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16.文化祭当日

文化祭前日、セットも衣装も全て揃い、クラスメイト達はこぞって撮影し合っていた。

「緑!」

 呼ばれて振り返ると雪原に猫耳帽子を被らされた。被せてきたくせに、雪原は俺を一目見るなり手の平で自分の顔を覆っていた。

「おい! そんなに変かよ!」

 慌てて脱ごうとしたら雪原に頭を強く押さえつけられて脱げない。

「くそー、何なんだよ!」

「写真撮るまで脱がないで!」

 そう言うと雪原は携帯を近くにいた坂本君に渡して撮影を頼んだ。それから俺の背後に回り込んで後ろから抱きしめるような態勢になった。頭に顎を乗せている。

「な、おま……」

 俺が動揺している隙にバシャバシャと坂本君が容赦なく俺たちを撮影した。

「坂本君ありがとー!」

 雪原はお礼を言って携帯を引き取った。

「え、八尋君可愛くない!?」

 通りかかった女子に見られて俺は慌てて帽子を脱ごうとした。しかしそれより先に雪原が凄い勢いで帽子を脱がしてきた。俺の髪はボサボサだ。

「何なんだよ突然被せたり脱がせたり……」

「気にすんなって」

 雪原はニコニコしながら俺の頭をポンと叩いた。おもちゃにされた気がしたが、雪原の笑顔を見てると俺はまぁいいかと思ってしまった。


 いよいよ文化祭当日、俺たちのクラスは時間が経つに連れて人が殺到して大混乱に陥った。

 原因は雪原だった。

 文化祭は体育祭と違って誰でも入場できる。雪原を見た人達が次々にSNSでそのことを拡散し、女性が押し寄せたらしい。俺はクラスメイト達の会話からその情報を知った。どれだけ注意しても雪原を盗撮する人が後を絶たず、雪原は空き教室に避難することになった。雪原は「ごめんな」と言いながら名残惜しそうに教室から逃げて行った。

 俺は休憩になったら会いに行こうと思い、黙々と写真館の仕事を手伝った。

 雪原が去ってしばらくすると人は落ち着き、女子達に休憩に行っても良いと言われた。俺は雪原がいるはずの教室へ駆け足で向かった。

 ところが扉を開けると誰もいない。どこか別の場所に移ったのだろうか。トイレかもしれないと思いしばらく待ってみるが一向に戻ってくる気配がない。こんなとき携帯があればどこにいるかすぐに聞けるのだろう。

 どこか別の場所に移ったのだろうと判断し、俺は空き教室を見て回った。しかし広い校内で携帯無しに探すのは至難の業だ。

 一度教室に戻って誰かに連絡してもらおうか。

 俺はトボトボと来た道を引き返した。

 教室に戻ると雪原をよく遊びに誘っている男子達に思い切って声をかけた。

「雪原どこか知らない?」

「え? 聞いてみようか」

 すぐにメッセージを送ってくれた。

「パソコン室だって」

 返事はすぐに来たようだ。羨ましい、と言う気持ちを押し殺して俺は礼を言った。

 パソコン室に早歩きで向かったが、開けるとまたしても誰もいなかった。俺はがっくりと肩を落とす。なんだか疲れてしまった。

「無駄すぎる……」

 椅子に座り天井に向かってそう呟いた。携帯さえあれば一瞬で済むのに、俺は歩き回って結局まだ会えない。

 それでも雪原は俺を探してくれてるのではと期待する部分がある。

 結局雪原はパソコン室には現れず、俺はまた教室へ戻った。

 その頃にはもう閉会の時刻になっていて、教室では片付けが始まっていた。

「雪原は?」

 と片付けをしながら小道具係の女子に尋ねると、

「一旦教室に戻ってきたんだけど、ちょうど勇也君が来て連れて行かれちゃったー」

 と返事が来た。

「あぁ……」

「かっこよかったー」と女子達は勇也と会えて嬉しかったようだ。

 俺はあの強烈なピンク頭の男を思い出してうんざりした。それでどこにもいなかったのか。俺は雪原を探すのを諦めた。


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