2章-23話-2 海底ダンジョンの主 後編
そこからの戦いは地獄だった。
サハギンキングの紫色の鱗が怪しく輝き始めると
「グルルルルルル……!」
バシャッ!っとキングが水面をその巨体からは想像もできない速度で蹴り上げる。
「速っ――!」
剣士の海兵が反応する前に吹き飛ばされると、岩壁へ叩きつけられ血を吐いた。
「水位に合わせて強くなってるのか!」
ルクの叫びに全員の顔色が変わる、最悪だった。
時間が経てば経つほど敵が強くなり水位も上がる。
水位は膝下程まで上がってきており、すでに機動力も失われていた!戦場そのものが敵なのだ。
【アアアビスススス】
そして最悪の魔法が襲いかかる!
サハギンキングがスペルを唱えると紫色の液体が身体から溢れ出す。
「ぐああああっ!」
「毒だ!!くそ!ルクッ小舟だ!こんな状況じゃまともに戦えんぞ!」
海兵達は完全に戦力から外れてしまった……。
ルク達に毒は効かない、だが足場が悪すぎて動きが鈍る。
逆にサハギン達は水深が増していくほど素早さが上がっていく。
無理やりボスを倒す事ならばまだ可能ではある…………しかし、ただボスを倒すだけでは復活してしまうのだ!
確実に倒すには一定の距離を保ち此方を牽制し続ける5体のサハギンを全て倒し、また召喚される前に倒し切らなくてはならない。
徐々に追い込まれていくルク達。
水位は130センチ程にまで達した。
それでも未だに何とかなっているのはレンカの奮闘のお陰だった。
【属性纒装:風!】
一枚の羽を懸命に羽ばたかせ、魔力を足に纏い風を属性纒装で体に纏わせるとサハギンキングの攻撃の殆どを受け持っていたのである。
「ギギギィィィ!」
「負けナイ!!」【ラッシュ!】
水中から魚雷の様に突っ込んできたキングを槍の連続攻撃でいなしながらダメージを与える、しかしキングが再び水に潜るとせっかく与えたダメージも回復されてしまう。
「はぁはぁはぁっ」
レンカの体力も限界に近かった。
魔力回路を既にルクと繋いでいるとはいえHPは補えない。
「もう!当たりなさいよ!!」【アイスランス×2!】
水中に向かって船の上から魔法を打ち込むも、素早く泳ぐサハギンには当たらない
「まずいまずいまずい!おい!ルク!!何とか何ねぇか!??」
最早魔法が使えない海兵達には成す術が無いのである。
そ、そんな事言われてもな!?ど、どうする!?同時にそして確実にキングも逃げ回る兵隊サハギンも倒すって今の我にはきついぞ??
バシャァァァァァァッ!!
ルク達の様子を見てニヤリと笑いながらキングが再び海中へ潜る。
そして、今までとは比べ物にならない魔力が溢れ始めた。
「な、なんだ……?」
海兵の一人が顔を青くする、150センチにまで達した水面が震えていた。
「ギャアアアアアアアアアアッ!!」
キングが咆哮を上げる!
すると、ゴォォォォォォォォォォォォォ!!
と巨大な渦が発生し壁際の海兵達が悲鳴を上げる。
【アビビビビボボボボス】
渦はさらに巨大化する。
兵隊サハギン達もその周囲を泳ぎ始めた。
完全に詰みだった、ボス部屋を飲み込む水の毒渦がルク達に襲いかかる
「終わりだ……」
誰かが呟く、レンカも膝をついた。
海兵達は既に戦闘不能、だが。
「…………これだ!」
「え?どうするよの?」
ルクの活路を見出したかのように目に闘志がやどる。、
「全員!!最後の力を振り絞れ!我が隙を作る!!」
「え……!?」
「何言ってんの!?」
「いいからだ!!やるぞ!新魔団」
その掛け声で新魔団の目の色が変わる!
ルクがやると言った!ならば出来るのだ!
そしてルクは両手を前へ突き出すと
【ユニークスキル星喰い:カルマヴェルク】
【アブソリュートゼロ!】ストックエネルギー全解放!
「お前も力を貸せ!相棒!」
魔短剣が吸収してきたエネルギーも追加され大きな闇が水面を覆っていくと同時に覆われた部分が凍りついていく!
ルクは渦へ向かって叫んだ。
「制御権を寄越せぇぇぇ!!」
すると巨大渦が震え逆回転を始めて行く!
「ギィッ!?」
カルマヴェルク。
魔法そのものへ干渉する禁忌の能力。
しかし
干渉する魔法が巨大であればあるほど使用者にも負担が掛かっていくわけで……
ルクの魔力回路が悲鳴を上げ腕が軋み骨が割れそうになる。
それでもカルマヴェルクを発動し続ける!
