第20音「割れ鍋に綴じ蓋」
「で、でっけぇ…!」
目の前には今迄で見た中で1番でかい船が停泊してる!!
これに乗れんだよな!?
カンカンカンカン
「オゥ、待たせたな野郎ども♬」
教授が軽快にタラップを降りて来た。
アロハにグラサン、似合いすぎだよアンタ…笑
「せんせー、お久〜!!」
「茜ぇ、いっぱい遊んだか?」
「ロンモチ♬」
「弘ぃ、酔い止め飲んだかぁ?」
「…暑いっす…」
「大丈夫っす、飲ませときやした!!」
「まどか、悪りぃな、色々任せて」
「お預かりしたカードでホテル代支払っておきました」
「西田どうした?」
「二日酔いです…笑」
「ね、ねぇ、教授、このサイズって事は?」
「あるぞプール!!」
「ヒロミ!」
「由希子!」
ヒッシ!!!
「き、教授、わ、私、チューバのメンテを…」
「音楽室もある!!」
「わぁ♬」
「俺、まだ眠いYO」
「全員個室だ、寝てろ!!」
「マリア…は写真撮ってるな」
「ハァイ、皆んなコッチ向いて♬」
カシャ
「Benissimo!!」
「こ、これ乗るんすよね?」
「なんかお前が1番ワクワクしてるな。笑」
「さぁ、乗れ!早速合宿先へ向かうぞ!!」
「「イェーイ!!」」
「ちなみに、8時間後に到着予定だ」
「「ハァァァ!!??」」
◇
すっげ、すげぇな!
こんなの初めて乗るぞ!!
俺はこういうザ・豪華とかに弱いのだ。
しゃーねぇじゃん、ザ・庶民だもん。
…
皆んな、思い思いの時間を過ごす為、
それぞれの部屋へ駆けて行った。
さぁて、俺はどうしようかな?
◇
由希子とヒロミの場合。
「ねぇ、ちょっとオイル塗ってよ」
「はぁあ、なんであたしが女の身体に塗らなきゃいけないのよ」
「いいじゃない、他にいないんだから。
あたしも、塗ったげるからさっ♬」
「はい、はい」
んん〜♬
カシャッ
「何よ、ご機嫌じゃない?」
「ん〜、最近楽しくてさぁ、色々」
「ふ〜ん、まぁ良いわ…
そういやあんた、まだ『あたし』なのね」
「あっ、やっぱ分かってた?」
「分かるわよ、
なんだかんだで長い付き合いじゃない?」
「そういやそうだわ」
「最近さ、仁美が」
「あぁ、あの弁当屋の子ね?
可愛い子よねぇ、たべちゃいたい♡」
「殺すわよ!!笑」
「ばぁか、あたしが女に手ェ出すワケないでしょ。冗談よ、冗談」
「ふふっ、分かってるわよ。
仁美がさ、最初から気付いてたんだって『あたしと私』に」
「私、ごめんね嘘ついてって謝ったの。
そしたらなんて言ったと思う?」
「ん〜」
「嘘なんかつかれたかな?『あたし』も『私』も
由希子でしょって。笑」
…
…
「アンタそろそろ変わりなさいよ」
「えぇ、ヤダ。めんどくさい」
「ほ〜〜」
「ちょ、やめてよ、何すんのよ」
「待って待って待って!!」
「死になさい笑、フンッ!!」
バッチャーーン!!
◇
まどかと木下の場合。
はぁ、良かった。
一昨日からチューバ触ってなかったから音出しとメンテしてあげないと♬
「ブォー♩」
うんうん、チューくんは元気だね。
「ガチャっ」
「あっ、木下ちゃん。もう来てたんだ。笑」
「ま、まどか、せ、先輩」
「せ、先輩も、メ、メンテですか?」
「うん、これから合宿でしょ?あんまり遊ぶ気にはなれなくて、ちょっとやっておこうかなって」
〜〜♩〜〜♬
わぁ、まどか先輩素敵!!
先輩のフルートは『音』が素直で…
あれ?なんだろう『音』に迷い…かな?
