閑話 タウの学園生活
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タウサイド
王都へ到着してから一週間。
学園が用意した廉価な宿泊施設で、タウは村から来た同郷の仲間たちと必死に読み書きの猛勉強に追われていた。
そして迎えた入学式当日。ついに彼らは、王立学園へと案内される。
「……ここが」
広大な敷地に重厚な石造りの校舎、そして一分の隙もない厳重な警備体制。目の前にそびえ立つ圧倒的な存在感を放つ建造物を前に、少年たちは思わず足を止めた。
辺境の村では一生かかってもお目にかかれないような豪華な建物が眩しく輝き、支給された制服を着ているとはいえ場違い感が圧倒的にすごかった。
「近くまで来ると凄さが全然違うや……」
タウがつい漏らした呟きを皮切りに周囲の村育ちの生徒も緊張した呟きを漏らす……。
すると
「ヒヒーンッ」
馬の鳴き声にパカパカと軽快な蹄の音が響き渡り、タウたちは慌てて道を空ける。
振り返ると、いつの間にか豪華な装飾が施された馬車の列が続いていたのだ。
「貴族様は馬車で来るって聞いてたけど、こんなにたくさん……僕、本当に大丈夫かな」
立派な杖を携えた少年に、高価そうな絹のローブに身を包んだ少女。さらには、明らかに生地の質が異なる特別な制服を纏った名門の貴族子息や令嬢たちが、優雅に校門へと降り立っていく。
彼らはあまりにも洗練されており、タウから見れば同じ人間とは思えないほど異質な存在だった。
(…………本当にここでやっていけるのかな?)
周囲の者達の不安な声を聞いてると段々と決意が揺らいでくるタウ、しかしふと目を閉じるとレンカの言葉が頭をよぎった。
『つまり…怖いから行きたくナイ!と言う事デスネ!!』
「…………図星だったんだよな……。」
本当は怖かった……。
自分より優れた人達の中で、自分が何もできないと知るのが。
魔法使いにはなれないと突き付けられるのが。
そして1番辛い事は期待して送り出してくれた村のみんなを裏切ってしまうのではないか、失望させたいまうのでは無いか……。
そう考えると足がすくんだ……。
でも……。
「やれるだけ、やってみるって決めたんだ!」
懐に大事にしまってある巾着を握りしめる。
その中には、村のみんなが少しずつ出し合ってくれた大切なお金とお守りが中には入っている。
「……一人前の魔法使いになって、絶対に僕の故郷を豊かにしてみせる」
静かに一度だけ頷くと、タウは前を向き、王立学園の巨大な門をくぐり抜けた。
————————
入学生達は貴族もそうで無い者も纏めて広い行動に案内された。
案内された席へ腰を下ろすと、タウは緊張した面持ちで壇上を見つめ教師陣であろう人達を観察していく。
「……二十人も教師がいる。やっぱり学校って凄いところなんだな」
そんな事を思っていると音声拡張魔道具によるアナウンスと共に司会役の教師が一歩前へ進み出た。
「これより、王立学園入学式を執り行う」
続いて登壇したのは、厳格そうな白い蓄え髭を生やした六十代ほどの男性である学園長が低い声を上げる。
「新入生諸君、王立学園へようこそ」
「今年度から国養成もあり魔法の才能がある者であれば貴族でなくても入学できるようになった。貴族の諸君、平民と一緒は嫌だなどという声も上がってきていると報告を受けている!しかしこの学園では魔法の強さこそが正義と心得よ」
貴族の子供達が少しざわつくがそれを無視して続ける。
「平民の諸君、初めての学園に戸惑うかもしれないがしっかりと学び将来立派なまほになって欲しい!」
そして一呼吸深呼吸をすると。
「ただしこれは初めての実例で各家で教育を受けてきた貴族の諸君と教育とは無縁の生活を送ってきた平民の諸君では学力に差がある事も事実。」
「……よって今年は3つのクラスに分けある程度学力にあったクラス分けにする。成績次第では上のクラスに上がれるような仕組みも考えておる、皆励むように!」
生徒達の間でどよめき起こるもそのまま挨拶を終える。
そして学園長の挨拶が終わると、一人の少女が壇上へと上がっていく
プラチナピンク美しい長髪をなびかせ凛と伸びた背筋に胸を張った堂々たる態度の少女の準備が整うと。
「新入生代表、ソラリス・エレーノ様。」
その名がアナウンスから告げられた瞬間、あちこちから別のどよめきが起こる。
それもそのはず、ソラリスエレーノとはこの国の第二王女でありそんな人物が自分達と同じ制服を身に纏い、この学園へ入学すのだ!
