↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イディアハルモニア  作者: 金柑


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
2/53

第2音 「吹き溜り」

まぁた、ここに来ちまった。



あの日の『音』が忘れられない…


逃げて逃げて、逃げまくって


今日で何度目だろう。



気づいたらここに来てる。


俺こんなに弱かったのか…



らしくねぇし…ダセェな!!



「よしっ」と俺は、音楽堂の扉に手をかけた。



行こう!


あの『音』のある場所へ。



ーーーー



「ねぇ、ウチらと音楽しよ!!」


俺は、ギャルの一言に固まっていたようだ。


「あっ、いやなんかすまん」



正直嬉しい。


だが、どうしても踏ん切れない。



サッカー辞めた。 

ちょっとやってたピアノ弾いた。 

褒められて、一緒にやろうって言われた。

ありがとう!

だから

はい、やります!!



…そんな簡単な話じゃねぇだろ!



……



…違うな


逃げてるだけだ。



言い訳して強がって

人の声に耳を塞いでるだけだ。


テメェで耳塞いでりゃ


音なんて聞こえるワケがねぇわ。


……


「えぇ、ダメなん!!」



やめろよ…


そんな残念そうな顔するなよ。



「俺誰かと演奏するの今日が初めてだし」


「急にこんなやつが…」


……


また、言い訳だ…



「ウチとの演奏、楽しくなかった…?」



チクッ!


そんな顔しないでくれよ。


胸が痛んだ。


……


「なぁ、おめぇよぉ。凄かったぞ!!」


「わぁ!!」



ヤンキーに絡まれたかと思った。


バンバン肩叩かれる…


…痛ぇし…怖ぇよ。



「は、はい、す、凄かった…です」



ヤンキーの陰で


ちっちゃい頭がぴょこぴょこしてる。



「まぁまぁだな」


「スコア通りに弾いていない時点で論外だがな」


「だが、表現は悪くなかったぞ!!」



メガネが喧嘩を売ってくる。


売ってるんだよな?


…どっちだ??



「そぉ?あたしは良いと思うけど」


「タッパもあるし筋肉質だし…」


「顔もそこそこ…」


「それに…エロいよ♬」



…いや、どっちがだよ!!




「分かる〜、分かるわぁ」


「ピアノの方が恋しちゃうわよ♡」


「あたしも〜、恋しちゃったかも〜♡



オネェかな?


俺より、でけぇ。(斗真185cm)


いや、そこじゃねぇ!!


俺は本能的に身の危険を感じた。




な、なんか、濃いな…



……


圧力にタジタジになっていると


馬鹿でかい声が聞こえてきた。



「おらぁ、そこまでだ!!」



スキンヘッド…


サングラス…


ゴツく厳つい身体…


ゴリラかな?


白衣を着たゴリラだ…


……


「せんせ〜〜」


「えっ?」



先生?


って事は…教授??


嘘だろ、どう見てもゴリラだぞ!笑



「そいつ、困ってんだろうが」


「なんだか知らねぇが無理強いは良くねぇぞ」


……


なんて荒い言葉遣い


けど、なんて良識のあるゴリラだ!


ありがとうございます。


そして


ゴリラ呼ばわりして、ごめんなさい。


俺は心の中で謝った。


……


「でも〜、このガチムチ凄いんだよ!!」


「ウチめっちゃ楽しかった!!」



また、ガチムチって言われた。



「分かった分かった、ともかく」


「よく分からねぇがなんか演奏してたんだな?」


「うん、ピアノ!熱い戦いだったよ…ふっ」



ギャルはドヤ顔を決めている。



…確かにな、熱いバトルだった。



……


「ふ〜ん…おっと」


「俺は進化生物学教授の大城だ」



握手…手がデケェ。



「よろしくな!」


「ここは俺の趣味で大学に建てさせた音楽堂だ」

「小さいだろ?笑」


「だが、これくらいが良いんだよ」

「演者と観客が近い」


「音も表情もお互いが伝えられる」


「一体になるんだ音と♬」


ノリノリで音楽堂のこだわりを話し始めた。


「おっと、いけねぇ。

こいつらはここでオケの練習をしてる」


「まぁ、どこかで演奏するわけでもない」


「好きな時に音を奏でて、楽しめる」


「強制もしない」


「ここは自由な場所なんだよ」



…自由ね


そいつはキツイわ…



「そんなわけでいつでもウェルカムだからよ」

「気が向いたらまたピアノ弾きに来いや」



えっ?


…また来てもいいのか?


