第47音 「いざ!」
教授の指導とも言えない指導が続き
あっという間に12月。
とうとう予選か…
全力でやって来たけど、多分通らないだろう。
…それで良いと思う。
まだ、歩き始めたばかりだから。
本戦なんか行ったら
俺、調子に乗るぜ。多分。笑
……
「12月だねぇ、寒いねぇ」
「馬鹿みたいに腹出してるから寒いんだろ?」
「ムカ!これはウチのポリシーですぅ!!
いっちんのリーゼントと同じですぅ!!」
「はいはい、風邪引くなよ。
来週本番なんだから」
「何その上から目線!!
ウチの事バカにしてるっしょ!!」
「自分なんか、ウチに抱きついて『あ、ありがどゔ、あ、あがねぇ〜!!』とか鼻水垂らしてたくせに!!笑」
「は、鼻水は垂らしてないぞ!!」
「ふん、そーゆー事にしておいてやる。笑」
…
「オゥ、2人トモ、イマカラか?」
「あっ、タナぁ!オハ!!今帰り?
珍しいね、夜のバイト」
「オゥ、タナおはようさん!!」
「フゥ〜、マタテンチョ、奥さんにキャバクラバレたよ」
「コリナイネ。プレゼントカードで買ってタヨ、バカね」
「あはは、店長らしいわぁ!!笑」
「トーマっち気をつけなよ。トーマっちみたいのがキャバにハマるんだから!!笑」
「行かねぇよ!んな金ねぇし」
「トーマはカネアレばイクイッテルよ」
「うぇー、キモ!変態!!
このムッツリガチムチ野郎♬笑」
「お、お前…久しぶりにガチムチ言われたわ」
「ガチムチ呼びの方が良い?笑」
「アホ」
「あはは」
…
「冬ナノにココは暑いね。タナ帰ってネルよ」
「ん?タナおつかれ〜!!」
「さて、さっさと行って練習すっかね」
「うんうん♬」
「せ、せんぱ〜い!!」
「おっ、おはよう!木下さ…」
「みっちゃ〜ん、走ると、こけ…」
「あだ!!い、痛いで、…」
「あははは…」
…
…
大会前だよな?
すげえ、リラックスしてる。
だけど、みんな諦めてない…
すっげぇ、いいじゃん、俺達!!笑
◇
「みんな、いよいよ明日だな」
「教授!なんか一言俺らにハッパかけて下さいや!!バシッと気合い入れ、頼んます!!」
「お前は出入りにでも行くのか?笑」
「そうだな、はっきり言って。
予選通過は、まず無理だと思う」
「き、教授ぅ〜、そりゃオイラ達も分かってますが…笑」
「待て待て、だがお前らはこの短い時間で
『オーケストラ』という物に向き合ってきた。
お前らなりにな」
「ここはゴールか?違うな、お前らのゴールは、ずっと先の何処かにある。
見える物がゴールなんて事はねぇ」
「だから、楽しんで来い。
ずっと先に歩いて行く為に」
「…」
「要は、楽しんだもん勝ちだ!!笑」
「「はい!!」」
…
「俺は明日、会場には行けねぇ」
「え、見に来てくれないんっすか?」
「あのなぁ斗真。
俺は教授だぞ?講義あんだよ!!笑」
「あ、そうでした。笑」
「ったく、誰一人俺の講義取ってやがらねぇ…」
「まっ、そんなわけだ。
帰ってくる頃には残念会を用意しておいてやるから、しみったれたツラで帰ってくんなよ♬」
「「はい!!」」
…
「いい返事じゃねぇか。
よし、前倒しで残念会やるか!飲もうぜ!!」
「はいはい、あなたは明日の準備があるでしょ!」
「い、いてて、渚やめろ!耳引っ張んな!!」
「ったく、最近元気が出て来て、ちょっと昔に戻ったかと思ったら、すぐサボる…」
「明日、朝イチですからね、講義!」
「サボってばかりいると
また禁煙令を発動しますよ!!」
「そ、それだけは!やっと解除されたのに…」
「と、いうわけで俺は行けん
頑張れ!そんで楽しめ!!以上」
「や、やるって、やるから!!
あっ、蹴ったろ?今蹴ったよな…」
カシャ
…
そうだった、先生だったわ。
「ふう、緊張ってのは何処にあるんだろうな?
このオケには。笑」
「まぁ、私達らしいって事で!笑」
「まどか良い事言った!はい、ご褒美プリン♬」
カシャ
やったーって喜んでるけど、
茜…プリン何処から出したんだ?
「岬、一応今日もノルマの時間は練習したけど
どうすんの?」
「ふむ、明日が本番だしな。
もう一度合わせるか??」
…
「やめておこうぜ、やれる事はしっかりやったよ。本番前だからって普段と違う事はなしだ」
「で、ですね!!」
「YA-MAN!!なら、遊ぶっきゃねぇぜ♬」
グゥー
「あら!やだ恥ずかしい!!
