第43音 「木下光海の場合 2」
イディアハルモニア
第43音
「木下光海の場合 2」
学祭、3日前
「せ、せんぱ〜い、みんな〜、ど、どこ行っちゃったんですかぁ〜グスッ」
「せんぱ〜い!!グスッ」
皆んないないよ〜!!
練習は?
それより、私だけ置いていかれた!!
ひどいよ〜。
と、とりあえず探そう。
こんな日に限って携帯忘れてきちゃった。
どうせ、誰からも連絡こないし。
オケに行けば皆んないるし。
……
走り疲れちゃった。
「あっ、ねぇそこの君?」
わ、私!!
ど、どうしよう。
「は、はい、な、なんで、しょうか?」
「あはは、そんな警戒しないでよ!」
警戒じゃないの苦手なの!!
「悪いんだけどさ、ちょっとだけ、ここの所
抑えてくれないかな?」
「は、はい。良いですよ」
それくらいなら、ね。
…
これなんだろう?凄く大きい!!
「これさ、よっと。あっ、曲がっちゃった。笑」
「学祭の入り口の看板。よっと…よし!」
看板!手作り!!
「す、凄いですね〜」
「あぁ、予算がなくてさぁ。DIYの割には良くできてるだろ?」
「は、はい。そ、それもですけどこの『絵』
これ凄いです」
「あ、そっち!嬉しいな、コレ俺が描いたんだ」
「俺グラフィックアーティスト目指してさ。
絵描いてくれって言われたら看板も作れって」
グラフィックアートって言うのか
「ポ、ポップでカ、カラフルだけど、じ、自分はこうなんだ、って、つ、伝えてくる、気がします」
あれ、意外と話せてる。
音楽じゃなくても通ずるものがあるからかな?
「そ、そう。そうなんだよ。あっ、ごめんそこのネジとって。ありがとう…よっと」
「結構、イタズラ書きとか言われる。そうここ、抑えて。んだけど、もっと本質。もうちょい上、良いね、見てほしいよね」
分かる、表面だけで分かったつもりになるのは違うと思う。
「ふう、サンキュー!助かったよ!!
あ、そういえば君は?」
「あ、き、木下です。オケを、や、やってます」
「へぇ、吹奏楽部?」
「ち、違う、ます」
「あぁ。じゃあ、あっちの。あ、俺佐々木。
ホントありがとね。お互いがんばろうな」
◇
結構好きかもグラフィックアート?だっけ?
古い絵画しか見てこなかったけど、中々新鮮だったな。
それが、看板だって!しかも私もちょびっと手伝っちゃった♬
…
「ね、ねぇ。携帯見なかった?どうしよう…」
ん?
大変!!
「ねぇ、あなたの携帯貸してもらえない?
自分のにかけたいの」
あちゃ、私の携帯家だよ…どうしよ。
「あ、あの、わ、私携帯、き、今日持ってなくて…」
ごめんなさい!!
「そっか、ごめんね無理言って」
なんか、申し訳ないなぁ。
「あ、あの、て、手伝います」
せめて…ね
「良いの?助かるよ〜。あたし井上桜」
「き、木下、み、ミツミです」
「ミツミ?可愛い。どんな字?」
「ひ、光、う、海で、ミツミです」
「そっか、良いね。ありがとミツミちゃん」
「い、いえ、まだ見つかって、な、ないですし」
「そうだね!笑」
結構探したけど…見つからない。
「あ、あの、最後は?」
初心に戻って最初から!!
「結構見たけど…カフェテリアのソファかな」
「でも、ソファの下にもスタッフにも聞いたけどなかったよ」
あっ、ひょっとして
……
「あ、あった!!」
「嘘!!」
「こ、コレですか?」
私も良くやるのよね、クッションの隙間
「ありがとー!ミツミちゃんホントありがと!!」
「わ、私も良くやるので。笑」
「ごめんね、急いでたのに…」
「い、いえ。オ、オケの、せ、先輩を探してただけなので」
「ふーん、どんな人?」
「あ、あの、大きくて、イケメンの」
「あぁ、ヒロミちゃん?ならステージの方にいたわよ」
「あ、ありがとう、ご、ございます!!」
「気をつけてね〜」
◇
良かった、逆に助けられちゃった!ふふ。
…
あっ!ロッカーが!!
