28.別々の文化祭
夏休みを終えると、また昼休みだけ雪原と会う生活になった。
校内は文化祭の準備で忙しい。しかし俺のクラスは皆やる気がなく、駄菓子を仕入れて販売するというなるべく手間のかからない催しになった。雪原のクラスは動画を作って上映するらしい。
俺のクラスはほとんど準備することがないが、雪原のクラスは熱心に動画撮影を行っていた。雪原は面倒くさがっていたが、「ビジュアル担当」として参加を余儀なくされていた。
雪原は嫌なことは嫌と言うタイプだが、頼られると断れない部分がある。
昼休みに撮影をすることも多く、雪原はご飯を食べると教室にすぐ戻る。
「わざわざ面倒だろ、文化祭までは別々に食べよう」
と提案してみたが、雪原は受け入れてくれなかった。
心配しつつも、俺は嬉しいと思ってしまった。
文化祭当日、俺は町田と一緒に雪原のクラスを見に行った。
「……人多すぎない?」
町田の言葉に俺は同意した。教室に用意された椅子は全く足りず、廊下まで人が溢れている。
「鷹也君、そういえば去年も騒ぎになってたよね」
俺は去年のコスプレ写真館を思い出した。
「この人混み、雪原目当て……?」
「ま、本人隠れてて動画だけなら去年みたいなことにはならないでしょ。あ、やっぱり鷹也君は別のとこに避難してるって」
町田が携帯を見ながら教えてくれた。
俺たちは廊下で女子生徒たちの後ろから動画を見た。
校内の様々な場所で生徒たちが数人ずつダンスをして繋いでいく動画だった。曲もダンスも今どこでも流れている有名な物で、かなり盛り上がっている。
雪原は一番最後に一人で登場した。黄色い声が飛び交う。雪原だけ顔のアップがところどころ挟まれていた。
体育祭の時も思ったが、本当に芸能人みたいだ。
「カッコつけてるねー」
町田はニヤニヤしながら動画を撮っていた。
「あ、ごめん、俺勇也君に呼び出されたから行かなきゃ」
動画が終わる前に町田はどこかに行ってしまった。俺は最後まで見て拍手を送った。
雪原に会いたいがどこにいるか分からない。ひとまず教室に戻ったが町田はいなかった。
結局町田は戻って来ず、「あいつ片付けサボりやがった!」とクラスメイトに怒られていた。
雪原への連絡手段を失った俺は、迷った末に雪原のクラスへ行った。やはり雪原はいない。
仕方なくその辺の男子生徒にメモ紙を雪原に渡してもらうようお願いした。
『会えたら良かったけど、今日はバイトだし帰る』
連絡をせず帰ったらまた雪原が気にするかもしれない。そう思いメモを残した。本当は俺だって雪原と文化祭を回りたかったが、あの人気者をイベントの日に捕まえるのは無理そうだ。
文化祭は今年も雪原とは回れなかった。
雪原は翌日バイト先に来てくれた。
「緑……! ほんとにごめん……。俺も緑を探したんだけどすれ違ったみたいで……」
「なんかこのパターン多いな」
俺はなんだか笑ってしまった。
「謝らなくていいって。別にいいよ」
だって仕方ないんだ。連絡が付かないのは俺のせいなんだから。
雪原はそれでもやっぱりごめんと言って缶ジュースを奢ってくれた。雪原の気が済むなら、と俺は受け取った。
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