2章-28話 海と(元)魔王VS勇者(未来)
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「擬天使!? 敵がいるのか!?」
ルクたちが辺りを見回したその瞬間、轟音と共に風が吹き荒れ、アシュレイの身体を包み込む。
精霊憑依が完了したのだ!
「アシュレイ殿!?」
「何をしてるんですの!?」
すぐさま殺意を力に変え、風を纏ったアシュレイが一瞬で地面を蹴る。
そのまま高速でリリへと接敵し強力な一撃を放つ!
「擬天使ィィィィィ!!」
【エアスラッシュ!】
「えっ?」
キィィィィィィン!! と凄まじい金属音が響き渡り、剣と剣がぶつかり合う。
リリは反射的に剣を抜いていた。
何度も何度も繰り返してきた「パリィ」の経験が、身体を勝手に動かしたのだ。
それにより、アシュレイの斬撃を間一髪で弾き返す。
「なっ!?」
今のは精霊強化状態での攻撃。
それを無意識で弾くだなんて、もうここまでレベルが上がっているのか!?
一方、リリたちは困惑していた。
『お前たちは英雄だ!』と船内でチヤホヤされ、地上でもチヤホヤされるであろうと、つい先程まで思っていたのだ。
あまりにも急すぎる展開である。
「急になんです!?」
「何故斬りかかってくるのだ、この金髪は!」
「喋るな、擬天使!」
「擬天使?」
状況についていけない海軍本部長が頭を抱える。
「何で戦ってるんだお前ら!?」
海軍本部が間に入ろうとするが、激昂するアシュレイの耳には届かない。
ルクたちはボス戦直後で魔力も体力もSPも限界。
流石にマズいと後方に逃げようとするが、アシュレイの魔法によって退路を塞がれてしまう。
「全員下がれ! その銀髪は人間じゃない!!」
【エアカーテン!】
「何を言ってるんだこのバカは? リリは我が大切な仲間だ!」
「騙されるな!」
「いや、騙されてないが?」
「洗脳されてるだと!?」
「くそ! 何かよく分からんが、やるしか無い!」
ルクが魔短剣を抜き、構える。
(……初級魔法が一発放てるかどうか、か。SPがまだ少し残っているのが救いだな。よし……!)
「リリは防御に専念しろ! よく分からんが狙いはお主だ! サキとレンカは最後のMPを絞りきれ! いつでも魔法を放てるようにしておけ!」
「ハイっ!」
「なんなのよあの変態! 意味わかんない!」
「金髪は敵って事デスね!」
「隙は与えない!」
【フィジカルアップ!】
アシュレイが、剣を構えたルクにすぐさま接敵し、連続攻撃を繰り出す。
【フィジカルブースト!】
「ぬっ! ほいっ、とぉっ、はっ!」
それを魔短剣で弾き、体を捻り、ジャンプして上手く捌いていくルク。
素早い敵との戦闘には自信があるのだ。
リリが聖騎士に目覚めたことにより、ルクはユニークスキル『星喰い』の力で聖騎士の知識を得ていた。
スキルそのものは使えないが、その動きを模倣することで、完璧にアシュレイの攻撃を受け流していく。
「くっ! どけぇぇぇ!!」
「ハーハッハッハ! 防御に徹した我は硬いぞ!」
しかし、ルクの魔短剣が攻撃を受け流すたび、アシュレイの顔が歪む。
「くっ、攻撃を受け流される度に体力が削られている!? その短剣……魔剣か!」
「……バレたか」
正直、今のルクの状態で勝てる要素はこれくらいだった。思ったより露見するのが早かった。
「それならぁぁぁ!」
【アクティブスキル:ソニックブレード!】
アシュレイが上級スキルを使い、一気に勝負を決めにかかる。
「ぬうぅぅ!」
【アクティブスキル:ダブルエッジ】
それを中級スキルで迎え撃つルク。
だが、すでにSPも尽きかけている状態で
精霊の力で強化された上級スキルを、消耗しきった中級スキルで防げるはずもなかった。
「グゥゥ! ガハッ!」
ルクは吹き飛ばされ、地面に叩きつけられる。
(今だ! 精霊憑依にもリミットがある、ここで決める!)
「退けえぇぇぇぇ!!」
アシュレイの叫びと共に風が巻き上がり、精霊ヴァーユの力を纏った剣が天へと掲げられる。
そこへ凄まじい風の魔力が集束していく。
「オイオイオイ! 街をぶっ飛ばす気かよ! 全員伏せろぉぉー!!」
海軍本部長が叫び、海軍の面々が次々と海へとダイブする。
アシュレイの周囲に渦巻く、膨大な風の魔力。
それは精霊によって極限まで強化された、現在のアシュレイが放てる最強の魔法攻撃。
――その名も、【テンペスト・ブレイカー】
振り下ろされた剣から、巨大な嵐の鉄槌が一直線にルクたちへ襲いかかる。
(流石に不味いか、これは? だが、我が引くわけにはいかん……!)
「ぬぅ……!」
ルクはそれでも前へ出る。
膝は震え、魔力はほぼ空、体力も限界。深海ダンジョン最深部から帰還したばかりなのだ。
それでも、仲間の前に立つ。ルクの辞書に「諦める」という言葉はないのだ!
