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イディアハルモニア  作者: 金柑


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18/50

第16音 「陰で陽」


お、ベンチにいるのは弘


「よっ、弘。今日は何読んでるんだ?」


「…」


「ひ、弘?」


「…」


「ひろし…泣」



「…ウッス」


本当に今気付いたように


のそっと顔を上げて一言だけ…



挫けるな、俺!!


「弘?」


パラ…パラ…


ーーーー


僕は…


自分の考えを押し付けてくるやつが嫌いだ。


僕には僕の考えがある。


……


陽キャのノリが嫌いだ。


他人の迷惑も考えず馬鹿騒ぎ


良い大人が恥ずかしい。


……



SNSも嫌いだ。


他人の評価に一喜一憂


自分を持っていない残念なやつら。


評価の数より


たった一人に届く言葉が大事だと思う。



……



漫画も嫌いだ。


キャラクターという本音を


勢いと効果で誤魔化してる


作者の伝えたい事は絶対に違う。



……



スイーツも嫌いだ。


甘いものは好きだ。


見た目だけ


中身のない


写真を撮る為だけに作られるスイーツは


なんの為に生まれたんだろう。



……



おしゃれも嫌いだ。


最低限、他人に迷惑をかけなければ


こだわる必要を感じない。


他人を見た目でしか評価出来ないから


自分の見た目にこだわるんだ。



……



流行りの曲も嫌いだ。


派手な音楽と中身のない歌詞


激しいダンスやPR


なんの意思も感じないただの商業だ。



……



もちろん、全てが嫌いなわけではない。


自分を持っておしゃれしてる人。


こだわりを持って作られたお菓子。


漫画だって最初はそうだろう。


他人の評価が、本人の意図、意思とは違う方向に向かってしまう。


そういう、解釈を捻じ曲げるヤツらが嫌いだ。



……



だから


クラシックは好きだ。


新たな解釈がされても本質とその曲の意思が

変わる事はない。


受け取る人それぞれだ。


そして、それを良しとしている。



だから僕もやっている。


コントラバスは他の音を聴きながら

曲に思いを巡らせるにはピッタシだ。



……



本は好きだ。


本は僕の答えを否定しない。


作者の意思


思いがそのまま文字で僕に語りかけてくる。




これが、僕の答えだ。


君はこの『音』をどう思う?




この時間が好きだ。




……


最低限の付き合い

最低限の挨拶

最低限の努力


それだけやってれば


誰にも迷惑をかけない。


それで十分だと思う。



ーーーー


あっちぃなぁ、こう熱いと海行きたくなるな。


俺はガ○ガ○君の

「復刻コーンポタージュ味」を食べている。


なんで、

冷たいコンポタがこんなに美味いのかな…



天才だな…



「当たった!!」


……


「YA-MAN!!」


遠くからルーカスの声が聞こえる。


「Y〜A-MAN!!!!」



あっ、あれか?


あいつ俺が見えるのか!?



「無視なんて、ひどいゼ、Mano!」


「いやいや、見えねぇから。俺でギリだぞ!!」



ルーカスはリズムをとりながら指を鳴らす。


「チッチッチ、熱いソウルがあればどんなに遠くても分かるもんさ!!」


俺の左胸に拳を突き立てウィンク


いちいち暑苦しいやつだ…笑



「そんな事より、弘見なかった?」


「電話しても出ないんだよ…泣」


泣きそうな顔で陽気にサンバを踊ってる。



「あぁ、ベンチで相変わらず本読んでたぞ」


「今月はミステリー月間だってさ」


「Eita!!」

「ミステリーじゃ、電話出ないワケだ」

いちいち大袈裟なヤツだな。笑


だからさっきも。


そういうもんか?



「とにかく行くぜ〜!!

ト〜マ〜Valeu〜〜!!」


言い終わる前に走って行った。



仲良いな、あいつら。笑



タナに当たり棒交換してもらお…



ーーーー



俺は日本が大好きだ!!


じいちゃんは日本人だし、


俺のルーツだ、嫌いなワケがない♬


eu amo o Japãoだぜ♬


親父にドゲザをして

なんとか日本の大学へ来る事が出来た。


俺は日本のManoマーノに会えるのが楽しみだった。


ところが、日本に来たら全然いないんだぜ、

熱いソウルを持ったヤツが!!


Manoってのは、ブラザーとは違うんだ。


なんの中身もない

ただテンションが高いだけの奴らが

YA-MANとか言ってんだぜ?


ガッカリだよ。

ドゲザまでしたのによ。



レゲエってのは陽気なもんだけじゃないんだ


ボブ・マーリーの


『Survival』

『Running Away』

  『Guiltiness』


を聴いて欲しい。


こいつが分からないやつらに

YA-MANなんて言われたくないね。


俺は馬鹿なブラジル人のテンションで

やり過ごしたね。


めんどくさいし。



そんなある日、


俺はGuerreiroゲレーロと出会った。


熱い熱いソウルを持った戦士。



先生だった。



レゲエに年なんて関係ないね。


俺達は熱くリズムで語り合ったね。

(※ルーカスは踊っていただけで、教授は講義中に競馬で万馬券を当ててテンションが上がってただけです)


この人の下なら

Manoに出会えるって思ったね。


気が付いたらYA-MANって声かけてたよ♬


ーーーー


ある日


僕はお気に入りのベンチで新刊を読んでいた。


「お前、暇か?

