2章-10話 天使の暗躍と斥候のノクト
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(俺は死ぬのか…………?へっバカな事したぜ、少し考えたらこんな場所に子供がいるはずないのにな…………。)
少し前なら
……ルク達に出会う前なら子供だろうが絶対見捨てていた自信がある……。
でも、体が勝手に動いちまったんだよな。
はぁぁ、死ぬの怖ぇな……。
まだやりたいことがあった。行きたい場所も、食べたいものもあった。
悔しい。クソほど悔しい。
楽しかったなぁ……。
パチパチと爆ぜる焚き火を囲んで食べた、あの夕飯。
硬い肉と名前も知らない野草をぶち込んだだけの、野性味溢れる臭いスープ。
『美味い美味い』と笑いながらそれを突っついているあいつらを見て、俺は何度突っ込んだ事か……。
道を歩けば、脇道に逸れようとするルク達を止めるたびに何やってんだろう俺って思った。
くだらない事で笑って、怒鳴って、また笑って。
ああ、レンカは凄く良くしてくれてたな……先輩になったデスとか言ってよ…………。
(ほんと……バカな奴らだった……)
かつて組んでいたパーティーとは、なにもかもが違っていた。
前の奴らは俺を裏切った。足が速いからという理由だけで、ピンチになれば囮として使い捨てられ、必死の思いで生き延びて戻っても当然だと言わんばかりの冷たい視線。戦闘スキルが乏しいからと報酬を跳ね跳び、最後は結局喧嘩別れ。
長年連れ添った仲間でさえそうだった。だから俺はもう誰も信じないと心に決めていた。信じるだけ無駄だと。
でも……斥候職のソロはきつくてさ、だから利用するつもりだったんだ。
たまたま出会ったあいつらを……
アイツらが狩りをしてるとこを見て思ったんだよな
なんか昔のパーティーに
楽しかった頃の俺たちに似てるなって……。
だから簡単に騙せると思った……、
少し信用させて隙を見て荷物を奪って逃げるつもりだった。
なのにさ…………。
たった一週間、共に過ごしただけなのに。
あいつらと過ごした時間は、俺のこれまでの人生の中で、間違いなく一番あたたかかった。
「もっと……一緒に……いたかったな……」
瞼が重い、意識が沈んでいく。
ああ、なんか…………もう…………眠いや。
………………………………
……………………
…………。
「クッ、ノクト……我が不甲斐ないばかりに…………。」
——スタスタ……。バチィィン!!
「……イッターーー!!!おい!何をするリリ!なんで我が殴られる(泣)」
「ルクは適当に薬草使いすぎっ、死にかけてるのに鎮静効果のある薬草ぶちまけたら永遠に眠っちゃうのっ!ここは私が魔法でやるからMP頂戴!」
「………………は、はい。すいません」
【後は任せました】
ペシペシペシペシ
「生きてる〜?レンカ〜」
ペシペシペシペシ
「サキ姉?何で瀕死で倒れてるレンカを叩くの?もうサキ姉とルクは向こう行ってて!」
「「…………すいません」」
……戦い以外はとても頼りないリーダーと副リーダーであった。
————————
戦いが終わり半日ほどが経った頃。
村出身の商人タスロウや冒険者とも合流し擬天使の討伐を報告。
「優しい夫婦だったのによ…………」
「ありがとよ……人を襲う化け物なんてアイツらには似合わねえ……。」
としんみりしている冒険者達に火葬と、ついでにご飯の炊き出しを任せ。
体を休める為にルク達は空き家でダラダラしていた。
「あ〜〜」ゴロゴロ
「何よ、ゴロゴロして! 暇なら手伝いなさいよ、薬草の仕分け大変なのよ! なんでこんなに種類があるのよ!」
「口ではなく手を動かしてください、サキ姉!あっ、その薬草はポーションの原料です!『ただの草エリア』に混ぜないでください!」
「わふぅ〜」ゴロゴロ〜
「納得いかないわ! なんでルクとレンカはゴロゴロしてるのに、私だけこんなつまらない作業しなきゃいけないのよ!」
「ルクは魔力枯渇気味で、レンカはまだ体力が戻っていません!そもそもルクの魔力をダメ押しで使わせたサキ姉も悪いんですからね!」
「だって……爆発魔法の威力が強すぎておっきなクレーター出来ちゃったんだもん!元に戻さないと怒られるかもしれないじゃない!」
「わしゃわしゃわしゃ〜」
「ワフわふぅ〜」ゴロゴロ〜
「「(怒)(怒)」」
「……イテテテ。ちょっ、煩いんだが? 俺、重傷人なんだが? 静かに寝かせてくんね?」
「「うるさい!!」」
「す、すいません……」
理不尽な八つ当たりを食らい、思わず縮こまる。ノクトは一ミリも悪くないのである。
「だいたいそんなの知らないわよっ! 自分から敵に突っ込むノクトが悪いと思うの!」
「っ〜〜!ち、違う!あれは……本当に……その……はい」
「『逃げ道は任せろ』とか言って後方待機していた癖に、一番の重症でしたからね。いい気味では?」
「あの、リリさんって結構言い方キツいですよね?……いえ、何でもありません、はい」
6歳年下にも頭が上がらないノクトであった。
「おーい飯できたぞー」
冒険者が野菜と肉たっぷりの鍋を持って入ってくると、ノクト以外一目散にご飯に駆け寄る。
「……………………あの、俺動けないんですけど」
