1章-14話 もう1人のダンジョン攻略
高評価等とても励みになります。
ありがとうございます。
もし良ければ高評価、グッドボタンよろしくお願いします
ソルテジオ・アシュレイサイド
ゴブリンジェネラルを討伐して得た報酬金で新調した軽鎧。それを身に纏ったアシュレイは、同じく新しい槍を手にしたイグリスとともに、ゴブリンダンジョン五階層で束の間の仮眠をとっていた。
「んっんん〜、そろそろ時間かな。交代しますよゴルドさん」
「おう、そんじゃ任せたぜ。おいブブ交代だ」
「……フン」
鼻で笑い、無言で奥の闇へと引っ込むブブの背中を見送りながら、アシュレイは苦笑いを浮かべた。例のゴブリンジェネラルと独断戦闘を行って以来、ブブとの間にはどうにも気まずい空気が漂い続けている。
「……やはり、いくら何でもあの態度は失礼です!」
イグリスが槍の柄を握り直し、憤りを露わにした。
「アシュレイ殿は貴族であり、あのジェネラルを単独撃破された実力者。私から一言文句を――」
「大丈夫、大丈夫。気持ちだけ受け取っておくよ、イグリス」
アシュレイはなだめるように手を振った。
「文句を言いつつも、斥候としての役割を完璧にこなしてくれているからね。僕たち二人だけじゃ、いくら危険度の低いダンジョンとはいえ攻略は難しい。……はい、温めただけのお湯だけど」
「ありがとうございます……」
一口湯を口に含むと、少し落ち着いた口調でイグリスが続ける。
「それにしても、アシュレイ殿のダンジョンに関する造詣の深さには感服いたします。ゴブリン共の抜け道を初見で見破り、モンスターハウスの徴候まで事前に察知して回避されるとは……。私自身、初めてのダンジョンですが、噂に聞いていたよりも遥かに順調に進めております」
(まあ、実際にこの足で潜るのは初めてなんだけどね……)
アシュレイは心の中で静かにつぶやいた。前世で遊び倒したゲームの設定集。そこに刻まれていたダンジョン構造が、頭の中に鮮明な映像として残っているのだ。
この世界に転生して以来、この身体は「思い出したい記憶」を寸分の狂いもなく正確に引き出すことができる。いわゆる主人公補正というやつだろう。
「まあ……それなりに勉強はしてきたからね。それより槍の具合はどう? いきなり獲物を変えてくれなんて無茶を言ってごめん」
「いえ! 騎士を目指していた身として最初は戸惑いもありましたが……驚くほど手に馴染みます。まさか自分に、剣よりも槍の才能があったとは……」
「それなら良かった。何か扱いづらさがあったら遠慮なく言ってね」
イグリスの硬さが取れていくのを見て、アシュレイは小さく頷いた。最初に会った頃の張り詰めた空気は、少しずつ柔らかい信頼関係へと変わりつつある。
「意図的に戦闘を避けてきたから不安かもしれないけれど、イグリスの槍捌きなら十分に通用するよ。ただ……このダンジョンは敵を倒せば倒すほど、新たに湧き出る個体が強くなる特性があるんだ」
「倒せば倒すほど厄介になるとは……やはり一刻も気を抜けませんね」
「うん。時間をかけるとボスが救援を呼ぶんだけれど、その増援の強さは『道中で倒した敵の数』に比例する。だからこそ、極力戦闘を回避して駆け抜けるのが最善なんだ」
「アシュレイ殿は、まるで既にこのダンジョンを歩いたことがあるようですね」
「……そう見える? 本でしっかり予習してきた、ってだけだよ」
半分は事実で、半分は誤魔化しだ。アシュレイは苦笑いを浮かべ、そこで会話を打ち切った。
充分な休息をとった四人は、アシュレイの手書き地図を確認しながら、迷宮の最深部を目指す。ブブを先頭に、一切の迷いなく正解のルートを突き進んでいった。
(このダンジョンは確か、ドロップ品も宝箱もろくな物がなかったはずだ。この最短ルートこそが絶対の正解……)
「この扉を開けたらボス戦か。確か、ホブゴブリンソルジャーが二体と、奥にホブゴブリンソーサラーだったな?」
短剣を構え直したゴルドが振り返る。
「ブブと俺でソルジャーを一体ずつ抑える。アシュレイとイグリスはソーサラーを頼むぞ。ブブ、速攻で片付けるぞ!」
ソルテジオ・アシュレイ
体力22魔力22力11守11速11技34霊10 HP44MP44SP72GP20
イグリス
体力30魔力10力15守15速14技16焔5
HP60MP20SP32
ホブゴブリンソーサラー
体力24魔力50力8守10速10技8
HP48MP100SP16(初級魔法全体化)
「いくぞっ!!」
ゴルドが力任せに扉を蹴り飛ばすと同時に、前衛の二人が室内へと突入した。
【アクティブスキル:プロヴォーグ】
「オラァ!こっちを見やがれ!」
