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ブリジット・サルマージュ子爵令嬢の転落  作者: 佐古鳥 うの


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2/3

中編



憤慨しながら家に帰り抗議の手紙をカストル宛に出したが返信はなかった。

ならばとレブリック様にまたわたしを騙していたのかと責める手紙を書き綴っていたところで父から呼び出しがあった。


「婚約の白紙…?」


執務室に行くとなぜかクヴェルテュール伯爵がいて身構えてしまったが魔法契約書を出されて更に警戒した。

けれど準成人となるのなら今回の件について説明してもいいだろう。魔法契約書の効力も身をもって知るべきだという父の言葉に従いサインした。


そこで聞かされたのはとんでもないことだった。


第二王子がレブリック様に治験前の魔法薬を無理やり飲ませ女性の体にしてしまったこと。

本来なら一定期間後に元に戻るはずがまったく戻らず、元に戻す魔法薬ができるまでの間留学したとわたしに嘘をつくしかなかったこと。


第二王子の失態を隠すために箝口令が敷かれ誰も真実を話せなかったのだと教えられた。


側近候補を外されなかったことと第二王子が強く望んだことでレブリック様は恥を偲んで学園に通わなくてはならなかった。


女装は―――体が女性なら女装ではないが―――コールスマン侯爵令嬢に強制されて着ていたらしい。


「そんなっ無理やりなんて酷い…」

「てっきり侯爵令嬢にコーディネートしてもらって喜んでいるのだとばかり思っていた……だがそうだよな。

女顔とは言っても中身は男なのだ。嫌かどうかくらい聞いてやるべきだった」


傲慢とも言えるコールスマン侯爵令嬢に怒りを覚えたが実の父親であるクヴェルテュール伯爵に目を剥いた。


何を当然なことを言っているの?わたしの夫になるために婚約を続けていたのだから嫌に決まっているじゃない。


この国では同性同士の結婚はできないしわたしは男性のレブリック様がいいのであって女性のレプリカには興味はないのだ。

隣にいれば比べられて嫌な想いをするだけだもの。だけど本当の姿があんなゴリゴリマッチョだなんて失望したわ。あれならカストルのほうがまだマシよ。


そういえばカストルはわたしを放って勝手に帰ったのだ。抗議の手紙も返してくれない。

謝罪とお詫びの品も届いていないと文句を言えば父に「何を言っているんだ」と叱られた。白紙になったのだからそんなものがあるわけないだろうと。


それはそれ。これはこれじゃないの?わたしが傷ついたのだから謝罪して然るべきでしょう?お詫びの品だって迷惑をかけたんだから贈るのは当然でしょう?


「だってレブリック様は手紙と一緒に毎月素敵なプレゼントを贈ってくださいましたし、不手際があった際もお詫びの品を毎回贈ってくださって…」


「ああ。随分と高価な品々を強請ってくれたな。

設定している交友費をゆうに超えたために足りない分は自分で稼げとレブリックに言ったのです。子供が強請るには金がかかりすぎる。

いくら伯爵家でも毎月金貨三枚以上もする品を贈るのは無理があるため息子にもやめるよう言ったのだが『こんな姿で会うことができないのだから誠意くらい示したい』と言って聞かなかった。

王家はその辺りも補償してくれなかったからな…はぁまったく尻拭いをするこちらの身にもなってもらいたいものだ」


「ブリジット。どういうことだ?」


父に睨まれ肩を竦めると執事に命令してレブリック様が贈ってくれた品々の目録を持ってこさせた。

そんな!全部処分したのになんで目録も捨ててくれなかったの?!


「ブリジット。お前は何様だ?これだけのものを貰っておきながらなぜレブリック殿を信じなかった?

この二年は…ああ茶会で友達ができた頃か。その頃から随分と値が張るプレゼントを貰っているな?それを貰って自慢していたのか?」


「だってレブリック様がわたしのためにくれたのだから友達に見せて報告するのは当然で…」


「この宝石も香水もストールも王都で流行っている有名ブランドだ。そして高位貴族が好んで買い入れている。

それを子爵家の娘が身につけているんだ。目立たないわけがない。後でセリーヌ()にも問いたださなくてはな。

まったく、これでは我が家が婚約を盾にレブリック殿から搾取しているようではないか!