暇なら俺んとこに来いや」


知らない教授が話しかけて来た。

流石に教授を無視するわけにはいかないので


「…すいません、忙しいんで…」


丁重に断った。



お気に入りの作家の新刊だ。


邪魔されたくない、特にミステリーは。



僕は続きを読み始めたのに、


「いやいや、暇だろ?」

「俺教授だよ、話は聞こうよ!!」


本を読んでるから暇って思われるのは心外だったから珍しく言い返してた


「…読書が暇つぶしって誰が決めたんすかね…」


いい加減にして欲しい、

僕の貴重な時間をこれ以上奪わないでくれ。



「いや、そんなつもりじゃないんだ」


「昨日も、おとといも、先週もそこのベンチで本読んでたろ」


「中入れよ!」


「別になんかして欲しい訳じゃねぇから安心しろ」


「ここは誰でも自由だからよ」



最近少し肌寒くなってきたな。



強要されないなら別に断る必要はないか…


僕は提案を受ける事にした。


……



…よりにもよって「音楽堂」かと思った。



「ようこそ、俺の小さな音楽堂へ」


「ところで、お前のその指タコ…」


「コントラバスだろ?」



「たまにで良いからよ、弾いてくれよ」


「好きなんだよ、バス」



まぁ、強要されないなら良いか。


「…ウッス」


ーーーー


最近、無口だけど静かなソウルを持つ熱いヤツと出会った。


{最近、陽キャのくせに押し付けて来ない変なヤツに出会った。}


そいつは、いつも本を読んでいる。


{そいつは、いつも踊ってる。}


そいつは、コントラバスを弾いている。

すげぇ、上手い。


{そいつは、ティンパニーが好きなようだ。

すげぇ、下手。}


そいつは、俺を否定しなかった。


{そいつは、僕を否定しなかった。}


俺は、YA-MANって声をかけた。


{僕は、YA-MANって声をかけられた。}



ーーーー


弘が漫画が嫌いだって、

勢いだけで読者の感動を取るのが嫌だって。


だから、

ブラジルから持ってきた漫画を見せてやった。


正直日本漫画の方が面白いけど、

俺が貸した漫画はセリフがない漫画だ。



文字がない…


だからこれにはソウルがある!!


作者の気持ちが、こう、なんて言うかな


バァーーー!!って押し寄せて来んだ。


読むヤツによって色々違うと思うけど、


とにかく、熱いんだよ♬


駄々こねてじいちゃんに買ってもらった。


……


弘は、何度も読み返してた。


「…すごい、これも漫画なんだ」


ボソって。笑


……


やっぱ、サイコーだぜこいつ♬



ーーーー


ルーが「侘び寂び」が知りたいって言うから


色々本を選んであげた。


他人に本を選んだ事なんてなかったけど


「日本の心が知りたいんだよ〜、頼むよマーノ〜」


って踊りながらうるさかったから。


しょうがないなって。


……


せっかく厳選して選んでやったのに


「ゴメンよ、弘。俺には難しいや♬」


よくよく聞いたら漢字読めないって。


なんか悔しかったから


風景画とか枯山水の写真集とか色々持ってきてやった。


感動してた…


…少しは伝わったと思う。


……


次の日、


「YA-MAN!」


「見つけたぜ、あれこそ侘び寂びだ!!」


「…」


やれやれ、話を聞いてやるか


僕は読みかけの本に栞を挟んだ。


ーーーー


あれっ??


俺、なんでもんじゃ屋にいるんだっけ?



確かルーカスが

「侘び寂び」

がどうのこうの踊って言ってくるから

うるせぇと思って、


「あぁ、わかったよ、わかった」

「分かったから、OKOK」


って、適当に切り上げたはずだけど。


「Valeu、トーマ!!」


え〜っと、「ありがとう」だったな。


「…どういたしまして??」


まぁ、腹減ってたし、もんじゃ好きだし。


「ヘイそこのおばちゃん!!」

「注文、ここからここまで全部だ!!」


全部食べ切れるのか?


「はいはい、そんなに食べ切れるん?

若者はごっついなぁ…」


「って、誰がおばちゃんやねん!!」

「ほんま、しばき倒すぞルー」


ノリツッコミする店員…


「おっ、こっちのお兄さんは初めてやんな?」


「ウチぃ、穂乃果いいます。

よろしくな、おいちゃん♬」


そう言って飴をくれた。


……


「あんたぁ、そこは誰がおっさんやねん!!

とか  

そんな急に歳とらんわ!!

とか突っ込んでくれんと…」


「なぁ、弘」


「…穂乃果…うるさい」


な、なかなか個性的な店員さんだな。

2人とも仲良いみたいだ。


……


「しかし、あんたら豪勢やな!」

「ほんまに全品頼むん?」

「金はあるんか?」

「ツケはきかんで」


「…大丈夫…今日は先輩の奢り」



ふぁっ!!!



「ち、ちょ、弘、聞いてないぞ」


「…さっき、ルーが侘び寂びは食べ物なんだって話してた時、OKOKって」


俺はルーカスに…



遅かった。


ルーカスと穂乃果さんの連携の、まぁ早い事。


すでにオーダーが通ってしまった…



ピッピッピッ



「あぁ、一心?」

「茜も一緒?」

「うん、そう」

「皆んなに声かけて」

「OK、待ってる」


……



全員集合だ


こうなりゃ大会前に大宴会じゃぁぁぁぁ!!!!



「てんちょ〜ウチもご相伴に預かってええですかぁ〜、シフトあがりやし」


厨房から渋いイケおじがグッて親指を立ててる。


……


ちょっと電話してくると言って店を出た。




ATM行かないと…



………

ーーーー


次回 第17音

「この街大好き」







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