「新魔団!! 勝つぞ!!!」
すでに魔言葉を放つ魔力もなく、口から血を垂らし、体はボロボロ。
それでも、元魔王だった男は、仲間を決して見捨てることはない。
「リリ!」
「サキ!」
「レンカ!」
『うん!!』
「合わせるぞ」
四人が手を繋ぎ、体を密着させ、同時に魔力を練り上げていく。
発動したのは――いや、発動できたのは、たったの初級魔法。対する相手は、精霊の力を借りた大魔法。
しかし、四人分の想いが重なり、一つになる。
「「「「【エアシールド】」」」」
四つの魔法が融合し、新たな形を成す。
【アビスエア・シールド】
元魔王であるルクと、彼が魔王だと知ったことで闇の力に目覚めかけているサキたちが放つ、融合魔法。
禍々しい黒い風が大きな盾を作り出し、ルクたちの前に展開された。
――だが、まだ足りない。アシュレイの放つ大魔法は、それすらも貫く……はずだった。
「あ゛あ゛あ゛あ゛ーー!!」
テンペスト・ブレイカーとアビスエア・シールドが激突するその瞬間、リリが雄叫びを上げ最後の力を振り絞り
強引に大魔法の軌道をずらすべく、全力を懸ける!
「「「行け…………リリーッ!!」」」
【パリィィィ!】
港全体が激しく揺れ、海面が割れたかと思うと、空へ向かって巨大な風柱が突き上がった。
「なっ!?」
アシュレイが目を見開く。
防がれた、ボロボロのはずの相手に渾身の一撃を防がれたのだ。
だが、ルクたちももう限界だった。
ルク達は攻撃を防いだは良いが体は既に限界、そのまま倒れ込んでしまう。
「ぐっ……」
視界が霞み、身体は動かず魔力は完全に底を突いていた。
海底ダンジョン攻略にサハギンキング亜種との死闘、そして今のアシュレイ戦。
すべてを出し切ったルクたちは、そのまま意識を手放したのだった。
しかし、暴走するアシュレイはまだ剣を握り、殺意を込めて追撃の斬撃を放つ。
「そこだァァー!」
「やめろぉぉぉー!!」
ザシュ!! と血飛沫が舞う。
それでもなお、とどめを刺そうとアシュレイが踏み込んだ、その時。
「馬鹿者がァァァー!」
「え?……ガハッ」
背後から現れた筋肉質な領主の強烈な一撃により、アシュレイもまた意識を失うこととなった。
こうして、最悪な出会いは幕を閉じたのであった……。
意識を失ったルク達は領主の屋敷へと運ばれると、
念の為にと用意してあった回復薬と海軍達の必死の介抱により、
MPの使いすぎて餓死状態のような体を奇跡的に回復させる事ができ、一命を取り留めるのであった。
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……………………そして数日後。
港街ラグノート、その領主の屋敷その客室のふかふかのベットでルクは目覚めた
「………………ハッ!!肉の匂い!」
………………サキにリリ、レンカによって客室で開催された焼肉パーティの匂いによって。
好きにこの部屋は使っていいからねと言われたのだ!そりゃ好きに使うのである!
「やっと起きたわね!アナタってホント良く寝るわよね?」モグモグ
「おはようルク、早く食べよ?」パクパク
「起きたら連絡くれって筋肉の人が言ってたデスよ?」パクモグパクモグ。
「…………ゴォォォォォ!!痛い!ほっぺをつねらないで下さい!」
「ちょっと!一瞬でお肉無くなったじゃ無い!」
「腹が減ったぞ!もっと喰いたい!」
「サハギンの肉ならいっぱいくれるって言ってましたよ?」
「美味いデスか?貰いにいきまショウ!」
「いっぱいくれるのか!よし行こう!すぐ行こう」
「でも部屋の入り口に多分見張りいるわよ?
暇だから、ちょっと外に行こうとしたら用があるなら私達にって部屋に押し戻されたの!」
これはルク達の見張りではなく、善意の御付き役だったのだが。
「………………フム、わかった!」
ルク(自称パーフェクト魔王)は閃く!そして
「「「「【アクティブスキル:隠密】」」」」
ぴょんっ
「よし!サキっ!」
「任せて!」【エアクッション】
ルク達は部屋の窓から脱走した
…………因みに3階である。
「よし!肉はどこだ?」
「サハギンって言っテタから多分海デス」
「よーし!新魔団、肉に向けてシュッパーツ」
『おー!』
その後、なんだか静かになったなと部屋の扉を開けたメイドは絶句する………………
部屋には大量の煙が充満しており、肉の焼けた匂いが貴族用の豪華な来賓室を埋め尽くす
……しかもその部屋にはもう誰もいなかった。
その後ルク達を海軍、騎士団を総動員し見つけるまで3時間もかかった。
何故、海に潜って魚を取っていたのか、
そのボロボロの丸太を意味不明な技術で繋げたイカダで一体何をしていたのか
……海軍達には全く理解出来なかったと言う。