「あ、危ない!!」
「バタン!!」
いてて、間に合って良かった。
「だ、大丈夫、で、ですか?」
「あ、痛たた、あら危なかったわ」
良かった、元気そう。
「ありがとう、お嬢さん。親御さんは?」
ガクッ、慣れてるけど…キツイ笑
「わ、私、こ、ここの学生です」
「あら、ごめんなさい!笑
痛!足首捻ったみたい、年ね。笑」
大変、突き飛ばした時に!!
「お、お手伝いします。ど、どちらへ?」
「いいの?悪いわぁ…お言葉に甘えようかしら?
事務室まで、お願いできる?」
先輩達…まぁ、放っておけないよね。
「は、はい!!か、肩につかまって下さい!」
「ありがとね?えーっと?」
「き、木下です。木下ミツミです」
「私は、大沢よ。よろしくね木下さん」
……
「ありがとう。ここで大丈夫よ」
「い、いえ。わ、私はこ、ここで失礼します」
「あら、お礼もまだだわ。お急ぎ?」
「は、はい。オケのせ、先輩を」
「どんな子?」
「え、えと。メガネをかけたえ、偉そうな感じの人とか、いつもテンションが高くて、ずっと踊っているような」
「多分、模擬店の所に居たわね、2人とも」
「本当ですか!!あ、ありがとうございます」
「気を付けるのよ〜」
◇
模擬店、ここだ。
えーと先輩達は?
あっ、いた。西田先輩とルーカス君。
「お、おー…」
「おーい、早くしまっちゃってくれよ」
「えっ?」
「ホラ、そこの。油とか海苔とか」
「えっ、えっ!!」
「あ、軽いので良いぜ。
ホラ急がないと終わらないぜ」
「は、はい…」
なんで私が!!
係の人と間違えてるんだ。
「違うよ、ストローはこっち!!」
「は、はい!!」
……
「ふう、おつかれさん。なんか飲む?」
「お、お茶で」
最後まで、やってしまった…
「あれ?君模擬店係?」
「い、いえ…」
「嘘!!ほ、ホントごめん!!
うわー、ごめんねー。申し訳ない!!」
「だ、大丈夫です」
「あ、学祭の当日お店に来てよ。サービスするから。名前教えて、お店で共有しておくから」
「は、はぁ。木下です」
「了解、本当ごめん。それからありがとう」
つ、疲れた…
なし崩し的に手伝ってしまった…
ピンポーン
「学祭運営委員からのお知らせです。
本日の準備時間は終了となります。
届け出のない生徒は速やかに退校してください。」
「…」
……
結局、誰とも会えなかった…
あっ、弘くん
「ひ、弘くん、ど、どこにいたの?」
「…」
「…堂内にいたけど…?」
嘘ぉ!!
◇
「き、昨日は何処にいたんですかみなさん!!」
「ごめん、ごめん皆んな色々あってさ」
「ひ、一言くらい」
「ごめん、ランチ奢るからさ。なっ、みんな」
「プンプン」
…
……
◇
学祭1日目
今日は皆んなフリーだ。
そういえば、由希子先輩のミスコンがあるな。
どうせ優勝よ!!由希子先輩だもん♬
あ、あれ先輩だ!!
隣の子は…妹さんかな。セーラー服だし。
「せ、せー」
「あっ、みっちゃん!」
「ひぁ、ま、まどか先輩?」
「ご、ごめん来て、緊急!!」
「は、はい〜!?」
……
「仁美、これ使って!!」
これって!
「あ、ミツミちゃん。ありがとう助かるよ〜」
「あ、あのぅ、何が何やらさっぱりで…」
「よし、まずコレ。紙吹雪。切って…ひたすら」
「は、はい…」
……
「次、出場者のタスキ!番号振ってあるから間違えないで!!」
「は、はい!!」
仁美さんが燃えてる!!
「モタモタしない、行く!!」
「はい!!」
……
「あれ、ミツミ?何してんの?」
「あっ、由希子先輩。わ、私もな、何が何やら?」
「あぁ、タスキ?良いよ。私やっておくよ」
「す、すいません、由希子先輩。
頑張って下さい…」
「…」
「あ、あの子、大丈夫かしら??笑」
…
「ミスターに飛び入り!!」
「もう、忙しいのに」
「誰!?岬君?他薦、ヒロミちゃん?
