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イディアハルモニア  作者: 金柑


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第20音「割れ鍋に綴じ蓋」


「で、でっけぇ…!」


目の前には今迄で見た中で1番でかい船が停泊してる!!


これに乗れんだよな!?


カンカンカンカン


「オゥ、待たせたな野郎ども♬」


教授が軽快にタラップを降りて来た。

アロハにグラサン、似合いすぎだよアンタ…笑


「せんせー、お久〜!!」

「茜ぇ、いっぱい遊んだか?」

「ロンモチ♬」


「弘ぃ、酔い止め飲んだかぁ?」

「…暑いっす…」

「大丈夫っす、飲ませときやした!!」


「まどか、悪りぃな、色々任せて」

「お預かりしたカードでホテル代支払っておきました」


「西田どうした?」

「二日酔いです…笑」


「ね、ねぇ、教授、このサイズって事は?」


「あるぞプール!!」


「ヒロミ!」

「由希子!」


ヒッシ!!!


「き、教授、わ、私、チューバのメンテを…」


「音楽室もある!!」


「わぁ♬」


「俺、まだ眠いYO」

「全員個室だ、寝てろ!!」


「マリア…は写真撮ってるな」

「ハァイ、皆んなコッチ向いて♬」


カシャ


「Benissimo!!」


「こ、これ乗るんすよね?」

「なんかお前が1番ワクワクしてるな。笑」


「さぁ、乗れ!早速合宿先へ向かうぞ!!」


「「イェーイ!!」」


「ちなみに、8時間後に到着予定だ」


「「ハァァァ!!??」」



すっげ、すげぇな!

こんなの初めて乗るぞ!!


俺はこういうザ・豪華とかに弱いのだ。


しゃーねぇじゃん、ザ・庶民だもん。



皆んな、思い思いの時間を過ごす為、

それぞれの部屋へ駆けて行った。


さぁて、俺はどうしようかな?



由希子とヒロミの場合。


「ねぇ、ちょっとオイル塗ってよ」


「はぁあ、なんであたしが女の身体に塗らなきゃいけないのよ」


「いいじゃない、他にいないんだから。

あたしも、塗ったげるからさっ♬」


「はい、はい」


んん〜♬


カシャッ


「何よ、ご機嫌じゃない?」


「ん〜、最近楽しくてさぁ、色々」


「ふ〜ん、まぁ良いわ…

そういやあんた、まだ『あたし』なのね」


「あっ、やっぱ分かってた?」


「分かるわよ、

なんだかんだで長い付き合いじゃない?」


「そういやそうだわ」


「最近さ、仁美が」


「あぁ、あの弁当屋の子ね?

可愛い子よねぇ、たべちゃいたい♡」


「殺すわよ!!笑」


「ばぁか、あたしが女に手ェ出すワケないでしょ。冗談よ、冗談」


「ふふっ、分かってるわよ。

仁美がさ、最初から気付いてたんだって『あたしと私』に」


「私、ごめんね嘘ついてって謝ったの。

そしたらなんて言ったと思う?」


「ん〜」


「嘘なんかつかれたかな?『あたし』も『私』も

由希子でしょって。笑」



「アンタそろそろ変わりなさいよ」


「えぇ、ヤダ。めんどくさい」


「ほ〜〜」


「ちょ、やめてよ、何すんのよ」


「待って待って待って!!」


「死になさい笑、フンッ!!」


バッチャーーン!!



まどかと木下の場合。


はぁ、良かった。

一昨日からチューバ触ってなかったから音出しとメンテしてあげないと♬


「ブォー♩」


うんうん、チューくんは元気だね。


「ガチャっ」


「あっ、木下ちゃん。もう来てたんだ。笑」


「ま、まどか、せ、先輩」

「せ、先輩も、メ、メンテですか?」


「うん、これから合宿でしょ?あんまり遊ぶ気にはなれなくて、ちょっとやっておこうかなって」


〜〜♩〜〜♬


わぁ、まどか先輩素敵!!


先輩のフルートは『音』が素直で…


あれ?なんだろう『音』に迷い…かな?


