2章-20話 海での楽しい労働!
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ルク達の強制労働が始まって数日後。
海軍本部はとても困惑していた。
ルク達へ最初に与えられた仕事。
それは毎年港へ流れ着き、山のように積み上がる海魔獣のウロコや抜け殻の処理だった。
この港は入り江の形が特殊で、一部の浜辺が湾曲しているせいで潮の流れが滞留しやすい。
そのため沖で海魔獣同士が争った後や巨大海魔獣の脱皮等で流れ出たウロコや甲殻片が、毎年決まった時期になると大量に浜へ打ち上げられてしまうのだ。
確かに最初の頃は素材の宝庫だ!と喜んだりもした……。
しかし余りにも量が多い為使う量よりも流れ着く量の方が何倍も多いのだ……。
巨大な海蛇型魔獣や甲殻種の死骸から剥がれ落ちるウロコは、放置すれば悪臭を放ち病気の原因にもなる。
実は港街ラグノートではかなり深刻な問題となっていたのだ!
もうこの入り江に降り立つ事は一生出来ないだろうと言われていた程、一部の入江に溜まっていくのである。
しかも一つ一つのウロコが巨大で重い為、一つのウロコを持つのに数人がかり、それを遠くにある埋立地に持って行き埋めていく。
その重労働をルク達は
「フッ、全て食ってしまってもかまわんのだろう?」
「「………………え?この子何を言って…………」」
ゴォォォォォォ……。
ルクのユニークスキル【星喰い】が発動。
山のように積まれていたウロコが次々と飲み込まれていく。
「おお!意外と美味いぞ!?」
さらに。
「ルク、私達はどうしましょう?」
「よしっマイダンジョンに突っ込め!いつか使えるかもしれん!」
【エアスマッシュ!!】
バッコーーン!と空気弾によって積み重なったウロコの山が崩れだすと、そのまま大量のウロコが別空間へ吸い込まれていく。
結果!なんと数日で終了である!
いや……数日もかかる程の量だったと言うべきだろうか?
住民達も海兵達も目を疑った……。
一体何をどうしたらあの山が消えてなくなるのか?
それは後にラグノート難海(難解)事件として後世に語られていくのであった。
さらにその数日後。
「……で?なんで海賊討伐まで成功してんだ?」
本部長は頭を抱えていた。
ルク達に言い渡した次の仕事……。
本来は、なんか仕事無くなっちゃったし小舟でも貸し出して海辺で簡単な見回りでもさせておこう
程度のつもりだった…………のだが。
そこには完全に海賊狩りを楽しんでいるルク達がいた。
ルク達に乗り物を渡しては行けないのだ…………
例え小舟でも。
ルク達が小舟を渡されてから僅か半日……
すでに海岸から離れグングン沖に出ていくルク達!
なぜ動力のついてない小舟でそんなスピードが出せるのか!
そしてどうしてそんなに海賊をピンポイントで見つけられるのか!
完全に海賊達は自信を失っていた
「海賊船発見だ!いくぞ野郎ども!」
【アイスウォール】
ルクが海賊達の逃げ場を無くすと
「突撃よー!!」
【エアハンマー】
サキが船を加速させ
「逃しまセン!…………このボクの前を走るなァァァー」
【エアコントロール】
レンカが船を制御し………………いや爆走させ
「沈めます!」
【ウィンドアロー】
リリが海賊の船に穴を開ける!
完璧な連携だった…………
そして始まってしまった海賊狩り!
しかも強い、凄く強い。
「た、助けてくれぇぇ!!」
「怪物だァァァ!!」
「海軍より怖ぇぇぇ!!」
結果!約半年で周辺海域の海賊被害が激減。
海軍内では。
『もうアイツらだけで良くない?』
という禁句が生まれ始めていた。
その他にも様々な事件があった
冬になれば勝手に冬休みだ!とか言って完全に仕事放棄して遊び
小さい板を足に付けで海上を風魔法を使い疾走する姿は住民からも心配の声とあの魔道具を売ってくれという催促も来た。
…………あれは魔道具じゃないんだ、本当なんだ!
あの黒い獣人は何で乗り物に乗ると人が変わるんだ……いつも人懐っこいのに。
その後も色々とあった………………。
………………本当に色々あった。
色々ありすぎた1年間もようやく最後の夜を迎える!
あっという間?の1年だった。
海軍達もルク達の功績が余りにも大きすぎて、港街ラグノート海岸で大規模なお別れ会が開催された!
罪人扱いなどとっくの昔にやめていた海軍である。
「一年間ご苦労だった!!」
「「「「おおーー!!」」」」
そこには海軍だけでなく何故か港中の人々が集まっていいた!この一年で誰もがルク達を知っている位まで知名度が上がったのだ!