まどか先輩みたいにすごい人でも
そんな事あるんだなぁ。
カシャ
「ど、どうしたの??」
「あ、あ、すいません!!聞き惚れちゃって」
「ふふ、いつも聴いてるじゃない?笑」
「そ、それは、そ、そうなんですけど」
「ホラっ、あ〜せ。
エアコン効いてても、演奏してると汗かくわね」
「塩アメ、舐めると良いよ。笑」
まどか先輩が飴とタオルをとってくれた。
うちのメンバーは皆んな、自分を持っていて
素敵だけど、やっぱりまどか先輩が1番素敵♡
うん、聞いてみよう。
こんな機会滅多にないし。
がんばれ、私!!
「あ、あの、ま、まどか先輩!!」
「ングっ!!ど、どうしたの?」
...
「ど、どうしたら、ま、まどか先輩みたいになれますか!?」
「わ、私こんなだから、オ、オケの皆んなとじゃないと、ま、まともに、は、話も出来なくて」
「そ、それに、せ、先輩は、周りをよく見て、いつも、助けてくれて、わ、私、先輩みたいになりたいんです!!」
…
…
「ならない方がいいよ…」
先輩が何か言ったケド聞こえなかったな?
なんて言ったんだろ?
「や、ヤダなぁ、そんな事ないよ〜!!
もう、恥ずかしいなぁ〜!!笑」
「木下ちゃんはちゃんと自分持ってるって、無理しなくても大丈夫だよ♬笑」
「あっ、私携帯部屋に置いて来ちゃった!!」
「ちょっと取りに戻るね」
「木下ちゃんも、ちゃんと休憩とるんだよ!!笑」
「じゃね」
…
行っちゃった…
何か気に触る事言っちゃったのかな?
大事なフルートもそのままで…
◇
西田とルーカスの場合。
う〜ん、完全な二日酔いだ…
スッキリする物を貰いに行くか。
僕は、
喉もカラカラだったのでバーへ向かった。
ガチャ
同時にルーカスが出てきた。
「YA-MAN、ニッシー、元気になったかい?」
「おぉ、ルーカス、もう少しボリュームを下げてくれないか?頭に響く…」
「なんだよ、まだ全然ダメじゃん!!笑」
「分かった、分かったから、頼む、ボリューム」
「へいへい」
「それで、どっか行くのかいMano?」
「うむ、ちょっと頭をスッキリさせたくてな、
バーに何か飲む物をと思ってな」
「OK、それなら一緒に行こうぜぃ♬」
「ボリュームを…」
……
「誰もいないな…」
「よっしゃ、俺が作ってあげるYO♬」
「い、いやいや、いい!水だけもらって帰るから」
「遠慮するなよ、Mano!!」
「俺、得意なんだぜ。ブラジルではじいちゃんに作ってたから。こいつ飲めば一発さっ♬」
「そ、そうか。…それなら頼むよ」
「OK OK!!」
ノリノリで踊っているな。
しかし、
ココナッツウォーターにライムの搾り汁、塩、あれはアセロラとパッションフルーツか?
ちゃんとしてるな。
「こいつをシェイク〜〜!!」
「はいよ、お待たせ!!」
「ルーカス特製、
二日酔いなんてぶっ飛ばせドリンクだぜ♬」
…
んん〜、良い香りだな。
変な物も入っていないし、いただこう。
「おっと、忘れ物だ」
何か赤と茶色粉末をかけた!!
「おっ、お前何を?」
「安心してくれMano、変な物じゃない」
「そ、そうか?な、ならいただこう」
グビッ
「美味い!!おっとピリっとくるな、それと苦味が逆に頭をスッキリさせてくれるな」
「そう、さっきのパウダーはチリとガラナだ」
…
「なるほど、理にかなっているな。
失われた水分をココナッツウォーターで。
フルーツで甘味。
そこに塩とチリとガラナか!!」
「これは美味い、ルーカス、レシピを教えてくれないだろうか?」
「はっはっは、
ずいぶんシャッキリしてきたなMano!!」
…
「そう、それだ」
「ん?」
「君は僕をMano、ポルトガル語で兄弟とかブラザーの意味だろう?」
「岬や澤村はわかるが、僕と君はそんな中ではないだろう?」
「第一、タイプが違うだろう?