まどか先輩みたいにすごい人でも

そんな事あるんだなぁ。


カシャ


「ど、どうしたの??」


「あ、あ、すいません!!聞き惚れちゃって」


「ふふ、いつも聴いてるじゃない?笑」


「そ、それは、そ、そうなんですけど」


「ホラっ、あ〜せ。

エアコン効いてても、演奏してると汗かくわね」


「塩アメ、舐めると良いよ。笑」


まどか先輩が飴とタオルをとってくれた。


うちのメンバーは皆んな、自分を持っていて

素敵だけど、やっぱりまどか先輩が1番素敵♡


うん、聞いてみよう。


こんな機会滅多にないし。


がんばれ、私!!


「あ、あの、ま、まどか先輩!!」


「ングっ!!ど、どうしたの?」


...


「ど、どうしたら、ま、まどか先輩みたいになれますか!?」


「わ、私こんなだから、オ、オケの皆んなとじゃないと、ま、まともに、は、話も出来なくて」


「そ、それに、せ、先輩は、周りをよく見て、いつも、助けてくれて、わ、私、先輩みたいになりたいんです!!」



「ならない方がいいよ…」


先輩が何か言ったケド聞こえなかったな?

なんて言ったんだろ?


「や、ヤダなぁ、そんな事ないよ〜!!

もう、恥ずかしいなぁ〜!!笑」


「木下ちゃんはちゃんと自分持ってるって、無理しなくても大丈夫だよ♬笑」


「あっ、私携帯部屋に置いて来ちゃった!!」


「ちょっと取りに戻るね」


「木下ちゃんも、ちゃんと休憩とるんだよ!!笑」


「じゃね」



行っちゃった…


何か気に触る事言っちゃったのかな?

大事なフルートもそのままで…



西田とルーカスの場合。


う〜ん、完全な二日酔いだ…

スッキリする物を貰いに行くか。


僕は、

喉もカラカラだったのでバーへ向かった。


ガチャ


同時にルーカスが出てきた。


「YA-MAN、ニッシー、元気になったかい?」


「おぉ、ルーカス、もう少しボリュームを下げてくれないか?頭に響く…」


「なんだよ、まだ全然ダメじゃん!!笑」


「分かった、分かったから、頼む、ボリューム」


「へいへい」


「それで、どっか行くのかいMano?」


「うむ、ちょっと頭をスッキリさせたくてな、

バーに何か飲む物をと思ってな」


「OK、それなら一緒に行こうぜぃ♬」


「ボリュームを…」


……


「誰もいないな…」

 

「よっしゃ、俺が作ってあげるYO♬」


「い、いやいや、いい!水だけもらって帰るから」


「遠慮するなよ、Mano!!」

「俺、得意なんだぜ。ブラジルではじいちゃんに作ってたから。こいつ飲めば一発さっ♬」


「そ、そうか。…それなら頼むよ」


「OK OK!!」


ノリノリで踊っているな。


しかし、

ココナッツウォーターにライムの搾り汁、塩、あれはアセロラとパッションフルーツか?

ちゃんとしてるな。


「こいつをシェイク〜〜!!」


「はいよ、お待たせ!!」


「ルーカス特製、

二日酔いなんてぶっ飛ばせドリンクだぜ♬」



んん〜、良い香りだな。

変な物も入っていないし、いただこう。


「おっと、忘れ物だ」


何か赤と茶色粉末をかけた!!


「おっ、お前何を?」


「安心してくれMano、変な物じゃない」


「そ、そうか?な、ならいただこう」


グビッ


「美味い!!おっとピリっとくるな、それと苦味が逆に頭をスッキリさせてくれるな」


「そう、さっきのパウダーはチリとガラナだ」



「なるほど、理にかなっているな。

失われた水分をココナッツウォーターで。

フルーツで甘味。

そこに塩とチリとガラナか!!」


「これは美味い、ルーカス、レシピを教えてくれないだろうか?」


「はっはっは、

ずいぶんシャッキリしてきたなMano!!」



「そう、それだ」


「ん?」


「君は僕をMano、ポルトガル語で兄弟とかブラザーの意味だろう?」


「岬や澤村はわかるが、僕と君はそんな中ではないだろう?」


「第一、タイプが違うだろう?

