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イディアハルモニア  作者: 金柑


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53/54

第50音 「俺達のオケ」



「あいつら、遊んでたな」


「えぇ、面白かったですね!」


「まぁまぁ、だな。

一応、観客にも伝わったんじゃないか?」



「あいつらの『音』」


「ちゃんと

ストーリーの中で遊んでるの見えたからな」


「だが、やりすぎだ、ありゃ!!笑」


「あら、手厳しい!笑」


「そうだな…自己紹介してる感じって言うのか」


「私達の『音』はこんなんでーす!って」


「だから楽しんでくださーいって。笑」



「ん〜、哲学ですか?」


「あほ!!笑」



「2曲目はサン=サーンスだったな」


「さて、どうするんだお前ら?」



「なんか、ウチもう帰りたい。笑」


「…」


「はい?」


「いやぁ、ウチ満足度爆上がり!!笑」


「あほ!!まだ『オケ』してねぇだろ!?」


「さっきまでのは『音楽』、次が『オケ』だろが!!」


「冗談なのにぃ。…トーマのムッツリ!!」


「おま、ムッツリは関係ないだろ!!」



「おや、おや?」


「夕夏!!来てたのか!?」


「…」


「えぇえぇ、来てましたよ…」


「…」


「佳代さん、あれはひょっとして??」


「夕夏ちゃん…ホント好きね。笑」


「はい!恋愛ゴシップでご飯食べれます!!」


「なんだ、何話してんだ?」


「お兄にも春が来たんだねぇ、冬真っ盛りだけど」


ゴス!

「あ痛!!」



「いてて」


「あ、それより、はい差し入れ!!」


「おっ、気がきくな」


「できた妹でしょ?」


「…♬」


「長居すると悪いからもういくね!」



「…お兄、やればできるじゃん!!笑」


「おぉ、2曲目も観てってくれよな!!」


……


まったく、あいつは…


「あ、プリンあんじゃん!!分かってんなぁユカユカ♬」


「わ、稲荷寿司♬」


「あら、美味しそうね。1つもらうわ♡」


「あたしも〜!!…美味しい、何この稲荷寿司」


「え、え、え、」


「うちの地元のやつだな。

わざわざ、買ってきてくれたのか。

予約制で人気なんだぜ!モグ」


「….ウマ!…」


「お、兄弟、コイツは美味いな!!」


「うむ、美味い。岬、店を教えてもらえるか?

明日にでも、シェフと伺って見ようと思うよ!」


「あ、あ、あ…」


「ん〜、優しい味でーす。ホッとしまーすねぇ」


「お茶あるわよ!やっぱり緑茶よね」


「の、残り1個…」


「YA-MAN!俺も頂くぜ〜!!」


「っ!シャァーーー!!」


「おわ、な、なんだよ、Mano…泣くなよ」

「OK OK、大丈夫!

ミツミ、取らないって!!」


「はは、どんまい。笑」


「まどか、ルールー、プリン食べよ!!」


「あんたら、緊張感なさすぎよ…

あらやだ、美味し♡」



夕夏の差し入れでリラックス出来たな。


でかした、妹よ!!


……


「2曲目、準備お願いしまーす」


「…」


さてと…


「行こうぜ!!」




Camille Saint-Saënsの

(カミーユ サン=サーンス)