…またピアノを弾いてもいいのか?



……


「悪かったな長々と捕まえちまって」


俺は教授の声で我に返った


「い、いえ、すいませんでした!」

「勝手にピアノを使ってしまって」


「気にすんな!!」


「はい、ありがとうございます!失礼します!!」


俺はお詫びを告げて、音楽堂を後にした。


「またな!!」



「せんせー、なんで帰しちゃったの!」


「そ、そうですよ!す、凄かったです」


「そうか?俺はせいせいしたね」



ウチは納得いかなかった。

あんなに楽しそうにピアノ弾いていたのに。

きっと仲間になれたのに。



ぶーぶーと文句言ってやった!



「強制するのか、お前らが?」


……


「逃げるってのは大変だよな。笑」


「お前らはよ、分かってるはずだろ?」


……



そうだよ、ウチは…


ウチらは…



「…」


「言い訳…とは違うかもしれねぇが…」


「自分に折り合いをつけてやらねぇとな…」


「自分を許せないんだよ」



耳が痛い、心も痛い、



「待っててやろうや」


「あんな音出せるんだ」


「音楽が嫌いなわけねぇ」


せんせーはウチの頭をグリグリして笑った。


「声をかけるのがダメなんじゃねぇ、

 追い込んじゃいけねぇんだよ」


「辛いし、歯痒いけど」

「あいつが自分で決めないといけねぇんだ」


プシュッ


缶ビールの開く良い音がする。


「と、いうわけで…お前らのアンサンブルの

 録音をつまみに飲むぞーーー!!」


「やった!めっちゃあるじゃん!笑」


「あ、ウチもビールで!!」


「あ、あたしハイボール♡」


「ツマミないじゃないっすか!!」


「あたし、スルメでぇ〜」



せんせーのおかげでテンション上がったよね!笑



「教授〜堂内では

 お酒はやめて下さいって言いましたよね!!」



助手の波多野さんが止めてくれたけど…


時すでに遅くみんな飲み始めてる。笑



「屋上行こー♬ヒック」


「あぁーもう、こら!」


「そっちはまだ未成年でしょ」


「ビールはダメよ!

 サワーにしておきなさい!!」


「いや、サワーもダメだろ!!」


「…もう20歳…あと3日で」


「我慢しろよ!3日くらい!!」



お決まりのようなツッコミ担当のせんせー、


波多野さんはちょっと天然!笑


ーーーー



あれから…


毎日ギャルが声をかけてくる。



「ねぇ、暇なら一曲どう?」

とか


「負けたままで良いのかなぁ」

とか 


「音楽堂にシュークリームあるよ」

とか


「ごめ〜ん、ノート貸して」

とか


「明日雨らしいよ〜」

とか



なんだろう?どうして欲しいのだろう??


熱意?



……

ーーーー


気づけば音楽堂の前にいた。


いや違う、何度も来たんだ。


今日で何度目だろう。


「よしっ」と俺は、音楽堂の扉に手をかけた。


また、あの『音』を感じる為に。


ーーーー


「おぉ、来たーー!!イェーイガチムチ!!」


また、ガチムチって言われた。 


ハイテンションでハイタッチ…



…そういや名前知らねーな。


「誰だよガチムチって、俺は岬だ。岬斗真」


「ヤバっ、そういや初めましてじゃん!」


「ウチ草薙茜。草薙って可愛くないから茜って呼

んでね!イェー!!」



目元でVサイン、


で、ぴょんぴょんしている。


……


俺達は言葉で初めましての挨拶をした。


……


「おぅ、おかえり」


教授にバシッと背中を叩かれた。


「いってぇー」


「なんだ、元気だな?答え出せたのか?」


お見通しですか…笑


「甘えてたんすかね、自分に」


「その甘えからも逃げるみたいっすけど…」


「…俺、音楽好きだって思い出して」


気恥ずかしくて顔が見れない。


「いいじゃねぇか逃げたって」


「逃げる事自体は悪いことじゃねぇ」


「…」


「だけどよ」


「逃げた先で立ち止まるな!!」


教授がニヤッと笑う…怖いです。



「ようこそ、アウトサイダーハーモニーへ」



ビ、ビール!!


宴会の準備してる!?


すごい、みんなテキパキと!!



「まぁ、要するに吹き溜りだ!!」


「気楽にいこうぜ!!笑」



……



俺はまた逃げた。


だけど、


今度は違う。


この逃げ道はどこまでも続いている


そんな気がする。


……

………

ーーーー


次回

第3音

「司令塔」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。