道理で融資の話が増えていると思った。お前のせいだったのか」


苛立たしげに溜め息を吐かれ身を縮ませた。


「ブリジット。お前はこれだけのプレゼントを頻繁に受け取っていながらレブリック殿が国内にいることにも気づかず、彼の誠意を無碍にしてきたのだな。この恥知らずが」


「そんなっ酷いです。お父様!」

「酷いのはお前だ。お前はレブリック殿に貢ぐだけ貢がせて身勝手なお前の一存で捨てたのだぞ」


それを理解しているのかと責められ泣きそうになった。


「それは、だって、レブリック様がわたしを騙してたから…っそれに、婚約者にプレゼントするのは当然でしょう?」


「度が過ぎてると言っているんだ。騙されたと言うがお前はこれだけの品々に応えるだけのことをレブリック殿に返してきたのか?

お礼状は?彼への返礼品は?彼が不安にならないように気遣ったことは?

まさか自分だけが寂しくてその不満をぶつけていたんじゃないだろうな?愛しているなら高価なプレゼントを寄越せと強請ったんじゃないだろうな?

私から見ればお前がレブリック殿を騙していたようにしか見えないぞ」


「そ、そんなっあんまりです!!」


そう言ったが心の中でそうかも、と思ってしまった。だってレブリック様は留学先で悠々自適に過ごしていて寂しくて心細いわたしの気持ちなんてわからないんだって思っていた。


わたしのためならなんでもしてくれるでしょ?って、どんなに高価でも入手困難でもわたしのためになんとしてでも手に入れてくれるでしょって。

火の中だってわたしを愛しているなら身を投じて助けてくれるのは当然でしょう?

だって婿入りする婚約者だもの。そう、思っていた。


父の責める視線と言葉に耐えられなくなって泣き出せばそこで話は打ち切られた。

レブリック様が今までわたしに贈った品々を返せと言われなくて内心ホッとした。


追加でよくわからない書類にサインさせられ「レブリック殿と再婚約はおろか会うことも話すことも禁じる」と言われた。

言われなくてもあんな不細工に近づくわけないじゃない。こっちから願い下げよ、と心の中で舌を出した。


それから取ってつけたようにカストルとアルペナが禁固刑になったと聞いた。

適当に聞き流していたのでよく覚えていないが牢に入れられても仕方ないようなことをしたのだろう。

意地悪で嫌な彼らならありえることだ。


そんな犯罪者との婚約が白紙になってホッした。



仕方ないけど新しい婚約者を探さなくてはならない。

本当は女装する前のレブリック様があのまま成長してくれたらよかったんたけど、あんな不細工になってしまったからもうどうでもいいと忘れることにした。


白いドレスを纏い父と一緒に入場する。

今回が正式な準成人式だ。


前回は醜男のカストルがエスコートだったし急にいなくなって散々な思いをして台無しにされたからやり直しをするために着てきたのだ。

それに母情報だとこのドレスのほうが声かけをしてもらいやすいらしい。


レブリック様程じゃないにしてもみんなに自慢できるくらいの令息を捕まえなくちゃ、と意気込んだ。


隣が父から母に代わりダンスをする相手を選別していると友人の姿が見え話し掛けた。

しかし彼女は引きつるように笑い目を背けながら挨拶をするとこちらの話も聞かずに行ってしまった。


あれ?と思うものの別の友人達を見つけたので母に断りを入れ友人の輪に近づくと蜘蛛の子を散らすように逃げられた。

ムッとして近くにいた男爵令嬢に話しかければ「まだ気づいてないの?」と嫌そうに睨まれた。


「あなた、クラスメイトから距離を取られてるのよ。クヴェルテュール家の次男様の悪口を言ってたじゃない。女装癖がある令息と婚約なんて嫌だって」


「え、そ、それは…レブぅぐ、」

「あんな人だと思わなかった。騙されたって。わたし達も信じたけど嘘だったじゃない」


それはわたしだって騙されてたわけで。わたしは悪くないって言いたかったのに言葉が出なくて気持ち悪かった。

そんなわたしを男爵令嬢は冷めた目で見て「信じたわたしが愚かだったわ。嘘つきのあなたとはお付き合いしたくないの。みんなもそう思ってるから二度と近づかないで」と去って行った。


嘘でしょう?と周りを見れば同年代の令息令嬢とその親達がスッと目を背け体ごと背を向けた。

まるでわたしを避けるように距離ができ取り残されたような錯覚を覚えた。


居心地が悪くなって会場を飛び出そうとしたが目の端に何かが見えた。振り返り少し戻るととても見覚えのある後ろ姿があってドキンと心臓が跳ねる。



ビュッフェスタイルで食べれる料理が並ぶエリアに彼はいた。


クセのない銀髪にスラリとした無駄な筋肉がない体躯。グラスを持つ手は男らしさを感じる骨張った形はあの頃よりも大きく見えた。

椅子に座っている相手に話しかけているようだがこの角度からは赤いドレスしか見えない。


そんなことよりも彼だ。


記憶よりも大きく逞しくなっているけど見間違ったりしない!彼だ!わたしの愛する人だわ!


