第45音 「ハーフタイム」
〜〜♪
学祭が終わり、夕夏も実家に帰った。
茜と佳代の家に泊まって何を相談してたんだか?
そんなこんなで、
俺は今までにない解放感に包まれている。
そう、問題がはっきりとしたからだ。
俺はある方向では間違っていたのだろう。
ただ、もう一方では間違っていなかった。
その事実だけで、昨日とは世界が変わって見える!!
「せ、せんぱ〜!!」
「…」
(何、あの先輩!こ、怖い!!)
木下さんの声が聞こえたような気がするが
きっと気のせいだろう。
「YA-MAN!!ご機嫌だなぁ!!」
「おお、ルー!後で皆んなに話があるんだ」
「ヘイ、Mano!見てればわかるぜ!!
身体から発するリズムが違うぜ♬」
踊り歩く男2人はさぞかし、異様な光景だったであろうと思う。
◇
「皆んな、話があるんだ」
「まず…すまなかった!!」
「誰に対してとかは言わない。
言うべきではないと思うからだ」
「俺は…俺は間違っていないと思う」
…
「だけど、間違っていたのかもしれない」
「すまん、俺自体ふわふわしている」
「だけど、自分の中でははっきりとしてる」
「だから、謝りたかった!!」
「何がって聞かれても言葉に出来ない」
「だからもう一度、最後に謝る」
「そして、お前らに2度謝らない!!」
「何かあってもありがとうと返せる自分でありたいと思う」
「これが俺の謝罪であり、決意表明だ!!」
「みんな、ごめん!!」
「みんな、ありがとう♬」
俺は言いたい事全部言ってやった。
言わないと先に進めないから。
…
「え〜っと、分かったよ。
が一番良い返事かな?笑」
「あぁ、ありがとうまどか!笑」
「なんだかわからねぇが、聞かねぇぜ。
俺は、兄弟の気持ち受け止めたぜ!!」
「あぁ、一心」
「ふむ、前向きになったわけだから何も問題はないだろ?」
「全くだ、西田」
「な、なんか、わ、分からないですけど…
カッコいいです!!」
「サンキュー、木下さん」
「…グッ!!」
弘と俺は拳を合わせた。
「…グッ!!」
「ふふ、こちらこそ。
受け取りました、ありがとうございます」
「佳代…はは。どういたしまして!!」
「カシャ」
「さぁ、湿っぽくないけど、湿っぽいのは
終わりでーす♬」
「YA-MAN!!レッツダンスだぜ〜♬」
「ブイ!!笑」
「茜…ブイ!!笑」
……
「何?なんのこのノリ?みんななんで踊ってるのよ?ちょっと岬なんなの?」
「おう、由希子遅かったな♬」
「俺がみんなに謝って、お礼を言った!!笑」
「はぁ?」
「それだけだ。ヒロミは?」
「…遅れるって…」
「いや、説明になってないのよ!!
なんなの、なんで踊ってんのよ〜〜〜!!」
…
「終わったか?」
「あ、教授。なんだか分からないんですけど
皆んな踊ってるんですよ…
病気、病気なの?」
「あぁ由希子。落ち着け大丈夫だから。笑」
「多分、斗真のノーキン決意表明の暑苦しさに
当てられてテンション上がっただけだ」
「2、3分で落ち着くだろ…笑」
「はぁ…」
…
…
「終わったかしら…?」
「だな。そろそろいいか」
…
ガチャッ
「ヒロミ!どうしたのよその顔!!」
俺達は由希子の声で我に返り、遅れて来た
ヒロミの元へ駆けつけた。
「ちょっとね…」
「モゴモゴ言ってたってわかんないわよ!!」
「誰、誰にやられたの?」
「ふざけんじゃないわよ、ぶっ殺してやる!!」
「違う、違うのよ由希子…」
「だって、だってこのアザ!
マスクしてたら分かんないよ、ねぇ酷いの」
「ちょ、ちょっと泣かないでよ由希子!!」
「ヒロミ…手ェ貸すぜ。お前がやられたんだ
相手が1人のはずねぇ」
「おう、一心俺も行くぜ!!」
「待て、待て、気持ちは分かるが、
まずは相手の戦力の確認からだ」
「やるからには…圧勝だ!」
…
「あぁ、もう違うって言ってるじゃない!!」
「だ、だけど、そのアザ。ヒン」
「お願いだから、泣かないで由希子」
「これは、木にぶつかったの…」
「じゃ、じゃあそのマスクは!?」
「…もう、笑うんじゃないわよ」
…
…
「「だーはっはっはっ!!」」
「歯が!歯がねぇ!!」
「「だーはっはっはっ!!」」
「わ、笑わないでって言ったじゃない!!」
「差し歯が取れてどっか行っちゃったのよ〜」
「こんな顔じゃ、外を歩けないわぁ〜」
「あたしの人生、終わりよぉ〜」
「…ちょっと…」
「あたしの心配と涙…どうしてくれんの?」
「返しなさい、返しなさいよ!!」
…
「…退屈しねぇな、こいつらは。笑」
「しばらくは無理だな…笑」
…
「久しぶりに一服でもすっかね〜♬」
◇
「さて、落ち着いたか?」
「…」
「今日から、お前らを指導して行こうと思う」
教授が俺達を見渡す
…
「大会まで時間はないが、やっと準備が整ったと思っている」
「今、お前らに必要なもの…」
さっきまで騒がしかった音楽堂が、
少しだけ静かになった。
「それは、『心』だ」
「合宿で、他人の音を聞き、他人の音に合わせる事を学んだ」
「そして技術を高める事の楽しさを知った」
「…」
「…足りねぇ」
…
「俺がお前らに教える物、
それは『オーケストラ』だ!」
「技術だけじゃねぇ、他人も自分も楽しみ楽しませ、会場全体で『音楽』をする」
「それが『オーケストラ』だ!!」
「そして『オーケストラ』に必要なもの。
それが『心』だ」
「作者の心、楽器の心、会場の心、オケの心、指揮者の心、客の心…」
「それをこれから学んでもらう」
「…」
「これは強制じゃねぇ」
「…」
「これからの練習はただ厳しいだけではない」
「意味が分からず、結果も目に見えないし
明確なゴールもない、そんな練習だ」
「俺から、やれとは言わない」
「だから、みんなで答えを決めてくれ」
「…」
「お前らなら乗り越えてくれると思う」
「今まで、ろくな指導をしてこなかった俺が今更何言ってんだって思う」
「…だが」
…
「どうか俺にお前らの指導をさせてくれ」
教授が頭を下げた!?
