24話 サフィアの頑張り
アシュレイ編が1話で終わらなかったので朝に引き続き夕方も投稿です。
もし良ければ高評価等よろしくお願いします
サフィアと出会ってから2週間が過ぎようとしていた。
「はあああ!」【アイスアロー】
サフィアが構えた初心者用の小さな杖から、氷の魔法陣が浮かび上がると。生み出された氷の矢が一直線に放たれ、ゴブリンの肩を深々と貫いた
「ギギャ!?」
怯んだゴブリンへ二発目、三発目の氷の矢が突き刺さり、そのまま倒れ伏した。
「よしっ!!」
ゴブリン討伐クエストを受け、何体かのゴブリンを仕留めた後。サフィアの事を見守っていたアシュレイとイグニスはサフィアに駆け寄る。
「うん、段々と良くなってきてるね!頼もしいよ」
「最初は全くと言って良いほど魔法が使えなかったのです、十分な成長かと」
「あ、ありがとうございます。少しはワタクシも役に立つでしょうか?」
「勿論だよ!これからも一緒に強くなっていこう」
「(照)ハイ!ありがとうございます」
「まだまだ初歩だけど魔法も使えるようになってきたし、そろそろダンジョンに行ってみようか?」
「流石にまだ無謀では?」
「まぁ、一気にクリアする気は無いしね。それに僕とイグニスのどちらかの近くにいるようにすれば最悪の事態は免れると思うよ?」
「アシュレイ殿がそれで良いのながら私は問題ありませんが」
「わ、ワタクシ、が、頑張ります」
トレントの森レベル1ダンジョン
このダンジョンは、浅瀬エリアであれば初心者冒険者や腕に覚えのある一般人が薬草採取や低レベルな虫の魔物を狩るのに重宝されている。
そして中層付近からは、中堅やベテランたちがこぞって『トレント』を狩るフィールド型ダンジョンだ。
「結構な人達がダンジョンに潜ってるんですのね?」
「うん、このダンジョンは木に擬態してるトレントにだけ気をつけていれば大した魔物は出てこないからね、まぁだからこそ潰されないで管理されているんだけどね」
「どうします?こう人が多いと誤爆もあります、奥に向かいますか?」
「うん、そうだね。奥に行けば行くほどトレントが多く出るようになってて弱いと言っても初心者には辛い魔物だから人も少なくなってる筈だよ」
「それにトレントの枝を集めてサフィアの杖も作って貰おうと思ってるし、今のままの初心者用の杖じゃ魔力効率も悪いからね」
森を進んでいくと、ふいにアシュレイが足を止めた。
「――――――――――――――。」
「あの周りよりも少し大きい木、あれがトレンドだわかる?」
「…………えーっと?大きい木なのは分かりますけど。どこで見分けますの?」
「トレントは木の表面に目と口があるんだ……普段は閉じてるんだけど。でもそのおかげで若干だけど木の表面が歪んでる、それが目印だ」
「……中々慣れるのに苦労しそうですね、それにこう木が多いと何が何やら」
「ははは、まぁトレントを見つけるのは僕に任せて。2人は他を警戒しながら進んでいこうか、それじゃあのトレントは僕が倒すね」
【パッシブスキル:風の加護ON】
MPを持続消費する代わりに風属性威力を底上げするスキルを発動。アシュレイが木に向かって剣を振るう。
【ウィンドカッター×2】
風の刃で攻撃すると奇妙叫び声と共に木に目と口が浮かび上がらせ、アシュレイ達に根を鞭のようにして攻撃してくる。
【シールドバッシュ】
片手で持ってた盾で攻撃を弾き
【エアスラッシュ】
根の先端を剣で切断すると一気に距離を詰めると。
【エアダブルスラッシュ】
×を描くように斬りつけると。
トレントは断末魔を上げながら、ドロップ品である『トレントの枝』と『魔石』を残して消滅した。「――――――!!!」
「トレントって消滅するんですね?倒しても残る魔物と消える魔物がいますけど違いってなんなんでしょう?」
「ん〜、あんまり考えた事が無かったな?言われてみれば何でだろうね?」
落ちた素材を拾い上げながら、アシュレイは二人に向き直った。
「さて、次は2人の番だ!最初は大変かも知れないけど連携を重視して戦っていこう、イグニスが槍で牽制、もし出来るなら攻撃も。サフィアはイグニスに当たらないようにコントロール重視で頑張ってみて」
「「ハイっ!」」
しばらく進んだところで、アシュレイが一本の木を指差す。
「いたよ、あの木がトレントだ」
「行きますっ!」【スピードアップ】【スラスト】
イグニスがトレントに接敵し槍で突き攻撃を放つ。
だが、気配を察知したトレントは複数の根を交差させ、盾のようにして突きを防いだ。
「思ったよりも気づくのが早い!」【バックステップ】
「今ですわ」【アイスアロー】
根の隙間を狙い、サフィアが氷の矢を解き放つ!
しかし。追撃を警戒してバックステップを踏んだイグニスの背中に、氷の矢が吸い込まれるようにクリーンヒットした
「ぐはぁぁぁぁ!」
「えええ!!すいませんすいませんすいません」
「……………………………………。」
凄まじい悲鳴を上げて悶絶するイグニスに、アシュレイはそっと目を逸らした。
「ぐっ……だ、大丈夫です……フゥーッ……」
落ち着け私、彼女はまだ初心者……事故だ、ただの事故……!
