2章-56話 護衛対象を守りきれ!
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一方でサキ達は。
隙あらば馬車に固まっている魔法使いの卵達を抹殺しようと、上空から魔法を打ち込んでくる4体の天使達相手に苦戦を強いられていた。
空中を円を描くように滑空し、サキたちの攻撃範囲から逃げ回り。
ならばと複数で一体の天使を力任せに囲い込もうと試してみるも、すかさず別の天使が手薄になった馬車へ容赦ない攻撃を仕掛けてくるのだ!
誰かを守りながら戦う。その一点において、まだまだ新魔団は圧倒的に経験が不足していた。
「ちょっと! 逃げてばっかりでウザいんだけど!?」
「厄介ですね……! ルクが来てくれれば大魔法の融合で行けそうなんですけど……!」
「ゴルドさんとリンドウさんは無事デスか!?」
「ああ……回復薬ぶっ掛けたからな、だが戦線復復帰は到底無理そうだ……ッ」
サキが空中に放った氷の弾幕も、逃げに徹した天使達にはかすりもせず。
しびれを切らしたリリとレンカが空中に飛び出せば、待ってましたとばかりに4体が空中陣形を組み、逆に二人を死角から囲い込もうとする。
天使達はヒイハがあの闇魔法の使い手を下すまでの時間稼ぎさえ出来れば、それだけで勝利が確定すると疑っていないのだ。
完全に打つ手なしの千日手状態になっており、段々とサキ達のストレスが溜まってくる。
しかし、そんな膠着状態の中で、リリの脳裏にふと電撃のような既視感が駆け巡った。
(……なんか前に、似たような理不尽を味わった気がしますね……!)
「ふふっ」
「ちょ?何笑ってるのよ?リリ??」
「いえ……少し苦い思い出を思い出しまして——私に考えがあります!ワイハちゃん流リバーシ戦略大作戦でいきましょう!」
かつてのリバーシ大会で。こちらが動けば動くほど、手のひらの上で転がされるように罠にはまっていった、あの悪夢のようなワイハの盤面支配をリリは思い出していたのだ。
そして、リリは息を弾ませながら、サキとレンカ、そしてブブへと高速で作戦を伝達していく。
「おいまて、それ俺の役割キツくないか…………?」
「ブブさんはあまり警戒されてませんから……頼みますね?」
「……リリって戦いになると大胆になるわよね?」
「やってやるデス!」
「いきマス!」
【属性纒装:風】【エアステップ!】
レンカが体に風属性の魔力を纏わせると爆発的に上がったスピードで空を駆け天使達に向かって突っ込んでいく!
同時に地上では、サキが自身の杖に超重量の氷のハンマーを錬成。なぜか凶悪な笑顔でブンブンと素振りを始め、リリは馬車を背に一歩も動かず不気味な構えを維持していた。
「1人で」
「私たち」
「4人を」
「相手にするつもり??」
息の合った笑い声とともに、4体の天使がレンカを包囲!ガムシャラに突っ込んでくる無謀な一撃を、空中で優雅にいなし、追い詰めていく。
「……グッ。まだマダァァァァーー!」
【スピードスラスト!】
「「【ホーリーシールド】」」
天使達により展開された光盾がレンカの突撃を跳ね返すと。体勢を崩し、宙に浮いた無防備な姿を晒してしまうレンカ。
「焦ったわね?」「まず1人」
「「【スラッシュ】」」
勝ち誇る2体の天使が、交差するように聖なる剣を振り下ろし、レンカの身体が引き裂かれる……。
そう誰もが確信した、次の瞬間!
「ここ!!」【カバースイッチ!】
【パリィ】
目視できる範囲ならば瞬時に味方の前に割り込むことができる、聖騎士の上級スキルにより。
死角から突如として空間を跳び越えたリリが割り込み、鍛え抜かれたパーフェクトパリィにより天使たちの剣撃を弾き返した!
「「な!!??」」
完璧な奇襲を決められ空中で硬直する天使たち。その頭上から、圧倒的な火力を持つ攻撃が降り注ぐ。
【エアステップ】「からの〜」
ゴォッ!!と凄まじい攻撃が天使の真上からやってくる!
リリのスイッチによって上空の死角へと位置取りを変えていたサキが、巨大な氷槌を全身全霊で振り下ろしたのだ!
【パワースイングーー!!】
「ぐっアアァッ!」
強力な一撃を叩き込まれた天使の一体が、凄まじい勢いで地上へと叩き落とされると地面に大きなクレーターを作りそのまま動かなくなる。
「くっ、ですが私達の任務は未来の魔法使いの抹殺!馬車から離れ…………なに!?」
天使の1人が馬車に攻撃しようと目を向けるが……。
そこには、すでに馬車の姿はなく。
ブブが土煙とともに投げつけた特製の煙幕が、馬車周辺の視界を完全に遮断していた!