僕は自分に誇りを持ってこんな性格をしているが

君からしたら1番嫌いなタイプではないのか?」


……


「はっはっは、YA-MAN!!そういう所だよ!!」


「ニッシーには譲れない、

そして譲らない、プライドがある」


「そいつはスピリット、ハートだよ!!

Manoってのは、ただのフレンドじゃないんだぜ?」


「尊敬出来て、共に成長し合え、支え合える、

違う意見でも、尊重し合い、肯定も否定もしない」


「そんな相手だけに親愛を込めて使うもんさ。

Mano!!」



「そうか、奥が深いのだな。いやすまない。

野暮な事を聞いたようだ。

素直に嬉しく思うよ!!」


カシャッ


「はっはっは、そういう所だぜ!」


「それとルーで良いんだぜ、Mano!!」


「そ、そうか?

ならルー、いやManoかな?笑

レシピを教えてくれ!!」


「YA-MAN!!笑」



茜と弘の場合。


「ひ〜ろ〜し〜、何してんの?」


騒がしい人が来た。

茜先輩はギャルだ、

そんなギャルはいつも僕に話しかけてくる。


「…ウッス」


「いや、ウッスじゃ、分からんし!!笑」


「…本…っス」


「うん、今日は何読んでるのかなって?」


「…今月は純文学っス」


「やば、何それ!?文学の純ってなんなん?」


誤解しないでほしいが、僕はこの人を嫌いではない、むしろ好ましいと思っている。


この人はストレートなだけだ。


「…生き方とか、人間性とか…心の葛藤とか…」


「ヤバっ、それならウチも純文学じゃん!!」


「人間って事っしょ??」

「おっ、音楽も一緒だ!!」


「だから、弘も音楽やってんだ!

マジで納得だわぁ〜」


こういう所が好ましい。

この人はピアノの天才だ、僕なんかとは違う。

天才だけど、自由でアホだ。


音楽も、勝手に解釈を変えたりする。

知らない人が聞いたら、何やってるんだって思うだろう。


だけど、この人は違う。

ちゃんと作者を理解して、その上で自分の解釈をぶつけている。


なるほど、間違えたな。

僕はこの人が好きなんだな。

もちろん人としてだ、

ギャルなんて僕には分からん。


一度聞いてみた事がある。

なんでギャルなんですかと。


「ギャルはウチの生き方!!生き方は自分だけが決められる、だからウチはギャル!!笑」


答えになってるのかよく分からなかったが、

何はともあれ、この人ははっきりと自分を持っているのだ。


「ウチにも、一冊貸してよ♬」


「…ウッス」


「いや、ウッスじゃ、分からんし!!笑」


「…これ…おすすめっす」


「あんがと!!」


僕の横で読み始めた。


「…ここで読むんすか?」


「うん、一人より二人っしょ!!」


「…ウッス」


カシャッ


……


別に他人が嫌いなわけではない。


自分の価値観を押し付けて

捻じ曲げようとする人間が嫌いなだけだ。


だから、


うん、この人は好きなのだ。


……


「ヤッバッ、コレ深いわぁ。深いケドなんかここの解釈はウチ納得いかんよ!!」


「ねぇねぇ、弘はここどう思う?」


「…自分は、少し独りよがりが強いと思うっす…

…綺麗にまとめようとしてる気がするっス」


「それな!!ウチもそれ思った!! 

なんかさっ、カッコつけてない?

モテたいだけみたいな!!」



「ここは?ウチは違うと思うんだけど?」


「…自分は…コレで良いと思うっす」


「なるほど〜、やっぱ弘の方が理解深いね。

なんか負けたわぁ、悔しい!!笑」


……


なっ、だから好きなんだよ。


……



斗真と佳代の場合。



俺は、庶民根性丸出しで船内を冒険していた。


多分サッカー部時代の仲間が今の俺を見たら

ドン引きをするだろう!!


プールに行ったら

由希子とヒロミがベンチで寝ていたので

ヒロミのお腹にハートマークの紙切れを置いておいた。


音楽室を通りかかったら、

まどかが部屋に向かって走って行った。

俯きながら。


木下さんがいたので「どうしたの」と聞いたが

木下さんも分からないようだ?

