2章-12話 天使の暗躍と偽りの勝利宣言?
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ソルテジオ・アシュレイサイド
「ハーッハッハッハ!! 圧倒的ではないか、我が軍は!! 押し潰せぇ! 一人残らず薙ぎ払えーー!!」
前世で言ってみたかったセリフベスト5を言えてご満悦のアシュレイである。
森林地帯を取り囲むように展開した討伐軍は、優位に軍を進めていた。
呪面族の思数が思っていたよりも少なく、盗賊団や魔獣が多い事が少し気になったが騎士団に大した損害もないまま敵だけを一方的に倒し続けている。
中でも獣人騎士団が凄まじい勢いで敵を蹂躙しており、狼獣人の騎士が剣を振るえば盗賊がまとめて吹き飛び、
虎獣人の魔斧が突撃すれば敵陣が崩壊していくのだ、人数は少ないものの実力は明らかに他の騎士団より頭一つ抜けていた。
そんな中アシュレイ達は冒険者二十二名、騎士二十名と共に後方で待機していた。
ゼクトからは「子供を最前線へ出すな」と命じられ。
同時にアシュレイ自身も何かが起きた時に即座に動ける位置付けを望んでいたためお互いの思惑が重なった結果特に文句が出ることもなくアシュレイにとって最善のポジションを獲得できたのである。
……凄いな、獣人騎士
数は一番少ないのに、一番強いや。
包囲されたと思って飛び出してきた敵を、軽々と真正面から叩き潰してる。
そんな事をアシュレイが思っていると各部隊は徐々に包囲を狭め、森林内部への突撃を開始し始めていた
もう突撃するんだ?
さてと……兄さん達は〜ふむふむ
アシュレイが自作した魔道具である望遠鏡を覗き込みセイルソルトを探すと、慎重な性格のセイルソルトは一旦森の手前で止まり隊列を整え丁度森へと突入する所だった。
……兄さん達はこれから突入か
でもまぁ、此処まで圧勝なら僕たちは待機で良さそうなんだよな?
獣人騎士団が来たから未来が変わったのかな??
「圧勝ですね」
イグニスが少し残念そうにしながらアシュレイに歩み寄る。
「残念ながら、私達の出番は無さそうです」
「まぁ、念のための予備戦力だからね」
アシュレイも苦笑する、この為に魔道具の使い方や人との戦い方もかなり練習してきたのである。
だが
「出番がないなら、それが一番良いよ」
それが本音なのは間違いなかった。
……突撃開始から三十分後。
『敵大将、討ち取った!!』
森の奥から響く魔法によって拡散されたゼクトらしき大声が高らかに上がると
『我らの勝利である!!』
勝利宣言によって森林包囲部隊の指揮がさらに高まり勝鬨をあげる!
「おおおおおっ!!」
「勝ったぞ!!」
「終わりだ!!」
……………………敵大将?
ふとアシュレイに違和感が頭をよぎった。
どうして大将だと分かったんだ?呪面族はフードをかぶってみんな同じ刺青をしている部族のはず。
事前情報があったのか?
いや、そもそもゼクトさん……領主なのに真っ先に突っ込んだんだな…………。
小さな違和感がチクリと胸を刺すが次の出来事に思考が切り替わる。
山の森林各所から、一斉に火の手が上がったのだ!
ゴウッ――!!と乾いた木々が燃え上がり、炎が山を焼き尽くす勢いで広がっていく
「うわぁ……火攻めまでやるんだ……本当に僕達の出番は無いな」
「…………………………」
すると隣のイグニスが、険しい顔で炎を見つめていた。
「どうしたの? イグニス」
「……おかしくありませんか?」
「何がです?」
サフィアが首を傾げる。
「敵を逃がさないために火を放ったのでしょう?」
「いえ……敵大将を討ち取ったなら、もう包囲は完成しているはずです」
「なら、なぜ山ごと焼く必要があるんです?」
「………………」
その言葉に、アシュレイの違和感が強くなっていく。
…………確かに。
勝利宣言をしたなら後は残党狩りだけのはず。
なのに、なぜ火を放つ?
しかも、火をつけるなら、普通は味方を引かせてからだ。
そもそもあの勝利宣言も変だった…………。
例えゼクトさんだろうと真っ先に領主が山に入るだろうか?
入ったとしてもたった30分であの広大な山から敵大将を打ち取れるのか??
それに山には、まだ大量の騎士達が突入している。
なのに、火は止まらない!むしろ勢いを増している??
……待て待て待てそんな事があるのか??
罠なんて事が………………
でもそう思うと全ての辻褄が合う…………
そもそもこんな大軍勢で攻めたのにも関わらずアシュレイの兄はゲームでは戦死扱いなのである、明らかにおかしい。
ここまで来るともう疑いではなく確信に変わった
「罠の可能性がある!!」
アシュレイが叫ぶと全員の視線が一斉に集まり
「総員突撃!! 火を放った者を探し出せ!!早く!!!!」
切羽詰まったアシュレイの声に四十二名の騎士・冒険者連合が一斉に森林へ駆け出した。
アシュレイは走りながらさらに違和感が強くなっていく!
