↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イディアハルモニア  作者: 金柑


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
8/52

第7音「仲間」



ソイヤ、ソイヤ


毎年恒例の5月の祭りも終盤に差し掛かり、

神輿は休憩を挟んでいる。


賑やかな

祭りの、音が聞こえる。


生まれた時から、俺の周りにはこの

魂の音があった。


何年、何十年、いや、何百年。

受け継がれてきた、神を讃える音。


俺の先も、そのまた先にもずっと続いていく。


お囃子の中で神輿を担いでいると、

俺も音を受け継いでいく一人なんだと

誇らしく思える。


一人の音は小さくても、みんなが、

歴史が合わさればどデケェ音になる。


……


最近俺はどうにも気に食わねえ奴がいる。


岬斗真だ。


ぷらっと来て、茜と一発バトってやがった


しかも二人とも楽しそうに。


確かにピアノは上手かった。


上手いって言うより熱いって感じだな。


そこは嫌いじゃねぇ。


だが、いきなり来てしれっと居座る奴なんて

碌でもねぇに決まってる。


楽しく一緒に演奏したから仲間?


一緒に笑ったから仲間?


皆んな歓迎ムードだが、そんなに簡単なもんじゃねぇだろ「仲間」ってやつはよ。



だから、俺がしっかりと見極めてやるぜ、

「ツレ」にふさわしいかをよ。


ふんどしに半纏姿でコーヒー牛乳を一気飲みしてやった。



「ぶはぁ!!」



「どいつもこいつも、しょうがねぇな」



……


今日の浅草は絶好の祭り日和だ。


ーーーー


俺は澤村一心サワムライッシン


今年で20歳になる、

浅草生まれ浅草育ちの江戸っ子だ。


スイーツ全般が好きだが、あんこ苦手だ。


ガキの頃どら焼きを食い過ぎて倒れた。


ばぁちゃん連中ってのはなんであんなに食わせたがるんだか。


見ての通り、ツッパリだ。


20歳にもなって恥ずかしいと言うやつもいるが、


これ(リーゼント)は俺のポリシーだ!!



誤解しないで欲しい、

ヤンキーでも不良でもねぇ、



ツッパリだ。



族のように人に迷惑かけたり、


あたり構わずタバコ吸ったり、


無闇に喧嘩したりなんてぜってぇしねぇ。



ツッパリってのは生き様なんだよ!!



そして、俺には大切な「仲間」がいる。


この吹き溜りに集まった個性しかねぇ連中だ。


……


ちなみに、酒は飲めねぇ。


いや、飲めるが直ぐに酔う。


う、うるせぇな、しょうがねぇだろ。


……


見た目だけで判断されて、


頭に来て猛勉強。


大学に合格してやった。


だが、どいつもこいつも

「てめぇ」って物を持っていない

シャバイ奴らばっかりでげんなりしてたんだ。


講義に出る気も失せ、

近所の坂下のばぁちゃん家で茶を飲んでいる時に、ここを紹介された。



ここは俺みたいな…


ちょいとズレてっかもしれねぇが


一つ芯のある奴らの集まりだ。


ーーーー


「一心、あんた一人じゃ生きていけないよ。」


「この音楽堂を訪ねてみなさい」


「ばぁちゃん、おらぁ音楽なんてこれっぽっちも

 やった事ねぇぜ?」


「それにガラじゃねぇよ」


「良いからお行き」


「たっく、分かったよ」


「ちょいと行ってくらぁ」


「あっ、それとばぁちゃん大分暖かくなって来た

 けど油断して風邪引くなよ」


「それと、

 大福は勘弁してくれって言ってんだろ!!」


俺は坂下のばぁちゃんにケツを叩かれ、

その音楽堂とやらに向かった。



「おう、邪魔すんぜ」


ノックしたのが聞こえていなかったのか

急な来訪者にビックリしている。


「ぶふぉ、お前、今時リーゼントって」


いきなり、白衣を着た筋肉ゴリラが俺の誇りをバカにしてきやがった。


「おい、そこのゴリラ」


「これは俺のポリシーだ」


「テメェなんぞに馬鹿にする権利はどこにもねぇ」



流石の俺も熱くなっちまったが、


ヤツは大人だったね。



「いや、すまねぇな」


「いきなり予想してもなかったヤツが来たから、

 流石にビックリしちまった」



見ず知らずのこんな俺に深々と頭を下げてくれやがった。




こいつは俺の方が恥ずかしいな。



「先生で、良いのか?」


「やめてくれ、俺もつい熱くなっちまって。」


「あんた程の人が

 こんな小僧に頭下げるもんじゃねぇっすよ」


……



俺は一瞬でこの男に惚れた。


ここなら…




「俺は、澤村一心」


「ここに『仲間』を探しに来た」


「まだまだ半端者の俺だが、どうか一つ、

 よろしくお頼み申し上げます」



ーーーー


これが、俺と「仲間」との出会いだ。


ここの奴らは面白い奴らだらけだ。



何言ってるかわからねえやつかと思えば、


音楽の事には人一倍熱いやつ。



自信満々で

俺の事を下に見てるかと思えば、


影で努力して、わざわざ教えてくれたり。



男とちゃらちゃら遊んでるだけかと思えば、


いやいやどうして、


テメェって言う、一本筋が通ったやつ。 



それと気の合うツレも出来た。


女だが、趣味が合う。


俺の知らないカフェに誘ってくれた時、

俺達は一生の友になった。


へへ、あんなパンケーキは初めてだったぜ。




俺はここにいたいと思ったんだ。



ーーーー


そんなある日、

音楽堂の前に「仲間」が集まっている?


