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イディアハルモニア  作者: 金柑


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29/53

第26音「成長」


5日目の朝


今日は少し遅めの8時に俺たちは集合した。


教授も、渚さんもいる。


「さて、昨日も言ったが今日から5日間は課題曲のみを演奏してもらう事になる」


「斗真、今日から指揮だ。頼むぞ!!」


「昨日渡した楽譜は目を通してきたか?」


みんな、もちろんと言わんばかりだ。


「よし、忘れろ!!」

「こっちが本物だ!!」


「…」


「「はぁ〜〜!?」」


「渚、頼んだ」

「はーい」


渚さんが、一人一人に楽譜を配ってくれた。


「ベースは一緒だ」

「シューベルト:交響曲第8番『未完成』」

「こいつを俺なりにお前らに合わせて完成させた」

「言うなりゃ

シューベルト:

交響曲第8番『イディモニ完成版』」


「って所だな」



まじかよ、めっちゃくちゃ読み込んできたぞ俺。


心の中で文句を言いながら、

新しい楽譜に目を通した。


……


なんだコレ?


すげぇ、


俺たちのクセをちゃんと理解してくれてる。


すげえ


だけど…


なんだコレ?


所々意図がわからない所がある。



やるしかないな。


教授が俺達の為に編曲してくれたんだ。


必ず成長に繋がるはずだ。



よし、

何はともあれ、一度通してみよう。


「ひとまず、初めから通してみよう」

「テンポを落として、慣れて来たらアッチェルで。走るのだけは気をつけて」


俺は指揮台をタクトで叩いた。


息を吸う。


久しぶりの指揮だな…


良い緊張感だ。


俺はタクトを振り下ろした。




演奏が始まって直ぐに感じた。


なんだ?


メチャクチャ振りやすい!?


それに、音が合ってる!?


いや、初日だし上手くはないんだが、


やけに皆んな合ってる。


と、言うよりも


音のズレが極端に少ない!!


……


コレなら


「原曲のテンポに戻します、急に行かないように

アテンポで」


行けてる。


誰だ?


誰になら振っていい?


木下先生…


「チューバ半音低い、それと叙情的に」


いいね…


そしたら…


「フルート、スタッカート意識強い。抑えて」


ん?


ちょっときつかったか?


もう一丁!


「ティンパニ、感情抑えて。周りの音聞いて」


やれんじゃん!!


俺はその後も、少しずつ指示を加えて

演奏を続けていった。


……


俺はタクトをそっと下ろした。


……


「お、おい!?」

「あ、ああ…」


わかる!!


「ヤッバー!!ウチらヤバくね?

だいぶ上手くない??」

「やだぁ〜、感じる、感じるわぁ〜♡」


皆んな一様に、上達を実感しているようだ。


まどかは、やはり先程の指示が堪えたか…


…大丈夫


俺はまどかを信じてる。


「き、教授!?」


「分かった、分かった。良いから続けろ。笑」


「は、はい!!」


俺達は夢中になって、何度も演奏を続けた。


……



晩飯の時間


「おい、おい、おい、おい!」

「なんなんだよ、メチャクチャやりやすかったぞ!!」

「は、はい、凄いです!!

こ、こんなの初めてです!!」

「…うん、うん…」


興奮冷めやらぬ一同、だが…


「まどか、大丈夫か?」


「う、ウん。マた少し、音ガひろエなくテ」


「そっか、始まったばかりだ。

焦らず、ゆっくりいこーぜ!!」


「ア、ありがとウ、

ごめんネ、迷惑かけチャッて。ワラ」


??


「飯食ってゆっくり休もうぜ!!」

「ちょっとやりすぎだよ、今日は。笑」


……


俺は気付いていたのに、


大丈夫だと、放置してしまった。


まどかの悩みに…


……



6日目



…まどかは来なかった。



やはり、何かあったんだ!!


くそ、なんで何もしなかった!!


