2章-15話 はぐれエルフのお願い事
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静かな森の中で魔法の音とフェイナートの声が響き渡る
「ふぇっふぇっふぇっ……もっとイメージを固めてから魔法を使いなさい。
速く撃とうと思えば速くなる、広げようと思えば広がる魔法とはそういうものじゃて」
フェイナートはレンカを孫を見るような目で笑いかける。
「ほれ、もう一度。今度は速く小さくその分、強く撃つイメージじゃ」
サキとレンカは、老婆――いや、エルフの魔導師フェイナートから魔法を教わっていた。
これまでもルクからは
『もっとイメージだ!』
『こう、ドカーンッ!って感じだ!』
などという大雑把な説明は受けていたのだがこうしてちゃんと教わる本物の魔法講習は初めてだった。
「フェイ婆の教え方はわかりやすいデス!これならボクでも出来そうな気がしマス!」
「ふぇっふぇ、そうかいそうかい。それは良かった
属性纒装なんて珍しいもん使うんだろう?
あれは魔を理解して初めてまともに使う事が出来るさね、まずは基本からだよ。ふぇっふぇ」
レンカ達はフェイナート指導のもとみるみる成長していった!……まるでルクの教えとは何だったのかと言いたくなるように……。
レンカが土弾を放つと前のように失敗することもなく、鋭く狙った場所へと一直線に飛ぶ。
「やったデス!出来たデス」
尻尾を振りながら喜ぶレンカと
「魔法って曲げられるのね!? これなら壁に隠れた敵も狙えるじゃない!」
サキは嬉しそうに空中で火球を弧を描くように動かしてみせた……。
かなり難しいことを教えたつもりだったのだがサキの魔法に関しての才能はフェイナートですら驚愕したほどだった。
「上手くなれば追尾も出来る。空中で止めることも可能じゃ。
魔法とは放って終わりではないからねぇ、ふぇっふぇっふぇ」
激戦の大戦争時代を生き抜いてきたフェイナートの言葉には重みがあった。
ただ撃つだけではない。
威力や速度、形状も軌道に滞空だって同じ魔法でも、使い方次第で全く別物になるのだ。
因みに現代では忘れ去られた技術だった。
サキとレンカは目を輝かせながら次々と新しい技術を吸収していった。
確かにルクが使う魔法と自分達の魔法は何か違う気がすると思っていたのだ。
そして魔法講習も一段落した頃。
「おーい! 肉だぞぉぉーー!!」
ルクとリリが大きな魔物を引きずりながらパトロールという名の狩り休憩から戻ってきていた。
魔法の練習の合間に狩りをする=狩り休憩なのである!
ルク達にとって狩りとは遊びのような物なのだ
結界が壊れたことで以前は近寄れなかった魔物達が家の周囲にも現れるようになっていた為順番でルク達が狩りをして間引いていたともいう。
「すまんな。知らなかったとはいえ、結界を壊してしまって」
「ふぁっふぁっふぁ、良いさね良いさね。
どうせ、わたしゃが死ねばここも終わりじゃ。
誰も管理する者などおらん」
フェイナートは気にした様子もなく笑いその声はとても穏やかだった。
「それに――最後に海へ連れて行ってくれるんじゃろう?」
「もちろんだ! 約束だからな!ハーハッハッハ」
こうしてルク達は、フェイナートから家や畑の全てを譲り受ける代わりに彼女の最後の願いを叶える約束を交わしていた。
最期に、海を見たい。
ただそれだけの、小さな願いを。
遠い昔、勇者を見取ったあの海で自分も終わりたいという願いを。
その日の夕暮れ。
今日の食卓にも焼きたての魔物肉と大量の野菜が並んでいた。
「うむ! 今日の肉は柔らかいな!何故婆が作るとこんなに美味いんだ?昨日の肉は…………いや?昨日もちゃんと美味かったぞ??うん」
「このスープ、美味しいデス〜……」
「………………まぁいいでしょう、それよりもサキ姉!ちょっと食べ過ぎです、私の分が少なくなります」
「いいじゃない?美味しい!まだいっぱいあるじゃない?おかわり」
「ふぇっふぇっふぇ、まだいっぱいあるよぉ」
遠い昔、勇者達と旅をしていた頃もきっとこんな風に笑っていた気がする。
……悪くない最後じゃ。
そう思いながら、老婆は静かにスープを口へ運ぶのだった。
「ふと思ったんじゃが、ルクって名前、伝説の大魔」
…………いやよそう、そんな訳無いだろうに歳をとると頭も硬くなる。
「ん?どうした婆?」
「ふぇっふぇっ、肉うまいかの?」
「ハーハッハッハうむ!美味い!」
ルク達がフェイナートの元に訪れてから4日目の朝。
野菜や小麦を育てていた畑も、ログハウスの中も、その何もかもが無くなり殺風景となった場所を目を細めて見ながらゆっくりと頷くフェイナートであった。
因みにすべてルクが貰った!
貰えるものは貰うのだ!!
「まさか最後にこんないい子らに出会えてあたしゃ幸せもんだよ。ふぇっふぇっ」
宙に浮かぶロッキングチェアに座り少し寂しそうな顔を浮かべる。そして
「その魔弓、気が向いたらでえぇからの?ふぇっふぇ」
「ウム!世界樹のあるエルフの里に立ち寄ったら返せばいいのだな!任せろ」
「若い頃ちょこっと秘密で拝借して借りたままだったからねぇ、これで心残りもない、ふぇっふぇ」
…………それを人は窃盗と呼ぶのだが………………細かい事は気にしたら負けなのだ。
そして誰も歩き出す事はなく沈黙が流れる………………。
「「「「海ってどっちに行けば良いんだ?」」」」
「………………お前達、海を目指してるって言ってなかったかい?