そしてご飯に負けた自分に涙するノクトであった。
「いやー!本当に助かったぜ!なんたって擬天使?が3体もいたんだろ?正直一体ですら無謀だと思ってたんだ!まっ、それでも戦ってたんだろうがなガハハ」
「ハッハッハ!天使は中々手強いからな我らがいて良かったな!もっと褒めていいんだぞ?ハッハッハー!」
「それで?ルク君達はいつ頃出発するんですか?」
「ん?ん〜特に決めてないな!ノクトの怪我の具合を見てだな、無理をするのはよくないからな!」
「……………………なぁ、ちょっと話があるんだがいいか?」
「何よ?そんな元気なくなっちゃって?お腹すいてたのよ、放っておいたからって拗ねちゃダメよ」
「…………いや、それは良いんだ、いやよく無かったけど違うんだ!……そのよ?俺はここで抜けようと思う。俺からパーティーに入りたいって言ったのに悪い……」
「怪我の事なら気にする事はないぞ?どのみち我らも疲れたからな、ゆっくりしてから出発するつもりだし……」
「違うんだ!」
ついルクの言葉を遮り熱がこもる。
「……1から鍛え直そうと思ってさ。ここなら今、人手不足で仕事もあるだろうし。それに……お前らと一緒に旅をしてたらさ。自分の弱さにムカついたというか、嫌になったというか……」
ノクトは短い旅の間だったが、ルクたちのことを心底気に入っていた。
そして、気に入っているからこそ弱い自分のまま彼らの隣に並んでいることが、どうしても許せなくなっていたのだ。
「フム……まぁどのみち数日は此処に留まる!もし気が変わったらいつでも言うと良いぞ!ノクトは中々面白い考え方をするしな!」
「いや、俺が面白いんじゃなくてお前らが珍しいんだが ……わかった。後数日は頼む!どのみちまだまともに動けないしな」
「ガハハ!青春だなぁ!ノクトと言ったか?もし此処に留まるんなら俺らのパーティーにこい!斥候だろ?丁度募集してたんだ、弱いなりの戦い方教えてやるよ」
「本当か!助かるよ」
「ああ!それにもっと強くなりたいなら一応ツテもある、高ランク冒険者に俺達から鍛えてやって欲しいやつがいると言ってみよう…………無下にはしないはずだ」
「堂々と引き抜きを見たわ?」
「そうですね、ここは決闘でしたっけ?それで決めるのも良いんじゃないでしょうか?」
「決闘デスか?やってみていいデスか?」
「待て待て待て?冗談だよな?嬢ちゃん達………………な?」
「「「フフフッ」」」
サキ達によるノクトへのいつでも戻ってきても良いぞと言う意味を込めての揶揄いだったのだが………………。
結局面白半分で決闘はしたのであった。
————————
それから、汗と泥にまみれて働いた一週間。
住人がいなくなり手入れの途絶えていた畑を耕し、溜め池に水を溜め、壊れた家屋を補強した。するとチラホラと、元村人だった人々が帰ってくるようになった。
特にサキは、率先して壊れた家の修理にを頑張ったと言う。
「よいしょっと〜、あらよっと〜!ふぅ、今日もいい天気だな、リリさんや」
「そうですね、ルクさんや」
「……なに年寄りみたいな会話してんのよ。もう畑は飽きたわ!そろそろ出発しても良いんじゃないかしら?レンカも、ノクトに教えてもらった探索術のスキル、もう使いこなせるようになったんでしょ?」
「はいデス! スキルを使うと何となく頭の中に近くにいる気配が表示されるんデス。中々面白いデス!」
「フム。まぁ此処まで待って一緒に来ないなら仕方ない! そろそろ行くか」
「何よ、出会った頃はあんなに『連れて行ってくれ』って言ってた癖に、意気地なしねっ! 強引に連れて行く?」
「オイオイオイ、なに物騒な話してんだよ……。俺はココで鍛え直すって決めたんだ。……ありがとな」
「ハッハッハまぁまた会えるさ!次会う時強くなってたら今度は我から誘ってやる、励めよ?」
「ハハハッそうだな、頑張ってみるさ。それより渡した地図は確認したんだろうな?
出来る限り分かりやすいように書いたつもりだが……良いか?真っ直ぐ街道を進むんだぞ?まずはそこからだ!」
「ガハハ!そんなに注意しなくてもそんな事位わかるだろ?
あぁルク達、今日はいい肉が取れてな!住民も少しづつ戻ってきたし肉パーティをしようと思うんだ!
今日は肉食って泊まって出発は明日にしとけ」
「おお!肉か、それなら出発は明日にしよう!いっぱい食っておかなきゃな」
翌朝
「いいか?まずこの街道をまっーすぐ道なりに行ってだな?道なりっわかるか?寄り道をしないで開けた道の通りに進むんだ。それで分かれ道があるからそこを左に曲がって…………」
「はいはいはいはい、わかったわかった、勿論全て完璧に分かっておる!ノクトは心配症だなハッハッハ」
「海楽しみねっ!」
「いっぱい魚取りましょう!」
「魔導銃ありがとうございマス、ボクに使えるように土の魔石に交換までして貰って……大事にしマス」
……果たしてルクたちは、無事に港街ラグノートへたどり着くことができるのか!?
頼れる(?)斥候ノクトと別れ、我が道を行く『新魔団』。彼らは今日も、ノクトの想像を遙かに絶する大冒険を繰り広げていくのであった
次回からアシュレイ編が少し続きます。