こっちの状況を…」
「ミツミ!」
「はい!!」
「まどか、呼んできて!今ミスターの控え室」
「はい、行きます!!」
……
「ま、まどかせんぱーい」
「ん、どうしたん、みっちゃん?」
「あ、あの、仁美さんが呼んでこいって」
「なんだろ?」
「なんか、ミスターに、と、飛び入り参加だって」
「はぁ、誰?」
「み、岬先輩です…」
「えっ、斗真くんが??」
「アタシ、推薦しちゃった!!笑」
「え〜っと、分かった。私は斗真君探してくるから、みっちゃんは仁美に伝えて!!急ぐよ」
「はい!!」
「頑張ってね〜♡」
「ヒロミちゃん、あとで長めの話があるから!笑」
◇
「ふう、ありがとうミツミちゃん」
「とりあえず落ち着いたよ。あ、お茶どうぞ」
「はい!いただきます!!」
「ど、どうしたの、そんな軍隊みたいな…笑」
「あ、いや、はっは」
「うん、あとはもう大丈夫だから。ありがとうね」
「は、はい、失礼します」
……
岬先輩の妹さんに挨拶しようと思っただけなのに
なんでこんな事に?
先輩はコンテスト出るから挨拶どころじゃないし。
…
何か食べに行こうかな。
◇
そういえば、サービスしてくれるって言ってたし行ってみようかな♬
うん、私働いたし。対価よね。笑
裏からお願いって言ってたけど。
「ちょっと、何サボってんの!」
「へ?」
「絶賛ピークタイムなんだから!
とりあえずドリンク作って!!」
「い、いや、違う」
「ホラ行くよ!!」
「違うんですぅ…」
……
「お疲れぇー交代でーす」
「…」
「あ、あれ、木下さん?」
「…」
「なんでエプロンして?」
「…」
「えっ、この子違うの?」
「…」
「この間準備手伝ってくれた子だよ!!」
「…」
「うっそ!やだ、ごめんなさ〜い!!」
「だ、大丈夫、です」
「何飲む?何食べる?」
「「奢らせて下さい!!」」
……
「違うって言ったんだけどなぁ」
まさか、上手く話せない弊害がこんな形で…
頑張れ、私。
…
「あら、木下さん」
あっ、えーと大沢さんだ。
「あ、大沢さん!?つ、杖!酷いんですか?」
「違うの、私が大袈裟なだけ」
…
「ど、どちらへ…」
「知り合いの子が書道部で作品展示してるから
見に来たのよ」
「よ、良ければ、ご案内します」
「良いの?また、甘えちゃうわよ?」
「は、はい、大丈夫です」
……
「また、助けてもらって。本当にありがと」
「い、いえ、気をつけて下さい!!」
◇
な、なんだか、何なんだろう今日は?
あっ、そうだ。
看板。
横の門から入ったから、まだ見てなかったな。
……
凄い!!
全部組み合わさるとこんな絵になるんだ!!
「おっ、木下さんだったよな?」
「あ、どうも!!」
「この間はありがとな!立派なもんだろ?笑」
「は、はい。素敵です」
「へへ、ありがとな。そうだ、コレ俺の作品のポストカード。大したお礼になってないけどもらってくれよ!!」
「い、良いんですか!?」
「もちろん!俺のアートを認めてくれた人だ。
是非もらってよ」
「そ、それじゃ、遠慮なく」
「おっと行かないと。それじゃ明日頑張れよー」
明日?
明日の事なんか言ったかな?
…
なんか、まだ半日くらいなのに
なんて濃い一日なんだろう
◇
学祭2日目
イディモニスタンバイ
はぁ、ドキドキするな。
こういう、緊張だけはなくならないもんね。
ホルン上手く調整できたし。
コンクールの為にも次に繋がるといいな♬
……
「それでは『イディモニ』の皆さんでーす!!」
「ちょ、僕の意見は!!笑」
「「由希子様ー!!」」
「「ヒロミ様ー!!」」
二人とも凄いな。笑
「「木下ちゃーん!!」」
わ、私!!
だ、誰が!!
「準備出来たようです、
それではイディモニさんで
Camille Saint-Saënsの
ピアノ協奏曲第2番、第3楽章です」
はっ、集中集中!!
先輩のタクトがゆっくりと上がっていく。
結局、妹さんには会えなかったけど。
久しぶりのホルンだ。
今しか出来ない事を
全力で!!
タクトが一気に振り下ろされた!
ドカン!!
…
……
………
ーーーー
次回 第44音
「設楽弘の場合」




