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イディアハルモニア  作者: 金柑


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36/53

第33音「新たに」


俺達は東京に帰って来た。


なんか、1年以上離れていた気がする。


帰って来て初めての練習…



やっぱり!


間違いない、上手くなってる!!



「ストップ、ストップ!!」


俺は演奏を止めた。


「どうした、兄弟?」


「何よ岬、良い感じだったじゃない!!」


皆んな怪訝な顔だ。


「す、すまん」

「皆んなすげぇ上手くなってて

今の内容だとスコアの理解が足りなくて」


「ごめん、今日は個人練習にしてもらえるか?」

「もう少し内容を詰めてくるから!」


「む、そうか、それなら仕方ない。しばらく課題しかやって来なかったからな」

「新譜への理解を深めるのも、お前の仕事だ」


「そうね、それならしっかりとお願いね♡」


「悪ぃ!!」


俺は音楽堂を飛び出た。


……


嬉しい誤算だ、

これは俺の理解にかかってるな♬


どうするか考えながら、俺はベンチに腰掛けた。


「今の一心なら、もう少し深くても…

木下さんがいるから、もっと攻めても良いんじゃないか?」


ぶつぶつ言っていると、隣に猫が座っている事に気が付いた。


……



「あっ、

そうか佳代のメロディラインが強くなってるんだ…」



……



「茜と練習用に一度編曲をしてみても良いかも知れないな…」



……



「おーい、猫さんや。お前は誰だい?」



……



「坂下さんの所の子か?」



……



「なんか言ってくれよ〜」


「にゃ〜」


そっと背中を撫でようとしたら

どこかへ行ってしまった。



……


「残念…」



翌日


今日も俺はオケには参加せず、

客席から皆んなの音を聴いている。


「そうか、ここか…」

音を聴きながら、楽譜を修正していく。


「ふぅ〜、ちょっと休憩だな」


音を聴きすぎて頭が痛くなってきた…



外に出た俺は、


おっ!


コンビニへと向かった。


……


「イラッシャせ〜」


「オゥ、トーマサボリか?」


「ちげぇよ!休憩だよ、休憩」

「タナ、キャットフードってあったっけ?」


……


「よっ、昨日ぶり!!」


「にゃ!」


逃げそうな猫を手で制し、


「まぁ、待てよ。今日はお土産ありだぜ」


パカッ


キャットフードを開け、ベンチに置いた。


警戒するといけないから、俺は芝生に腰をかけた。


……


〜♪〜♬


ここでも音が聴こえるんだな…


「お前も『音楽』が好きなんだな…」


……


心地よい、秋の日差しと漏れ聴こえる

みんなの音に少しウトウトしていると

猫が近付いてきた。


「うにゃぁ」


「…」


「お礼か?律儀なやつだな」


「にゃ〜」


背中を撫でようとしたら走って逃げてしまった。



まだダメか…


残念…


……


「はーい、お待たせ」


渚さんだ


猫が…懐いてる…


「あら、斗真くん、サボリ?」


「違いますよ!ちょっとスコアを見直してて」


「そっか、あらお腹いっぱい?お水飲む?」


「その猫、渚さんの子ですか?」


「ん?野良の子よ。

先月くらいからウロウロしてるのよ〜」

「私と高木さんでお世話してるの♬」


水を飲む猫の背中を撫でながら渚さんが言った。


「あっ、すいません。俺エサあげちゃいました」

「あら、良かったねぇ♬」


……


あっ、教授だ…


ピクッ


あっ…


「もう、教授〜、また逃げちゃったじゃないですかぁ!!」


……


「…なんでだ」


……


「…」


き、教授…


あっ、そうだ!!