「…今すぐなんて、言わねえ。
ゆっくり決めてくれ…」
教授はホールを立ち去った…
…
「なぁ…時間いるか?笑」
「「いらん!!」」
「だよな!笑」
俺達は、教授の後を追いかけた。
覚悟を伝え
共に成長する為に!!
…
あまりの早さに驚く教授だったが、
俺達の決意を聞き
顔が喜んでいた事は本人には内緒だ。
◇
「さて、ちょっとびっくりしたが、
みんなの気持ちは受け取った」
…
「正直、嬉しいよ」
「…」
「これから行っていく、練習だが指揮は俺がやる。斗真、お前は俺の横で真似してろ」
「…良いか、よく見て真似するんだ」
「勘違いするなよ、
俺をトレースしろって言ってるんじゃない」
「俺が1曲振る。
その次はお前が振る。
その繰り返しだ」
「それと、楽譜はなしだ。
俺とこいつが振る前に一度だけ見ていい」
…
「渚。今日の楽譜をみんなに」
「…」
「曲は毎日変える。同じ曲はやらない」
「…それだけだ」
「他に特別な事はない」
「主に、午前中と午後に各3時間。
それ以上は練習は行わない」
「…」
「それ以外の時間は自由にしてくれ」
「まぁ、出来れば誰かとつるんでバカをやっていて欲しい」
「合宿の延長だな!笑
音楽の話でも良いし、飯の話でもいい」
「冬休みの予定なんかも良いんじゃないか!!笑」
「物足りなく思うかもしれないが、お前たちは確実に成長してる」
「…」
「だから、焦るな!!」
「楽しむ事を思い出してリラックスしろ!!笑」
…
「質問がないようなら、始めていく」
「この先、俺は一切質問には答えない」
「質問も答えも、『音』でしてくれ」
「あっ、音楽以外の質問なら良いぞ!
今日のお馬ちゃんの予想とか釘の良い店とか」
「おっと、女がらみの話は無しで頼む!!笑」
「ふふ、誰も教授のプライベートに興味はないですよ。笑」
「うるせぇよ!!笑」
「…」
「渚。お前は俺達の演奏を撮影しておいてくれ」
「はい」
「この動画は、翌日にお前らに渡す」
「当日には渡さない。
その意味を考えてみて欲しい」
「…」
「…さぁ、始めよう…」
…
……
◇
それは、もう酷い演奏だった。
一度楽譜を見ただけで、演奏なんて出来るわけもなく。
…
だが、教授はそれでも『音楽』にまとめる。
やっぱ、うめぇ…
それに、タクト振ってる教授を初めて見たけど
なんて言うか…
…引き込まれる
この後、どうなるんだろう?
そんな期待を抱かせてくれる…
ワクワクする♬
……
俺はと言えば、まぁ、ひどい。
指揮は飛ぶし、音を聞く余裕、
みんなを見る余裕が全くない。
俺が振ると音楽にすらならない。
こんなに、違うのか!!
……
「教授…むずいっす」
「はっ、当たり前だろうが!!笑」
「俺を誰だと思ってんだ?元天才指揮者様だぞ?」
「タクト握って1年もたたねぇペーペーが生意気言ってんじゃねぇよ!!笑」
「みんなも良いか?上手くやろうと思うな。
失敗したからって止まるな」
「次が分からなくても良い、音を出し続けろ!」
「で、でも教授、つ、次の音が分からないと…」
…
「…特別だぞ?ミツミの今の質問だけ答えてやる」
「…感じろ」
「流れに身を任せて、音を鳴らせ」
「…以上!この先は答えねぇ」
「ホラ、次は俺の番だ」
「お前らの『音』でかかってこい!!笑」
…
……
俺達は間違えたけど、
間違ってなかったんだと思う。
それを、教授が教えて…
いや、伝えてくれているんだと思う。
あの市の大会のように、
今日のオケには笑顔がある。
……
「オラ、お次はお前だ!!」
「ウッス!!」
……
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次回 第46音
「2度目のRestart」