しかもとても美人なのである!騒がない方が失礼である。
(お、王女様まで同級生なのか……。)
タウは完全にビビり散らかし硬直してしまう……。
エレーノは壇上へ立つと、一度会場全体を見渡しニコリと笑みを浮かべた。
この笑みで一体何名の男が堕ちたのだろうか……。
「皆様、初めまして私はソラリス・エレーノ。本日より皆様と共に王立学園で学ぶ、新入生の一人ですわ。」
その言葉に講堂が静まり返る。
第二王女でありながら、自らを新入生の一人と紹介したのだ!特に貴族の子供達は衝撃的な発言だった。
「今日という日を皆様と共に迎えられたことを、心より嬉しく思いますわ」
「育ってきた環境も得意なことも、苦手なこともそれぞれ違うでしょう。ですが本日この瞬間から、私達は皆同じ学び舎で学ぶ仲間ですなのですわ!」
ここで決める!とばかりにキメ顔を作るエレーノ
これが王族ですのよ!と言わんばかりに教師と生徒の心を掴みにかかる。
「誰もが初めから完成された魔法使いではありません!だからこそ学び、努力し、支え合い、時には競い合いながら成長していける三年間になればと願っております」
エレーノは胸の前でそっと手を重ねると目を閉じ、祈るように最後の言葉を続ける。
「至らぬ点もあるかと思いますが、その時はどうか皆様のお力をお貸しください。三年間、どうぞよろしくお願いいたします」
『王女さまー!!』
『一緒ついていきます!!』
講堂は大きな拍手と声援に包まれた!
タウや村育ちの子供達も自然と拍手を送ってた!
僕達もここでなら頑張れるかもしれない!
そんな期待を込めて優しい笑顔のエレーノを皆見つめていたのだった。
————————
しかしその甘い期待は、すぐに脆くも崩れ去ることになる。
掲示板で指定されたCクラスの教室に足を踏み入れたタウを待っていたのは、薄暗く重苦しい空気だった。
この教室に集められたのは、地方の村や町から集まった平民ばかり。
王女様と同じ空間で学べるかもしれないなどという幻想は、完璧に打ち砕かれていた。
エレーノがいるAクラスは、学園の中央にある豪勢なエリナに。
下級貴族や名のある商人等の子供達はAクラスから少し離れた場所に。
そしてCクラスはと言うと完全に学園の隅でさらには校舎も臨時で建てられたプレハブ小屋のような校舎となっていた……。
そりゃ悲しくもなるのである……。
ガラリ、と扉が開くと教師であろう目つきの鋭い30代くらいの人物が教室に入ってくる。
「諸君、とりあえずは入学おめでとうと行っておこう」
「私はCクラス担任となってしまったリンズだ、まぁ覚えなくても構わないぞ?すぐお別れになってしまうかもしれないからな」
投げやりな挨拶を終えると、リンズは一枚の書類を叩きつけた。
「さて、入学したばかりで悪いが早速諸君には学園最初の実習へ参加してもらう」
「え?そんな事説明にあったかな??」
教室がざわつくもお前らの意見なぞ関係ないとばかりにリンズは言葉を続ける。
「その名も『レベル1ダンジョン攻略演習』だ」
「え?ダンジョン??」
「いきなりすぎるんじゃ?」
「フン。国の意向だか学園長の考えだか知らないが、この名門校である王立学園に無能がいてはいけないのだ!」
ニッと笑みを浮かべると。
「よって!副学園長考案の元無能を蹴落とすふるいをかける事とした!もし期限内にレベル1ダンジョンを攻略出来なかったクラスは連帯責任で皆退学とする!」
「そ、そんな!」
「ダンジョンだなんていきなり無理です!」
「そうですよ!死ねって言うんですか??」
しかし、リンズは苦笑しながら続ける。
「無論、生徒達だけでやれとは言っていない、王女殿下を危険に晒すわけにもいかないからな!」
「まず、参加人数は10名を各クラスから選抜その者達がダンジョンに入る」
「さらに特別ルールとして一組だけ外部の冒険者パーティーを助っ人として招くことが認められている!コネや人脈、そして高ランク冒険者を雇える財力!それも力と言うわけだ!」
Cクラスはその言葉を聞いて完全に静まり返った。
「無理だ……。」
「そんな金ないよ……。」
「知り合いの冒険者なんているわけない……。」
村育ちの人達にとってレベル1とはいえダンジョンを攻略出来るような有名な冒険者との繋がりなんて、あるはずがないのだから。
タウは一瞬ルク達の事を考えたが……。
「確かもうすぐCランクだって言ってたような……?」
もうすぐCランク、つまり現在はDランクという事……。
「流石にダンジョン攻略は無理だよね……はぁぁ」
こうしてCクラスは絶望に包まれるのであった。




