31話 すれ違い続ける転生者達の日常
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「ヒャッハー! いけーっ、嬢ちゃん!」
「ガキ相手に負けてんじゃねえぞオメー!」
「おい割り込むな! みんな大人しく並んでんだろ! ああ!? 列ができてんだよ最後尾は向こうだ最後尾はぁ!」
現在、ヴァラレート冒険者ギルドの訓練場は、まるで格闘技の興行会場のような狂熱に包まれていた。
事の発端はこうだ。
リリが領主から新しく貰い受けた魔剣を「早く試したい!」とウズウズして狩りを提案したものの、サキが「私も早く自分の杖が欲しい!」と主張。
珍しく意見は真っ二つに割れた結果。買い物組(サキ&レンカ)と、対戦相手探し組(リリ&ルク)の二手に分かれることになった……のだが。
当然、ギルドで手合わせしてと募集したところで、現金でめんどくさがり屋か冒険者たちが受けてくれるはずもない。
そこで天才的頭脳(自称)を誇るルクは閃いた。ギルド受付嬢の監視の目をかいくぐり、大々的に宣言したのだ。
『リリに勝ったら金貨1枚! 参加費はたったの銅貨3枚!』
面白半分で挑んできた駆け出しの剣士をリリが瞬殺すると、ギャラリーのボルテージは最高潮に達した。
ルールは至ってシンプル!試合時間は1分。
その間にリリへ一定以上のダメージを与えられれば冒険者の勝ち。
リリは直接攻撃する事は禁止のルール。
現在ヴァラレートの冒険者ギルドにいる者達はミノタウロスのダンジョン依頼を受けていなかった低級の冒険者達、
高ランクの冒険者は皆療養や装備の新調で忙しかった為
リリに一定以上の攻撃どころか軽い攻撃ですら当てられる者はいなく。
「ウオオオオ!また嬢ちゃんの勝ちだ!」
「オイオイ15人抜きだぞ?何だあのパリィは」
「もしかして聖騎士か?徳を積み剣士として才能のある者しかなれないあの??」
「聖騎士っていうとあのSランク冒険者が持ってるって言う称号の?」
「んなもん関係ねぇ、次は俺の番だ!データは揃った見てやがれ」
結局30連勝した所で見ていたルクが飽き終了となった。
「もう少し強い敵じゃ無いと練習にならないよ?ルク」
「ギルドにいた奴らを観察してたがあんま強い奴はいなかっまな。まぁ新しい剣の使い勝手を試すのにはちょうど良かっただろ?」
「この剣使いやすい、凄くしっくり来る」
「ハッハッハそうであろうそうであろう」
なぜか自分が褒められたかのようにドヤ顔をかますルクである。
ギルドを出て、買い物組との集合場所である広場へ向かうルクとリリ。
その途中、買い物を終えて宿へ帰ろうとしていた二人組……イグニスとサフィアとすれ違う。
(フム……あの赤髪の少女、まだまだ粗削りだが……なかなか見所のある才能を感じるな)
(ルクの直感センサーが反応する、普段はこのセンサー役に立たないがたまに役に立つ時もあるのだ)
「そこの赤髪と青髪の少女よ冒険者か?」
そしてルクもウズウズしていた!自分だって戦いたいのだ!
「?私達の事か?そうだが…………ボウヤに少女と呼ばれるとムズムズするな……」
「ふふっあらカワイイ、ワタクシ達に何か用?」
「ウム! 手合わせしないか? 赤髪の者、なかなか面白いスキルを持っているだろう。ぜひ見せてほしい!」
ルクはいつだって真っ直ぐだった。……己の欲望に対して。
「………………すまんな、騎士たるものいざという時にしか切り札は見せん、それに私より弱い者と戦うのもな」
「弱い?私に一撃も当てれなさそうな弱者がルクを馬鹿にしないで貰えますか?」
リリも真っ直ぐだった、自分の気持ちに。
「ほう?刺突狙いがバレバレのその剣で私の攻撃を防げると?」
イグニスはちょっと怒りっぽいところがまだあった。
「ちょっ、イグニスさん?熱くならない熱くならないセーブセーブ!」
「いいだろうサフィア、此処で折れてはアシュレイ殿にも申し訳ない。その挑発受けてやる。
街の中で私闘は禁止だ、外に行くぞ」
「いいでしょう、ブッ飛ばします!フンす!」
「…………………………」
(あれ……?? 我が戦いたかったのに、なんでリリがまた交戦モード入ってんの……?)