私お腹空いてるみたいです。笑」
「かよかよのお腹の音、マジ可愛!!」
カシャ
「で、マリア。最近いつも写真撮ってんな?」
「ハァイ、もう、私の心のメモリーは容量いっぱいでーす!!」
「はいはい。笑」
「ほんじゃ、飯か。何処行く?」
「…『晴れ晴れ』」
「まっ、だよな!」
「よし、『晴れ晴れ』いこーぜ!そんで穂乃果に奢らせよう。明日大会だから景気付けにって!!」
……
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!!アタシを置いて行くなんて、ずいぶんじゃない?」
「何処行ってたんだよ、ヒロミ?」
「ふふん、見なさい♡」
「?」
「何かあったのか?」
「わ、わからないの!!」
「…歯」
「そうよ、仮歯からちゃんと差し歯になったのよ〜」
「良かったわ、間に合って♡それにしても弘あんた良く気がついたわね!チューしてあげるわ♡」
「…ホント…無理」
◇
「しゃあない、ウチが奢ったるわ〜!!」
「「シャァーー!!」」
「一杯だけな(ボソ)」
「ウチが奢ったるのに、
負けたら承知せんからなぁ!!」
「「ゴチになりまーす」」
…
…
◇
予選当日
先日、運営から連絡があった。
思いのほか、参加者が多かった為、
予選は一曲のみの披露になった。
前日中に曲の決定を連絡する為
『晴れ晴れ』で相談していたのだが。
……
「どっちでいく?」
「そりゃあ…」
…
Camille Saint-Saënsの
ピアノ協奏曲第2番、第1楽章
トロンボーンとチューバを加えて
これが俺たちの選んだ曲だ。
学祭での第3楽章。
思えば、いきなり終わりを演奏していたな!笑
やっぱり、
技術ばかりを求めていたのかもしれないな。
だから、第1楽章にした。
ここからが、俺達のスタートだと思うから。
最初は
ピアノ協奏曲とバイオリン協奏曲の2曲で構成していたが、
満場一致で、ピアノ協奏曲になった。
西田に良いのかと尋ねたら
「何を当たり前の事を言っている!!ヒック」
「ピアノがあるから僕らなのだろう」
「いいぞ、西田ー!!」
「チューバがなければ作れば良い。
トロンボーンがなければ作れば良い!!
それが僕らだ!ヒック」
「いよっ、金持ち!!」
「いいぞー、インテリメガネ!!」
…
「西田、参る!!」
「一気一気♬」
「ぶふはぁー!!」
「「ギャーー!!笑」」
カシャ
酔ってたしな。笑
…
「もう、ニッシーウチの事好きすぎん?」
とか言って、西田に茜が抱きついていた。
偶然隣のまどかと
「「バキッ」」
同時に割り箸を折ってしまった。笑
なんだろな?脆かったのか?
◇
い、いよ、いよ、だ!!
ダァ、しっかり緊張してやがる!!
俺、しっかり、俺!!
…
「ね、ねぇ、ウ、ウチ、か、可愛い?」
茜ぇ!!
「茜、しっかりしろ!!お前は、お前だけは緊張しちゃダメだ!!大丈夫ちゃんと可愛い!!」
「ねぇ、斗真。あんたすごい事ぶっ込んでるわよ。お盛んねぇ♡」
「ち、違うわ!!」
「…」
「ちょっとは落ち着いた?」
「わ、悪ぃ、ヒロミ。助かったわ」
「ふふ、良いのよ♡」
「ただ…あっちはどうにかしないとね。笑」
…
「ウ、ウチ可愛いって!トーマっちが。
し、知ってるし、はっはは」
「今回もトロンボーン入れてもらっちゃったから、あたしも頑張んないとね」
「これはそのお礼よ♡」
「ほら茜、冗談に決まってるでしょ?
あのムッツリ童貞が、本気でそんな事言うと思ってんの?」
「緊張ガチガチのあんたじゃ、可愛いどころか
むしろ恐ろしいわ!!汗で目の周りパンダになってるわよ〜」
「ま、マジ!!」
「ウォータープルーフ切らしてたんよ〜泣」
…
おおー!!
パチパチ!!
◇
「次の方準備をお願いします」
さてと、みんなリラックスしてるな。
大会だ!勝たなきゃ!!
って考えるから、固くなるんだよ…うん。
勝ち負けを考えないのも良くないと思う。
絶対に必要な事だと思うし。
行動には結果がついてくるから
次はもっとがんばろうってなれるし。うん。
…
だけど
今回だけはいいや!!
