2章-7話 天使の暗躍と新魔団ニューポーズ
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とある山道にて
「うおおおぉぉぉっっ!!まかせたぁぁ!!」
ノクトが魔熊に追われながら全力疾走でルク達の元に走ってくると。
「任せるデス!」
【スペルマジック属性纏装:風】
レンカが風を自身の体全体に纏わせ、爆発的に上がった速度で魔熊に接敵そのまま槍による攻撃を繰り出す。
【アクティブスキル:ラッシュスラスト!】
「グゥゥゥ」
連続攻撃により怯んだ魔熊をサキの魔法で確実に仕留める。【スペルマジック:アイスランス×2】
「……ふぅ、目がグルグルするデスぅぅ……」
属性纒装の反動で、フラフラと千鳥足になるレンカの頭を撫でながらルクが口を開いた。
「今の纏装は中々良かったのではないか?だが思いっきりMPを使い過ぎだな、適度に絞れ」
「ちょっと!ノクト、前に出て索敵するのは良いけど戦闘になったらもう少しは戦いなさいよっ!」
「俺は斥候だぞ?無理無理無理!!!!というか魔熊を瞬殺とか本当に俺と同じDランク冒険者なんだよな?」
「他に敵の気配は無いみたいです、戦闘終了ですねっ。」
ルク達はノクトの案内で山に入り貴重な薬草があるという洞窟の近くまでやってきていた。
…………結局ここまで来るのに5日掛かったのは内緒にしたい。
「あそこに見える洞窟を抜けた先に薬草があるんでしたよね?」
「ああ、一年中日光が当たらない場所で尚且つ風通しがよく適度に雨が降る場所にでしか育たない薬草らしい」
「何だそのやる気のなさそうな薬草は、本当に使い道があるのか?」
「俺は薬師じゃないからよく分からんが調合に使うらしいな、この薬草を使って作った薬には鎮静効果がプラスされるらしい」
「難しい話はわからないデス」ザクザク
「そうね!バッ!ってやってドカッ!って出来る魔法の方が楽しいわ、はいっ解体終わったわよ適当な大きさに分けて縛っておいたからルクよろしく」ギュ!ギュ!
「ウム」【ダンジョンウィンドウ】
「いいよなアイテムボックス、どっかで格安で売ってねぇかな〜」
「時空魔法の書かそれを教えてくれる人が入れば良いのだがな、中々いないんだよなぁ」
「そりゃそうだろ!そもそも魔法とかスキルなんてその人の存在意義みたいなもんだからな、そんな貴重な魔法絶対教えてなんかくんないぜ」
「ノクトが中々探索術のスキル教えてくれないみたいに?けちよね」
「当たり前だろ!俺はこのスキルで飯を食ってんだからな!お前らも自分のスキル俺におしえろって言われたらやだろ?」
「「「「………………」」」」
ルク、サキ、レンカ、そしてリリの4人は、示し合わせたように顔を見合わせ、ヒソヒソと囁き合い始めた。
(考えたこと無かったわね……)
(それが一般的な感覚なのでしょうか……?)
(知ってたことにするデス……?)
(う、ウム。我らは当然知っていた、そういうことにしておこう……)
「…………全部聞こえてるんだが?」
そんな不毛な会話を交わしながら薄暗い洞窟を進むと、やがて眩い光が差し込む出口が見えてきた。
「「「「おお〜〜〜」」」」
「よしっ!当たり情報だ」
そこは、削り立った巨大な崖と洞窟に挟まれた、小さな湿原のような群生地だった。
崖が直射日光を適度に遮り、洞窟から吹き抜ける心地よい風が空気を循環させる。崖上から伝い落ちる雨水がしっとりと全体を濡らし、紫色の薬草たちが朝露を弾いて幻想的に輝いていた。
「綺麗じゃない!私の杖の飾りと押し花用でしょ?あと草冠も作らなきゃね!」
「待て待て、結構良い金になるらしいんだ!売らないでどうする!?ここの情報は俺が買ったんだ、そうだな取り分は俺が7いや……魔熊がいたら俺じゃ逃げるしか出来なかった俺が6でどうだ?」
「6本でいいんデス?こんなにいっぱいあるノニ」
「じゃあ残りは私が貰うわね!!」
「ちっがーう!打った金の6割が俺の取り分って事だ!勿論全部取る」
「ケチですね」「ケチね」「ケチだな」「ケチデス」
「………………冒険者ってのはそうなんだ!!」
「フム、ならば此処にある薬草の4割は我らが摘み我らが保管する!ノクトは残り6割を自分で摘み自分で保管するといいぞ!(ニヤニヤ)」
「……………………ぐっ、でもかなりの金になるはずなんだ、わかった」
「もっとケチがいたわね」
「待て待て!だって我ら売らないだろう?この薬草、混ぜると訳分からんくなるぞ」
「確かに……折角の薬草、取っておきたいですね」
「だろ?我は天才だからな!」
「………………あの、やっぱり摘むのだけ手伝ってくれませんか?」
思ったよりも抜くのに力が必要で、腰に手を当てながら頭を下げたノクトにレンカは嬉しそうに尻尾を揺らした。
「ノクトはしょうがない後輩デスね、手伝ってあげるデス」
実は結構面倒見のいいレンカであった。
その後、1時間ほどの休憩の後。
薬草の採取を終え、山道を戻り始めた時だった。不意に、耳をぴんと立たせたレンカが足を止める。
「戦いの音がしマス。剣と……鎧の打撃音だと思いマス」
レンカが耳を澄ませながら山の斜面を指差す。
「どっちからだ?行ってみるぞ!」
「こっちデス!」
すぐさま走り出すレンカを追い駆け出す3人。
面白そうな事には積極的に首を突っ込んでいく!