……おかしい、火は広がっているし煙も上がってる
なのになぜ??
「火が強くなってるのに、なぜ誰も外へ出てこない……!?」
火を放ったなら、普通なら騎士達は外に出て逃げてくる残党を狩るだけになるはずだ!
「ア、アシュレイ殿!! こちらへ!! 早く!!」
山の中からイグニスの焦った声が聞こえアシュレイがイグニスの元へ駆け出すとそこには。
燃えていない山があった。
「…………は?」
温度は異常に高く煙の臭いもする。
しかし!木が燃えておらず炎も煙でさえ存在していないように見えるのだ
「気温は上がってる……でも、燃えてない……?」
アシュレイは考える……なにか、何かあるばずた呪面族の特徴を思い出せ!!
「いや……この熱量で燃えてないはずがない……」
そして、脳内で全てが繋がった。
「…………幻術だ」
ゲームで似たようなスキルがあった事を思い出し完全にアシュレイの中で全てが繋がった
「そうか……!!幻術だ!」
あの勝利宣言の声も!
逃げてる筈なのに大きな声を上げて自分の居場所分からせている声も全部!罠だ、全部罠だったんだ!
「イグニス!皆急いで山に突撃した人たちに知らせるんだ!
騎士数名は外で山を取り囲んでいる部隊にしらせて、このままだと山事焼かれておしまいだ、完全に火が回る前に早く!!!!」
アシュレイが山に入り必死に騎士団員を見つけては説得し、なかなか信じてもらえず時間をかけながら山を駆け回っていた頃。
呪面族のリーダーの男は涙を浮かべながら笑っていた。
「流石は神の使いのお言葉!!素晴らしィィィ、完全に異教徒共が策にハマりおったわ!
神が全て、人は神に生かされて神のために生きておると言うのに何も知らない馬鹿共めが」
呪面族の1人である顔にある大きな刺青が特徴的なドル=メアは歓喜で涙を流しながら天に祈りを捧げる
自身の頭上には天使特有の光の輪が浮かび上がり背中には2枚の羽を生やして。
ドル=メアは天使に血肉を与えられ完全に適応、天使化し天使より策を預かり防衛都市スケンティアの部隊を殲滅せよとの命令を受諾していたのだ。
元々呪面族は呪術や幻術が得意な部族、そこに天使化しスキルが上位のスキルに進化した為大規模な幻術が使用可能になっていた。
勿論代償もあったが天使の言葉がすべてのドル=メアには些細な事として仲間の生命すら術の力に変え山全体を包み込む幻術、音術を発動していた。
「さて、仕上げと行きますか」
そしてドル=メアは行動を開始する、森林から少し離れた大地の窪みより呪面族盗賊連合軍200名は突撃を開始した。
呪面族残り200名の生命力を集めた魔法陣を地面に残して。
「兄さん!やっと見つけた」
「アシュレイ!!なぜ此処にいる後方待機と言った筈だ」
「兄さんこれは罠なんだ!一旦頭をよく冷やして!冷静に状況をみて!お願いだ」
「何を言って…………うっ」
【フリーズ】
サフィアの氷魔法により強制的に頭を冷やされるセイルソルト
「確かに……おかしいとは思っていた、敵の声は聞こえても捉える事は出来ず、それにこの熱気……これは?」
「幻術で中からじゃわからない様になってるけど今山は燃えてるんだ!多分敵の仕業でこのまま僕達を焼き殺すつもりなんだと思う」
「なんだと!…………確かに言われてみれば違和感はあった!わかった!私はこのまま奥に進み他の騎士団と合流し状況を伝える!
アシュレイは外に出て囲い込みをしている騎士達と形勢を立て直してくれ!これを持っていればアシュレイの言葉でも聴いてくれる筈だ!」
セイルソルトからソルテジオ家の紋章が入った短剣を預かるアシュレイ
「わかった!気をつけて兄さん!」
「ああ!アシュレイも」
よしっ、まだ火が完全に山を包み込むまで少し時間はある筈、これで何とか…………危なかったぁぁ。
アシュレイがホッと一息つき外の騎士団と合流しようと外に出ると、何かを見つめている騎士達の姿が目に入った
…………なんだ?何を見て、あれは??王国軍の紋章??
「ソルテジオ騎士団所属ソルテジオ・アシュレイです!あの部隊は一体??」
アシュレイが短剣を見せながら部隊長の騎士に報告すると
「ご苦労!それが我々にも分からんのだ急に部隊が現れたと思ったら王国軍の旗を掲げているし、声を上げても返って来ないのだ」
…………まさか
「部隊長殿、こらから僕がする事黙認してくれますか?」
「なに?一体何を…………おい!待て!」
部隊長が疑問を口にする前にアシュレイが動き出す。
アイテムポーチから取り出したアシュレイ特性の爆弾を風魔法で王国軍?のど真ん中に数個投げ入れると大きな爆発共もに呪面族達に掛けられていた幻術が解かれる。
「な!!??呪面族だと!」
「やっぱり!全部罠だったんです!アイツらは全て敵だァァァーー!!!!」
アシュレイの叫び声と共に本当の決戦が始まる。