「す、すいません、教授」


「…お、おぅ、どうした?」


すげぇ残念そうな顔してる…


「実は、コンクールの曲なんですけど」

「予選2曲、本戦2曲ですよね?」


「1曲は被らせても良いとして、全3曲…」

「構成をどうしようかと考えてるんですが」



「3曲ね…」


「はい?」


「あ、いやいや、構成だな」

「まず、ピアノは一曲入れるんだろ?」

「そこから、考えてみろ。

必然的に2曲目の方向性が見えてくるはずだ」


「茜のテクニックだとラフマニノフかチャイコフスキーで行こうかと思うんですが」


「みんなのレベル的にも十分ついていけると思います!!」


……


「…そうか、まっ、とりあえず決めてみろ」

「あとは、その時だ」


「はい!!」

「ちょっとみんなと打ち合わせして来ます」


「オゥ、無理すんなよ!!」


俺は音楽堂へと戻った。


「まだ、気づかないよな…流石に」


「ですね…」


……


「それと、しばらくエサやろうとしないで下さい」


「…はい」



「よっし、今日は終了!!」

「皆んなおつかれ♬」


「げっ、もうこんな時間か!?」

「お、お腹、空きましたね…」

一心と木下がお腹ペコペコモードの顔をしてる。


「YA-MAN!!それなら『晴れ晴れ』いこーぜ!!」

「穂乃果にお土産も買ってあるから行こうと思ってたんだよ♬」


「あら、良いわね♡」


「ヒロミ、あんた糖質制限してたんじゃないの?」

「ゆ〜き〜こ」


「な、何よ?」


「もんじゃは別腹よ!!」


「みんな行くでいいのか?」


「すまん、僕は父が帰っているので帰らないといけないのだ」


「私も母が来てて、駅前で待ち合わせしてますので、すいません」


「あ、私も、今日はごめんね。明日お母さんが早いから、私が弟のお弁当作らないといけなくて!!」


「ワタシも行けないでーす。明日パパの仕事の手伝いでーす…泣」


「そうだ、佳代、

お茶のお礼伝えておいてくれよ!」

「うちの母ちゃんすげぇ喜んでたよ!」

「ありがとうございます。母も喜びます!!」


「マリア、例の代金だ」

「オゥ、一心、毎度デース♬」


「まどかぁ〜、寂しいよぉ〜」

「ごめん、ごめん、由希子ちゃん!

私も、ちょ〜行きたいけど、また今度ね!!笑」


「む、北見は帰るのか?ならば送って行こう」

「わ、ありがと!!笑」


「まどか、気をつけなさい…西田も男よ!!」


「な、何を言うんだ!!ぼ、僕は」

「冗談よ、まどかを頼んだわよ♡」


「まったく、コイツらは」


西田とまどかとは学校で、

マリアと佳代と駅前で別れ、

俺達はもんじゃ「晴れ晴れ」へと向かった。


……


「いらっしゃ〜い!!」

「お、団体さん。久しぶりやなぁ、」

「てんちょ、7名様ご来店!!」


「YA-MAN、穂乃果お土産だぜ!!」

「おっ、なんや、なんや?」


「なんやめっちゃ綺麗なシーサーやな♬」

「ルーが選んでくれたん?」

「…ルー、センスない」


「わ、私、です」

「ミツミちゃ〜ん、おおきにやでぇ〜♬」


「お礼に生ビール、550円を、団体さん価格600円から10%offや!!」


「マジで!ラッキー!!」


「…」


「ん?ちょっと待て兄弟。10円しか安くなってないぞ?」

「何気に値上げしてるし!!」


「ありゃ、バレた!冗談や冗談♬」


「可愛い穂乃果ちゃんジョークやん」

「店長〜団体10%offでえぇ?」

厨房の奥から親指を突き立てた右手だけが見えた。


店長…渋い!!


「私、生〜大で!!」

「由希子はビールすっきゃなぁ」


「あたしは、ハイボール」


「ヒロミ、あんたもんじゃは食べるのに

酒は糖質制限するのね…笑」


「悪い?」


「ほな、他の皆んな生でえぇか?」

「俺は、オレンジジュースで」



「せやった、一心、下戸やったな」


……


ーーーー

次回 第34音

「木下光海の場合」

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