2章-31話 海からの旅立ち
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パレードから数日後。
ルク達が『この幸運を呼ぶ貝殻のネックレスをつけてると凄くいいことが起こるよ!一つたったの金貨10枚!(日本円で10万)四つセットでなんと金貨30枚でいいよ!』
と言われて買ったネックレスを首から下げウキウキしながらある人物を待っていると。
宿の扉が叩かれ待っていた人物が入ってくる。
「入るからね」
現れたのはアシュレイと後ろにはイグニスとサフィアもいる。
「来たか!やっと出発か?準備に時間をかけるとはそれで間に合わなくなったらどうするのだ!」
「……準備出来たよ、間に合わなくなるって何にだよ??」
「精霊が逃げちゃうかもしれないじゃないですか!」
「そうよ!もしいなくなってたらどうするのよ!」
「金髪はわかってないデスネ!」
「イヤイヤ、逃げないから!ダンジョンだから!…………それに本当にリリさんが契約できるかはまだ分からないよね?」
「問題ない!なぁリリ」
「ハイ!ネックレスも付けましたし完璧です」
新魔団がネックレスを見せつけるように胸を張る。
「フフッ、作ったんですか?可愛いですね」
「フッ、四つセットで金貨30枚だったのだ!完璧な値切り交渉だった。
もう金の使い方で我らの右に出るものはいない!」
「………………」
アシュレイ達は聞かなかった事にした。
世の中には知らない方が幸せな事もあるのだ!
数十分後。
ルク達は港街の正門前へとやって来ていた。
見送りにはギルド長や騎士達の姿もある
アシュレイが一応と声を掛けていたのだ。
出来る男は違うのである!誰と違うのかは秘密だが……。
「また近くまできたら顔くらい出せ」
「はい、ありがとうございます!それに沢山の調味料助かりました、少し遠いですから」
「遠いのか?…………どれくらいだ?」
「一ヶ月くらいかな」
「なんだ!近いではないか!すぐそこか」
「オババの村から隣村(薬草村)までくらいね?」
「いっぱいキノコ狩りましょうね」
「赤いキノコピリッとしてて好きデス!」
ルク達の感覚はだいぶずれていた…………。
そして不穏な話が聞こえてきたなと思うアシュレイだったが……。
ルク達が楽しそうだった為気のせいかと思ってしまった…………。
「まぁ、途中危険な場所もあるし気を付けて行こう」
「任せろ、危険な場所ほど面白いからな!ハッハッハ」
不安しかない返答だった。
「ほどほどにしてね……?」
何故だろう……まだ出発もしていないのに胃が痛い。
「行ってらっしゃーい!」
「また来てくれよ英雄様!」
「今度は屋台だけ食いに来てもいいぞー!」
「おお!その時は全店舗制覇してやろう!」
住民達から笑いが起きつつも港街ラグノートを救った英雄達は次なる冒険へと旅立っていった。
精霊が眠るというダンジョンへ。
まだ誰も知らない……この後アシュレイ何度も胃を痛める事になる事を――。
そして旅立ちから三日が経った頃
港街ラグノートを離れたアシュレイ達は街道を進んでいた。
アシュレイ達が購入した大型の馬車は快適そのものだった…………。
本来ならば、いや!普通の感覚の人ならばこれ程楽な旅はないと言うだろう。
雨風を防ぎ荷物も大量に積めるロフトも完備!
椅子も柔らかく、アシュレイが発明した揺れを軽減する魔道具まで付いている超高級馬車なのだ!
だがしかし!
冒険とは何かと聞かれたら
険しい山に先の見えぬ大森林!どこまでも続く海!!
と答える冒険中毒の人達にとって馬車旅は苦痛でしかなく……
「暇だな」
…………何故かスクワットしながらルクが言う、因みにまだ午前中である。
「暇ね〜〜」
………………街道にある簡易的なキャンプ場から出発して二時間である、サキの目はもう光を失っていた。
「暇デス」
………………まだ昼にもなっていない。
屋根の上でゴロゴロしないでくれるかな??
