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イディアハルモニア  作者: 金柑


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第1音「Restart(リスタート)」

※この作品について


音楽を知らなくても大丈夫です。

騒がしい彼らを、ちょっと覗いていってください。

時々、彼らの悩みも聞いてあげてください。


本作は作者自身が執筆した作品です。

AIは誤字脱字の確認、文章のチェック、アイデア整理など、制作補助として使用しています。


カクヨム・エブリスタにも掲載しています。



あぁ、音が混ざり合う!!


楽しい…


観客の鼓動も聞こえてくる。



…ワクワクだろ?笑



コレだよコレが俺達の『音』なんだよ!!



…ドキドキだろ?笑



会場とオケが一つになる。



…サイコーだろ!!笑



……


袖に泣いている茜が見える。



ばーか!!笑



俺はベロを出して


心の中で言ってやった♬





みんな…


楽しそうな顔だ…


…あぁ、ラストに向かっちゃう



はは


だよな…


終わりたくないよな…


もっとこのまま…



だけど



…終わっちゃうぜ…


……



終わろう…


そんなみんなの音が聞こえてくる。



………

……



ジャンッ


俺は静かにタクトを下ろした。



……

………



わあぁぁぁぁ――!!


鳴り止まない拍手。


スタンディングオベーション。


笑い合う仲間たち。


号泣しながら走り込んでくる


愛すべき天才ギャル。



……

………




これは


小さな小さなコンサートホールから始まる。


期待に押しつぶされた者


夢を失った者


見た目だけで決めつけられた者


人を信じることをやめた者


本音を隠し続けた者


時代に置いていかれた者


他人と関わる事を辞めた者


……




そんな


そんな不器用な俺達が、


      もう一度歩き出す物語。




……

………

ーーーー




「さぁ、全国高校サッカー選手権大会本戦への出場を決めるのはどちらの高校か!」


「最後のPK戦もこの1球で決まるのか!!」



熱のこもったアナウンスが聞こえる。


こんな時だけよく聞こえる耳が大嫌いだ。


ゴール前で俺は汗を拭いながらそう思った。


…11月だってのにやたら暑いな。


高校最後の試合になるか、

仲間たちと先に進めるか、俺にかかっている。



ピッピー



審判のホイッスルが鳴った。


集中だ!!


選手がシュートモーションに入った。


っ、音が消えた。


視界が狭い。


だが、球は見える。


蹴った!!


きわどい、右上!!


反応はできた、止める!!!



ガンッ


パキッ



ファサッ…




「ゴール、ゴール、ゴール!!

本戦への出場を決めたのは…」




あれ、おかしい。


耳に何も音が入ってこない。


パキッって音だけが響いて…



チームメイトが駆け寄ってくる気配がする。




意識が、朦朧と…痛い…




なんだよ皆





どうして泣いて…




……

………

ーーーー



俺は岬斗真。


地元静岡を離れ、東京の外れにある

大学へ通う二年生だ。


酒に、タバコに、ギャンブル。

ダラダラと大学生活を謳歌している。


「「かんぱ〜い」」


2年前のあの日、俺のサッカー人生は終わった。


左脛の開放骨折。


1年半リハビリして、

今も左脚は完全には伸びきらない。


「ぶはぁ〜!!」


…まあ、そんなわけで。

今は大学生をやっている。


……


「俺は、どうするんだろうな…」


「ヒック!」


分かんねぇや


分かるわけねぇか。


ダセェな。


自分で言って、笑えてくる。


俺は心まで、あのフィールドに置いてきちまったのかもしれない。


毎日同じようなことを考えてる。


決まって、答えは



…まぁ、いいか。




酔い覚ましと


リハビリがてらに構内の散歩が


いつもの日課。


今日は…


よくわからない場所にいた。



東京とはいえ23区外。


まったく、この大学は無駄に広い。


……


ん〜?


結構歩いたと思う。


木々の向こうに…


古いレンガ造りの建物?


けど…


こんな所あったか??


……


扉に手をかけてみる。


…開いてるな


好奇心に負けて中に入った。


……



「おぉ…」



小さなコンサートホール。


客席とステージ。


そして、2台のピアノ…



「音楽堂ってやつか…」



誰もいないな…


勝手に弾いたら怒られるかな?


……


何年ぶりだろ…


小さい頃から、ピアノを習っていた。


嫌いじゃない


…むしろ、好きだった。


今だって。


ただ、男のくせにと


ばかにされるのが嫌だった。



…だから


サッカー、頑張ったんだけどな…


……



指を鍵盤におく…


弾き始めるまでの


静かなこの時間が好きだ。



自分のタイミングで音と向き合うこの瞬間が。



……



一音。


自然と指が動いていた。


何を弾こうとかは考えていなかった。


気づいたら


「ラプソディ・イン・ブルー」を弾いていた。


〜〜♪


クラシックなのに


ジャズっぽい曲。


何がしたいか分からない


今の俺にピッタリなのかもな…



いや


曲に失礼だな…


今の俺は曲の解釈すらできないんだから…笑


♬〜〜


それにしても


すげぇなこのピアノ!