「おう、どうしたんだ一体?」


「ホラ、聞こえるでしょ?

 ヤバくないこのピアノ!?」


「ピアノ〜、茜じゃねぇのか?」


耳を傾けてみると

2つのピアノの音が聞こえてきた。


……



うめぇ、しかも熱い!!



俺は正直に思ったね。


どんなやつがあの茜とかましてるのか

気になって仕方なかった。




俺達が入って来たことに気付く様子もなく、

笑いながらピアノを弾く二人がいた。


…すげぇな、音が押し寄せてくる。


俺は魅入っちまったんだ、

素直にすげえやつがいるって。



なのにあの野郎ときたら、

茜があんなに誘ってるのに

ぐちぐちぐちぐちとはっきりしやがらねぇ。


あまつさえ、答えも出さねぇで帰りやがった。




こいつはダメだ!!


ツレにはなれねぇって思ったね。



……


「先生よぉ、なんで帰しちまったんだ?」


「この場でよ、はっきりとさせりゃあ

 良かったじゃねぇか?」


「大体なんだ、アイツあんな立派ななりしてんの

 にぐちぐちとしやがって」


「恥ずかしくねぇのかね」


……


「おい、一心」


「オメェがそれを言うのか?」


「人一倍見た目で苦労して来た」


「オメェがいうのか!!!!」



自分を恥じたね…


俺が、俺だけはその言葉を口にしちゃいけねぇんだった。



……


「すまねぇ、先生」


「俺は、どうかしてたみてぇだ」


「待ってやろうや、人それぞれ悩みは違うんだよ」


「それによ、いい『音』だったろ?」



先生は俺の肩を叩き、


笑いながらヒラヒラと去って行ったよ。



頭が上がらねぇ。



「…」


「気に食わねえ、あんなに熱い演奏するやつが

 そんなタマじゃねぇだろ」


俺はよ、なんかもったいねぇって思ったのよ。



ーーーー


それから、ヤツは戻ってきた。


どうやら腹決めたみたいだ。


面構えが違う。



「俺はまだ認めてねぇからな!!」



俺もガキだな…


気持ちに引っ込みがつかなくなっちまったんだよ。


だがよ、


この日からやつも加えたこの吹き溜りに


気持ちのいい風が吹き込んできやがった。



ーーーー


ある日、ピアノバカ2人が俺達を集めて講義を始めた。


要するに、皆んなで一つの曲を奏でようみたいな事だと思う。


音楽の事はまだまだわからねぇ。


皆んなワクワクしている。


こいつの事は認めてるし、

茜からの提案でもある。


やってはみてぇ、

だが俺には技術も経験も足りてねぇ。


だから、言ったんだよ。


「だけどよぅ、オラァ初心者だぜ?」


「そんな事言われても出来る気がしねぇよ」


「…」


「澤村、お前今クラリネットだよな?」


「おぅ」


「お前、バソンやってみないか?」


「はぁ、バソンだぁ?使った事もねぇぞ。

 ってかどれがバソンだ??」


「コイツがバソンだ」


「お前さ、見た目の割に繊細な指使いだよな」


「ヤンキーのくせに、タバコも吸わないし」


「それと、酒も飲まないだろ?」


「肺活量も体力もあるし!!」


「おい、間違えるな」


「ツッパリだ!リーゼントは俺のポリシーだ!!」


「悪い悪い、また間違えた!笑」


「ともかく」


「初心者だからこそだな」


「変な癖もついてないし、

 その見た目でセンスはあるし!笑」


「おめぇ、バカにしてんな!!?」


「冗談だって!笑」


「それにバソンは低音の土台を支える」


「そんな音はお前みたいな

 どっしりとしたヤツの方が頼もしいんだ」


「バソンもお前も厳ついし…」


「それに…イカスだろコイツ?笑」


そう言ってバソンを渡してきやがった。


……


なんだこいつ、

俺の事もちゃんと見てたってのか?


それに、俺に頼みだぁ。



…悪くねぇ。



……


「まっ、良いだろうバソン任されたぜ」


「俺が必要って事だろ?」


「ただし、

 俺はまだてめえの事完全に認めてねぇからな」


……


もう認めてたんだよ。


きっかけってのが欲しかったんだな。



俺と斗真は「仲間」になった。


……


それからが、またすげぇんだよ。


兄弟の野郎、他の楽器の事も勉強して来てやがってよ、皆んな驚きだぜ!!


俺は初心者だからしょうがねぇけど、


アイツだってバソンなんか初めてだってのに

わざわざ勉強して、俺に一から教えてくれやがんのよ!!


「すまん、演奏はまだ練習中なんだ…」


とか言ってよ!

熱いヤツなんだよ…兄弟はよ。


それに、あれだ!


指揮者。


そう、指揮者!!

アイツが俺達の指揮者になったんだよ。


聞いた話だと、キーパーってのはサッカーで言う指揮者?みてぇなもんらしくてよ。


ぴったしじゃねえかってな。


それに嫌じゃねぇんだよアイツに指示されんの、なんかこんな俺でも上手くなったみたいに感じるしよ!笑


木下なんかは、「せ、先輩〜い」とかなんとか言ってチューバの事について語り合ってたぜ!笑


ともかく、


アイツは努力が出来るヤツだ。


アイツは人を見れるヤツだ。


アイツは人の痛みがわかるヤツだ。


……


俺もガキだったよ、全く。笑


…まっ、


本人には絶対言わねぇけどな。


なんだよ、それだけだよ!!汗


……

………

ーーーー


次回 第8音

「オケとは」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。