「このまま行くデス!」「合わせます!」
【エアラッシュ!】【スピードラッシュ!】
間髪を入れず、風を纏ったレンカの素早い連撃が空中で炸裂!連携を乱された天使たちの防御陣形を力尽くで突破し、その隙を逃さずリリによる一撃を喰らわせる!
「「くっ」」
「「【ホーリーバリア】」」
ミシミシミシ……パキンっ
天使たちが張り巡らせた聖なる障壁が、極限まで高められた二人の連携の前になす術なく砕け散り。
そこへ
「これでぇぇぇーー!!」
【スペルマジック:グラビティウォーール!】
頭上から襲いかかる重力の壁!
バランスを崩した天使達に抗う術などなく、残る天使二体も悲鳴を上げながら地面へと叩きつけられた!
「「ぐっ……ああぁぁぁぁ!!」」
「くっ、しかし!せめて任務だけでも!!」
【ハイスピード!】
仲間の状況をみて作戦の破綻を悟った最後の1体が、せめて任務である魔法使いの抹殺を遂行しようと、ハイスピードを発動して煙幕の中へ一直線に突っ込んでいく!
(たとえ煙で視界が悪かろうと、馬車がこの煙幕のどこかにあることは分かっています!!煙の中では向こうからもこちらを視認できない……巻き添えにしてでも確実に殺す!!)
しかし
哀れな天使は知らなかった。
まだまた戦力には程遠く、弱いと高く括っていた魔法使いの卵たちの中に死角を完全に看破する、探知能力を得意とする者が紛れていたことを。
「今です!ブブさん」
「参る!」【アクティブスキル:クリティカルエッジ!】
物陰に隠れて指示を待っていたブブが天使の死角から必殺の一撃を決めその天使を大ダメージを負わせる。
「な……ガァァァァッ!?」
完全な不意打ちにより、クリティカルダメージを発生させた天使がそのまま崩れ落ちるように地面にひれ伏した。
「やった!僕でも役に立てた!」
「ふぅ。全く、護衛対象を戦力に入れるなど冒険者失格なんだがな……。だが、助かった」
サキ達は見事なハメ技により、複数の天使たちを瀕死に追い込む事に成功するのだった。
2翼の天使四体
HP35
一方でルクも。
四つ羽の天使であるヒイハを圧倒的な闇の重力で押し潰し、トドメをさす為絶命寸前のヒイハへと歩み寄っていた。
「天使は殺すと記憶を残すからな。……確実に『エナジードレイン』で魂ごと喰らい尽くして決めなくてはな」
しかし
「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!」
巨大な雄叫びと共に、全身の骨が折れ曲がった状態のヒイハが、執念だけで立ち上がると膨大な魔力を込めた炎の衝撃波を全方位へと放つ!
【ファイアショックウェーブ!】
「くっ!しぶとすぎるぞ!??」
【アイスウォール!】
「ハァハァハァ、お前は……キケンダ。ドンナシュダンヲ使ってでも…………コロス!!」
【ホーリードライブ!!!!】
「ゴロズゴロスゴロズゴロス」
「あれか!!くっ」
【心目】
即座に回避行動をとるルク!
ヒイハは音速を超える速度で突進——ではなく。
なぜかルクのすぐ横を弾丸のように通り抜けていった。
「…………あれ??」
拍子抜けするルクだったが、ヒイハが向かった先を目撃し、顔色を変えた。
「まずい!かわせ新魔団!!」
ヒイハが一直線に目指したのは、サキたちが追い詰めた瀕死の2翼の天使たちの元だった!
「ちょっ!あぶ!」
「暴走のやつですか!!」
間一髪で交わし距離を取る事に成功するが……。
サキたちはあまりにも凄惨で、狂気じみた光景を目撃する。
瀕死の重傷を負っていた2翼の天使たちは、暴走し言葉すら失ったヒイハが近づいてくると笑みを浮かべながら自らの胸元に手を突き立てたのだ。
「「「我ら……天使の勝利のために」」」
グサッ―――――――ッ!!!!
鈍い音とともに、自らの手で肉体を抉り開ける天使たち。
その手で引き抜かれたのは、彼女たちの命の結晶である聖心核。それを3体の天使はなんの躊躇もせずヒイハへと差し出した。
ヒイハは掲げられた3つの聖心核を貪るようにその口へと押し込み、噛み砕き、飲み込んでいく。
「ヒッ、えぐい事するデス……」
四翼の天使
聖炎武装ホーリードライブ(タイムリミット250s)
体力90魔力115力220守220速220技90聖50(聖心核3つ吸収)
HP35(-145)MP140(-90)SP150(-30)
「オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙オ゙!!」
仲間の生命すら喰らい、そして自身の命すらも燃料として燃やし尽くす禁忌の術式により。
ヒイハの体真っ赤なオーラで包まれていくと、背中の4枚の羽が圧倒的な密度の聖なる炎となって燃え上がった!
ホーリードライブが切れるまでのタイムリミットはわずか【250秒】。自らの命と引き換えに手に入れた膨大な力によるヒイハの、最後の特攻が始まろうとしていた。