青髪の少女へ視線を向ける。(まあ……頑張れ)
サフィアの才能が開花するのは、まだまだ先の話である。
場所は変わり城門前にて。
「ではルールを決めておこう、どちらかが敗北を認めるか有効打が入ったら勝敗決定だそれで良いな?」
「何でも良いです、私のルクを侮辱した罪は重い」
我はいつからリリの物になったのか??まぁ家族みたいなもんだしいいか。魔眷属だし。
「ではいきますわよ!始め!!!!」
【アクティブスキル:スピードアップ】【ラッシュ】
サフィアの合図と共に素早く接敵し槍での連続攻撃を放つイグニス、彼女の騎士道には手加減という文字はないのだ。
【アクティブスキル:フィジカルブースト】【パリィ】
それに対し身体能力全般を上昇させたリリが全てのラッシュをパーフェクトパリィする。
「なに!!??」
「そこ!!」
ガキンと金属と金属が強くぶつかる音がすると不意な一撃を受けバランスを崩したイグニス
「舐めるなァァ」
【焔装:槍(タイムリミット60s)】
リリが追撃しようと踏み込もうとした瞬間、
イイグニスの槍が爆発的な炎に包まれ、その間合いが倍以上へと膨れ上がる!
「……!!」
【バックステップ】踏み込もうとした足をスキルで強引に後退させ出方を見るリリ…………。
「…………ふぅ、すまない熱くなった」
【解】イグニスがすぐさま冷静になると焔装を解除する。
「私の負けだ、強いな君は」
「………………勝った気がしない(プクゥ)」
「ハッハッハ!良いものが見れた!良い経験になったではないかリリ。勝負してくれたお詫びと言っては何だがそこの青いの!魔法使いであろう?1つスキルを教えてやろう」
イグニスに比べ、サフィアの経験値がまだ浅いことを見抜いたルクの、完全な気まぐれであった。
戦いが一段落ついた頃、サキとレンカが合流し、一気に賑やかになる。
「あーー!やっと見つけたわよ!集合場所に来ないで外で遊んでるだなんてちゃんと私達も誘いなさいよね??」
「魔力信号は送っただろう?良いではないかハッハッハ」
「槍使いさんと勝負してたデスか?ボクもやってみて良いデス??」
「フフフッたまにはこうして対人戦もいいな、新しい課題が見つかる。黒い狼に黒い翼か?面白い獣人もいるんだな、すまないが今日は此処までにしてくれないか?」
「そうですね、ワタクシ達宿に帰らないといけませんの、ごめんなさいね」
「そうだ、ルクちょっと来なさいよ折角ほしい杖があったのにお金が足りないのよ」
「50金貨じゃ足りないのか?杖って高いのだな」
「…………………………」サッ
サキは気まずそうに視線を逸らした。
「…………………………??おいサキ何に金貨を使った?」
「だっ、だって! この壺があれば『凄く良い事』が起こるって言われたのよ! それに金貨100枚のところ、今なら特別に金貨50枚でいいって言うから……そ、買うしかないじゃない!」
「す、凄く良い事……だと!? ならしょうがないな! しかし金貨50枚は高いぞ!?」
「えっ、えーと多分それ詐(欺)………………うーん」
サフィアは何かを言いかけて辞めた。
良いことって何だろう?
とかきっと凄い書が手に入るのだとか物凄く盛り上がっていた少年少女の夢を壊すのは良くない事なのだ。
「……えぇと、杖なら『トレントの杖』でよろしければ1本差し上げますわよ? トレントを狩りすぎて2本余ってしまいましたの。……先ほど言っていたスキルと交換、ということで如何かしら?」
サフィアはとても優しかった!
「え!?いいの!ありがとう!!!さっきのナンパ野郎といい、迷子と間違える見回りの人といい変な人ばかりだと思ってたけど良い人もいるじゃない」
「よしっ!折角だ皆で飯を食おうではないか奢るぞ、少しなら良いであろう?2人も」
「ハハハッ、そうだなここで帰るのも違うな、ご馳走になろう。私はイグリス、隣はサフィアだ。
リリと言ったか?良かったら話を聞かせてくれないか?」
「はい、さっきの技私も気になっていました、ちょうど良かったです」
「ボクも槍の使い方教えてほしいデス」
「サフィアと言うのか、アクアスパイラルのスキルは持っているか?中々強いぞ!?」
「初めて聞きました、是非お願いします!!最近になってやっと魔法が使えるようになったばかりで……」
6人で囲む肉パーティは大いに盛り上がった。
同世代ということもあり、サキやリリ、レンカにとって、それは。自分たちのパーティ以外の、初めての友達が出来た記念すべき一日となったのだった。
「みんな遅いなぁ…………明日には出発だし装備の手入れでもしてるか…………」
一方で転生主人公である筈のアシュレイは、1人宿で装備を広げるのであった。
余談だが、サフィアがルクから教えて貰ったアクアスパイラルの使い方をアシュレイに相談したら、何故敵キャラ限定(だと思っていた)上級水魔法のスキルが!?とかなり驚かれたと言う…………。
ルク達がお金をちゃんと使えるようになる日は来るのか?




