2章-63話 王都を満喫しよう!
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朝
それは1日の始まり。
いい朝を迎える事こそがその日1日を元気に過ごす秘訣なのだ!
「ハーハッハッハ!!」
「わーはっはっは!デス」
Sランクパーティ白銀の守護御用達である最高級ホテル。その広々としたテラスでは、王都の朝日に向かって高らかに笑い声を上げる二人の姿があった。すっかり高級宿の雰囲気に浮かれきっているルクとレンカである。
その後ろでは……。
「ま、また負けた……どうして今日リバーシを始めたばかりの初心者に私が……。もう一回よ!」
「もう五回目だぞ!終わりだ終わり!!俺はこれからキテツさん達にダンジョンの定期見回り連れていって貰うんだからな!」
初心者相手に五連敗を喫し、絶望のオーラを漂わせるサキと呆れ顔で盤面を片付けるノクト。
そのすぐ横で、リリは一人真剣な眼差しでブツブツと呟いていた。
「…………ふむふむ。このデザート屋さんは要チェックですね。」
宿に置いてあった王都の観光案内を真剣な表情で読み漁っていた。
各々が思い思いの朝を満喫していると、ノクトの腕につけた白銀のイヤリングが点滅する。
「お?時間だな……。さて、俺はそろそろ行く。当分王都にいるんだろ?」
「ウム!また今度共に狩にでもいくか!ハッハッハ!」
「私達もダンジョンに入る為の許可降りるといいですね」
「死なないように頑張りなさいよ〜」
「お土産はニクでいいデスヨ!」
四人に見送られながら、ノクトは軽く手を振って少し嬉しそうにしながら部屋を後にするのであった。
「よし!じゃあ我らも決めるか!」
「「「——?なにを??」」」
「フッ、無論決まっているだろう?————王都でやりたい事選手権をここに開催する!!」
「「「おおーー!!」」」
王都管理下のダンジョンは完全に許可制な為、王都へ来たばかりで入場許可待ちのルク達は、しばらく王都観光を満喫する事にしたのだった
——————
白熱した『やりたいこと選手権』が幕を閉じ、時刻は午前十時を回った頃。
「よし!まずは換金だな!いっぱい食べる為にはいっぱい金が無いといかん、これまで貯めておいた素材を少し換金しようでは無いか!」
「そうね!使わない薬草もいっぱいあるし売っちゃいましょ?」
「確か商人ギルドには大通りを真っ直ぐ歩いて赤い看板の店を曲がって少し先にある大きい建物でしたね?」
「まずは大通りを目指せば良いんですね!フンす!」
「よし!出発だ!!大通りと言っていたがもう宿の前の道が広いでは無いか!ハーハッハッハ!」
「人も多いしそれっぽいデス!赤い看板を探せばいいデスネ?」
四人は勢いよく宿を飛び出した!
いざ行かん!待っていろショートケーキよ!
っと元気いっぱいだった………………。
——のだが?
王都の街並みを眺めながら歩き、赤い看板らしきものを見つける度に「これか?」と曲がり、また別の赤い看板を見つけては曲がり……。
気付けば一時間が経過していた。
ふと周りを見渡せば大きな通りに沢山の屋台が並んでいる。世間一般ではこれを屋台通りと言う!
「…中々つきませんね?大きな通りではあるんですけど」
「まぁ、王都だからな!これだけ大きい街だ時間がかかってもしょうがないだろう!」
「私、お腹空いたんだけど?先にご飯にしましょうよ?」
「賛成デス!!」
…………頑張れルク達!
頑張ればきっと辿り着ける!
例え商人ギルドとは真逆の方向に全力で進んでいたとしても!!