もうチャンスはここしか残ってい無いとばかりに
「うおおおおおおおおおおおおおっ!!」
ドォォォォォォォン!!
そして遂に少しづつ凍りつきながら渦の制御権が反転し始める!
「ギャッ!?」
流石のキングの顔から余裕が消え必死に制御権を渡すまいと力を込めるが
単純な魔法戦でルクに勝てるわけもなく
ゴォォォォォォォォ!!
凄まじい音と共に渦が天井へ向かって伸びていき海水が吸い上げられ巻き上がりその水が巨大な槍へと形を変えていく!
「なっ……!?」
「水が!?」
「消えていく!?」
一度制御を奪ってしまえば後はあっという間だった。
百五十センチ程あった水位が消えボス部屋が完全に露出!
空中には巨大な凍りつつある水槍
ルクが叫ぶ!
「まだ足りん……サキ!氷だァァァァァァァァ!!」
サハギン達は慌てた。
泳げない、逃げられない!機動力を失った。
そしてキングも水を失いもう回復できない。
「ギィッ!?」
「ギギギッ!!」
兵隊サハギン達が必死にその場から離れようと走るが遅い。
「待ってたわよ!私の全魔力ぶつけてあげる!」
【印術:氷強化!氷強化!!氷強化ァァ!!!!】
【エターナルフロスト!】
サキがルクの作り出した水槍を氷で包み込み巨大な氷槍へと変化させる。
そして!
「いくよレンカ!」
「負けないデス!」
巨大な魔法陣が展開される
「「【スペルマジック:トルネード!】」」
リリとレンカの2人が巨大な竜巻を形成、その竜巻が超巨大な氷槍にぶつかると大きくその身を削りながら氷槍が動き出す。
「我の魔力制御を舐めるなァァァ!」
【マジックアップ!】
【合体魔法:氷河穿嵐】
渦巻く暴風の中で無数の氷槍が生成され一本一本が城壁を貫く威力を持ちながら、嵐に乗って敵へ襲い掛かる超範囲の大魔法が完成する!
氷槍吹雪が吹き荒れ逃げ場はなく
氷河そのものが牙を剥いたような
…………特大の大魔法がサハギン達を呑み込む
「ギャアアアアアアア!!」
まず兵隊サハギンにその牙が向き
一体二体、三体……四体そして五体すべての兵隊が絶命すると
最後に残った防御姿勢のキングへもその力が襲いかかる!
「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ァ゙ァ゙ァ゙」
いくら防御を固めたとしても巨大な力の前では意味をなさず、サハギンキングはなす術もなく巨大な氷槍で潰され息絶えるのであった。
兵隊サハギンは既に全滅した
――もう王の系譜は発動しない。
サハギンキング亜種
HP0
生き返り続けるボスに上がり続ける水位という、地獄のような戦いはこうして幕を閉じたのであった。
「勝ったのか……?」
海兵の誰かが呟くと他の海兵達もそれに続き
「勝ったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
歓声がダンジョン中に響き渡たり、そのまままだ凍っている地面に倒れ込んだ。
ルク達も海兵達も、もう限界だったのだ。
カルマヴェルクによる魔法制御と大魔法による膨大な魔力消費、その全てが一気に押し寄せ立つことすら不可能
「はぁ……はぁ……」
頭痛がし視界がぼやけ倒れ込むルク達、
魔眷属とはルクから魔力を貰うだけではなく、ルクへと魔力を渡す事もできる……
MPはHPと同じで0になればそれは死を意味する……
そのMPが新魔団全員、限界だったのだ。
今ならツノ兎一匹にも負けれるな!ハッハッハ!
「勝ったわね……多分 」
少し離れた場所からサキの声が聞こえ振り向くと
サキも仰向けに倒れていいた……大事な杖を持つ元気すらない様子で。
デコレーションした大事なトレントの杖はどこかへ転がっている
そして最も満身創痍な者がいた……
レンカだ
「…………」
完全に倒れていた!大の字になって。
「レンカ!?」
リリが慌ててポーションをぶちまける。
「だ、大丈夫です……
ただ……少しだけ……体が……動きません……」
完全に限界だった!最後までキングの攻撃を受け続けたのだ!最優秀賞である!
肩には爪痕脇腹には毒棘の傷が残り腕も足も震えていた
…………だがレンカは笑顔だった。
「皆さん……無事で……よかったデス……」
「お主が一番ボロボロなんだが……」
「そうデスカ……?」
「そうよ」
サキが即答するもレンカは首を傾げた。
本気で分かっていないらしい。
「ハハっ……生きてればいい!……とりあえず、寝る………………」
ルク達は思わず笑うとそのまま倒れ込む様に眠ったのであった。
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