心配だ。


喉が渇いたので、バーに行ったら

西田とルーが何か飲んでいたので、

俺にも作ってもらった。


すっげぇ辛かった!!

ルーのイタズラだったらしい。


プリプリしながらデッキを歩いていたら

本を読んでる茜と弘がいたので、

邪魔しちゃ悪いと思って退散した。


そんなこんなで、フラフラしてると

お茶の良い香りがしてきたので、茶室を覗いてみた。


佳代がいた。



「あら、斗真さん。どうしました?」


母が送ってくれたお抹茶を点てていたら

ひょこっと斗真さんが顔出した。


「いや、

散策してたんだけど良い香りがしたもんだから」


ふふ、あの顔は散策ではなくて冒険ですね。


「良かったら一服なさいます?

私の点てたもので、申し訳ないのですが…」


「おっ、良いのか?

実はちゃんとしたお茶って飲んだことなくてさ」


「どうぞ。笑」


ごくっ


「いやぁ、意外と美味いモンだな。

ちゃんとした抹茶って。俺は好きだぜ!!」


略式だけど、お口に合ったみたい。


「良かったわ、略式だけど楽しんでもらえて。笑」


「略式?正式と違うのか??」


「そうですね、本式とは違いますが…手軽にお抹茶を楽しむ飲み方です」


……


あら、何か考えてるわどうしたのかしら?


「なぁ、佳代せっかくだから俺にお茶を教えてくれないか?」


「まぁ!!」


「本式を知らずに略式を楽しむって、俺違うと思うんだ」


「それに、ここ随分立派な茶室だろ?」


「お願い出来ないかな?」


……


「まぁ、まぁ♬」


この人はいつもこう。


ずるいのです。


嫌なんて言えないじゃないですか!笑



…私、久しぶりに本気を出します!!



「分かりました、斗真さん30分後にこちらにいらして下さい」


「その間にこちらをお読み頂いてお待ち下さい」


「失敗しても構いません。

1番はお茶に向かう心だと思いますので。笑」


「は、はぁ」



お茶に失敗とかあるのか?

佳代に言われた通りいったん部屋に戻って

メモを読んでみた。


細かっ!!


すごいな、入室から作法があるのか!!

掛け軸を褒める?

花を褒める?

お菓子は食べ切らないといけない?

干菓子?主菓子?

懐紙ってなんだ?

扇子は仰がないもの?なぜ??


これは…


30分では無理じゃないか、佳代?


……


よっし、出来る事はやった。


俺は正座して静かに襖を開き、一礼して入室した。

え〜っと、ともかく畳の縁は絶対に踏んじゃダメだったな。

なんか歩幅もあったよな。一畳の幅を3歩くらいだったか?

確か掛け軸は、用意がないって書いてたから。

お花だな。花を見て着席だ。

佳代が来るまでは扇子を後ろに置いて

ってガラス貼りだから見られてるけど。


佳代が入ってくる…



うわ、綺麗だ!!


和服をピシッと着こなしている。


…いかん、余計な事を考えるな。



佳代が着席したから扇子前にだな。


え〜っと、お菓子が出たから…これは主菓子か?


え〜っと、あれ、アレ?



「ぷっ、あはははは!!」


カシャッ


「か、佳代!!」


「斗真さん、もう良いです!!笑」


「ありがとうございます、30分ちゃんと勉強してくれたんですね、嬉しいです!!笑」


「でも、そんなに緊張してたらお茶なんて美味しくないですよ」


「ちょっとずつ覚えてみましょう!!」


「音楽と一緒です、楽しめないとダメですよ」


「マイペースで行きましょう!!

それが私たちでしょ?笑」


……


俺は佳代にお願いして、東京でもお茶を教えてもらう事にした。


幸い大学にも茶室があるため、

今後は定期的に教えてもらうつもりだ。


先達は何事もあらま欲しきことなり。

それが仲間からなら大歓迎だ!!




マリアの場合。


「ンフフ」


「イイ写真が撮れましたネ♬」


「現像が楽しみデース♡」


……

………

ーーーー

次回 第21音

「前へ」








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