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イディアハルモニア  作者: 金柑


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第45音 「ハーフタイム」


〜〜♪


学祭が終わり、夕夏も実家に帰った。

茜と佳代の家に泊まって何を相談してたんだか?


そんなこんなで、

俺は今までにない解放感に包まれている。


そう、問題がはっきりとしたからだ。


俺はある方向では間違っていたのだろう。


ただ、もう一方では間違っていなかった。


その事実だけで、昨日とは世界が変わって見える!!


「せ、せんぱ〜!!」

「…」

(何、あの先輩!こ、怖い!!)


木下さんの声が聞こえたような気がするが

きっと気のせいだろう。


「YA-MAN!!ご機嫌だなぁ!!」


「おお、ルー!後で皆んなに話があるんだ」


「ヘイ、Mano!見てればわかるぜ!!

身体から発するリズムが違うぜ♬」


踊り歩く男2人はさぞかし、異様な光景だったであろうと思う。



「皆んな、話があるんだ」


「まず…すまなかった!!」


「誰に対してとかは言わない。

言うべきではないと思うからだ」


「俺は…俺は間違っていないと思う」



「だけど、間違っていたのかもしれない」


「すまん、俺自体ふわふわしている」


「だけど、自分の中でははっきりとしてる」


「だから、謝りたかった!!」


「何がって聞かれても言葉に出来ない」


「だからもう一度、最後に謝る」


「そして、お前らに2度謝らない!!」


「何かあってもありがとうと返せる自分でありたいと思う」


「これが俺の謝罪であり、決意表明だ!!」


「みんな、ごめん!!」


「みんな、ありがとう♬」


俺は言いたい事全部言ってやった。


言わないと先に進めないから。



「え〜っと、分かったよ。

が一番良い返事かな?笑」

「あぁ、ありがとうまどか!笑」


「なんだかわからねぇが、聞かねぇぜ。

俺は、兄弟の気持ち受け止めたぜ!!」

「あぁ、一心」


「ふむ、前向きになったわけだから何も問題はないだろ?」

「全くだ、西田」


「な、なんか、わ、分からないですけど…

カッコいいです!!」

「サンキュー、木下さん」


「…グッ!!」

弘と俺は拳を合わせた。

「…グッ!!」


「ふふ、こちらこそ。

受け取りました、ありがとうございます」

「佳代…はは。どういたしまして!!」


「カシャ」

「さぁ、湿っぽくないけど、湿っぽいのは

終わりでーす♬」


「YA-MAN!!レッツダンスだぜ〜♬」


「ブイ!!笑」

「茜…ブイ!!笑」


……


「何?なんのこのノリ?みんななんで踊ってるのよ?ちょっと岬なんなの?」


「おう、由希子遅かったな♬」


「俺がみんなに謝って、お礼を言った!!笑」


「はぁ?」


「それだけだ。ヒロミは?」


「…遅れるって…」


「いや、説明になってないのよ!!

なんなの、なんで踊ってんのよ〜〜〜!!」



「終わったか?」


「あ、教授。なんだか分からないんですけど

皆んな踊ってるんですよ…

病気、病気なの?」


「あぁ由希子。落ち着け大丈夫だから。笑」


「多分、斗真のノーキン決意表明の暑苦しさに

当てられてテンション上がっただけだ」


「2、3分で落ち着くだろ…笑」


「はぁ…」



「終わったかしら…?」


「だな。そろそろいいか」



ガチャッ


「ヒロミ!どうしたのよその顔!!」


俺達は由希子の声で我に返り、遅れて来た

ヒロミの元へ駆けつけた。


「ちょっとね…」


「モゴモゴ言ってたってわかんないわよ!!」


「誰、誰にやられたの?」


「ふざけんじゃないわよ、ぶっ殺してやる!!」


「違う、違うのよ由希子…」


「だって、だってこのアザ!