それにその手に持った棒を倒した先を見ても山を登っていくだけだよ??」
フェイナートは少し不安になった。
伝説のアイテム棒倒し君とはいったい………………。
結局、ここ周辺をパッシブスキル:マッピングで脳内に記憶しているフェイナート指揮の元、海へと向かい歩き出す。
「ここら辺をマッピングしたのも随分と前だからねぇ、地形が変わってても文句言うんじゃ無いよ?ふぇっふぇ」
「無論だとも!それにしてもその空飛ぶ椅子いいな、手作りか?」
「まぁねぇ〜、錬金術の応用と付与魔法の応用を組み合わせた物さふぇっふぇっ、錬金術のスキルなら教えただろう?今度挑戦してみるといい」
「!少し先に獣の気配デス……多分魔熊デス」
探索術で警戒していたレンカが気配を感じ取ると共に走り出す。
「援護は任せて!」
【ウィンドアロー×4】
サキが放った風の矢が前方のランカを避けるように曲がり魔熊に激突する。
「やぁぁぁ!」【エアハンマー】
「カラノ」【ラッシュスラストォ】
自身の足元に風の圧縮弾を放ち爆発的に速度を上げ、少し怯んでる魔熊に接敵し連続突きを放ち魔熊を倒す。
「ハッハッハ!少しは魔について分かってきたじゃないか!ハーハッハッハ!」
「なんでお前さんが自慢げなのかねぇ?教えるならもっとちゃんと教えときな、あの子ら才能あるよ!ふぇっふぇ」
「ほれっ、またそんな返り血まみれにしてっこっちおいで!」【クリーン】
「わふぅぅ、綺麗になったデス」
「全く、少しは気づかいな!女の子なんだから」
フェイナートは孫を持つお婆ちゃんはこんな感じなんだろうなと思いつつ満更でも無い様子で面倒をみるのであった。
そうして――。
真っ直ぐ海を目指して半日ほど歩き続けること
深い森をを抜けルク達の視界が一気に開けた。
そこには切り立った崖とどこまでも広がる青い海。
「ついたな!我が海へ!」
「大きい……」
「凄い……本当に端っこが見えないわ……!」
「水がいっぱいデス……!」
少女達はそれぞれ感想を漏らしながら、ただ真っ直ぐ海を見つめた!
川とも湖とも違う果ての見えない巨大な水の世界に、目を奪われていた。
そんな中
「ありゃまぁ……」
ぽつりと呟き、フェイナートが崖下を覗きこむと……
「昔はここ、なだらかな坂道だったんだがねぇ長い年月で崩れたのか……すっかり崖になっとるわい。ふぇっふぇっふぇ」
「流石にこの高さは……少し回り道かねぇ」
ふっ、ついに我の出番がきたようだな!我が魔の力見せつけてくれようハーハッハッハ!
「任せろ婆、崖など我が作り替えてくれる!」
【スペルマジック:地殻魔導・石段創成】
誰の了解も取らずルクが地殻変動魔法という頭のおかしい魔法を発動させると剃り立つ大きな崖が姿を変えていき、海辺へと続く階段が出来上がる。
ちゃんとが崖が崩れないように剃りたった部分を削りなだらかな斜面に変えるというアフターケア付きである。
空いた口が塞がらない元Sランク冒険者であり歴戦の大魔導士と呼ばれたフェイナートとはしゃぐサキ、そして海へと駆け出すリリとレンカであった。
「まさか土の大魔法を見れるなんてねぇ……地殻変動ってオマエさん………………。
まぁいいさね、すまんが階段を降りるの手伝ってくれんかね?ここまで長い階段だとこの椅子じゃあ少し不安でね」
海辺へと降りると自分の足で立ち上がり海の水を手で掬い上げるフェイナート
「もうすぐでわたしゃも行くからね勇者様……。」
フェイナートが何かを言いかけたその時!
ゴゴゴゴゴゴ……!!と突然海が大きく揺れる。
「な、なによ今の!?」
「地震デス!?」
そして波が大きな揺れと共に海面が大きく盛り上がっていき巨大な石造りの建造物がゆっくりと姿を現した。
『…………え?なにこのかっこいい建物……。』
ルク達はあまりにも衝撃的なカッコ良さに完全に心を奪われる!
目の前に巨大遺跡が海から現れるのだ!誰だって見惚れるだろう。
「馬鹿な……なぜ封鎖遺跡アトラが起動した?封印は!?……」
「な、何よそれ!?」
「昔魔王を打ち倒した勇者が、その魔王が持っていた武器を封印する為に当時の魔法使いや錬金術師がその生涯をかけて作った封印遺跡じゃ。」
「武器を封印ってなんとも物騒だな?強い武器なら使えば良かっただろうに!?ハッハッハ!我なら使うぞ?」
「その武器は成長するんじゃよ……
敵を倒すたびにその血を吸い強くなる。
しかも生涯をかけて使い手を守る意思のある剣らしくての、魔王にしか使えんようになっとるんじゃ。」
…………どっかで聞いた事があるな?どこだっけ?
すっかり生前の事など忘れているルクであった。
「すまんが少し手伝ってもらうぞ?ふぇっふぇっ、もしかしたら剣が何かに反応して封印の一部が解かれたのかもしれん………………」
その時ふとフェイナートは地殻変動大魔法の事が頭りよぎる
「…………………………」
「ん?なんだそんなに我を見つめて?あと数百年若返ってからにしてくれ!ハッハッハ」
「…………まぁいいさね、とにかくまた封印出来るようならしてしまいたい。頼むさね」
「ウム!人工遺跡とは中々面白そうだ!冒険者である我らに任せよハッハッハ!」




