2章-59話 護衛依頼とノクトの頑張り
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ソルテジオアシュレイサイド
入学生ジーヌを乗せた馬車が辺境都市リサナクを出発してから2週間程が経った頃。
アシュレイはソルアルディアとの特訓の合間に貧民街の改革を少しづつ進めていた。
「ジーヌはそろそろ貿易都市ヴァラードについたあたりかな??一旦そこで休憩を挟んで王都に向かうんだったはず……」
ふとアシュレイがジーヌの事を思い出したその時ズキンッと頭が痛んだ。
それは手に入れた勇者の称号が示す超直感であり、それにより前世の埋もれていた記憶が蘇る。
それはゲームのワンシーン。プレイヤーがとある森の中を訪れると完全に破壊された馬車と子供の遺体が複数あり、そこを調べるとその者達の名前と魔法の書が手に入るイベント。
多くのプレイヤーは魔法の書だけ回収し、遺体の名前など気にも止めずに次の目的地へ向かっただろう。実際アシュレイもそうだった。
しかし――。
イベント調査時に表示される犠牲者達の名前、その中に確かに『ジーヌ』という名前があった事を思い出してしまう……。
「…………まさか!?」
そう、ジーヌは学園へ辿り着けなかった……。
王都へ向かう途中で[何者かに]襲われ、命を落とす運命だったのだ。
「クソ!!」
「どうしたそんなに慌てて?」
アシュレイが駆け出すとセイルソルトが何かを察する。
「このまま行くと王立学園行きの馬車が襲われる!すぐに出る!!」
「何だって?……いやダメだ……。残念ながらアシュレイ、お前が行く事を許可する事はできない」
「なんで!!人が死ぬんだよ!?」
つい怒鳴り声を上げるアシュレイにも動じず、冷静な判断を下すセイルソルト。
「これから第二王子殿に会いに王都に向かうんだろ?」
「ジーヌを助けてから一緒に王都に向かえばいい!そうだろ!兄さん!」
ハァ……とセイルソルトはため息をつき力強い目でアシュレイを見つめた。
「王族との面談何だぞ?しかも第二王子殿には好印象を持ってもらいたいと言っていたな?そんなついでみたいな扱いで王族に会うと??一度冷静になって話を聞かせてくれ。」
…………。
完璧な正論を叩きつけられてはアシュレイは何も言い返す事ができずただ沈黙するしかなかった……。
「各地の領主に馬車の護衛を強化できないか伝達を出しておく。それで我慢してくれ」
…………すまないジーヌ。
どうか無事でいてくれ……。
——————————————
辺境都市リサナクを出発してから三週間後。
王立学園行きの馬車は、貿易都市ヴァラレート近くの村へ立ち寄っていた。
この村でも学園へ向かう生徒を乗せ、再び王都へ向けて出発する予定である。
「ここから先は俺達が護衛を引き継ぐ。ここまでご苦労だったな」
「は、はい!聖騎士の称号を持つキテツさんに会えて光栄です!」
ここまで護衛を務めていた冒険者が緊張した様子で、目の前の冒険者を見つめる。
相手は国内でも名の知れたSランクパーティー対してこちらはCランクになったばかりの冒険者。
緊張するなという方が無理な話なのだ。
「で?なんでSランクパーティー様とノクトなんかが一緒にいるんだよ??」
「チッ、どうだっていいだろ別に?とっとと行けよ。」
「何だよノクト?昔一緒にパーティー組んでただろ?まだ怒ってんのか?」
「こらこら喧嘩はみっともないぞ、古い知人から鍛えてやってくれと言われて行動を共にしてるんだ、ノクトは優秀な冒険者になるよ。」
「それにしても急に護衛パーティー変更してくれだなんてな?お前らなにへましたんだ??」
「はぁ?しっかりと護衛してきたが?逃げるしか出来ないノクトとは違ってなぁ?」
「あぁん?」
「やるか!?」
「こらノクト、今のはお前が悪いぞ!……全く、どうやら各地の領主様に伝令があったらしくてね、王都行きの馬車は全て高ランク冒険者が護衛を担当することになったんだ。」
