2章-9.5話 天使の暗躍とVS擬天使②
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「ガフッ………………え?」
ノクトの口から、掠れた声が漏れた。
腹部に突き刺さった包丁を見下ろし、それからゆっくりと少女へ視線を向ける。
目の前にいるのは、つい先ほどまで泣きながら「ママ」と呟いていた普通の少女……そう、思っていた。
「なっ……ノクト……!」
異変に気づいたルクが叫ぶ……が!その一瞬の動揺が致命的だった。
「グオオオオオオオ!!」
目の前で、肥大化の擬天使が大きく身体を揺らす。
「しまっっ!?」
ドゴォォォン!!
ルクが反応するより早く、巨体がそのまま地面へ倒れ込むと避けることもできず、ルクは肥大化した身体の下敷きとなった。
「ガッ……ハッ……!」
「ルクっ!ノクト!!何してんのよお前ー!!」
怒りに任せ、サキは氷のハンマーを振り上げるも、肥大化の擬天使は倒れながらも腕を振り回しサキを薙ぎ払う。
「キャァァ」
その間にも、少女は腹部から血を流すノクトを見つめながら、楽しそうに笑っていた。
「アヒャヒャ!やったよママ!パパ!アヒャャャ」
[子供の擬天使(天使化)]
体力35魔力58力45守40速80技60天10
HP70MP116SP120
(隠れんぼの極意、光魔法、土魔法)
その夫婦には子供がいた。
村に来た天使にはその子供は見つからなかった……
が擬天使となった夫婦の血肉を食べそして完全に結合し擬天使となってしまったのだ。
そして、それこそが夫婦がこの村に留まり続けていた理由だった。
人の心を失いながらも、二体には我が子を守るという本能だけが残っていたのだ。
一体が森へ狩りに出て、娘に喰わせる魔物を探し、もう一体が娘の傍に残り娘を見守る。
そうして夫婦は、擬天使となった後も、我が子を守り続けていたのだ。
グサッ!
「グアァァァ!!!!!!??」
そして子供に近づいたノクトを後ろから更なる弓矢が襲う
「「「ノクトッ」」」
「ヌウウウウ」【ダークボディ】
その瞬間、ルクの身体が闇へと変質し巨大な身体と地面の僅かな隙間をすり抜けると。ボロボロになりながら、ルクが地面を転がって距離を取った。
くそっ後一息の所で……完全に天使化してる子供だと?まずい、早くしないとノクトが危ない…………。
「グフっ、くっ、我がこの肥大化をやる…………」
「待って!ルク。私もうブチギレだわ!このデブ女は私がやる!ルクももうボロボロでしょ!少し休んでなさい」
「ならあの天使化した少女に」
ルクが言葉を言い終える前に真っ先に動いていた者がいた
【属性纒装:風】「ヨクモォォォォ!!」
レンカが体に風を纏わせ少女天使に突っ込む。
あの天使……多分だがレンカでは相性が悪いな……。
「我がレンカを援護する!リリ!サキ!そいつらは1人で倒せ!」
「「勿論!」」
「もう許しません…………少し不安もありますが出し惜しみはもう無しです」
【アクティブスキル:闘術練気[反]】
リリが闘気を練り体に纏わせると、青白いオーラが身を包む。
直後!狩人の擬天使の前からリリの姿が消える!
「————そこっ!」
ザシュッ!!
狩人の擬天使の身体に、ここで初めて刃が届く!
狩人の擬天使は意味が理解できなかった。
ついさっきまで、全ての攻撃を避け敵の技を解析し疲れを誘っていた。それは人間時代狩人として生きてきた経験に基づく必勝法だった……はず。
だが急に動きがかわった、攻撃を躱せなくなったのだ……。いや違う、こちらの動きが完全に読まれているかの如く動いた先に攻撃が来るのだ。
【闘術練気[反]】
それは身体の反応速度を極限まで高め、相手が動いた後に反応しながら、その結果を相手より先に叩き出すという超反則技だった……。
勿論、失敗すればタダでは済まない諸刃の剣だがもうリリに迷いは無かった。
ハァハァハァとリリの呼吸が乱れる。
まだ完全に使いこなせていないスキルによって急激に体力が奪われていっているのだ。
しかし、それでも彼女は止まらない!
相手の動作を見て、素早く動き確実に追い詰めていく
狩人の擬天使が右へ動けば、リリも動き。
跳べばそちらに先回りし。弓を構えれば、その腕を狙い。
短剣を振れば、紙一重で躱しながら懐へ潜り込む。
これまで一方的に狩る側だった擬天使が、今度は自分が追い詰められる側へと変わっていく。
「グ……オ……!」
そして決着の時が訪れる!
これは勝てないと後方に擬天使が跳躍した先に、リリが先回りをし。
「これで!終わりっ!!」
【アクティブスキル:ラッシュスラスト】
そして勝敗は決する、強化された身体能力で高速の連続付きを放たれ狩人の擬天使は絶命するのであった。
——狩人の擬天使HP0——
「グオオオ!!」
そしてここでは
「何度も何度も力任せに攻撃しちゃって!もう飽きたわよそれ!」
【アクティブスキル印術:術式遅延】
【スペルマジック:ブラスト!】
「私もう完全に怒ったんだから!何が周りの建物が壊れるから爆発魔法はダメよ?そんなのもう知らないわ!」
【スペルマジック:ハイスピード】
サキは肥大化擬天使の攻撃を全力で走り回って避けながら術と魔法を組み合わせた技を連発していた。
もう一個!【術式遅延、ブラスト】
サキは必死に逃げながら、ちらりと背後を確認する。
(これくらい仕掛ければ十分ね!)