「体を動かしたいですね!」
最早全員限界だった!リリですら限界だった!
「いや早くない!?まだ三日目だよ!?」
「三日も経ったぞ?永遠と街道ばかり走って何が楽しいのか……」
「いや一ヶ月の旅だからね!?」
ルク達は基本的に徒歩移動、なんならたまに競争とか言って走ったりもしているのである
しかも途中で魔物を狩ったり木の実や草花を摘み、蜂に追いかけられ川へ飛び込んだり
洞窟を見つけたら探索し、崖を見つけたら登る!
常に何かしていた!
しかーーし、馬車旅は違う。
座る。移動する。終わり。それだけなのである!
「よし!………………山が呼んでいる!」
「ダメ」
「何故だ?」
「馬車の意味がなくなるから」
「…………一理あるのか?」
ルクは一応素直に座り
……三秒後。
「暇だな」
「だから早いって!」
「あの森の少し奥に角兎がいます!」
「よしっ!狩ろう!」
「絶対ダメだから!」
アシュレイは強くルクを抑えた…………
サキはサキで外を見ると…………。
「あっ」
「今度は何?……ブハッ!!」
飛んできた水の塊がアシュレイの顔に当たる
「………………わざとじゃ無いのよ?暇だから水玉作ってお手玉してたの!そしたら、角兎って言われて手元が狂っちゃったわ?」
水魔法を空間に固定し手の動きに合わせて動かすという何気に高等技術である…………。
「………………………………。」
「ハハハッ、騒がしい旅ですね」
「笑い事じゃないんだけど!?」
イグニスが笑いアシュレイの胃痛は加速していく。
だが、これでも良くなった方なのだ!
ノクトとフェイナートに出会う前だったら止められても突き進んでいたのだ!
ルク達だって成長するのである。
そして魔法書の勉強をしていたサフィアがその様子をみて苦笑する
「元気ですねぇ」
「元気すぎるんだよ……、後8日位で村についてそこで馬を預けたら徒歩で2週間以上山道を歩く事になるからそこまではゆっくりしてようよ、本当にわかっているのかな?」
アシュレイは遠い目をした。
そんなこんなで続く馬車旅にもついに限界が訪れる。
突如大鬼ごっこ大会!が始まってしまったのである!
参加メンバーは勿論新魔団4人である!
完璧に我慢ゲージが振り切れた結果だった。
「鬼ごっこするのはいいけど馬車の周りだけだからねーー!」
そして遠くに行かなければいいかとついにアシュレイも許可を出した
………………疲れていたのである。
「よーし!やるぞー。ルールは簡単だ!魔法やスキルで攻撃するのは禁止!範囲は馬車の周囲200メートル位!以上だ」
「ふっふーん!負けないわよ」
「攻撃だけ禁止で使うのはいいんですね!楽しそうです」
「速さには自信あるデス!」
「さて、折角だ!面白い魔法の使い方をみせてやる!よくみておけ!」
【スペルマジック:エアロを固めて…………新技エアステップ!!】
ルクが風の初級魔法を空中に放ち一瞬だけ固定、そこを足場として駆け出すタイミングで固定した魔法を発動!
すると空中を高速で駆け回り馬車の周りを飛び回っていく!
「ハーハッハッハ!どうだこれぞ必殺スカイ・ブースト・ダッシュだ!」
「「「ずるい!!」」」
そして始まった空中鬼ごっこ!
…………になるはずが
「………………上手く出来ない」
リリだけが上手く出来なかった……。
サキは速攻コツを掴むと宙を駆け抜け。
レンカも最初は苦戦したが属性纒装の感覚を思い出すとすぐに成功した。
だがリリにはまだ早かった。
「ハッハッハーじゃあリリが鬼スタートだな!」
容赦のないルク
「ほらー置いてくわよー!リリまだぁ〜」
煽る姉
「楽しいデス〜」
夢中で空中を駆け回るレンカ
そしてブチ切れるリリ。
「………………いい度胸ですね、いいでしょう必ず捕まえます」
【アクティブスキル:フィジカルブースト!!】
【アクティブスキル闘術:練気法[反]】
そして完全にブチギレたリリによる『本当』の鬼ごっこが始まった!