「レブぅぐ、が」


なぜか言葉が紡げない。名前が呼べない。

なぜ?なぜ?なぜ?よくわからない。

でも目は目の前の彼から離さずじっと見つめた。


こっちを見て!見て!早く!わたしだと気づいて!


そう願うと応えるように振り向いた。

残念ながら目が合うことも視界に入ることもなかったが確認したブリジットは感激のあまり手で口を覆い涙を貯めた。


レブリック様だわ!

わたしのレブリック様!!


なんであの不細工ではなく美しい男性の姿なのかはわからないが夢にまで見た理想通りの姿にふるえた。


わたしを迎えに来てくれたのね!わたしはここよ!

あなたと踊るためにまだファーストダンスも踊ってないの!

今のあなたなら夫として迎えてあげるわ!

嬉しいでしょう?幸せでしょう?

だからこっちを見て!!わたしに跪いてプロポーズをして!


『あなたのために美しい姿で帰ってきました。どうか美しいあなたの夫にしてください』と言って!!


だけど一向にこっちを見ない彼に焦れて苛ついたが自分から行けばいいと気づいたブリジットは一本踏み出した。


―――レブリック様!!

そう叫ぼうとしてそこで記憶が途切れた。




◇◇◇




「まさかここまで愚かとはな。これが若さというやつかしら」


嘲るような子供の声に引っ張り起こされ瞼をこじ開けると十代前半にしか見えないツインテールの少女がわたしを見下ろしていた。


夜なのかカーテンが閉まっていて部屋は暗く明かりがひとつしかない。

なぜ同じ目の高さなのかと思ったら自分は床に座っていて立とうとしたが後ろ手に拘束されていて足もうまく動かせず身動きが取れなかった。


「わたしをどうするつもりなの?!わたしはサルマージュ子爵家の跡取りよ!?こんなことをしてただですむと思ってるの?!」


頭にきてとりあえず声を張り上げたが少女は怖気づくどころか呆れた顔をした。


「ならわたしは侯爵家当主だ。半人前の準貴族がわたしに逆らってただですむと思うのか?」

侯爵家と聞いてぎょっとしたが当主と聞いて嘘かと鼻で笑った。


「あなた、もう少し貴族のお勉強をしたほうがいいんじゃない?あなたみたいなお子様が当主になれるわけ」


なれるわけないじゃない。と言おうとして頬に衝撃を受けた。少女に打たれたのだ。しかも思いっきり。

カッとなって立ち上がろうとしたが失敗して少女を睨みつけると反対の頬を打たれ涙目になった。


「あなた何様よ!こんなことをして許されると思ってるの?

わたしを誘拐して暴力を振るうなんて社交界に知られたらあなたの評判は一気に落ちるでしょうね!きっと罰せられるわ!

わたしのレブ…ぅぐ、様は第二王子殿下の側近候補でお気に入りなのよ?!このことをわたしが泣きながら伝えたらきっと王家が動くわ!

そしたらあなたもあなたの家ももう終わりね!!ざまぁみろ!」


そこまで言って頬を鷲掴みされた。子供の手だから幅は狭いが指が爪を立てたように皮膚に食い込みとても痛かった。

それよりも彼女の目が恐ろしくビクッと肩が勝手に跳ねる。なんでわたし、知りもしない少女に睨まれなきゃならないの?なんでこんな痛い思いをしなきゃならないの?


「お前の愛しい人は側近候補を降りた」

「ふぇ?」


「当然だよな?王子の身勝手な思い込みで女性の姿に変えられ謝罪もなく、『いずれ元の姿に戻してやるから』とその気もないのに嘘をつき、側近候補の地位に縛りつけた。

そのくせ彼に女装を強要し果ては側近ではなく愛人になれと命令してきた。令嬢ならば自害してもおかしくない辱めだ」


実際、あのまま放っておけば自死していたかもしれないと言われ真っ青になった。お父様達から聞かされた話よりも酷い内容に震え吐き気を催した。

嘘、第二王子ってそんなことをレブリック様に言ったの??


「あの双子や彼の父親、第二王子やコールスマン侯爵令嬢にも腹が立っていたが、お前にも苛立っていたんだ。ブリジット・サルマージュ」


ヒッ!なぜ名乗っていないのにわたしの名前を知ってるの?


