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35.鷹也の気持ち①

一目見たときから、可愛いと思っていた。


 ファミレスに行ったらどう見ても新人という感じの不慣れそうな男の子がパフェを運んでいた。黒髪で目がくりっとしてて、可愛いなと思ってぼーっと見てたらその子はそのまま俺にぶつかって来た。俺のお気に入りのバンドの白いTシャツにベッタリ染みが付いたけど、男の子が一生懸命拭いてくれて、その姿が更に可愛かった。

 どうにか繋がりたいけど、いきなり連絡先聞くのもな……。

 そう思ってSNSで繋がろうとしたけど、返ってきた答えは「携帯持ってないので……」。このときはガードが固い子だな、と思っていた。

 正直、調子に乗ってたと思う。

 自慢じゃないけど俺はフォロワーが何万人かいて、イケメンって騒がれたりしてて、まぁ面倒なことも多いんだけど、もしあの子がフォローしてくれたら「おっ、なんか凄い人じゃん」とか思ってくれるかなって下心があった。

 あっさりフラれてかなり恥ずかしかった。

 けど家に帰ってもやっぱり忘れられなくて、あの日の後何度かファミレスを覗いたのに、彼はいなかった。


 だから入学式で会った時は本当に感激した。

 携帯がないというのが事実と分かった時、どうやって仲良くなろうか必死に考えた。今までは仲良くなるイコール連絡先交換。まだ微妙な関係のときや相手の出方を探るときは先にSNSで繋がる。SNSでは会ったことのない友達もたくさんいる。

 でも緑は携帯がない。

 とにかく電話と直接会うしかない、そう思ってひたすら行動した。

 緑という名のその子は知れば知るほど魅力的で、ありのままの俺を見てくれる。携帯の世界に緑はいないんだけど、緑といると俺も携帯の世界から抜け出せる。


 中学の頃、勇也が俺とのツーショットや普段の生活を頻繁にネットにアップしだした。俺たちはイケメン兄弟としてすぐに注目を集め、最初はフォロワーがどんどん増えるのが面白かった。勇也は収益を上げるのに夢中になってるようだった。

 写真をアップする度に無数のいいねやコメントが付く。「かっこいい」「それどこで買ったの?」「センスいい」。

 反響が楽しくて一時期SNSにのめり込んでいた。

 けれど、フォロワーが増えるとアンチが湧く。時折、「気持ち悪い」とか、「遊ばれた」など、心ないコメントやありもしないデマを浴びせられた。画面の向こうから石を投げてくる人間に俺は凄く腹が立ったし不気味だと思った。

 勇也はそういうのを大抵無視していたが、酷いものはあらゆる手を使い追い詰めていた。俺はそこまでのバイタリティは無く、とにかくブロックしては忘れるまで悶々とするのを繰り返してしまう。

 それから、俺がフォロバしたとかしないとかでクラスメイトが大揉めしたときは本当に辟易した。最終的に面倒になってクラス全員のフォローを外したんだっけ。

 あの小さな手のひらに収まる携帯の中の世界で、俺たちは何をやってるんだろう。

 自分が写った写真や動画を毎日何度も投稿していた俺は、中学を卒業する頃にはときどき風景の写真をアップするくらいになっていた。勇也の知り合いに服のデザイナーがいて、その人は俺もお世話になってるからそのモデルだけは続けている。

 勇也は俺とは反対に積極的にSNSを活用していて、各種SNSのフォロワーは増え続けている。

 ときどき勝手に俺が写った写真をアップするのは頭に来るが、その都度結構な金額を振り込んでくるので大目に見ている。

 昔はフォロワーの数は俺を肯定してくれる人の数だと思ってた。でもそんなのアカウントを消せば消失する繋がりなんだ。

 緑は俺のフォロワーじゃない。だけどもっともっと深く繋がっていたい相手だ。


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