僕は自分に誇りを持ってこんな性格をしているが
君からしたら1番嫌いなタイプではないのか?」
……
「はっはっは、YA-MAN!!そういう所だよ!!」
「ニッシーには譲れない、
そして譲らない、プライドがある」
「そいつはスピリット、ハートだよ!!
Manoってのは、ただのフレンドじゃないんだぜ?」
「尊敬出来て、共に成長し合え、支え合える、
違う意見でも、尊重し合い、肯定も否定もしない」
「そんな相手だけに親愛を込めて使うもんさ。
Mano!!」
…
「そうか、奥が深いのだな。いやすまない。
野暮な事を聞いたようだ。
素直に嬉しく思うよ!!」
カシャッ
「はっはっは、そういう所だぜ!」
「それとルーで良いんだぜ、Mano!!」
「そ、そうか?
ならルー、いやManoかな?笑
レシピを教えてくれ!!」
「YA-MAN!!笑」
◇
茜と弘の場合。
「ひ〜ろ〜し〜、何してんの?」
騒がしい人が来た。
茜先輩はギャルだ、
そんなギャルはいつも僕に話しかけてくる。
「…ウッス」
「いや、ウッスじゃ、分からんし!!笑」
「…本…っス」
「うん、今日は何読んでるのかなって?」
「…今月は純文学っス」
「やば、何それ!?文学の純ってなんなん?」
誤解しないでほしいが、僕はこの人を嫌いではない、むしろ好ましいと思っている。
この人はストレートなだけだ。
「…生き方とか、人間性とか…心の葛藤とか…」
「ヤバっ、それならウチも純文学じゃん!!」
「人間って事っしょ??」
「おっ、音楽も一緒だ!!」
「だから、弘も音楽やってんだ!
マジで納得だわぁ〜」
こういう所が好ましい。
この人はピアノの天才だ、僕なんかとは違う。
天才だけど、自由でアホだ。
音楽も、勝手に解釈を変えたりする。
知らない人が聞いたら、何やってるんだって思うだろう。
だけど、この人は違う。
ちゃんと作者を理解して、その上で自分の解釈をぶつけている。
なるほど、間違えたな。
僕はこの人が好きなんだな。
もちろん人としてだ、
ギャルなんて僕には分からん。
一度聞いてみた事がある。
なんでギャルなんですかと。
「ギャルはウチの生き方!!生き方は自分だけが決められる、だからウチはギャル!!笑」
答えになってるのかよく分からなかったが、
何はともあれ、この人ははっきりと自分を持っているのだ。
「ウチにも、一冊貸してよ♬」
「…ウッス」
「いや、ウッスじゃ、分からんし!!笑」
「…これ…おすすめっす」
「あんがと!!」
僕の横で読み始めた。
「…ここで読むんすか?」
「うん、一人より二人っしょ!!」
「…ウッス」
カシャッ
……
別に他人が嫌いなわけではない。
自分の価値観を押し付けて
捻じ曲げようとする人間が嫌いなだけだ。
だから、
うん、この人は好きなのだ。
……
「ヤッバッ、コレ深いわぁ。深いケドなんかここの解釈はウチ納得いかんよ!!」
「ねぇねぇ、弘はここどう思う?」
「…自分は、少し独りよがりが強いと思うっす…
…綺麗にまとめようとしてる気がするっス」
「それな!!ウチもそれ思った!!
なんかさっ、カッコつけてない?
モテたいだけみたいな!!」
…
「ここは?ウチは違うと思うんだけど?」
「…自分は…コレで良いと思うっす」
「なるほど〜、やっぱ弘の方が理解深いね。
なんか負けたわぁ、悔しい!!笑」
……
なっ、だから好きなんだよ。
……
◇
斗真と佳代の場合。
俺は、庶民根性丸出しで船内を冒険していた。
多分サッカー部時代の仲間が今の俺を見たら
ドン引きをするだろう!!
プールに行ったら
由希子とヒロミがベンチで寝ていたので
ヒロミのお腹にハートマークの紙切れを置いておいた。
音楽室を通りかかったら、
まどかが部屋に向かって走って行った。
俯きながら。
木下さんがいたので「どうしたの」と聞いたが
木下さんも分からないようだ?