「続けていきます!」【パワーアップ】
根で防御してくるなら力で押し切る!
連携重視と言われていたのに、ワタクシはなんてことを……!
大丈夫、まだ挽回できる。あの足元の防御さえ崩せばイグニスさんが攻め込めるはず……なら!
【アイスザグラウンド】
トレントが二度と土から根を引き抜けないよう、足元一面にツルツルとした氷の膜を展開するサフィア。
そこへ、イグニスが勝負を決めんと力強く踏み込んだ。
——ツルッ。
「え?」
ステーーーン!!
見事な前転だった。
これにはトレントもびっくりである。
「あわわわわわ!???」
「(怒)くっ、私は弱きを守る騎士、これしきでは………………グホォォォ」
自分の感情を抑えきれずサフィアの方を振り返ったイグニスに根の鞭攻撃が襲う。
こりゃまだ早かったか?
「一旦撤退!!てったーーい!!」
それから一週間が経った頃。
今日も換金所には長い列が出来ていた。
「次の方どうぞー」
受付嬢の声に呼ばれ、アシュレイ達は慣れた様子でカウンターへ向かい自慢のアイテムバックから今回の成果を並べていく。
「トレントの枝が三十七本、魔石が二十三個になります」
ドサドサと並べられた素材を見て受付嬢が一瞬固まった。
「……また増えてません?」
「ははは、そうかな?」
「そうですよ!最初来た時は枝三本とかでしたよね!?」
バシッとツッコミを入れる受付嬢。
その声に反応し、後ろで並んでいた冒険者たちがひそひそと囁き始めた。
「またあの子供達か」
「最近毎日見かけるな」
「初心者じゃなかったのか?」
「いや、あの槍使い見ただろ。トレント三体に囲まれて普通に戦ってたぞ」
「マジかよ」
視線を集め、サフィアは少しだけ肩を縮めた。
「な、なんだか見られてますわね……」
「気にしなくて良いよ」
そんなサフィアをみてアシュレイが苦笑する。
「最初は『子供が何してるんだ』って感じだったけどね」
「今は?」
「『なんか強くないか?』って感じかな?」
「フフッ、それは良い傾向ですね」
そんな雑談をしていると、受付嬢が計算を終え報酬袋を差し出した。
「換金完了です!そういえば聞きましたよ?」
「?」
「最近、魔法使いのお嬢さんが凄い勢いで成長してるって」
「えっ!?」
不意を突かれ、まだ褒められることに慣れてないサフィアが固まる。
「最初は味方の背中に魔法を叩き込んでたって」
「なっ!?」
「今じゃちゃんとトレントの急頭を狙えるようになったとか!」
「そ、それはぁ……っ!」
顔を真っ赤にして縮こまるサフィアに、周囲の冒険者たちからドッと温かい笑い声が上がった。
「頑張れよ、新人!」
「そのうち俺たちも追い抜かれそうだな!」
「次は階層ボスか!?」
冒険者達の言葉に、サフィアは少し驚いた。
バカにされているのではなく。期待され、一人の冒険者として認められているのだと伝わってきたからだ。
「……ワタクシ」
ズッシリと重い報酬袋を見つめ、サフィアは呟いた。
「少しは、冒険者らしくなれているでしょうか?」
「うんもう立派な冒険者だよ」
アシュレイの言葉に、サフィアの顔がパッと華やぎ、心からの笑みが零れたのであった。
換金を終え、ギルドをあとにした三人は夕暮れ時の街を歩きながら、アシュレイが満足そうに頷いた。
「ふぅ、かなり良くなってきたね。サフィアも新しい杖になってから発動効率が上がったし、そろそろボスに挑んでも良いかもね」
「そうですね。最初は背中に魔法を何度も当てられていましたが、今ではちゃんと敵を狙ってくれてますし……ね?」
「うっ……その件については本当に申し訳なく……」
思い出し泣きしそうなサフィアに、イグニスはくすりと笑った。
「ふふっ、冗談です。もう怒っていませんよ。ですが……ボスですか。行けますかね?」
「うん」
アシュレイは迷いなく答える。
「此処のボスはジャイアントサンドトレントって言ってね。土魔法を使ってくるんだけど、パターンを知っていればそこまで怖くないんだ」
そう言いながらダンジョンの攻略ノート(自作)を広げながらアシュレイが解説する。
「それに水と氷が弱点だからね。サフィアの魔法を中心に、僕とイグニスが援護に回れば難なく倒せると思う」
「ワタクシが中心に!」
サフィアが胸を張り、鼻息を荒くする。
「フンス!」
「ふふっ、そのくらいの意気込みでちょうど良いですよ。そうですね……確かにここのトレントには飽きてきたところでしたし、次のステップに進むには良い頃合いですね」
「うん、ありがとう」
アシュレイは二人を見て笑う。
「じゃあ明日は休息日にしよう。身体も装備も万全にして、明後日ボスへ挑戦だ」
「ハイ!」
「了解しました」
「もう地図も完成してるしね」
そう言って広げられた地図には、一週間かけて調べ上げたダンジョンの情報が細かく書き込まれていた。
サフィアはその地図を見つめながら、小さく拳を握る。
初めて挑む、ダンジョンボス。
恐怖や不安がないと言えば嘘になる。だけど——今のこの三人なら、きっと大丈夫だ。
アシュレイと出会う前なら考えられなかった自信が、少しずつサフィアに芽生えつつあるのであった。
次からまたルク編です