ルクは察した。
「……これヤバいやつだ」
サキも察した。
「キレてるわね!」
レンカも察した。
「……かなりキレてマス」
三人は顔を見合わせる。
そして。
「「「逃げろぉぉぉぉぉ!!!」」」
全力で散った!
次の瞬間。
ドォォォンッ!!
地面が爆発!
「うぉぉぉ!?!?」
リリが跳んだのである!
それもただの跳躍ではなく砲弾のような速度で空中のルク達へ迫っていた。
「飛べませんが!これなら跳ますね!!(怒)」
怖い!めちゃくちゃ怖い。
ルクは慌てて空中を蹴る。
【エアステップ】
【エアステップ】
【エアステップ】
連続加速。
だが。
「はぁぁぁ!!!」
ズドン!!ズドン!!ズドン!!
決して女の子が立ててはいけない音を出しながらリリが地面を蹴るたびに土煙が上がる。
「リリ速すぎるデス!!」
レンカも慌てて逃げる…………が
「捕まえました」
「ギャァァァ!?」
ガシッ。
空中で首根っこを掴まれそのまま馬車の近くに投げ飛ばされる…………
「ヒョエェェェーー??————ヘブゥゥ!」
レンカ、脱落。
「レンカぁぁぁ!?」
「裏切り者は許しません」
恐ろしい。
完全に鬼だった
…………鬼ごっこだけに。
「次はサキ姉ですね」
「ひっ」
サキが固まる。
『「ほらーリリまだぁ~?」』
さっきの自分の言葉を思い出す。
「ごめんなさいぃぃぃ!!」
全力土下座!しかも空中で。
………………それも一種の煽りなのではないだろうか?
「却下です」
「ですよねぇぇぇぇ!」
サキ全力逃走!
地上では衝撃波。
空中では悲鳴。
もはや鬼ごっこではない。
これは、狩りである。
そして。
「ひゃっぷ!???」
ついに空中でアイアンクローで捕まったサキを、リリがそのまま地上に叩きつけるように投げ飛ばす!
「受身しないと死ぬかもですね?」
そんなセリフを残しながら
「ひぃぃぃ!!」
高速で地上が迫ってくるサキ
【エエエエアクッションーー】
「ベビィぃ」
変な声と共にクッションを経由し地面に落下
…………そして、キランとリリの目が光った!——気がした!
「最後はルクですね」
ルクは冷や汗が止まらなかった………………
リリよいつの間にこんなに強くなって…………。
そして軽く現実逃避を始めた。
「誰が私だけ仲間外れにしたんでしたっけ??フフフフフフフ」
ルクは考える。
必死に言い訳を考える!!
しかし。
思い返せば最初に煽ったのも、笑っていたのも全部自分が最初だった!!
「……………………」
そして考えるのを止め捕まらなければいいに思考をシフトする!
【フィジカルブースト!】【エアステップ!】
その日ルクは人生で最も必死に逃げ回った。
なおルクだけ思いっきり投げ飛ばされた後締め技まで喰らったという………………。
因みにルクを追いかけてる途中から自然とリリもエアステップを使いこなせるようになっていた!!
怒りにより急速に成長したのでだ!
そしてアシュレイは…………。
「あ、あれって数々のプレイヤーが空を駆けることを夢見て何千何万と挑戦して結局出来なかったとされてる幻の空中駆けだよな??………………後で僕にも教えてくれないかな」
そんな事を思いながら、空いた口が塞がらないイグニスとサフィアを正気に戻すため気合いを入れるのであった。