————————
目についた屋台で買い食いを重ね、すっかりお腹を満たしたルクたちは、再び意気揚々と歩き始めた。
「タレ焼き串と言うのは絶品だな!あのタレは是非欲しい!絶対商人に売ってもらおう!」
「そうね!樽で買いましょ!!」
「金貨10枚!って言ってたから10枚渡したのに何故悲しそうな目で見てくるんですかね?不思議な店主でしたね?」
「本当は一本銅貨3枚なら最初からそういうといいデス!紛らわしいデス!」
ルク達は商人ギルドを目指し、伝説の魔道具(?)である棒倒し君(普通の棒)を使いながら歩いていく……。
……だが、進むにつれて先ほどまでの賑わいは嘘のように引き波のように消え、辺りは徐々に静まり返っていった。
あれほど乱立していた屋台は姿を消し、立ち並ぶ建物もどこか煤け、年季が入っていく。
そしてついに、ルクたちは目的地へと到達した!
…………王都西門に!
目的地の逆方向に行くセンスでは誰にも負けない!それが新魔団なのだった……。
「…………出口だな?」
「…………西門って書いてあるわね?」
「…………商人ギルドでは無さそうですね?」
「もう狩に行きまショウ!」
(……まあ、ここから外に出られるのなら、今日はこのまま狩りに出かけて、商人ギルドは明日に回せばいいか!)
そんな超ポジティブ思考で門をくぐり抜けたルクたち……だったのだが!
西門から出るとそこは石造りの立派な街並みとは対照的な年季の入った木造建築が肩を建ち並んでいる市街地へと続いていた。
崩れかけた外壁、割れたまま放置された窓ガラス。無造作に干された洗濯物と、薄暗く入り組んだ細い路地。ルクたちにとってはどこか馴染み深い光景だが、先ほどまでの煌びやかな王都とはまるで別の街のような景色が広がっていた。
この場所は『旧市街地』。
かつて王都が小さかった頃の住宅地だが、都市の発展から取り残された結果、現在では貧民街として知られる王都有数の治安悪化地域であった。
「……なんだか急に雰囲気が変わりましたね?」
「街の隣に村があるのね!すごいわね王都って!」
「こっちのほうが落ち着くな!」
……などと呑気なことを言い合いながら外へ向かって歩いていると。
ダッ!!
と路地裏から1人の少年が走り出し、ルクに体当たりしようとして……
「…………ん?——えいっ」
「え?————うわぁぁぁ」
すっと差し出されたリリの足に見事引っかかり、少年は派手に絶叫しながら地面へダイブした。
「………………ん?」
「リリって時々酷い事するわよね?」
「でもあのままだったらルクに当たってたよ?」
「前を見て走らないこの子が悪いデスネ!」
誰もスリだとは思わない……。
……なぜならスリにあった事がないから!!
スルメイカなら分かる!あれは美味かった!
「くそっ」
少年はすぐさま立ち上がり、その場を離れようとする。
……が。
そこには既に、新魔団による完全包囲が完成していた。
何かよく分からないが、ドヤ顔できそうな気配があれば逃がさない。
気配が無ければ作りに行く。
それが新魔団なのだ!!
「…………チッ、なんだよ……別になんも『と』ってねーぞ」
『…………採る??』
ルク達は何を採ろうとしてたんだろうと辺りを見渡すと……。
道の端っこにまだ小さいたんぽぽが一本……。
「……フム」
ルクは考える……。
(確かに、タンポポは我々もよく食べている! そのまま噛むと少し苦いが、花の部分はすこーしだけ甘いのだ!)
「…………ふーむ」
(よく見たらこの子、服もボロボロでガリガリに痩せているわ……。昔の私たちみたいに……)
そして新魔団は一つの結論に辿り着く!!
「「『やはり狩りだな!』」」
そう、狩りをしてこの少年に沢山お肉を食べさせてあげよう!という結論に。
盗賊には容赦ないが、孤児にはとても優しいのだ!
お腹が空いている事は辛い事なのである!
因みに少年はと言うと
(ひっ……!か、刈り殺される……っ!?)
思ったよりもヤバい連中に手を出してしまったと震えるのであった。
「さぁゆくぞ!狩りへ!」
「ついてくるデス!おぶってあげるデス」
ルク達は走り出す!
泣きながら喜んでいる少年を背良い王都の外へと!
狩と聞いてそんなに嬉しそうに泣き喚くとは!やはりお腹が空いていたのだ。
任せろ!狩は得意中の得意だと元気いっぱいに進むのであった!