他の出場者には怒られるかも知れないけど。笑
今、純粋にこいつらと音楽を楽しみたい。
やっとそう、思えたからな。
…
サッカー部の連中が見たらなんて言うかね。笑
それと
今の俺、自分が好きかも♬
うん。
…
「よし、行くか」
…
ある意味これが初めての「俺達」なのかもな。
あぁ、臭い臭い!
…青春してんなぁ!!
…
「ちょっと、岬!早く!!」
「悪い!!笑」
…
……
この後の演奏はあえて触れたくない。
決して下手だったわけではないし
めちゃくちゃ失敗したわけでもない。
特別なものでもないし
いや、特別だな。
俺達にとっては。
ただ、誰かに伝えたくない。
心にしまっておきたい。
そんな演奏だったよ。
…
あ!すっげぇ、楽しかった!!
それだけ。笑
…
……
◇
「おっとぉ、おかえり〜!!笑」
「聞くまでもねぇと思うが、どうだった?」
…
「…った」
…
「だろ?そりゃそうだ!笑」
「まぁ、気落ちすんなよ。分かってた事じゃねぇか!!」
「お前らは全力で楽しんだ!そうなんだろ?」
「そうに決まってる♬
今のお前らにはそれが出来る!」
「だから俺は送り出せた!!」
「渚ぁ、酒だ酒!!」
「はい、は〜い」
…
「…おった」
「ホレ、残念会という未来へ向けての激励会だ!」
「言っておくが、飲むぞ!もう飲んでるが」
「ともかく、俺は嬉しいんだよ!!笑」
…
「もう、すでに飲み過ぎなんですよ」
「あいつらまだかな?楽しんだかな?とか言って」
「飲みながら熊みたいに、ウロウロ。笑」
「ば、ばか、よせよ!!笑」
カシャ
「また、明日から一歩一歩みんなで歩いて行くぞ!!」
「はっはっは、年甲斐もなく青春だな?笑」
…
「ん?どうした?流石に生はねぇよ!笑」
「だからぁ」
「通ったって言ってんだろぉ!!」
…
「は?」
「マジで?」
…
「マジ!!ウケるっしょ?」
「ふふ、マジですよ」
「…マジ」
「おう、マジだぜ!!」
「YA-MAN!!!」
「…」
「…」
「だぁ〜〜〜はっは!大成功だなみんな!!」
「あんま、俺達を舐めないでもらえますか〜?」
カシャ
「アイツが1番驚いてたわよね?」
「由希子…野暮よ。笑」
「そんで、1番喜んでたよね。笑」
「ふふ、言ってやるな北見。
奴なりに色々な葛藤もあったのだろう」
「ここ最近で、1番良い笑顔でーした!!」
…
「いやぁ、なんだかんだで結果が伴うってのはいいもんっすね?」
「実力かなぁ、技術と心が一つになった…
分かられちゃったかな!!」
「まぁ、そんなくらいの事ですよ」
…
「お、おい。まどか本当か?」
「これが、本当に通過しちゃったんですよ。笑」
「でも、下から2番目です…笑」
「弘?」
「…マジ」
「あ、茜?」
「ブイ!!」
…
「…」
「…」
「は、はっは、やったじゃねぇか!!」
「そうか、通ったか!!」
「間に合った、間に合ったか!!」
…
「って事は…残念会じゃねぇな。」
「おい、渚。おい!!」
「はっ!!やった、やったー!!」
「あ、いや、そこまで喜ばれると…はは」
「やったな、斗真!こっちこい」
「はい!!」
…
ドゴッ!!
「グエッ!!」
「調子に乗りすぎだ…」
「もう、教授ったら。嬉しいくせに…」
「…」
「な、渚さん??」
「おめでとうみんな!!やったわね斗真君♬」
「な、渚さん!!」
「そうね、残念会じゃないわね」
「な、なぎざざん…や、やめて…」
「お祝いね、祝勝会ね!!」
「お、おれる…か、かんぜづがぁ」
「さっ、飲みましょ!!」
「「いよっしゃーーー!!」」
「き、教授!こ、この日本酒は!!…まさか」
「お、西田。流石だなぁ♬」
「ウチ、ビール〜」
「茜、それはあたしのプリン体オフよ!!」
「はい、一心君お茶」
「佳代、すまねぇな…今日は飲んじゃうか!!」
「YA-MAN、弘は何飲んでんだ?」
「…芋」
「スルメ〜スルメ〜♬」
「ちょ、助け…誰か!!」
…
「あっ…」
……
「まぁ、自業自得だよね…笑」
…
……
え、えっと。
そ、そんなわけで、ま、まさかの予選、
つ、通過という、け、結果でした!!
も、もう一度、みんなで出来るのが、た、楽しみです!!
…
せ、せんぱいは、ち、ちょっと動きません。
あ、息は、し、してます!
本戦は、く、クリスマスです。
が、頑張ります!!
……
ーーーー
次回 第48音
「それぞれのクリスマス」




