2章-16話 はぐれエルフと魔王軍最強の戦士!①
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ルク達が人工遺跡の前に進むと、ルク達を歓迎しているかのように巨大な門が重厚な金属音を鳴らしながら開かれていく。
[マスターの魔力の波長を確認しました]
「なっ、なんじゃと!?なんで防衛システムが乗っ取られておるのじゃ??」
長い年月もの間、この封鎖遺跡アトラに封じ込まれていた意思のある魔剣は、ゆっくりとそして確実に自らの封印を破る為解析を続けていた。
その結果、古の魔導士達が侵入者を防ぐために作った防衛システムをも乗っ取り、主が迎えに来るのを待ち続けていたのだった。
ゴゴゴゴゴ……重厚な門がゆっくりと開いく。
遺跡内部は壁に埋め込まれた魔導結晶が発光し、数千年は経っているはずの遺跡とは思えないほど綺麗にだった。
さらに、カシャン、カシャンと硬質な作動音を立てて回廊の構造が変形していく。
対侵入者用の要塞モードから、最高管理者を通すための専用通路へと切り替わり、深遠なる海底神殿の最奥へと続く道が形成されていった。
「カッコいいわ……!」
「すごいデス……!」
目を輝かせるサキとレンカとは対照的に、フェイナートの冷や汗は止まらない。
「ありえん……ありえんぞ……。この遺跡は当時の最高位魔導士達が管理しておったんじゃ……乗っ取れるような代物では……」
ギギギギギ……!!
突如、神殿全体を激しい揺れが襲う。
「……っ!? 待て、封印の根本すら解除されていくじゃと!?」
フェイナートの悲鳴じみた言葉と共に、最奥の巨大な両開き扉が無機質に開かれた。
そこにあったのは、巨大な広間の中心で無数の鎖に繋がれ幾重もの魔法陣が絡みつき厳重に封印された一本の黒い魔剣。
魔剣が不気味に輝くと、溢れ出した負の魔力が巨大な広間を一瞬で満たしていく。
(……あ〜、あったなぁそういえば……)
頭を掻くルクの脳裏に、前世の記憶がうっすらと蘇っていた。
そもそもルクは前世で魔王だった頃、大魔法をポンポンポンポンと連発するタイプであり。あまり近接戦闘は行ってこなかった。
最後にその魔剣を使ったのは生前の数百年前、魔王になる前だったのだ。
無論常に持ち歩いていて、暇な時に適当に魔改造だとか言って魔力を込めてみたり。魔力回路を魔剣に組み込んでみたりと、変な改造をしまくったせいでかなり特殊な剣に進化してしまったのは間違いないのだが。
「勇者達に取られたから、転生の時ついて来れなかったのか……」
そうルクが呟くと同時に、魔剣もルクの事を解析していた。
意思のある魔剣は寂しかった、何百年もの間誰もいない無機質な空間に封印されて。
剣として使用される事は無くても主と常に共にいて、時折『我が剣は最強であるべきだ』といい魔力を込めてくれる主が好きだった。
だからこそ、主と同じ魔力波長を感知した瞬間、遺跡を強制浮上させて迎え入れたのだ。
だが…………。
魔剣が捕らえたのは魔族の覇者ではなく、どこにでもいる人間の小さな少年だった。
莫大な魔力の兆候はある。だが、生前の魔王が放っていた圧倒的な絶望の覇気には程遠い。
魔剣は失望した……偽物かと。
そしてかつての主と同じ魔力波長をしている者を始末するため、魔剣は防衛システムの機能を使い一体の剣士を生み出していく。
それは魔剣が思い描く最も強き剣士、魔王国四天王にして魔王国最強の戦士——その名を『黒鉄のヴァルガ』といった。
——偽物を許してはならない。
——主人を語る者の存在を許すわけにはいかない!
強い意志の元、魔剣から出てきた黒い魔力が集まり漆黒の鎧を着たフルプレートの戦士がその姿を表した。
片手には魔剣が姿を変えその者が最も使用率の高かった大剣を装備し使用感を確かめる様に剣を振るう。
「黒鉄のヴァルガじゃと……?大戦争時代、幾つもの騎士団を単独で潰した化け物じゃないか……!」
だが、ルク達は未だなにもしていないにも関わらず次の瞬間には。
バキッっとヴァルガの鎧に亀裂がはいった。
『魔力不足による再現率低下』『魂情報復元失敗』
機械的なシステム音声が虚空に響き、騎士の身体にノイズが走る。
数千年の封印により、魔剣自体の蓄積魔力は大きく減衰していたのだ。
防衛システムの補助があっても、魔王国最強の戦士を完全に再現するには圧倒的に魔力が足りない。
魂なきヴァルガは真の力を発揮できず、ステータスは大幅に弱体化し、生前の恐ろしいスキルや魔法も封印されていた。
しかし、それでも。今のルクたちにとっては、十分に致命的な脅威なのは間違いない。
並外れた魔法耐性は健在であり、あらゆる魔法ダメージを半減させ、一切の状態異常を寄せ付けない肉体の城塞。そのヴァルガが、大剣をルクたちへと向けた。
「ヴァルガはまずいな!!??非常に不味いぞ!」
「ちょっと!何が不味いのよっ」
「あいつ魔法耐性が尋常じゃないないのだ!我が大魔法を一発なら喰らっても耐えて我に拳骨くれてたほどだからな!」
「しかも怒りん坊なのだ!我がヴァルガの分の肉をすこーしつまみ食いしただけで決闘だとかぬかすのだ!」
(……それはルクが悪いんじゃないかしら?)
サキたちは心の中で盛大に突っ込んだ。
そして同時に、全員の頭の中に確信がよぎる。
――やっぱりこの人、おとぎ話の「本物の魔王」だったんだ……と。
ルクの使う規格外の魔法を見れば、長く一緒にいる彼女たちが気づかないはずもなかった。
その間にも、魔剣による解析と準備が完了する。
いまの弱体化したヴァルガであっても、目の前の侵入者たちを全滅させられると判断した魔剣は、即座に攻撃指令を下したのだ!
ドゴォォォォンッ!!
床の石畳を砕き割り、黒鉄の騎士が超速度で突進を開始する。
「来るデス!!」
レンカの叫びと共に、ヴァルガは一瞬で少女たちの至近距離へと到達していた。




