第34音「木下光海の場合」
「じゅーーー!!」
「店長〜今月のもんじゃ
『キノコと秋刀魚と栗もんじゃ』サイコーっす!」
厨房から親指を立てた右手だけが見える。
店長…渋い!!
「ほのか〜、シークワーサーサワーお代わりぃ〜」
「由希子、あんた水挟みぃや!笑」
弘と木下さんはすでに潰れている。
……
「そ、そういえばMano」
「シークワーサーで思い出したんだが」
ルーが怯えるように、思い出している。
「お、俺、見たんだよ!沖縄で…お化けを…」
……
「「お化け!!」」
◇
あれは、初日のホテルでの事だった。
カラオケの帰り、
皆んなで道を歩いていたろ?
俺はみんなの一番後ろ。
楽しかったし、良い気分で歩いていたんだ。
ふと何かの気配を感じて…振り返ったんだ。
「…」
後ろから足音が聞こえるんだよ。
まどかが来なかったから、
全員で11人のはずだろ?
確かに前には10人いたんだよ。
…気のせいか?
と思ってそのまま歩き続けていた。
「…」
「…」
足音はずっとついてくるんだ。
「…」
…振り返ってもやはり誰もいなかった。
……
そのままホテルに着いてすっかり忘れた頃、
喉が渇いて自販機に行ったんだ。
俺達の部屋、一番奥だったろ?
自販機はエレベーターホールだ。
ガチャ…パタン
…
「?」
暗い廊下の先、
自販機の光に照らされたエレベーターホールに小さな影を見つけたんだ。
…こんな時間に?
誰か飲み物でも買いに来たんだ、そうに違いない。
そう思った時…
急にさっきの事を思い出した。
…まさか、ついて来た…
そんなバカなと目を擦って見直したら
その影が無くなっていたんだ。
「そんな、確かに…」
…そのとき
ポーン
と音が鳴りエレベーターが到着した。
…誰も乗っていなかった。
もちろん、他の部屋はどこも閉まっていた。
「…」
俺は勇気を出して、
エレベーターホールへ走った。
「えっ、え?」
…誰もいなかったんだ。
…
……
翌日、船に乗っただろ?
お化けってのは夜だけのものじゃないんだ。
一通り遊んで、部屋に戻って眠ろうとしてた所
コツコツコツコツ
歩く音が聞こえてきた。
俺達しか乗ってないから、
誰だろうって気になってさ。
部屋のドアにカーテンのついた
丸い窓がついてるだろ?
のぞいてみたんだけど誰もいないんだよ。
確かに
コツコツコツコツ
って音は聞こえてる。
昨日の事も、あったから勇気を出して
ドアを開けてみたら
…誰もいないんだ。
やがて遠ざかるように足音は消えていった。
俺は、怖くなって頭から布団を被った。
15分…
30分…
気付いたら朝だった。
…
……
「る、ルーお前」
まぁ、待ってくれMano。
これだけなら見間違いや、
誰かがいた可能性もある。
…
あれは合宿所のロッジでの事だ。
…
……
夜の11時半。
決まってそれくらいの時間だ。
どこからともなく
ブーー、ぺーー、
…籠っているのに、甲高い音。
ラップ音のように切れ切れで聞こえてくるんだ。
最初は虫でもいるのかと思ったんだ。
だが、虫の羽音が室内まで聞こえてくるか?
それも、決まった時間に、毎日だ!!
…俺は酒をあおって眠ったよ。
俺は自分でも分かってるが脳天気な男だ。
大体の事は寝てしまえば忘れちまう。
だけど、毎日忘れた頃になるんだ。
実害が、音だけな分余計に怖かったよ。
…
……
それと、とどめだ。
これはトーマも一緒に経験したよな?
ミツミの遊びの時間だ。
あれは4日目だったと思う…
あの日の最後はミツミの提案の番で
肝試しをしたいと言った。
何人かのチームに分かれて、
夜の森を歩いていたんだ。
俺達のチームはトーマ、俺、そして、
…ミツミだ。
……
ミツミが決めたルールは
ゴールまでのタイム勝負。
途中で、声を出したら負け。
俺達は暗い森へとスタートした。
しばらく歩いて折り返し地点を過ぎた頃。
順調にゴールに向かっていた俺たち。
前を歩いていたミツミが
ふっ
と消えたんだ。
「…」
俺は小声で「ミツミ」って呼んだんだ
そしたら…
何故か真後ろから
「は、はい」
ってミツミの声がするんだ!!
(ん?あれは…)
それだけじゃない…
目の前にいるはずのミツミの肩を掴もうとしても触れないんだ。
何度も何度も触れようとした。
頭は目の前にあるのに…
そして最後にまたミツミが消えた…
ガサガサという音だけがこだましていたよ。
…ミツミ!?