心配だ。
喉が渇いたので、バーに行ったら
西田とルーが何か飲んでいたので、
俺にも作ってもらった。
すっげぇ辛かった!!
ルーのイタズラだったらしい。
プリプリしながらデッキを歩いていたら
本を読んでる茜と弘がいたので、
邪魔しちゃ悪いと思って退散した。
そんなこんなで、フラフラしてると
お茶の良い香りがしてきたので、茶室を覗いてみた。
佳代がいた。
◇
「あら、斗真さん。どうしました?」
母が送ってくれたお抹茶を点てていたら
ひょこっと斗真さんが顔出した。
「いや、
散策してたんだけど良い香りがしたもんだから」
ふふ、あの顔は散策ではなくて冒険ですね。
「良かったら一服なさいます?
私の点てたもので、申し訳ないのですが…」
「おっ、良いのか?
実はちゃんとしたお茶って飲んだことなくてさ」
「どうぞ。笑」
ごくっ
「いやぁ、意外と美味いモンだな。
ちゃんとした抹茶って。俺は好きだぜ!!」
略式だけど、お口に合ったみたい。
「良かったわ、略式だけど楽しんでもらえて。笑」
「略式?正式と違うのか??」
「そうですね、本式とは違いますが…手軽にお抹茶を楽しむ飲み方です」
……
あら、何か考えてるわどうしたのかしら?
「なぁ、佳代せっかくだから俺にお茶を教えてくれないか?」
「まぁ!!」
「本式を知らずに略式を楽しむって、俺違うと思うんだ」
「それに、ここ随分立派な茶室だろ?」
「お願い出来ないかな?」
……
「まぁ、まぁ♬」
この人はいつもこう。
ずるいのです。
嫌なんて言えないじゃないですか!笑
…私、久しぶりに本気を出します!!
「分かりました、斗真さん30分後にこちらにいらして下さい」
「その間にこちらをお読み頂いてお待ち下さい」
「失敗しても構いません。
1番はお茶に向かう心だと思いますので。笑」
「は、はぁ」
◇
お茶に失敗とかあるのか?
佳代に言われた通りいったん部屋に戻って
メモを読んでみた。
細かっ!!
すごいな、入室から作法があるのか!!
掛け軸を褒める?
花を褒める?
お菓子は食べ切らないといけない?
干菓子?主菓子?
懐紙ってなんだ?
扇子は仰がないもの?なぜ??
これは…
30分では無理じゃないか、佳代?
……
よっし、出来る事はやった。
俺は正座して静かに襖を開き、一礼して入室した。
え〜っと、ともかく畳の縁は絶対に踏んじゃダメだったな。
なんか歩幅もあったよな。一畳の幅を3歩くらいだったか?
確か掛け軸は、用意がないって書いてたから。
お花だな。花を見て着席だ。
佳代が来るまでは扇子を後ろに置いて
ってガラス貼りだから見られてるけど。
佳代が入ってくる…
…
うわ、綺麗だ!!
和服をピシッと着こなしている。
…いかん、余計な事を考えるな。
佳代が着席したから扇子前にだな。
え〜っと、お菓子が出たから…これは主菓子か?
え〜っと、あれ、アレ?
…
「ぷっ、あはははは!!」
カシャッ
「か、佳代!!」
「斗真さん、もう良いです!!笑」
「ありがとうございます、30分ちゃんと勉強してくれたんですね、嬉しいです!!笑」
「でも、そんなに緊張してたらお茶なんて美味しくないですよ」
「ちょっとずつ覚えてみましょう!!」
「音楽と一緒です、楽しめないとダメですよ」
「マイペースで行きましょう!!
それが私たちでしょ?笑」
……
俺は佳代にお願いして、東京でもお茶を教えてもらう事にした。
幸い大学にも茶室があるため、
今後は定期的に教えてもらうつもりだ。
先達は何事もあらま欲しきことなり。
それが仲間からなら大歓迎だ!!
◇
マリアの場合。
「ンフフ」
「イイ写真が撮れましたネ♬」
「現像が楽しみデース♡」
…
……
………
ーーーー
次回 第21音
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