…………決して良いことばかりでは無いのだが
魔王に大事なのは知名度なのである!これでいいのだ!
「いやぁ、最初はどうなる事かと思ったが……なんか上手く行ったな?」
本部長が酒を飲みながら笑う。
「で?海軍に入る気は本当にねぇのか?歓迎するぞ?」
「ウム!我らは新魔団だからな!最強でなくてはならん」
「そうね!せっかくなら最強目指そうって決めたものね」
「はいっ!みんなずっと一緒にいる為に」
「ボクたちは最強になるんデス!」
「そうか……寂しくなるな」
もう完全に港街ラグノートの海軍はルク達を認めていたのである。
騒がしい笑い声が港へ響く。
ルク達の一年間の強制労働はこうして終わりを迎えたのであった………………。
しかし
そんな簡単にルク達の旅がこんな簡単に終わるはずもなく…………。
宴の熱気がまだ港に残っていた頃。
ゴオオオオオオオン!!
沖合の見張り台から、慌ただしく鐘が鳴り響いた。
「緊急報告!!」
海兵が転がるように駆け込んでくる。
「西側漁場付近で漁船が襲撃されました!! 生存者の証言では……魚人型魔物の群れが現れたと!!」
「魚人型……?」
「サハギンか!?」
唐突に古参の海兵達の顔色が変わっていく。
サハギンとは群れを作り、武器を扱う二足歩行で陸を歩き海中で異常な連携を見せる厄介な魔物なのである。
単体ではそこまで強くない、だが──。
「繁殖したサハギンは洒落にならねぇぞ……」
「あぁアイツらは巣を作る、放っておくと海底洞窟を丸ごと要塞に変えやがるんだ」
さらに別の海兵が血相を変えて駆け込んでくる。
「報告!! 周辺海域でサハギンの目撃数が急増しています!!」
「まずいな……」
本部長が険しい顔をする。
「恐らく海底のどこかでダンジョンが発生した…… いや、既に存在していたダンジョンが“モンスターパレードを起こした可能性がある…………
お前ら!早く確認しろ!未確認ダンジョンだった場合洒落にならん!終わるぞ!!」
その直後!暗い海の底で、青白い光が揺らめいた。
「未確認海底空洞を確認!!」
「違います!! あれは空洞じゃない!!」
観測用魔道具を覗いていた海兵が絶叫する。
「ダンジョンです!! 海底にダンジョンが発生しています!!大海魔獣の大量のウロコが持つ魔力の残滓で今まで発見できていなかった可能性があります!」
その言葉に空気が凍る
海底ダンジョンは最悪だ。
侵入困難地形把握不可能、さらに水中戦というだけで戦力が激減する。
放置すればサハギンは増殖し続け防衛すらまともに出来ずに蹂躙される。
「本来なら王都へ救援要請する案件なんだが……」
普通ならばダンジョンを発見次第王国への支援要請、近隣騎士団との連携、冒険者ギルドへの緊急招集。
数ヶ月単位で準備する災害級案件なのだ。
だが、今この瞬間も魔物は港へ近づいている。
間に合わない、気づくのが遅すぎた。
「しかも海底ダンジョンに辿り着く前に、水中でサハギン共の相手をしなきゃならん……並の冒険者じゃ逆に食い殺されるだけだ」
重苦しい沈黙……………………………
その時だった。
「フッ、得意分野だ!」
ルクが勢いよく立ち上がり新魔団もそれに続く!
「つまりサハギンダンジョンを潰せば良いと言うことだろぉ?任せろ!ダンジョンは得意分野だハーハッハッハ!」
「何だか久々のダンジョンね!」
「海底ダンジョンってロマンありますね!」
「焼いたら美味そうデス!」
「お前らは少し危機感を持て!!」
本部長のツッコミが響いた…………だが海兵達は妙に安心した顔をしていた。
「……まあ、アイツらなら」
「海賊共を半泣きで海に飛び込ませた連中だからな……」
などという失礼な声がヒソヒソと聞こえてくる。
「フーーッ……分かった。ルク、いや新魔団へ正式依頼だ」
「内容は海底ダンジョンの調査、及びダンジョン水晶の破壊だ!報酬はたんまりくれてやる!!」
「「「「おおーー!!」」」」
「ただし!! 今回は海軍との合同任務だ!! 勝手に突っ込むなよ!!?」
「ウム!連携なら任せろ得意分野だ!ハーハッハッハ!」
…………全く任せられる気がしなかった。
深海
そこにある海底ダンジョンからは無数に出てくるサハギン達がギチギチギチ…………と不気味な鳴き声を海の底から響かせていた。




