3話
「碧李俺は本気だ」
「だとしても、言えないよ。 結城だってわかってるでしょ?」
だからこそなのかもしれないけど……
いくら口では否定していようと、心はそれに従わない。
僕が女ならば、楽に受け入れていたのかな?
でも今、好きだと言ってくれている。 たとえ、嘘だとしても……
それを信じてみるのも悪くないかな、とか思ってしまう。
「一度好きになったら、どうしようもねぇんだよ。
いくら碧李が否定しようと、俺は諦めねぇ」
だったら僕にどうしろっていうんだよ?
受け入れろ、これが現実だから、って?
今まで何度そうしてきたことかわかったもんじゃない。
自分でさえわからないくらいなのに……
「じゃあもし、それで何か変わるとして、これから先どうするの?
どうにかできなくなるくらいにまでいってしまったら、
どうするの?」
そう、その後はどうするの?
ただ気持ちを伝えて、付き合い始めたとして、それだけ?
絶対にそれだけじゃすまなくなるのは目に見えることだ。
僕の選択肢は絞られてくるというのに。
「その後は、付き合う。 そんで、絶対に別れない。
って言っても未来のことなんかわかんねぇけど……」
未来なんて誰にもわからない。 現に僕はその状況に陥っている。
好きだよって言ってあげたい。 そう望んでいるから、僕自身。
一度言ったら、止まらなくなるだろうな。
もうどうでもよくなってきた。
考えれば考えるほどに、わからなくなる。
なら、もういっそのこと、言ってしまったほうがいい……
そう、思ったから言った。
「好きだよ……結城」
「えっ……」
驚かなくてもいいのに。 せっかく言ってあげたのに。
僕は座っていた体の向きを結城の方に向けた。
そして、改めて結城の目を見つめて言った。
「好きだよ。 ずっとずっと前から、好きだった。
でも本当は言いたくなかった……」
言葉を重ねるにつれて、合わせていた目を逸らしてしまった。
どう思っているのだろう……
馬鹿だ? それとも、嬉しい? それとももっと別のこと?
しばらくの沈黙が続いた。
それを結城が破った。
「……最初から素直になれよ」
そう言って僕を抱きしめた。
優しく、包み込んで。 だから思わず泣きそうになった。
小さい子みたいに声をあげて、縋り付きそうになった。
でも、しなかった。 高校にもなってそんなことできるわけないから。
「素直になれてたら、どうなったと思う?
酷いことになってたと思うよ」
「そうかもな。 でも、これからは俺がお前の恋人だ。
誰も近づけねぇから、覚悟しろよ?」
「それは、逆に怪しまれるからだめだよ」
少しの間だけでもいい。 幸せな夢でもいい。
もう少しこうしていられるなら、それで……
結城の背中に腕を回すと、抱きしめる力が強くなった。
だから僕も強く抱きしめ返した。
温もりを互いに求めるように、しばらくの間抱きしめあっていた。
「碧李、こっち向いて」
結城の声音が優しかった。 だから何をされるかわかった。
その上で指示に従い顔を上げた。
そうしたら、嬉しそうに微笑んだ。 僕もつられて微笑んでいた。
結城の顔がゆっくりと近づいてきた。
僕はそれに従い目を瞑った。
少しの間を待てば、すぐに唇に同じそれが重なった。
もう後戻りはできなくなった。




