5話
時は経って欲しくないときこそ、早く経ってしまう。
世の中の条理は嫌だと思った。
そして、日付が変わると同時に結城はどこかへ電話をかけた。
僕の推察ではおそらく、彼女のところへだろう。
「もしもし? 俺だけど。 約束の日になったから、
別れて欲しい。 いや、別れる。
お前からは何も言わなくていいから。 それじゃ」
一方的に捲し立て、一方的に電話を切った。
(いくらなんでも、あんまりじゃ……)
そんなことは気にも留めていないのか、こちらに近づいてくる。
「あいつとはこれでなんの関わりもなくなった。
だから、もう一度言う。 お前が、碧李が好きだ」
半年前よりも幾分かかっこよくなった結城の真剣な顔は、
何も否定できないような雰囲気を漂わせていた。
「僕も、好きだよ。 気持ちは少しも変わってない」
そう告げると嬉しそうに微笑みながら、口付けを求めてきた。
その要求を断る必要もなく、そのまま受け入れた。
少し熱を持った唇を押し当てられ、自分の唇さえも
熱を持っているように感じた。
控えめな押し当てるだけのキスは、段々と深くなっていく。
押し当てられた唇を、舌で微かに隙間を作られ、
そのまま僕の口内へと捻じ込ませた。
初めての感覚に戸惑いはしたものの、
結城の背中に腕を回すことで戸惑いを消した。
身を任せされるがままになると、
体から力が抜けていく感覚に陥る。
「……っんぅ ……ん」
微妙な感覚で呼吸ができるようにしてくれているため、
しばらくの間は感じていたかった。
結城の温もりを。
しかしそれにつれて、キス以上を求めてしまう自分がいる。
心の準備はできていないのに、焦燥が募る。
唇が離れていく。
「結城…… もっと……」
「……碧李っ」
少し潤んだ瞳で結城の顔を見上げると、困ったような顔をする。
自分でもわかっている。 困らせるだけだと。
それでも、求めずにはいられなかった。
今まででの想いが押し寄せるかの如く、僕から口付けた。
強く、強く、深くしていく。 さっきのキスよりも、濃密に。
このまま、夜が明けてしまわなければ、
こうしていられるのだろうか?
この気持ちが一緒ならば、どれだけ嬉しいだろうか……
「碧李、そのくらいにしておけ」
「どうして? 我慢できないよ。
ずっとずっと、こうしたかったんだよ?」
今にも泣き出さんばかりだった。
止められても止められないくらい、
感情の高ぶりを抑えられない。
「好きなんだ、結城がっ!
このまま、抱かれたっていい……」
自分でも驚くくらいだった。
こんなにも、自分の思っている以上に好きなんだ、
と実感した。
もう後戻りできないのなら、何をしたって一緒なのだから……
「……っそれは、だめだ。 そんな……」
「どうして? キスはよくて、抱かれることはだめなの?
それとも僕は抱けない?」
不安が募る。 否定されたように、感じる。
好きだと言ったくせに、拒む理由はないはずなのに。
どうしてそんなこと言うのかわからない。
「そういうわけじゃない。 お前に負担がかかり過ぎる。
むちゃはさせたくない……」
「そんなの平気だよ? 結城なら平気……」
これ以上は反論されないように、
僕は自分の服に手をかけた。
着ていたパジャマのボタンをひとつひとつ外していく。
結城は目を見開き、唖然としている。
そんなことにはお構いなく、ボタンを外しおえた。
そして、上を脱いだ。
「碧李、だめだ…… それ以上は……っ」
「嫌だ…… 結城、抱いて? お願い……」
結城の頬に手を当ててねだると、観念したように、
知らねぇからな、と言ってベッドの上に碧李を押し倒した……




