2章-64話 王都ウサギパラダイス!
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王都近郊の草原地帯にて
そこでは今日もツノ兎達が元気いっぱいに駆け回っていた。
この辺りには人間達が住む巨大な都市——王都がある。
そのため定期的に騎士団や冒険者達が周辺を巡回し、大型魔物を討伐してくれるのだ!
……え?
何が言いたいのかって?
つまり——ここは僕達ツノ兎にとって楽園という事なのだ!
僕達は一応魔物だけど、できる事と言えば小さなツノで「えいっ!」って体当たりするくらい。
正直、その辺の大型犬にも勝てるか怪しい……。
だがしかし!この草原には僕達を食べるような魔物はほとんどいない。
たまに迷い込んできても、逃げ回り息を潜めて隠れておけば人間達が勝手に倒してくれる、まさに最高の環境なのだ!
しかもその人間達は肉が欲しければダンジョンへ潜る。
だから僕達を狩る人間なんて滅多にいない。
キュッキュッキュッ!(わっはっは!)
たまーーにボロっちい服を着た人達が追い掛けてくるけど
全力で逃げればすぐ諦めて帰っていく。
体力ないからなあいつらは!ふっふっふ。
今日も平和!今日も安全!今日も草は美味しい!!
ん?何か子供達が凄い勢いで走ってくるな?
「キュキュキュー!!」(また子供達が来たぞー!適当に走って逃げ回れー)
『キューー!!』(ラジャー!!)
——数分後。
「キュッ!?」
(あれれ?まだ追ってくるぞ!?)
「キュキュッ!?」
(スピードが上がっただとぉぉぉ!?)
「キュキュキューー!!」
(誰か助けてぇぇぇ!!)
――その日以降。
王都ツノ兎連盟には、一つの教訓が語り継がれる事となった。
それは『子供を見つけたら逃げろ』
…………いや何か違う?
『奇声をあげて突っ込んでくる子供を見たら死ぬ気で逃げろ!————全力で!だ!!』
彼らは決して諦めないのだ
我らという肉を手に入れる
——その瞬間までは!
そしてその子供達はというと……。
「ハーハッハッハッハッハッハ!!大量大量」
「肉祭りデスね!わーはっはっは!」
ルク達はご機嫌だった!
たった1時間程度の狩りでツノ兎が80匹も手に入ったのだ!
ここら辺はとても素晴らしい。
まさに兎パラダイス!!
ペシペシペシペシ
「おーい、何でアンタが気絶してるのよ〜??」
ツンツンツンツン
「…………運ぶのが面倒くさくなって、風魔法で飛ばしたのがダメだったのでしょうか?」
『………………いいから早く回復してあげなさい〜?』
旧市街地の孤児は生きた心地がしなかったという……。
呼んでもいないのに、これは流石にとルナスィラが突っ込みに来たほどだった。
————————
旧市街地
そこは王都の発展から取り残された場所であり貧しい者達が肩を寄せ合い、細々と暮らす街である。
仕事と言えば、王都の人々が嫌がる危険な仕事や汚れ仕事ばかり。
それでも得られる賃金はわずかで今日食べる物にも困る者は少なくない。
飢えは日常であり肉と言えば超高級品。
子供達にとっては一年に一度余物の干し肉を食べられるかどうかのご馳走だった……。
そんな場所に奴らはやって来た!
大量の兎肉にどこから出したのか分からないが栄養満点の野菜、そしてリンゴ。
それを超巨大な鍋に入れグツグツと煮込んでいくと、とても良い匂いが辺りを包み込む!
「ほ、本当にいいのか??」
ゴクリッと唾を飲み込み先程の孤児がルク達に尋ねる。
「無論だ!商人ギルドまで案内してくれるのだろう?」
「王都の人達に道聞いても難しすぎてよく分からなかったものね!最初から案内頼めばよかったのよ!」
「早くお友達も呼んできてください、いっぱいありますから」
「皆んなで食べるデス!」
パァァァ!と目を輝かせ少年が走り出そうとした時だった……。
「何の騒ぎだコレワァァァー!」
匂いにつられて既に集まっていた住人達を掻き分けながら、40代後半位の男性が膝を引きずりながら此方に歩いてくる。
「げっ!!頑固親父!…………アイタァァァ」
「誰が頑固親父だ馬鹿たれが!」
とその人物が少年の頭をどつく。
「すまないな少年達、いや王都の冒険者だろうか?すまないがその鍋は自分達だけで食べてくれないか?」
「なっ、何でだよ!クソ親父。せっかく食べさせてくれるって言ってんだぞ!」
「お前は黙ってろ!タダだと思って施しを受けたら後で何やらされるかわかんねーんだ!…………お前も大人になったらわかる……。」
「ハッハッハ我らをそんな悪党みたいに言うのは辞めてもらおうか!」
「そうよ!商人ギルドに案内してもらうお礼なの!厄介おじさんは帰ってくれる?」
「んな上手い話があってたまるか!商人ギルドに案内だと?あんなデカくて有名な場所に案内なんか必要あるわけないだろうが!!」
「「『…………っえ??』」」
ルク達は絶句し顔を見合わせた…………。
実際、その「あんなデカくて有名な場所」に辿り着けず旧市街まで来てしまった本人達である。
この男は何を言っているのだろう?こんな大きな街で迷子にならない人などいるわけないというのに…………。
「本当に辿り着けなかったのだが………??」
「………………?」
男の直感が告げた!