ゴルドが怒号とともに挑発を仕掛け、敵の注意を自身へと引きつける。
「オラオラァ——」
「ぐぐギギ」
一体のホブゴブリンソルジャーがゴルドに的を絞り、大きめの盾とロングソードを巧みに使い攻め立てる。
しかしゴルドはリーチの短いショートソードでありながら、巧みな足さばきで敵の隙を突き、的確に刃を刻み込んでいく。
一方、疾走のスキル【スピードアップ】を発動させたブブは、瞬時にもう一体のソルジャーへ接敵していた。
敵の機動力を奪うべく、膝裏へと容赦なくダガーを突き立てる。
「ギギヤァァァ!?」
「そのままイネ」
【ダブルエッジ】
体を回転させながら、両手に持ったダガーで敵の体を引き裂いた。
だが……。部屋の奥で杖を掲げたホブゴブリンソーサラーの口から、不気味な詠唱が漏れ出る。
「グガガギギ……!」
【ヒール】
光がソルジャーを包み、刻まれた傷が瞬く間に塞がっていく。
「チッ、やはりまずは魔術師を消さないと無理か。早くしろ!」
「うん! 僕たちもいくぞ!」
【スペルマジック:ウィンドアロー】
「はい!」
【アクティブスキル:ダッシュ】
ホブゴブリンソーサラーがそのまま視線をゴルドに向け魔法を唱えようと準備し始める……が、ゴルド達に攻撃を放つ前に、アシュレイの攻撃がソーサラーに届く。
【スペルマジック:シールド】
しかし、突如ソーサラーの周囲に半透明の魔力障壁が展開され、風の矢は弾かれてしまう。
「全体化のスキル持ちだっ、イグリス隙間なく攻撃して詠唱を潰すんだ!」
「了解です!」
【アクティブスキル:ラッシュ!!】
勢いを乗せたイグリスの槍連撃が魔力障壁を乱打し、バリンと甲高い音を立ててシールドを砕いた。
【スペルマジック:エアロブースト】
「イグリス、風魔法を槍に付与した! そのまま押し切って!」
アシュレイ自身もソーサラーに駆け出しながら、イグリスの攻撃力を補強する風の魔法を放つ。
【スラストォー!】
「ギギィィィッ」
鋭い突きがソーサラーの胸元を穿つ。たまらず後退し、距離を取ろうとするソーサラー。
「そう来ると思ったよ!」
【スラッシュ!】
そこへ先回りしていたアシュレイの横薙ぎの一撃が、ソーサラーの追撃魔法の詠唱を完璧にキャンセルさせた。
【ラッシュ!】
「ハァァッ!」
畳みかけるイグリスの槍が、無防備になったソーサラーの肉体を容赦なく刻む。追い詰められたソーサラーは土壇場で複数の火矢を展開し、前方へと解き放った。
「ギギィ」
【ファイアアロー】
(一度懐に入りさえすれば、知識のある僕たちの敵じゃない!)
「その程度の魔法は効かないよ!」
【ウィンドカーテン】
アシュレイが展開した風の壁が、迫る炎の矢をことごとく叩き落とす。
「イグリス、決めて!」
「ハァァァァッ!」
【チャージスラスト!】
全身の体重を乗せた渾身の突進が、ソーサラーのみぞおちを深く貫く。苦悶に身をよじり動きを止めた敵の背後へ、アシュレイの刃が忍び寄る。
【ダブルスラッシュ!】
交差する鋭い追撃が首筋を断ち切り、ソーサラーは崩れ落ちるように倒れ伏した。
——ホブゴブリンソーサラーHP0——
「よしっ! ふたりは!?」
アシュレイが振り返ると、ちょうどゴルドとブブの連携によって、最後のソルジャーが断末魔の悲鳴を上げて倒れるところだった。
「よしっ! ……ってなんだ、もう倒したのかお二人さん。やるじゃねぇか」
ゴルドが汗を拭いながら軽口を叩いた。
「まあ、危険度レベル一のダンジョンボスだからね。苦戦するわけにはいかないよ」
「ハッ、八歳のガキが言うことじゃねぇな。まあいい、とっとと水晶を壊すか。……ドロップ品は『魔力上昇の書』が一冊だけか」
「フン、レベル一のダンジョンで貴重な品が出た報告など存在しない。期待するなどお前らしくないな、ゴルド」
「いいじゃねえかブブ! 可能性はゼロじゃねぇんだろ?」
(……いや、ほぼどころか完全にゼロなんだよな。前世で何千回と周回したけれど、レベル一のダンジョンで稀少品が出た試しがない)
アシュレイは肩をすくめると、その思いを胸の奥にしまい込んだ。
(まあ、能力値はしっかり底上げされるし、成果としては充分かな)ね。
※レベル1ゴブリンダンジョン隠し要素。
——ボスエリアに着く前に合計千体のゴブリンを倒す (未達成)
——道中の宝箱で手に入る錆びた装備シリーズを合計五つ装備してボスに挑む (未達成)
——ボスとの戦闘開始後二十分経過すると出現するゴブリンキングを撃破する (未達成)
——全て達成で手に入るレアドロップリスト (ランダムで一つ)
錆びた魔盾、浄化魔法の書、召喚魔法の書 (ゴブリン)。
誤字報告、感想ありがとうございます。
本当にありがたいです