「彼はお前を何年も苦しめていたからこれ以上の罰は望まないと言っていたがわたしはそう思わない。

だって苦しんでいたのは彼だ。望まない姿に変えられ、辱めでしかない格好をさせられ、人目のある場所に連れ回され娼婦のような扱いを受けていた。

友人を作れず他の側近候補からも煙たがれ、信じていた婚約者には貢ぐだけ貢がされ衆人環視の中婚約破棄を告げられた。

王子やその関係者以外彼がレブリック・クヴェルテュールだと知らなかったのにお前のせいで彼の名誉は取り返しがつかないほど傷つけられたんだ」


「…ヒッ…っ」


そりゃそうかもしれないけど、わたしだって傷ついたわ。

留学していると思ったら実は国内にいて女装して第二王子に侍ってるなんて誰が聞いてもショックを受けることじゃない。傷つくじゃない。


わたしはこんなにも傷ついたのよって、女装をやめなきゃ婚約破棄してやるわよって言ってやる(脅す)くらい普通でしょう?!


「同性だからわかるんだ。―――お前、彼を苦しめることに快感を覚えていただろう?」


「わ、わたしは苦しくて悲しくて寂しかったのよ?わたしの心は深く深く傷ついただけで、快感になるわけないじゃない」

ほら、涙も出てる。わたしは裏切られて純粋に悲しかったのよ。


「違うね。お前は彼の誠実さを逆手に取りわざと傷つけるような行動を取った。婚約解消も入れ替えも恥ずべき醜聞だ。

普通の令嬢なら騙した相手に二度と近づきたくないと思うし、王家が関わっているかもしれないと察すれば距離を置くはずだ。もし王家に逆らうようなことをすれば家ごと消されるとわかっているからな」


そう言って手を首の前でスッと横に引いた。首がとぶと言われビクッと肩が跳ねた。


「だがお前は違った。お前は第二王子に侍る令嬢が彼だとわかると怒りを抱いた。

なぜ女装させられているのか。なぜ第二王子の近くに不適切な距離で侍っているのか。

その疑問を問い質すよりも先になんで王子よりも婚約者である自分を優先しないのか。なんで女装なんかして自分達の婚約に泥を塗っているのかと憤った」


「だって、それは…カストル達に言われて…」


「その時点でお前の行動はおかしいんだ。普通ならまず両親に聞く。そして彼、もしくは彼の両親に問い質す。その答えが得られなくて初めて怒りに変換できる。

お前は自分に嘘をついていたことだけを抜き出して正義は自分にあると勘違いをした。その怒りに任せて行動しコールスマン侯爵令嬢に告げ口までしている」


それがどれだけ重い罪か理解しているか?と聞かれ返す言葉が思いつかなかった。


「箝口令は王家から出ていると聞いただろう?王家の命令を知らなかったですまされるはずがない。

だからクヴェルテュール家の双子は除籍され罰せられたんだ」


どうでもいいと聞き流していたカストルとアルペナの処遇に一気に血の気が引いた。


「え…じゃあ、もしかしてレブ…ぅぐ、様は跡取りに?」

「…彼は辞退した。だからクヴェルテュール家の跡継ぎは空席になっている」


それを聞いてホッとした。だったらまだ間に合う。彼と婚約して婿入りさせられる。

そう考えたところで本当に爪を立てられブツ、と皮膚が裂ける音がした。痛い。痛い痛い痛い!

痛いじゃない!と怒ればまた頬を打たれた。


「その顔だ。その顔で彼を蔑み嗤っていたんだ。この外道め」

「で、でも、わたしがもう一度婚約してあげれば両家とも名誉が回復して…ブッ」


なんでまた打つのよ!!


「前者の箝口令が出された時は確かにお前は無知な子供だっただろう。

王家を舐めてるのかバカなのかはわからないが何人か、箝口令を出すことになった張本人までもがその意図も重さも理解していなかったからな。

だが魔法契約書は準成人としてサインしているはずだ。なら半分は大人として扱われる。子供だからと今度は逃げられると思うなよ」


「ヒッ」


「お前は魔法契約でレブリックと再婚約も会話も接近も彼の名前も呼ばないとサインしたんだ」

「はぁ?!」


そんな記憶ないわ!……サインはしたけど名前まで呼べないなんてお父様は言わなかった。なのになんで名前を呼んではいけないの?!