準備は整った!
「さぁ!どっからでもかかって来なさい!」
肥大化の擬天使が怒り任せに突っ込んでくると……!
「ヌウウウン!…………ヌ?ゴアッッ!!??」
ドカーン!と肥大化の擬天使が突進してきた足元が爆発する!
「フッフッフもうアンタに逃げ場はないわ!」
そう、サキは擬天使の周りに地雷を設置しまくったのだ!
味方が周りにいると使えないし、そもそも空を飛べたり高く跳躍できる敵には効果がないが力任せに動き回る肥大化の擬天使とは相性がこれ以上ない程に相性が良かった!
「グフッ……ガ……!」
後ろに動こうとも爆発!
ならばと一歩踏み出しても爆発!!
転んだ先でも爆発!!!
逃げようとしても、その先で爆発が起こる!!!!
次々と爆発に巻き込まれ、ついに肥大化の擬天使は、動くことそのものを恐れるように立ち尽くす。
そこへ、サキの最大火力が降り注ぐ!
【印術:爆発強化、爆発強化!爆発強化ァァ!】
何度も宙に手で文字を書き、その文字を具現化させ次に放つ爆発の力を高めていき。
【スペルマジック:エクスプロード!!!!】
「!!????」
超巨大な爆発魔法により、塵すらも残さず肥大化の擬天使はその存在を消したのだった。
「……ふぅやっぱり爆発は最高よね」
——肥大化の擬天使HP0——
レンカは懸命に喰らい付いついてた
身体能力はレンカが上、戦闘経験もレンカが上、だがこちらの攻撃は少女天使に当たらなかった。
「マダァァァ!!!」
それはレンカがまだ属性纒装を使いこなせてない部分もあるが、少女天使は気配を消すのが上手かった。
光魔法による目眩しや土魔法による土壁で視線を切りつつ遊んでいるかのように逃げ回っていたのだ。
「おーにさーんこーちらぁぁー??キャハ?」
さらに高速で接敵しても上手く小さい体を屈めたり、跳びひいたりして少しレンカの視線から外れるだけで気配が掴めなくなるのだ。
「はぁっはぁっはぁ」
しかも……。
時間をかければ掛けるほど不利になるのはレンカだった……。
属性纒装を全力展開しか出来ないレンカはMPが足りないのだ。
「キャハハ?もう終わり?なら次は私が鬼ヒャハハハ!」
【ホーリードライブ】
そして、少女天使がスキルを唱えると表情が消え肌は青白くなり爆発的にステータスが上昇する。
次の瞬間、少女天使の姿は目の前にあった!
なんとか槍で受け止めるが、消耗し切った今のレンカでは暴走した天使の力を受け流すことができず弾き飛ばされてしまう。
「グッ、ああっ!」
そして攻守は逆転し、防戦一方に追い込まれてしまう。
地面を転がるも、レンカは必死に立ち上がる。
「ボ、ボクは……グゥゥゥ……!」
身体が震えて、体力も魔力も限界が近い。だが、仲間を傷つけた敵を野放しにする事だけはレンカは耐えられなかったのだ。
その時だった。
【諦めるなレンカ!最後まで出し尽くせ、我が見ておいてやる!ノクトの仇を取れ】
ルクがノクトに大量のポーションと効果がありそうな薬草をぶっ掛けながら魔言葉を放つ!
「負けない、もうボクは逃げないんだアァー」
【属性纒装:風】
ルクから魔力を分け与えられ、レンカの身体を風が包み込む。
「フッーフッー!」
だが、レンカ自身すでに限界の一歩手前だった。
属性纒装は魔法を自身に纏わせる為、使うと自身にもダメージを追い続ける自爆技でもあったのだ。
バシュバシュと制御しきれていない風の刃がレンカ自身の体を切り裂く。
しかし、レンカは決して敵から目を背けることはなく闘志をその目に宿し真っ直ぐに突き進む!
「負けないィィィアアアアア!」
「ギギギギ!」
二人が同時に駆けると——。
ガキンッ!!ガキンッ!!
と槍と包丁がぶつかる。
レンカは必死に槍を振り、少女は力任せに包丁を振り回していた。
ここで運がレンカに味方する。
ここで、力量差を悟り少女天使が逃げに徹していたら、例えMPがあっても勝てなかっただろう。
少女天使には圧倒的に戦闘経験が無かった。
勝負を決める為、切り札であるホーリードライブを使い感情を力に変えた為、攻撃する以外の行動が取れなくなっていたのだ。
そして力と力がぶつかり合い、ガキンカキンと槍と包丁が火花を散らすと
「ギギ??」
少女天使の腕が衝撃で折れ使い物にならなくなる。
あまりの衝撃に、腕の骨が耐えきれなかったのだ。
天使化してステータスが上がったとはいえ元はただの女の子、刃物の使い方なぞわかるわけもなく。
「今ァァ!」【スラストォォ!!】
そのまま槍による一撃でその生命を終わらせるのであった。
——少女天使HP0——




