↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
イディアハルモニア  作者: 金柑


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
15/48

第13音「寄り道」


毎朝決まって6時


僕はメイドの声で目を覚ます。


カーテンを開け、

朝の光と共にコーヒーを楽しむ。


今日は、エルガーだ。


朝、1曲だけバイオリンを弾く。


その日の調子が分かるから。


シャワーを浴び、朝食を取る。


庭で、新聞を読む。


7時、白のSUVで学校に向かう。


車は自分で運転する。


7時半、お気に入りのコーヒーショップに寄る。


決まってエスプレッソを追加したカプチーノを注文する。


砂糖は多めだ。


朝の糖分は多い方が良い。


テイクアウトで学校へ向かう。


これが僕の大体のモーニングルーティンだ。


ーーーー


大会が終わったある日


オケに顔を出しに音楽堂へ向かう。


…皆、驚くだろう。


「やあ、おはよう諸君」


上機嫌な僕を見て、

驚いたように岬が話しかけてきた。


「お、おはよう西田。今日は偉く機嫌がいいな?」


「むっ、失礼だな。いつもは機嫌が良くないような言い方ではないか」


ふん、まぁ仕方ない。

揃ってないので少し早いが一足先食わせてやろう!!


「まぁいいだろう、それより岬。

君にもこいつを食わせてやろう」


我が家のシェフ、自信作だ!!

僕も素材の厳選に付き合ったからな…

最高傑作だ。

驚愕するがいい!!


甘い香りと香ばしい匂いがホールに広がる。



ん?

反応がないな??


そうか!

あまりにも美味しそうで驚いているのだな。

それも仕方ない。

中々食べられる物ではないからな。


「ベビーカステラ…だよな?」

「そうだが?」

「…どっかに出店でも出てたのか?

悪いなわざわざ買って来てもらって」


こいつ…


「馬鹿な事を言うな、わからないのか」


「?」


「おぉっす、何やってんだ2人で」

「おっ、ベビーカステラじゃねえか?

1個もらうぜ」


「待て、そこのヤンキー!!」

「俺はツッパリだ!!」


「貴様らこれがどんな物かわからないのか!?」


なんだなんだと皆が集まってきた。


まったく仕方のない奴らだな。


「これは我が家のシェフと僕が素材からこだわり、焼き方、鉄板までこだわり抜いたベビーカステラ。

いや、最早ベビーカステラを超えてしまったな」


「生地に使う卵は

岐阜から取り寄せた烏骨鶏卵を使い、

小麦粉は当日の朝に手挽きした物を使用している、もちろん全粒粉だ、香ばしさがちがう」


「牛乳は我が家が契約している牧場から毎朝届けられる安心安全、最高の牛乳を使用している」


……


「はっはっは、分かっているさ。

砂糖だろ?抜かりはないさ。

生地には香川県産の和三盆を使用している。

…待望の外側の砂糖だ。

喜界島産の島ザラメを使用している。

コクがまったく違う。

農家と煮詰め具合を何度も調整した甲斐があったよ」


「まさに、究極のベビーカステラだ!!」


僕は両手を上げ高らかに宣言した!!


……


ふふふ


みんな感動しているな…


「「いや、やりすぎ!!」」


「お祭りの時、よっぽど気にいったんだね〜笑」


「ヤバっ、ウマっ、いやなにこれ!!」


草薙が勝手に食べ始めた。


全く、品のない。


まぁ、それが草薙だ…微笑


「いや…マジで!

ヤバいって、ちょっ、止まんない…」


「おい、草薙。全てが君のではないのだぞ!!」

「モグ…ング…いや…モグ…分かって…モグモグ…るんだケド…」


そんな草薙の反応を見て皆が我先にと

僕の、究極のベビーカステラへ手を伸ばした。


「ウマっ!…ウマ!!…いや…ウマっ!!」 


「すげぇ…なんか…涙が…」


「お、美味しいです!!先輩、ありがとうございます」


「これは美味いわぁ、

西田〜あんた良いとこあるじゃない」


「美味しいぃ。お店と全然違うね」


「卵と小麦粉と牛乳の持つ自然な甘みを優しく包み込む和三盆」


「そして、ちょっとだけ田舎臭い島ザラメ。

…ポイントは火力ね、ほのかに香るのは…

炭火ね。やるじゃない西田♡」


語彙力のないヤンキーや

実に庶民的な答えのやつもいるが…


1人やたら詳しいオカマがいるな…


「ま、まぁ、どうだこれがベビーカステラという物だ。讃えてくれていいんだぞ」


平伏させてやった!!