「当然だ。お前のせいで彼がどれだけ心を傷つき煩わされたと思っている。彼に必要なのは静かに過ごす時間と場所だ。

彼の誠意を踏み躙り、心を土足で踏み荒らしたお前など殺しても足りないくらいだ」


つぅ、と涙なのか血なのかわからない液体が顎を伝い落ちた。なんで見ず知らずの少女にそこまで言われなくちゃならないの?


この子狂ってる。頭がおかしいわ!と悲鳴をあげ声を張り上げた。誰か助けて。お父様。レブリック様。レブリック様ぁ!


彼に助けを求めた途端頭の中が掻き回されるような気持ち悪さに襲われ嘔吐した。


膝の上が汚物まみれになり涙が滲んだ。折角今日のために用意した白いドレスなのに。

人生で大切な日のひとつなのになんでこんな想いをしなくちゃならないの?


グズグズと泣けば髪を掴まれ無理やり顔を上げさせられた。

少女のもう片方の手には木製のジョッキが握られていて、その目は汚物を見ているかのようなとても恐ろしいものだった。


「少しでも反省し彼に対しての謝罪があれば、彼の願いどおり見逃してやろうと思ったがお前はダメだな。

お前は都合よく記憶を改竄して約束を破り彼に近づき苦しめようとするだろう。

自分を愛しているなら何をしてもいいと見下してもいる。自分を傷つけたなら倍以上傷つけてやればいい。傷ついた顔を見る度に愛されてる実感がわいていたんだろう?

女装だとバラしたのはそういう意味もあったんだろうな。縋る先は自分しかいないのだと思い込ませるように。度し難い屑だ」


そう言ってジョッキを無理やり口にあてて中身を飲ませた。

勢いがよすぎて歯にぶつかり激痛が走ったが顎を掴まれ上に向かされヘドロのようなまずい何かを全部飲み込まされた。


何度も戻しそうになりながら喉をゴクンと鳴らせば解放されたが気持ち悪くて吐きそうになる。というか吐きたい。気持ち悪くて何度も咳をした。


「な、にを飲ませたの?」

「第二王子が彼に飲ませた魔法薬だ。入れたものは当時と同じにしてある。どうやらアディアグの糞と魔草の化学反応で持続時間が伸びるらしくてな。

そのせいで味が最悪になるんだが、今回は量を三倍にしてやった。魔草を多く入れると中毒になるが問題ないだろう」


副作用として声が枯れ脳が溶けるだけだ。と言われ嫌だ、死にたくないと泣いた。


「ああ。生かしてやる。それがレブリックの望みだからな。お前が違反したことで彼の望む形とは違ってしまったがまぁお前の自業自得だ」


だったらレブリック様の願いどおりにしてくれればよかったのに。

そう思ったが少女はわたしの甘えを見透かすように魔法契約を守る気がないのなら箝口令でわたしが破った罰を与えるしかないと言われた。


「サルマージュ子爵らは王家から沙汰がくだるだろう。だがお前だけは殺さなければわたしが下していいと許可を得ている」


その罰がさっきの不味い液体の摂取らしい。毒ではないと言われたがとても不味かったし体が熱く骨が軋むように痛くなってきて悶絶した。


両親には王家からブリジットの死が伝えられるとのことだった。大広間でのわたしの醜態は誰もが見ていて恐らく両親もどこかで見ていたと言われた。


魔法契約の意味も理解させず自分が上位貴族に何をしたかもわからない者を準成人として連れてきた上に、娘の蛮行を止めもしなかった夫妻にも責任があるとしてその命でもって贖うことを命じられるだろうと言われた。


両親がわたしのせいで死んでしまうの?と理解して泣いた。痛くて気持ち悪くて泣いていたが、泣きながら懇願した。

わたしは死んでもいい。けれど両親は救ってほしいと。だけどもう遅いのだと返された。


「未成年だと許されているうちに反省し学ぶべきだった。それはお前の両親も同じだ。お前達は伯爵家の次男なら侮ってもいいと勘違いをした。

娘を慕っているのだから明らかな無礼でも許されると思った。そんなことありえないのにな」


そんな…じゃあ、両親は助からないの?

わたしのせいでお父様とお母様が死んでしまうの?

わたしがレブリック様を貶めたから?執着してしまったから?


わたし、レブリック様のことこんなにも好きなのに。


「本当に好きならば傷つけず大切にするものだ。お前の愛はレブリックにとって迷惑でしかないのだよ」


婚約者じゃなければお前に好意など向けなかっただろうと言われ頭が真っ白になり何も見えなくなった。







読んでいただきありがとうございます。

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