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第二章 ⑧

「あん? 事件の話を詳しく聞かせろだって?」

 事件があったのが信じられないくらいに片づけられた職員室。

 机で作業していた担任に、声をかけると、露骨に嫌そうな顔をされた。

「もう何回目だよ。相沢って、鳥頭なのか?」

「殴りますよ?」

「……お前って、俺のこと教師だと思ってないだろ」

「思ってますよ」

 ほんの少しだけだけど。

「まあ、いいけどよ」

 いいんだ。

 この人、案外器が大きいのかもしれない。

「……でも、何を話せばいいんだよ? もう全部言っただろ?」

「そうですね……」

 何を聞こうかな。

「……職員室が荒れていたのを発見するまでの行動を、全て教えてください。細かいことも、全部」

「……はぁ。まあいいけどさ、俺だって忙しいんだぞ?」

「知ってますよ」

 嘘だけど。

「知ってるなら、少しは気を遣えっての」

 ごめんなさい。それは無理です。

「ええと、そうだな……その日は、朝早く、四時前に目が覚めたから、たまには早く学校に来て真面目な好青年をアピールしようと思ったんだ。

 家を出たのが四時二十分くらいで、学校に着いたのが五時二十分頃だったはず。

 多分、職員室は開いてないだろうから、用務員のおじさんを探して、職員室のカギを借りようと思ったんだよ。

 幸い、用務員のおじさんはすぐに見つかって、無事カギを借りたんだ。

 そんで、職員室に向かった。カギを開けて中に入ると、荒らされてたってわけ」

「ふむ……」

 別段、おかしいことはない……と思う。

「職員室に来た後は、何をしてたんですか?」

「ん? ああ、ちょっとパニくったけど、すぐに校長に電話して報告した。校長は学校に向かってる途中だったみたいで、十五分ぐらいで職員室まで来たな、たしか。んで、校長の命令で、職員室の前でずっと待機して、後から来る先生たちに職員室が使えないことと、代わりに第二視聴覚室を使うことを説明してたな」

 たいへんだったなぁ……と、続ける担任。

 やっぱり、別段おかしいことはない。

「他の先生方に、職員室が荒らされているのを知られるわけにはいかないからって、職員室の片付けも、俺と教頭と用務員のおじさん、それに生徒会の藤倉だけでやったんだぞ。少しは褒めろ!」

 藤倉先輩も手伝っていたのか。

 そりゃ、綺麗に片付くわけだ。

 あの人も、会長までとはいかないまでも完璧超人だからな。

「うーん……」

 担任の話を聞く限り、やっぱり用務員のおじさんにも話を聞かなければいけないみたいだ。

 後でもう一度用務員室を訪ねてみよう。

 それから、轟さんにももう一度話を聞いておきたいな。

 何で散歩なんかしてるのか、それを隠してるみたいだったから。

「……そういえば、何で轟さんを捕まえたんですか?」

「ああ、よく知らないけど、匿名でタレこみがあったらしいぞ。職員室から出てくるのを見たっていう」

 これは新しい情報だ。

 担任、さっき全部言ったって言ってたのに。馬鹿だな、この人。

「…………」

 でも、それが本当なら、犯人は轟さんじゃないのか?

 職員室には、カギがかかっていたのだから。

 轟さんに聞くべきことが、もう一つできた。

「そういえば、俺も聞きたいことがあったんだ」

「? 聞きたいこと? 何ですか?」

「生徒会って、なんで事件のこと知ってたんだよ?」

「……それって、どういうことです?」

 担任の質問に、僕は首を傾げた。

 どういうことだ?

「今回の事件、公になっていないはずなのに、生徒会は事件のことを知っていて、事件の調査をしたいって言ってきただろう? 何で知っていたんだよ?」

「……そういえば」

 そう言われると、たしかにそうだ。

 僕が会長に叩き起こされたのは、六時になる少し前。

 事件が発覚したのが五時三十分頃なので、会長は、事件発覚からそれほど間もないうちに事件のことを知っていた。

 どういうことだ?

「ま、あの生徒会長なら、不思議じゃないけどな」

 そう言って、担任は笑った。

 たしかに、あの会長なら、知っていても不思議じゃないけど……。

「あ、そうそう。もう一度言っておくけど、くれぐれも事件のことはバレるなよ?」

「はい、気を付けますけど」

「頼むぞ? じゃ、俺はちょっと用事があるから、もう行くな」

 ポンっと僕の肩を叩いて、どこかへ立ち去っていく担任。

 僕は、そんな担任に軽く頷き、職員室を出た。

 でも、今は誰にもバレないようにしよう、とか、そんなことは考えていなかった。

 僕の頭の中は、何故会長が事件のことを知っていたのか、それだけを考えていたからだ。


 会長の言う容疑者の中には、会長自身も入っているのだから。


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