それが新魔団の魂に刻まれた常識なのだ!
「え?ちょっおい!いくのかよ」
そんな新(?)常識とは縁の無いノクトは嫌々ながらもルク達の後を追う。
ルクたちが木々の隙間からピョコっと顔を覗かせ、少し坂を下った場所に目をやると、そこには倒れた馬車と動かなくなった馬が横たわっていた。
さらに、その物陰には隠れて怯えている20代後半ほどの気弱そうな男性がおり、彼を守るようにボロボロの冒険者風の男が3人、そしてそれを取り囲むように剣や槍を突きつけている男たちが10人ほど集まっていた。
「ヒャッハー!手間取らせやがって、とっとと積み荷を差し出せば死にはしなかったのによ!」
「た、頼むその積み荷には貴重な魔道具があるんだ!それがないと村は、村の命運が掛かってるんだ、見逃してくれ!頼む!」
「オイオイオイ、俺達盗賊団相手に見逃してくれダァ?そんな事言われてはい良いですよなんて言う盗賊がいると思うか?ああん?」
悪党たちのテンプレ通りのやり取りを見下ろし、ルクの瞳がキラキラと輝く!!
「こ、これは………………このシチュエーションは」
「ちょっ、ちょっと!私ワクワクしてきたわ!」
「………………………………。」
【アクティブスキル:フィジカルブースト】
「ちょっと!ダメよリリ、あれをやってからよ」
「??助けないんデス?」
「ゼーハーゼーハー。お前ら足早過ぎ……よく山道を、ハーハー」
慣れの違いである。
「よし、レンカ耳を貸せこうしてこう、そしてこうだ!」
「ハワァァァァ⤴︎⤴︎!!」
ルクがレンカにこれからの事を説明すると、目を輝かせ尻尾が凄い勢いで振られる。
「すごくカッコイイデス!!」
「だろう?」
「はいデス!!」
「よし行くぞ!お前達!」
【ファイアーボール!】
ルクが先制攻撃のチャンスを捨てファイアーボールを頭上に向け放ち周囲の気を引くと今度はサキがルク達の真後ろに【ウィンドカーテン】を展開!
そこにそこら辺にあった葉っぱを投げ彩を添える。
そして!!
「「「「我等正義の味方!最強パーティー新魔団」」」」
バコーーーン!!
かっこいい(と思っている)
ポーズを決めてると同時に頭上のファイアーボールが大きな音と共に爆発!(実はかなりの高等テクニックである)
見事な連携を前に、この場にいる者は時が止まったかのように動かなくなった!
「何してんだお前ら?」
ノクトが思わず本音を漏らした。助かる助けない問題は置いておくとしても。先制攻撃のチャンスを捨ててまでする事がただの決めポーズ……。ノクトには到底理解できなかった。
そして、理解できていないのは勿論ノクトだけではなく。
「お頭……」
「なんだ?」
「あいつら何ですか?」
「俺が知るか!」
「なんでポーズ取ってるんです?」
「だから知らねぇよ!!」
ノクトも盗賊団も商人も冒険者も頭に(?)を浮かべ可哀想な人をみる目で新魔団を見るのだった。
そんな哀れみの目を勘違いしたルクは、とてもご満悦だった!
「フッ、決まったな見ろ!あまりのカッコよさに見惚れているぞ、クゥ〜はやり登場はカッコよく決めないとな」
「ちゃんと決まると気持ちいいわね!」
「正義の味方って憧れてたんデス!!」
「……行きます!」【スペルマジック:ハイジャンプ】
恥ずかしさに耐えれなくなったリリが先に展開しておいたフィジカルブーストとハイジャンプの合わせ技で素早く盗賊に接敵する。
「ちょっ、もう少し浸らせなさいよ!もう」
【アイスアロー×10】
文句を言いながらも、リリを孤立させないように素早く氷の矢を作り盗賊に撃ちまくるサキ。
「よし!突撃だ!悪者を蹴散らすぞ、レンカは此処から攻撃だ、もしこっちに逃げてきたら頼むぞ」
【シザークロウ】【フィジカルブースト】
「はいデス」【チャージスイング】
「お頭、ちょっとやばいスピードで向かってきますぜ」
「確かに早いが所詮はガキ、力は大した事ねぇはずだ!お前らいつも通り取り囲んで潰………………へっぶぅぅぅ」
「お頭ァァァ!」
盗賊のお頭が何かを言う前にリリによる飛び蹴りが炸裂し宙を舞った。
「くそ!何だこの銀髪囲め囲め!」
「おいっ、こっちも手伝ってくれ!さっきから魔法の矢がすごい量飛んで来るんだ…………もう盾が、盾がァァァグフっっっ」
「おいっ!くそ何だって急に、どけチビィ!邪魔だ……何噛み付いて…………アァァァ……ゥゥゥ」
「おいっ![グサッと槍が腹に刺さる]…………え?そ、そんな………………。」
「くそっ、こっちは2人がかりだそ!何でこんなに連続でパリィ出来んだ……攻撃がなんであたらねぇんだーー!!」
「この女ァァ!くそくそくそぉぉぉー!」
【アクティブスキル:旋回破】
「「なっ!チクチョ…………ウ」」
「ヒ、ヒャハー」
「おっ、おい待て!1人で逃げるな俺も」
「逃げろ逃げろ!!」
「ウワァァァ!」
新しいポージングに少し時間をかけたルクたちだったが、いざ戦闘になれば5分も掛からずに倍以上の人数がいた盗賊を蹴散らした!
1年間の修行で対人戦を完全にマスターしていたのだ!
こうして、カッコよく決めたいというルク達の活躍により、また一つの盗賊団が壊滅に追い込まれたのであった。




