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イディアハルモニア  作者: 金柑


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14/53

第12音「名残」


大会が終わった。


心に残ったのは、


充足感。


物足りなさ。


そして、悔しさ。


……


結果俺たちは『盛り上げたで賞』を受賞。


教授は

「お前ららしくていいじゃん!!」

と爆笑していた。


なんだよ『盛り上げたで賞』って!!!

そりゃ、優勝なんてチョッピリしか考えてなかったけど。


でも、まぁ。


楽しかった。


1番楽しませたのは間違いなく俺達だったな。

うん。


音楽堂にくるたび

あの日の拍手が耳の奥で鳴る。


……


また、やりてぇな。



ーーーー

  

(楽しかったな、この間の大会)


私は日本にきて初めて心からそう思った。

パパもママも観に来てくれてたみたいで

パパなんて

「マリア、お前らサイコーー!!」

って親指立てて爆笑してた。


私は2年前に日本に帰って来た、


帰国子女ってやつ。


生まれた時からイタリアにいたし、

ママがイタリア人だから家ではイタリア語が日常だった。

パパの仕事の都合で日本に来たけど、17歳高校2年生からの日本には慣れる事が出来なかった。


日本人である事の強要と


イタリア人である事の羨望。


どっちにもなれないまま笑う事を覚えた。


……


日本語が難しいのもあるけど、

うまく伝えられないのよね。


ーーーー


私はイタリア人…


この間近所の公園で子供達とサッカーしてたら斗真先輩が通りかかった。


「トーマ先輩、一緒にやりまーすか?」

「マリアか!?へぇサッカーやるんだ」

「イタリア、サッカー人気でーす」

「そっか、イタリアとハーフだもんな」


そう、私はイタリア人。

日本人じゃない。


「トーマセンパイ?」

「あぁ、悪い悪い。トーマでいいぜ」


呼び捨てで良いって。


日本人って名前の後になんで変なのつけるのかしら?


マリア・娘とか先生・先生


みたいな事でしょ??


「グラッツェ、トーマ!!」

「トーマ、サッカーやってまーしたね?」


斗真は少し考えてた


「そっかマリアにはちゃんと話してなかったな」

「俺は怪我でサッカー辞めちゃってさ」

「まだ、リハビリ中でさ」


知らなかった…


「オォウ、大変でーす!

早くよくなるといいでーすね」


「グラッツェ、マリア♬」


斗真は優しい兄さん。

だけど、いつもみんなに遠慮?

だったかな。

してるみたい。


サッカー部のグラウンドを寂しそうに見てるのをこの間見かけた。

サッカーやってたって言ってたから誘ってみたケド…


サッカー忘れられないのね。


急に宝物を取り上げられて

忘れられるわけないよね。


「そういうわけだから、ごめんなマリア。

誘ってくれて嬉しかったぜ!」


そう言うと「チャオ」と帰ってしまった。



私も同じ。


私の宝物は日本にはない。



「マリアぁ、何やってんだよ〜、早くボール回してよ」


怒られた。笑


音楽も好きだけど、今はバンビ達とサッカーしてる方が楽しい。


ボールを蹴っている時だけ


イタリアに繋がってる気がするから。


ーーーー


私は日本人…


「マリア、この間さぁ映画観に行ったんだけど〜、良かったよ〜!

物語に風情があるって言うのかな粋な感じ」


「マリアァ〜、昼飯行こぜ〜。

暑いしざる蕎麦かなぁ。うどんでもいいな。

どっちにする?」


「やっぱ、学生の味方よね回転寿司は♬

なんでワサビは別に流れてるのかしら?」


「えぇ、今日の講義はここまで。

前回C判定だった者は私と相撲観戦する事で課題追加を免除してやる。

君たちは日本の国技をもっと知ることだ」


……


知らない


知らないよ


……


私は笑っている。



辞めて


押し付けないで。




ワサビ


相撲


知らないよ…


なんて言えば良いの?



……


私は笑っている。


笑っていれば誰も困らないから。


……



わたしはにほんじん。




なんだから…


ーーーー


私は…


写真が好き。


パパがモデルのカメラマンだから、

小さい頃から撮影によくついて行ってた。


写真は好き。


思い出を残せるから。


イタリアの友達との写真は、

今でも私の宝物。


……


それと私は風景写真の方が好き。


ベルニナ急行。


赤い電車が真っ白な雪山を登っていく。


あの日見た景色は、

今でも写真より鮮明に思い出せる。


だからパパによくお願いした。


「また撮りに行こうよ!!」


って♬


……


それから電車も好き。


国が変わると


形も、


色も、


音も、


全部違う。


街を走る音。


地下を走る音。


山を走る音。


同じ”電車”なのに全部違う。


まるで、おもちゃ箱みたい♬



ーーーー



この間の大会は凄く楽しかった。


あれから、練習も楽しい。


皆んな悔しかったのと


私達もお客さんも笑顔だったから


嬉しくて、もっとうまくなるんだって。


情熱を感じる。



斗真が大会の前に私に言った。


「マリアのチェロは…くそ表現が難しいな」

「情熱と礼節、passionとcivilityかな。

2つの個性が上手く混ざって、

真似の出来ない、マリアだけの音になってるよ」


なんか、嬉しかった。


イタリア人の私。

日本人の私。


どちらも認めてくれた事が素直に嬉しかった。


だから大会は楽しかった!!


本当の自分で演奏出来た気がした。



そういえば、思い出した。


小さい時に、初めてチェロを弾いた時。


ろくに音も出せなかった時。


先生が、


「マリアには二つの音があるんですね。」

「変なこと??」


「い〜や、これは素晴らしい事なんだよ」

「日本とイタリア、2つの血。

これがマリアの音なんだね」


「ふ〜ん」

「日本良くわかんないし、私イタリア人だよ」


「今はそれで良いと思いますよ」

「マリア、君には他の人に出せない音がある」

「ときに、それは君自身を傷つけてしまう事になるかもしれない」 


……


「人と違う事は、いいなぁって、ずるいなぁって、羨ましい気持ち」

「すごいなぁって、褒めてくれる気持ち」


「どっちもあります」


……


「傷つけられる方が、ちょっと覚えていたりしますよね?笑」


「だから、受け止めてあげてください。

日本人のマリアとイタリア人のマリア。

どちらもあるから『マリア』なんです」


「だ〜か〜ら、マリア、イタリア人だよ」


「はっはっはっ、そうですね!笑」


「さて、そんな素晴らしいマリアの音ですが

ちゃんと練習しないと音楽としては程遠いですね…笑」


「さぁ、頑張って練習です!

あなたの『音』を響かせましょう!!!」


「ゲフゥ〜〜」




私には2つの音がある。


その2つが混ざって、


私の『音』になった。


……


最近、


ほんの少しだけ笑うのをやめた。


人と話をするようになった。


伝わらない時もあるけど、そこは丁寧に情熱を込めて説明してる。笑


パパとママが泣いてた。


「どうしたの?」


って聞いたら、


パパが笑いながら言った。


「最近は、無理して笑わなくなったな」


「ごめんな」


……


謝ることなんてないのに。


だから私は笑って、


「Tutto a posto!」


「ヨユウだよ♬」


って答えた。



……

……


私はイタリア人。


……


私は日本人。


……


だから、


わたしは、ハーフ!!


いいとこ取りのハーフでーす♬


ーーーーー


次回 第13音

「寄り道」










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