでしたか? もしくは、いつもと違ったこととか。なんでもいいんです!」
「うーん……そうだねぇ」
もう一度、思考を開始するおじさん。
頼む。おじさんだけが頼りなんだ。
なんでもいい。
どんな些細なことでもいい。
何か、手がかりを!
「んん~……ああ、そうだ。そういえば、赤いジャージを着てフードをかぶった人が走り去っていったんだ。手にはバットを持ってたから、野球部の人間だと思ったんだけど」
「それだ―――――――――――――――――――――――――――――――――――ッ!!」
些細なことどころか、今までで一番の手がかりだった。
なんだよ、最初からここに来てればよかったんじゃないか!
畜生!