ピアノ協奏曲第2番、第1楽章。

トロンボーンを加えて。


予選と同じ曲だけど


やっぱり、この曲がふさわしいと思う。


予選では、俺達の再スタートとして。


今からは、俺達の『オケ』のスタートとして。



パチパチパチパチ


「…」


スッとタクトを上げる。


行こうとか、やるぞとか…


そんなのなくても伝わってくる。



ゆったりとしたバッハの様な独奏

茜の自由で即興的なピアノが始まる。


俺達自身を思わせる、憂鬱と瞑想感…


細かい音符が波の様に駆け巡る…


瞬間、オケ全体が「ジャン!」と重々しい和音で一喝し、空気を一変させる。


ティンパニの地鳴りに下降していくピアノ


ピアノが静かなオケの伴奏の中、哀愁を歌い始める



ため息をつくような、優しく語りかけるような


歌に満ちたピアノに寄り添い


クラリネットが受け継いだ音をフルートが追いかけていく


暗闇の中で光が差し込み、優しい会話が親密な空間を作っていく



     小さく揺らし、そっと流す。



穏やかな時間は続かず、ピアノは徐々に情熱と激しさを帯びていく  



     それに合わせ、大きく広げる。



激しく引き裂くようにバイオリンが掻き鳴らし


その下でヴィオラが焦燥感と不安を膨らませる



     身体ごと沈み込み、深く拍を刻む。



地を這うようなコントラバスが重厚感を作り


胸を締め付けるようにチェロが力強く歌う



     左手で旋律をそっと掬い上げる。



バソンが低音に寄り添い哀愁を帯びた音色で緊張感と深みを与える



     深く息を吸い、振り下ろす。



トロンボーンとチューバの圧倒的な音圧が

クライマックスの悲劇のスケールを巨大化する


重々しいピアノのリズムに


オケが物悲しいメロディをそっと呟く


波が引くように音が小さくなって



      小さく、小さく……



オケの重い響きの中に


ピアノが



ポロン……




寂しげに最後の和音を落とし




冷たい闇の中に消え入っていった…



……

………



パチパチパチパチ



「…」


満足そうな、皆んなの顔。


優勝は、無理だ…



パチパチパチパチ



さぁ、挨拶を。


スッと両手を上げ、皆を立たせた。



パチパチパチパチ



……


「次の演奏は…」



「お疲れ!」


「おぅ、お疲れさん!!」


「あぁ、お疲れ」


「お、お疲れ様でした」


「お疲れ、お疲れ♪」


「はぁ、お疲れ様♡」


「お疲れさまでーしたー♬」


「YA-MAN、お疲れさまだぜー!!」


「ふう、お疲れ様ー!!笑」


「はい、お疲れ様でした!!」


「…お疲れ」


「ウェーイ、お疲れ〜♫」



誰も特に何も言わなかった。


皆んな分かってるんだと思う。


俺達は『オーケストラ』をやれた。


勝ち負けとかそういう事じゃなくて


俺達は、初めて自分達から


『オケ』をやれたんだと。



その満足感と余韻なんかに浸ってる。


少なくとも、俺はそう。笑


……


「今回の優勝は…」


「…」


……



カチッ


シュボ


フゥー



「おう、お疲れさん」


「みんなお疲れ様!荷物、後ろに積んじゃって」


「…」


「で、どうだった?」


「…」


「…」


「はい?」


「いや、はい?って事はねぇだろ!!」


「だって、最初っから分かってましたよね?」


「…」


「無理無理、勝てないですって!!笑」


「そうね、入賞だって無理だわね。笑」


「さ、さすがに無理ですよね。笑」


「はっは、無理に決まってるっす!!笑」


「ふむ、これは、

序章に過ぎないのだから悲観する事はない」


「そうそう、楽しかったでーす」


カシャ


「はぁ、あたしへの視線をビンビン感じたわ♡」


「…疲れた」


「あら、お茶飲みます?」



「お、お〜い、Mano荷物手伝ってくれ!!」


「無理、2人じゃ!!笑」


「えぇ〜、じゃんけんで負けたじゃん!!笑」



「まっ、という事でボロ負けでした!!笑」


「お、お願い!!重い!!

茜ちゃん、プリン奢るから!!笑」


「おっ!まどか〜

1個や2個じゃ、ウチは動かんよ〜」


「しゃーねぇな、ホレ!!」


「ありがと、一心君。笑」


「そうだな、とっとしまって皆で打ち上げと洒落込むのはどうだろう?」


「あら、良いわね!!『晴れ晴れ』にします?」


「…もう予約した」


カシャ、カシャ


「へ、ヘイ、マリア写真撮ってないで手伝ってくれないか?おっ、ミツミ!サンキューだぜ」


「ミツミ、ダメよ!!アンタ男でしょ?

それにじゃんけん後出したでしょ!!」


「あ、マリア、あたしを撮って!

大会後のアンニュイな感じのあたしを♡」


「おう、腕がなりまーす!!」



「はは、なんなんだコイツら」


「む、失礼っすよ、教授!」


「俺達、今出来る『音』で

俺達の『オケ』やれました!!」


「あっ、悔しがってるとか、

後悔してるとか思ってんでしょ?」



「そりゃ、ありますよ。

そんな感情。ありまくりっすよ!!」


「もっと早く気づいていたら」


「なんで、あんな事してしまったんだ」


「もっと早く出会って、始めていたら」


「なんで、あそこであんな演奏を」


「後悔言い出したら、キリがなさすぎて数えるのが馬鹿らしいくらいですよ!笑」


「でも、俺達まだまだ上手くなれます。

もちろん俺達の『オケ』として!!」



「それに…」


「ともかく、楽しかったっす!」


「もっと、楽しみたいっす!」



「だから…今はそれで良いです!!」




「という事で、これからもご指導」



「「よろしく、お願いします!!」」


「…」


「教授。ううん、おじさん…」


「良かったね」


「あぁ、コイツら最高のアホだな!!笑」


……


「よーし、飲みいくぞ!!」


「えぇ、せんせーも来んの〜?」


「なんだよ、仲間外れかよ。茜は酷いなぁ」


「斗真にチクっちゃおっかなあ…」


「ム!なんでトーマが出てくるワケ?

ウチと関係ないじゃん!!」


「はいはい、みんな〜教授の奢りですって!!」


「やった!弘、連絡!!肉よ、エアーズロックよ」


「…もう穂乃果にメールした」


グッ!!


「そう、次は右上45度くらいから。

…そうね、ちょっとセクシーすぎるかしら?」


「ふむ、それこそトロンボーンに参加してもらうのはどうだろう?」

「君の肉体美と輝くトロンボーン…

素晴らしい対比になると思うが…」


「も、もう許してくださーい!

何枚撮れば良いでーすかー!!」


「ほら、皆んな何してるの?

肉よ!早く車に乗って!!」


「佳代ちゃん…笑」


「ご、ごめんなさい、ちょっとお手洗いに」


「ミツミ〜、俺も行くぜ〜♬」


「ルー、ついでに皆んなの飲み物頼むわ〜!」


「YA-MAN!!!」


……

………



負けた、本当にボロ負け。笑



本当、逆に清々しいぜ。



昔の俺なら立ち直れないだろうな。



周りの声も聞かず、差し伸べられた手も



自分から振り解いていた、あのバカじゃ。笑



……



負けたんだけど…



市の大会や学祭の時とは全然意味が違うんだ。



あの時は『音楽』が『オケ』が何か分かってなかったと思う。



今だって、正解かどうかも分からない。



ケドそれが正しいんだと思う。



100人いたら100人の答えがあって良いんだ。



だけど、俺達の答えが1番だ。



俺達の答えが最高に楽しいって



俺達は信じてるから



もう、分かってるから!!笑




……

………




「あれ?トーマは?」


「…」


「ちょ…」


「…待ってぇ」


「…」


「…」


「おーい!!」


……




「俺まだ乗ってない!!」





「置いてかないでくれよ〜〜!!」



……

………

ーーーー



イディアハルモニア


第一部 完












ここまでの

イディモニの物語に

お付き合い頂いた

全ての人に


感謝を込めて…

               金柑

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