「そうそう、それで偶々近くにいた私達Sランクパーティー白金の守護が護衛する事になったって訳。ほら入学生達も待ってるし出発するわよ?」
こうして王都に向けて冒険者5名と御者2人、入学生6名をつれた馬車は出発するのであった。
馬車が村を出発してからさらに4日程が経った頃。
ノクトが何気なく探知スキルの訓練されてをしていると馬車が王都とは別方向に進み始めた事に違和感を覚える。
「あれ?おいおい何処行くんだよ御者さんよ?そっち行くと神隠しの森方面だぜ?」
ノクトが分かれ道を別方向へと進もうとした馬車を止めた。
「何言ってんだノクト、王都に行く前に森に行く手筈だっただろ?」
「そうよノクト。焦りは禁物ですわよ?」
しかし、御者も馬車の子供達もSランクパーティーですらそれが当たり前だという反応を見せる……。
「………………は?おいおい、一体どうしちまったんだ??村を出る前は真っ直ぐ王都に行くって言ってたじゃねぇか?」
精神干渉とは本来、少しずつ認識を書き換えていく魔法なのだが……。
以前ノクトを支配した面倒くさがりの天使は強引に精神へ魔法をねじ込んだ……
その結果、ノクトの精神には精神干渉への耐性が生まれていたのだ!よって二度目となる今回は、魔法の効果が大きく弱まっていたのである。
「…………嫌な感じがするな。」
ノクトは腰のポーチへ手を伸ばすと何かを取り出し
「悪いが、確かめさせてもらうぜ」
「オイ!ノクト何だそれは??」
聖騎士のリーダーがノクトを制止するが無視して地面にそれを投げつける。するとブシュゥゥゥーー!!とあたり一面を青い煙が包み込んだ。
それは以前に精神支配を受けた時から考えていたノクトなりの対策であり、鎮静効果のある薬品を煙玉に混ぜ合わしたもの。
リーダーが制止しようとしてきた為狙いが狂い完全な解除には至らなかったが。それでも今まで当たり前だと思っていた認識に、小さな亀裂が入りSランク冒険者達に猛烈な違和感が襲いかかる。
「…これは?…ソーテ」
「……やってみます!」
【スペルマジック光魔法:ホーリーブレッシング】
聖騎士のキテツが聖職者のソーテに合図すると、ソーテによる状態異常回復魔法が発動すると、光が馬車の周囲を包み込むと正常な思考回路が取り戻されていく。
「……王都へ向かう途中で森へ寄るだと?」
「そんな予定あったかしら?」
「いや、なかったかと??」
「…………これは、どう思う?」
「そ〜ね〜??私達に精神系の魔法をかけた奴がいるって事よね?そんな奴いるの?」
「……分かりませんがここで気がついて良かったですね」
「そうだな、森には近づかず王都に一直線に向かおう……。」
「……………………。」
御者は考える、いや正確には御者に扮した天使は考える。
森には2翼の天使を4体待機させてあるが森へ行けない以上合流は不可能。
ならばここでコイツらを全て始末する……
いや、Sランクパーティー4人相手に1人では流石に厳しい。ならばせめて子供達だけでも殺してすぐさま離脱するしかない……。
そう結論づけ行動に移そうとした直後だった。
唐突に脳内に緊急指令が下された。
それはヒイハが倒された記憶を天使が共有した事により作戦の失敗を告げる緊急指令。
そしてそれは天使が人間の敵だと言う事がバレた瞬間でもあった。
その為大天使は即座に方針を変更し更なる指令を下す。
『まだ人間に潜伏中者はそのまま継続!決して正体を明かさず人間社会に溶け込み期を待て』
全ての天使の脳内に響き渡った命令によりジーヌ達は知らぬまま死の運命を回避することとなる。
しかしその裏で、人類と天使の戦いは静かに新たな局面へと進み始めていくのであった。
「…………どうやらおかしな事になってたみたいで??助かりました。このまま王都に向かわせて貰いますね」
御者に扮した天使が自分も被害者だと言わんばかりに進路を王都へと戻した。
こうして、ルク達の活躍によりジーヌの命は救われる事となったのだった。