怖くなった俺はそのままゴールに走って向かったんだ。
…俺は目を疑ったよ。
すでにミツミがゴールにいるんだよ!
俺は走ったんだぜ!!
ミツミが先に着いているはずがない。
着いていてはいけないんだよ。
「…」
目の前にいたミツミが偽物なのか、
ゴールにいたミツミが偽物なのか、
…それはわからない。
「…」
これが、俺の体験した沖縄での恐怖だ。
…
……
「ち、ちょっと、ルーカスやめてよ!!」
「お、おい、ヒロミよぉ、起きろ、目を覚ませ!!」
…
(なんか、なんとな〜く俺だけ全ての真相が、分かったような…)
「あれは、ミツミじゃなく沖縄のキジムナーに違いない!調べたんだ!!」
「で、でも、確かにあたしもその音は聞こえたわ。うん、それくらいの時間に毎日!!」
(…多分)
…
……
ーーーー
『木下光海の場合』
沖縄1日目
カラオケ帰り
まどか先輩が、西田先輩を連れて帰ってくれて助っちゃった!!
ああいう所を見習わないと!!
……
皆んな歩くの早いな、私チビだから。笑
わっ!!急にルーくんが止まった。
ど、どうしたの急に後ろ振り返って。
こ、怖い!ルーくんの後ろに隠れよう!!
……
わっ、また!!
ど、どうしたのかしら?
特に何もないけど?
お、お化け!?
◇
『木下光海の場合』
ホテル帰還後
深夜
あぁ〜、飲み過ぎちゃった、ヒック。
やだ、しゃっくり。笑
何か飲み物買ってこよう。
…
…
この階に自販機ないのよね、
下の階に行かないと。
トントントン
わっ、階段降りてすぐ助かるなぁ。
ゴトン
エレベーターで帰ろ…
ギィ…パタン
……
う〜ん、上の階だから中々来ないな。
「…」
いいや、階段で行こう!!
「えっ、え?」
なんかルーくんの声が聞こえたような?
飲み物かな?
◇
『木下光海の場合』
クルーザー内
広いお風呂があるんだ♬
絶景のオーシャンビュー。
今なら誰もいないかも、独り占めおんぷ
……
コツコツコツコツ
えーっと、
コツコツコツコツ
あっ、間違えた!!
ここ右ね♬
ガチャ
「そ、そんな!!」
ん?
誰かの声が聞こえたような?
まっ、いいか!
おっふろ、おっふろ、
オーシャンビューのおっふろ♡
◇
『木下光海の場合』
合宿初日
pm 11:30
今日も日課はちゃんとやらないと!!
昨日はカラオケ行って飲み過ぎちゃったからな。
でも…お家の部屋は防音してあるけど、
皆んなの迷惑にならないかな?
……
お布団かぶってやれば大丈夫!!
聞こえても皆んな優しいから
許してくれるよね?笑
「「ブーー、ぺーー、」」
お布団かぶってやると普段と音が違って
ちょっと面白いな!!笑
「…」
今日から合宿スタート、頑張らないと!!!
◇
『木下光海の場合』
合宿4日目
肝試し
うぅ〜、自分で提案しておきながら怖いよ〜
わ、私が一番前!!
で、でも後ろに先輩とルーくんがいると思うと心強いかも!!
声出さないように気をつけないと!!
……
あ痛っ!!
うぅ、こけちゃった!!笑
あ、あれメガネ??
やだ、落としちゃった!!
「ミツミ?」
ルーくん?
ダメだよ、声出しちゃ。
「は、はい」
なんだろう?
こけたから心配してくれたのかな?
メガネは…後で先輩にお願いして
一緒に探してもらお♬
……
う〜ん
よく見えないなぁ。
!?
ルーくんなんか掴もうとしてる?
それにしても…見えない。笑
「…」
あ痛っ!!
葉っぱが!!
あ痛っ!!
根っこだ。
あれ、道間違えた?
ど、どうしよ!!
「…」
ん?
良かった、ゴールだ♬
私先に着いちゃった?
……
あっ、先輩達!!
良かった、そんなに間違えてなかったみたい。笑
…
……
多分、そんな所じゃないかな?
俺はなんとな〜く当時を思い出した。
「あ、あんた、ミツミに確認しなさいよ!!」
「Mano、ユキコそいつは酷いぜー!!」
「いや〜ん、めっちゃ怖いやん!!
みっちゃん、人間と違うん?笑」
いつの間にか起きていた弘が
「…んなバカな…」
と呟いていた。
「…」
すやすや眠る木下を見ながら
キジムナーね。笑
似合ってるかも!!笑
…
まぁ、俺だけの胸に閉まっておこう。
…
面白いから…笑
……
ーーーー
次回 第35音
「天高く」