まどかが悩むくらいだ、

相当な何かがあったに違いない。


「誰か、見なかったのか?」


「す、すまない、見ていない…」

「…僕も」


「茜は?ロッジ隣だろ?」

「ご、ごめん、ウチも見てない…」


「クソっ!!!」


「あ、あの、わ、私見ました!!」

「まどか先輩、確かにホールに向かってました」


「だ、だけど、と、途中で、ひ、引き返して」


「どうしたんです?」

「って、き、聞いたんですけど」


「チョット、ワスレモノ。ワラ」


「って、戻っちゃって」

「め、目が、わ、笑ってなくて…グスっ、グスっ」


「大丈夫、大丈夫よみっちゃん」

「全く、あの子は何してんのよ…」


「と、とにかく、探そう!!

島の中にはいるはずなんだから」



俺達は必死になってまどかを探し回った。


「岬ぃ〜、ここ、ここ道ある!!」

「由希子、今行く」


「ヒロミ行こう、他は探した。いるとしたらあの先しかない」

「そうね、何があったのかはわからないけど、あの子抱きしめてあげないと!!」


「だな」


「茜ぇ、皆んな連れて来てくれ!!」


「わ〜か〜っ〜た〜!!」


俺と由希子とヒロミは


最近誰かが通ったような獣道を進んだ。


……


…海?


そこは見晴らしの良い崖のような場所だった。


手作りだろうか、お墓がある。


お墓の側にまどかが座っていた。


「まどか!!」


「来なイデ!!」


…ま、まどか?


「ア、アれ、み、みんナ、ドウしたの?

ゴめん、ムカえにキてクレタんだヨネ?ワラ」


「そ、ソウダ、レンシゅうシなイトね、セッカくかだイモらッたんダシ、ガンバらなイとネ。ワラ」


……


「まどか?」


「来ナイデ!!」


「ホカのミンナはレンシュう、さすガダね、ワタシモ、モっとがんバラナイと!!ワラ」


「まどか、あんたどうしたのよ?」

「急にいなくなるなんて、

あんたらしくないじゃない!!」


珍しくヒロミが、声を荒げてる。


……


まどかが一瞬、ビクッとした。


「ヒロミチャン、ワタシラシイッテナニカナ?ワラ?」


「まどか?ねぇ、どうしたの、

なんかあったんなら相談してよ」


まどかがまた一瞬、ビクッとした。


「ユキコチャンニハワカラナイヨ。ワラ?」


……


「ねぇ、岬ぃ、なんなのまどかどうしちゃったの」

由希子は泣いている。


「すまん、お、俺にも何が何やら」



…嘘だ


俺は確かに『何か』を知っている。


……


「な、なあ、まどか、とりあえずみんなの所に戻ろう?なっ」


「ミンナ?」


「そうだよ、皆んな、心配してんだぜ」


「ソ、ソウダ、レンシュう、れんシュウしナイト」

「ミンナにオイテいかレチャウ」

「ワタシが、イラナくなッチャウ!!」

「ワタシはイるの?」

「ダレでモイイ?」


……


「トーマっち!!」


遅れてみんなが駆けつけてきた。


「ア、ミンナ、おつカレー!!ワラ」

「モう、レンしゅうのジカン?キョウはガンバる?がんバラナイト?ワラ?」


「…」


「ね、ねぇトーマっち、何?何があったの?」

茜は怯えている。


「わからねぇ、何がまどかをこんなに追い詰めたんだ。」


木下さんが話しかけた。

「まどか先輩!!どうしたんですか」


「こんなのまどか先輩じゃないです…グス」


西田が続いた。

「そうだぞ、北見。」


「君は僕に『普通』を教えてくれた!!僕の教師だ!!」


「ならば次は僕が君の教師になろう!!」


まどかがまた動きを止めた。


「フツウッテナニカナ?ワラ?」

「ワタシジャナイッテナンデワカルノ?ワラ?」



まただ、何だ?

何がまどかを苦しめてるんだ?


……


「モうイいヨ、わタしハだイじョうブだカら。ワら、ワら」


……


「ちょっと、まどか!!アンタ本当にどうしちゃったのよ!?」


「いつものまどかに戻ってよ!!」


ヒロミが、まどかに近づいた。


「来ナイデ!!」




「…来ないでよぉ…」




……


まどかが泣き崩れた。


泣きながら、笑ってる…


「ねぇ、イツモの私ってナニ?」


「普通ッテなんナノ?」


「私はミンナとちがウ…」


「一人はイヤ」


「ミンナといたイ…」


……


「ねェ、だれカおしエテ」



「ワラッテレバイイノ?ワラ」



「いや!!笑ウのハイヤ!!」



「ミンナヲマトメル?ワラ」



「いや!!私にダッテ考えはアル!!」



「ワタシハスゴイ?ワラ」



「嘘!!ワタシは凄くナンカない、

ダカラ、がんばらナイト!!」



「ワタシガアコガレ?ワラ」



「やめて!!理想ヲオシつけないデ!!