僕を讃えるように平伏を繰り返すみなの前に、

波多野女史がやってきた。


「あら、おはようみんな」


「どうしたの劇の練習?」

と惚けた事を言って近づいてきた。


「おはようございます、波多野さん」

「皆にこの究極のベビーカステラを…」


言葉が終わる前に波多野女史が動き始めた。


「あら〜、ベビーカステラ!!

私大好物なんです。いただきますね」


と言って残りを全部食べてしまった。


一口で。


「「あぁ〜〜〜〜〜〜〜!!」」


「はぁ、美味しかった」

「ベビーカステラはやっぱり複数一気食いですね」


「そ、そんな」


「全部、一口で?」


「わ、わたし、まだ、1個しか…」


「っかぁ、粋な食い方だねぇ」


「やだ、男らしい…♡」


「こ、これは…モグ…ウチ…ング…のだし」


……



ピッピッピッ



「あぁ、僕だ」

「そうだ」

「量産を頼む」


ピッ


……


仕方ない。


また明日持って来てやるか。


まったく


……



株式会社 NSDコーポレーション


我が家は半導体を軸に、

大きく事業展開を行なっている。


庶民に施す事を僕は良しとしない。


ただの金持ちと思われるのは釈然としないからだ。


だから、僕はどんな事でも全力で取り組むし、

学ぶ事を厭わない。


バイオリンもそんな事で上達した。


上流階級の子息なら、

楽器の一つも出来ないと恥ずかしいと、

父にバイオリンを強要された。


実に難しく、奥の深いバイオリンに僕はのめり込んでいった。


自己満足でしかないが、努力を続け、良い音を

出せるようになる自分が好きだった。


ーーーーー


僕の考え方はどうやら一般的にはおかしいようだ


別に困ってはいないが。


学友と話をすると、会話が噛み合わない。


何がおかしいのだろう?


オケのメンバーとは普通に話せるのだが??



澤村に尋ねてみたが、


「そのままでいいんじゃねぇか?」

大袈裟に笑いながらヤンキーは言った。


「ほっとけほっとけ」

「わからねぇやつにはわかんねぇんだよ、

お前ってやつが」


説明にはなっていなかった。


だが、悪い気はしなかった。



北見にも尋ねてみた。


「えぇ〜、私にそれ聞くの?笑

「そうだなぁ」



「西田君はひたむきで

努力家で、言ってる事も正しくて

目的に一直線」


……


「だけどね

皆んなが皆んなそういうわけじゃないの」



「答えを決められない人も多くて

悩みながら、これはどうかな?

あれはどうかなって寄り道しちゃうの」


「それでね意外とそんな寄り道の最中に答えが見つかったりするんだよ」


「結構間違えるんだけどねっ。笑」


「ごめん、答えになってなかったかな?

む、難しいよいきなり!笑」


ふむ、普通とはそういう物なのか?


北見がこんなに人の心理の機微を捉えているとは思わなかった。


中々どうして僕にはない物事の捉え方だ。



「北見」

「はいはい?」


「僕に『普通』という事を

教えてくれないだろうか?」


……


「はい?」


ーーーーー


毎朝決まって6時


僕はメイドの声で目を覚ます。


カーテンを開け、

朝の光と共にコーヒーを楽しむ。


ネットニュースとSNSを見る。


特に曲は決めず、

バイオリンをなんとなく弾く。


シャワーを浴び、


庭に出て、新聞を読みながら、

食後のコーヒーとベビーカステラを楽しむ。


6時45分、

白のSUVで学校に向かう。


7時

コンビニに寄り毎日違う朝食を購入する。


車は自分で運転する。


7時半

みたらし団子とほうじ茶を持ち帰る。


翌日の事はまだ決めていない。


7時45分

お土産を渡し、

音楽堂で北見に「普通」を教えてもらう。



これが僕の最近のモーニングルーティンだ。




僕は今、


「寄り道」という物を勉強中だ。


ーーーー


次回 第14音

「心」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。