調律がやばい!!



…少し


楽しい、かな。笑




あれ、誰だろ?


ウチは音楽堂の扉を開けた。



えっ、誰?


見たことのない


ガタイの良い体育会系…


ガチムチが


嬉々として鍵盤を弾いている!!笑



「ラプソディ・イン・ブルー」


あっ


間違えた。


ちょっと走り気味じゃね?笑


おっ


そこそんな風に弾くんだ!?


……


荒々しいけど、


ちょっと物悲しい…


これは後悔?


寂しさ?


時折見えるのは苛立ち…



気づけばウチは


もう一台のピアノに腰掛けていた。


…いや


気づけしっ!!笑


……




〜〜〜♬


なんだ?


違う音が飛び込んできた!?


は?


ギャル?


ギャルが俺の音に合わせて弾いている!?


露出すげぇな


エロ。笑


あ、爪はちゃんとしてる。


……


〜〜♬


うめぇ…


俺のそんな思いは一瞬で消し飛んだ。


俺の音に合わせている…


いや、違う。


別の答えをぶつけている。


軽やかな右手が


俺の荒い旋律を飛び越える。


左手の和音が行く先を塞ぐ。



横目で笑われた。


…ねぇ…その弾き方、つまんないよ。


そう言っている気がする。


 

…喧嘩売ってるのかな?



上等!



俺はテンポを上げた。


一音先へ出る。


だが


ヤツは追ってこない。


俺の先を読んで、待っている!!


……


落ち着け


サッカーと同じだ。


俺はキーパーだろ?


球だけを見るな。


相手の身体を見ろ。


次を読め。



目の前の鍵盤じゃない、隣の音を聴け!


次の一節。


俺が仕掛け、ヤツが受ける。


ヤツが跳ね、俺が低音で受け止める。


……



ポーン



二つの音が


ほんの一瞬だけ重なった。


色が弾けた。


青でも赤でもない。見たことのない色だった。



「は、はっはっは!」


笑いが勝手に漏れた。


……


楽しい。


音を出すことが、


誰かの音を聴くことが。



もっとだ。


「もう一度だ。最初から」


ギャルは一瞬驚いて、楽しそうに笑った。


「おっけ〜」


俺とギャルは笑っている。


…笑っている


……


指が熱い。


肩が重い。


呼吸が追いつかない。


ちゃんと鍵盤を叩けているのか?


それでも、やめたくなかった。



テクニックなら


ウチの方が上!!


なのに、


このままじゃ飲み込まれる。



おっ、甘いよ!


ヒュー、やるねぇ!!


何それ?


……


…めっちゃ楽しいじゃん♪




…何度目かの主題。


俺が踏み込む。


ギャルが受ける。


……


「「!!」」


どちらが先でも後でもなかった。


二つのピアノから放たれた音が、


ホールの中央で一つになった。


……


俺達は自然と手を止めた。



「…」


「「あはははっ」」


同時に笑った。



……


パチパチパチパチ


「うぉっ!!」


知らない奴らが拍手をしてる。


俺達のゲームを観戦していたのか?


…しまった!!


「す、すまん、勝手に」


まずかったな


勝手にピアノを使っちまった。


俺はそそくさと退出しようとした。


……


「待って!!」


ギャルが大声で俺を呼び止めた。


「ねぇ、ちょっ、待って」


ぴょんぴょん跳ねながら、


嬉しそうに俺に近づいてきた。


「ねぇねぇ、フィナーレヤバくなかった!?」


「あそこ普通そんな強く入る!?ないわ〜」


「なのに、最後あんな繊細になるとか何それ!!」


「マジで、ウケるし、引くわ〜!!笑」


……


めっちゃ早口でまくし立てられている…


えっと…


褒められてるんだよな?



「いやぁ〜ヤバかったね」


「だけど…」


「ちょー楽しかった♬」



ドキッとした。


……


「おや〜、ガチムチも楽しかった?笑」


…そんなに、笑ってんのか?



…口角が


上がりっぱなしだ。



「良いじゃん、良いじゃん」


「ねぇ、またやろうよ♬」


「ウチ次は負けないし!!」



なんだよそれ


ピアノに勝ち負けって。笑



分かった


こいつ音楽バカなんだ。


……


羨ましい。


…いや、何考えてんだ俺。


「いや、俺は部外者だし」


「それに音楽は…」


……


嘘だ。


もっと弾きたい。


もっと『音』を『色』を感じたい!


だけど…


「とにかく…すまん。」


「俺は…もう行くから!」


俺は逃げるように歩き出した。



「ねぇ、待ってよ!!」


立ち止まる俺を


満面の笑みで見ている。


……


「ねぇ、ウチらと音楽しよ!!」


……


俺は何故か


その場から一歩も動けなかった。


……



鮮やかな光…


さっきまで重なっていた


二つの音…


俺の中に確かに残っていた。



……



あの日


音を失ったと思っていた。


色は戻らないと思っていた。


…思い出したのかもしれない。


一人では出せない『音』。


背中を押している。


…もう一度。




そんな気がした。



……

………

ーーーー



次回 第2音

「吹き溜り」

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