マスクしてたら分かんないよ、ねぇ酷いの」


「ちょ、ちょっと泣かないでよ由希子!!」


「ヒロミ…手ェ貸すぜ。お前がやられたんだ

相手が1人のはずねぇ」 


「おう、一心俺も行くぜ!!」


「待て、待て、気持ちは分かるが、

まずは相手の戦力の確認からだ」


「やるからには…圧勝だ!」



「あぁ、もう違うって言ってるじゃない!!」


「だ、だけど、そのアザ。ヒン」


「お願いだから、泣かないで由希子」


「これは、木にぶつかったの…」


「じゃ、じゃあそのマスクは!?」


「…もう、笑うんじゃないわよ」



「「だーはっはっはっ!!」」


「歯が!歯がねぇ!!」


「「だーはっはっはっ!!」」


「わ、笑わないでって言ったじゃない!!」


「差し歯が取れてどっか行っちゃったのよ〜」


「こんな顔じゃ、外を歩けないわぁ〜」


「あたしの人生、終わりよぉ〜」


「…ちょっと…」


「あたしの心配と涙…どうしてくれんの?」


「返しなさい、返しなさいよ!!」



「…退屈しねぇな、こいつらは。笑」


「しばらくは無理だな…笑」



「久しぶりに一服でもすっかね〜♬」



「さて、落ち着いたか?」


「…」


「今日から、お前らを指導して行こうと思う」


教授が俺達を見渡す



「大会まで時間はないが、やっと準備が整ったと思っている」


「今、お前らに必要なもの…」


さっきまで騒がしかった音楽堂が、

少しだけ静かになった。


「それは、『心』だ」


「合宿で、他人の音を聞き、他人の音に合わせる事を学んだ」


「そして技術を高める事の楽しさを知った」


「…」


「…足りねぇ」



「俺がお前らに教える物、

それは『オーケストラ』だ!」


「技術だけじゃねぇ、他人も自分も楽しみ楽しませ、会場全体で『音楽』をする」


「それが『オーケストラ』だ!!」


「そして『オーケストラ』に必要なもの。

それが『心』だ」


「作者の心、楽器の心、会場の心、オケの心、指揮者の心、客の心…」


「それをこれから学んでもらう」


「…」


「これは強制じゃねぇ」


「…」


「これからの練習はただ厳しいだけではない」


「意味が分からず、結果も目に見えないし

明確なゴールもない、そんな練習だ」


「俺から、やれとは言わない」


「だから、みんなで答えを決めてくれ」


「…」


「お前らなら乗り越えてくれると思う」


「今まで、ろくな指導をしてこなかった俺が今更何言ってんだって思う」


「…だが」



「どうか俺にお前らの指導をさせてくれ」


教授が頭を下げた!?


「…今すぐなんて、言わねえ。

ゆっくり決めてくれ…」


教授はホールを立ち去った…



「なぁ…時間いるか?笑」


「「いらん!!」」


「だよな!笑」


俺達は、教授の後を追いかけた。


覚悟を伝え


共に成長する為に!!



あまりの早さに驚く教授だったが、


俺達の決意を聞き


顔が喜んでいた事は本人には内緒だ。



「さて、ちょっとびっくりしたが、

みんなの気持ちは受け取った」



「正直、嬉しいよ」


「…」


「これから行っていく、練習だが指揮は俺がやる。斗真、お前は俺の横で真似してろ」


「…良いか、よく見て真似するんだ」


「勘違いするなよ、

俺をトレースしろって言ってるんじゃない」


「俺が1曲振る。

その次はお前が振る。

その繰り返しだ」


「それと、楽譜はなしだ。

俺とこいつが振る前に一度だけ見ていい」



「渚。今日の楽譜をみんなに」


「…」


「曲は毎日変える。同じ曲はやらない」


「…それだけだ」


「他に特別な事はない」


「主に、午前中と午後に各3時間。

それ以上は練習は行わない」


「…」


「それ以外の時間は自由にしてくれ」


「まぁ、出来れば誰かとつるんでバカをやっていて欲しい」


「合宿の延長だな!笑

音楽の話でも良いし、飯の話でもいい」


「冬休みの予定なんかも良いんじゃないか!!笑」


「物足りなく思うかもしれないが、お前たちは確実に成長してる」


「…」


「だから、焦るな!!」


「楽しむ事を思い出してリラックスしろ!!笑」



「質問がないようなら、始めていく」


「この先、俺は一切質問には答えない」


「質問も答えも、『音』でしてくれ」


「あっ、音楽以外の質問なら良いぞ!

今日のお馬ちゃんの予想とか釘の良い店とか」


「おっと、女がらみの話は無しで頼む!!笑」


「ふふ、誰も教授のプライベートに興味はないですよ。笑」


「うるせぇよ!!笑」


「…」


「渚。お前は俺達の演奏を撮影しておいてくれ」


「はい」


「この動画は、翌日にお前らに渡す」


「当日には渡さない。

その意味を考えてみて欲しい」


「…」


「…さぁ、始めよう…」


……




それは、もう酷い演奏だった。


一度楽譜を見ただけで、演奏なんて出来るわけもなく。



だが、教授はそれでも『音楽』にまとめる。


やっぱ、うめぇ…


それに、タクト振ってる教授を初めて見たけど



なんて言うか…


…引き込まれる



この後、どうなるんだろう?


そんな期待を抱かせてくれる…


ワクワクする♬


……


俺はと言えば、まぁ、ひどい。


指揮は飛ぶし、音を聞く余裕、

みんなを見る余裕が全くない。


俺が振ると音楽にすらならない。


こんなに、違うのか!!


……


「教授…むずいっす」


「はっ、当たり前だろうが!!笑」


「俺を誰だと思ってんだ?元天才指揮者様だぞ?」


「タクト握って1年もたたねぇペーペーが生意気言ってんじゃねぇよ!!笑」


「みんなも良いか?上手くやろうと思うな。

失敗したからって止まるな」


「次が分からなくても良い、音を出し続けろ!」


「で、でも教授、つ、次の音が分からないと…」



「…特別だぞ?ミツミの今の質問だけ答えてやる」


「…感じろ」


「流れに身を任せて、音を鳴らせ」


「…以上!この先は答えねぇ」


「ホラ、次は俺の番だ」


「お前らの『音』でかかってこい!!笑」


……


俺達は間違えたけど、

間違ってなかったんだと思う。


それを、教授が教えて…


いや、伝えてくれているんだと思う。


あの市の大会のように、


今日のオケには笑顔がある。


……


「オラ、お次はお前だ!!」


「ウッス!!」



……


ーーーー

次回 第46音

「2度目のRestart」

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