あれ?なんか嘘言ってる感じじゃないぞ?…………と
しかしそんな上手い話はこの世の中に存在しないのである!
「…………いや、俺は騙されんぞ!何が目的だ本当の目的を言え!!」
「「『…………本当の目的……。』」」
ルク達はハッ!とした。
気づいてしまったのだ、本当の目的が商人ギルドでは無いということに!!
「フッ、我とした事が中々辿り着けなかった焦りからか本当の目的を忘れるところであった」
「……そうね!商人ギルドは通過点だったわね!」
「そうですね、そもそも換金しなくてもまだラグノートの領主からもらった金貨いっぱいありますからね」
「この男中々できるデス!」
「…………な、何の話だいったい??」
男は困惑した!なんか思っていた話と違う気がするぞ?……と。
「「『我らの本当の目的……それは!』」」
新魔団がお決まりのポーズを決め高らかに宣言する!
『ショートケーキだ!!』
ババババーーン!!!
……………………???
住人達はみな頭にハテナを浮かべた……。
「よし!この具材たっぷりスープを食べさせてやるからショートケーキが売ってる店に案内してくれ!」
「いっぱいあるから焦らなくても良いわよ!」
こうして元Aランク冒険者であり、この旧市街地のみんなからは親父と慕われている男を完全に置き去りにし、肉祭りin王都旧市街地が開催されたのだった!
「フッーー」
元Aランク冒険者トウガイは、自作の葉巻を咥えながら鍋を囲んで笑う四人を眺めていた。
昔は俺にも、ああやって笑い合える仲間がいた。
信頼し背中を預け命を託した仲間が。
……まあ、あいつらは背中を預け合うどころか誰が1番でかい肉を焼けたか選手権を突如開催し住人を困惑させているのだが……。
(「どうだ!この兎肉の丸焼きは!」「たまには丸々煮込んで見るのもありデス!」「あら?2匹くっつけようとしたら丸焦げになっちゃった!?」)
……凄まじく頭が悪い。頼むから食わせてくれるなら普通に食わせてくれ!だが、昔の俺たちは違った。
俺は悪どい依頼は絶対に受けない、それを売りにやって来た。
だが、仲間は……。
王都で有名な裏社会のドン。卑劣で女好き、欲しいもののためならどんな事だってやる——情報王ブウタン。
そいつからの依頼で金に目が眩み、人に毒を盛るための毒薬を作るとわかっていながら、毒草の採取依頼を受けやがった。
勿論俺は猛反対した、そして説得の末なんとか分からせた。いや、わかってくれたと思ってた。
数日後のダンジョン内部。逃げ場のない階層で、俺は裏組織の襲撃を受けた。
仲間達は背後でヘラヘラ笑い、俺だけが執拗に狙われた。
命からがら逃げ延びたものの、この足は二度と元には戻らん。冒険者人生はそこで終わったんだ。
人は見返りもなく他人を助けたりはしない。俺はそれを嫌というほど学んだのだ。
だが……この状況はいったいなんだ??
あいつらは肉を配り飯を食わせ、ただ笑っているだけだった。
特に孤児と分かった途端、絶対食えねぇだろって量の肉を盛り付けていきやがる……。
見返りはショートケーキを売ってる場所への案内……。
……見回りの騎士にでも聞けば案内してくれると思うんだがな??
「スゥ…………フッーー」
タダの善意ほど信用ならねぇものはねぇ
この旧市街で生きていれば、それくらい嫌というほど思い知らされる。
親切の裏には必ず何かがある、だから俺は止めようとした。
……なのに。
あいつらは本当に何も要求しなかった。
周りの奴らがが腹一杯になって笑っている姿を見て嬉しそうに笑っていやがる。
褒められたい訳でもない
……いや、待て。
「すごい!魔法使いなんだ!!」
「回復魔法!ありがとう!」
「最強パーティー?凄い!」
「やっぱり凄い人達なんだ!」
なんて言われる度に、
『ハーハッハッハッハ!!』
と、四人揃って満面の笑みで笑いやがる
……謎のポーズまで決めて。
これはあれだな……、
褒められるのは大好きだコイツら!
むしろ滅茶苦茶チョロい……
旧市街の孤児達よりチョロい…………。
「……思ってたより面倒くせぇ奴らだぞコイツら」
煙草の煙を吹き出しながら、トウガイは深々と溜め息をついた。
(なお、スープはしっかり完食した)