嘘!!嬉シイ、ガンバらないと!!」



「ワタシジャナクテモイイ?ワラ」



「いや!!私はココにイルの!!

違う!!フツウは私じゃナクテいイ!!」


……


「ねぇ、教えてよぉ。ふつうって何?

私は普通でいないといけないの?」


「わからナイ、ワカラナイヨ…ワラ」



まどか…


俺達だ


俺達が追い詰めたんだ。


見えてなかった


甘えてた


放置した


勝手に押し付けた。


……



俺は涙が止まらなかった。



……



「ネェ、オシエテ…ワラ」



……



バシーン


「アンタ、いい加減にしなさいよ!!!!」


ヒロミが、まどかをぶった!!


どんな事でも手を出したりしないヒロミが…


……


「アンタねぇ、何甘えてんのよ!!

分かるわけないでしょ普通なんて!!」


「…」


「大体アンタの思う普通を教えなさいよ。

それが分からなきゃ教えようもないじゃない!!」


「ダカラ、それが、わからナイノ…」


「ヒロミちゃん、オネガいオシエテ、助けてヨ」


「あたしに…」


「あたしに『普通』なんて分かるわけないでしょ!!」



ヒロミも…泣いてる



「あたしは『普通』じゃないから、あたしなんだ!!アンタ、あたし何かよりいっぱい、いっぱい持ってるじゃない!!!!」


「なんなのよ、普通がわからないって…」

「どんな、悩みよ…あたしだって」


「あたしだって、『普通』が良かったわよ!!」


「アンタに分かるの!!『普通』じゃない苦しみが?」


「分かんのか、好奇の目で見られる苦しみが!!」



ヒロミが、寛己になっていく。



「気持ちわりぃ、って唾吐かれた事が!!」

「好きでもねぇ、おっさんに抱かれそうになった事が!!」


「親に…親に泣かれた事あんのかよ!!」


「…ごめんなさい…ごめんなさいって、

泣かれた事あんのかよ…」


……



みんな、自然と泣いていた。



「で、デモ、それでヒロミちゃんガ」


「いい加減にして!!」


ヒロミだ


……


「アンタ…苦しかったのね」


……


「ごめんなさい、あたし達がアンタを追い込んだ」


……


「アンタに甘えてた…」


……


「アンタを見てなかった…」


……


「アンタを放置した…」


……


同じだ…


……



「ヒ、ヒロミちゃン!!」


「ヤ、やだ、ナ、泣かなイで」


「ワ、笑って!!ワラ」


……


「もう、良いから!!」


……


「もう、良いから…笑わなくて…」


「ねぇ、まどか…」


「多分ね、あたし達、誰も『普通』なんてわかんない」


「えッ…」


「ごめん、アンタの答え…あたし達持ってないよ」


……


「だからさ、一緒に見つけようよ」


「アンタの『普通』」


……


ヒロミはまどかを抱きしめていた。


2人の目には優しい涙が流れている…


……


「大丈夫、アンタは独りじゃないよ」

「あたし達が、いる」


……


まどかの目に、光と色が戻ってきた。



あぁ、もう大丈夫だ…



きっと、俺達はこれからも『俺達』でいられる。


……


「なんかあったらあたしに言いなさい!!」


「俺らのツレに何してくれてんだ!!」


「って、ぶっ飛ばしてやるわ♡」


……


ヒロミ…


……


「ねぇ、ヒロミちゃん…」


「何よ?」



「…イケメン♡」


……



「ぶっ殺すわよ!!笑」


……


その後、泣き疲れたのか、

心労がたたったのか。


まどかは、眠ってしまった。


「いいわ、あたしが背負っていく」


と言ったヒロミの顔も気恥ずかしそうだ。


……


「イケメン」


ゴスッ!!


………


ーーーー

次回 第28音

「歯車」

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