前編
『違うんです!殿下に侍ってるわけでも迫っるわけでも婚約者様より優先されていい気になってもいません!だから婚約破棄しないでください!』
に出てくるブリジットの話です。裏話的な内容ですが多分これだけでも大丈夫だと思います。
「レブリック・クヴェルテュール様。あなたとの婚約をこの場で破棄いたします」
これがわたしの最大の意思表示であり最善だと思っていたの。
◇◇◇
「はぁ。いつになったら留学先から帰ってくるのかしら」
手紙を眺めながら溜め息を吐くと侍女が「恋する乙女ですね。お嬢様」と微笑んだ。
「そうよ!レブリック様はとっても素敵な方だもの。今はもっと素敵になってるはずだわ!」
伯爵家から婚約が持ちかけられた時は驚いたがレブリック様と対面して更に驚いた。
王子様よりも王子様のような、いやもうこれは人ではない神の域に片足を突っ込んでるようなそれはそれは美しい人だった。
そんな人がわたしのお婿さんになるの…?!
婚約した日の夜は舞い上がってベッドの上で何度も反芻してはゴロゴロと暴れ、なかなか寝つけなかった。
しかし運命の悪戯とは切ないものでレブリック様が予告なく留学してしまわれた。
父からそれを告げられたわたしは信じられずレブリック様の家に行こうとしたが先触れもなく上位の家に赴くのはマナー違反だと叱責され暫くの間外出を禁じられた。
なぜ事前に教えてくれなかったのか。
なぜ子息令嬢らも参加できる薔薇展覧会直前に行ったのか。
とても楽しみにしていたのに。
わたしのことを傷つけてそんなに楽しいのか。
わたしのことが嫌いになったのか。
そんな恨み言に近い手紙を送ったらすぐに返事が返ってきた。それも直筆で長文。わたしを慮り低姿勢に何度も謝罪してくれた。
わたしと婚約できたことをとても幸運に思っているし戻ったらいろんなところに行こうと約束もしてくれた。わたしはそれを信じて待った。
十八ヵ月も待ったのだ。なのにまだレブリック様は留学先から帰ってこない。
まさかあちらで浮気をしているのかしら?!そう思って浮気をしたらとんでもない慰謝料を支払わせますよ。きっと伯爵家は傾くでしょうね。帰る家がなくなってもいいんですか?早く帰って来てください。と送った。
そしたら長文の謝罪文と共にとても美しいレースのリボンとブローチが贈られてきた。レブリック様の色だ。
それからは毎月のようにちょっとしたプレゼントが届くようになった。
まるで伴侶にはわたししかいないと訴えるような愛の証にわたしは嬉しくなった。ならもう暫くは留学も大目に見てあげよう。
そんなふうに許してあげていたけど彼が留学してからもう三年だ。いい加減我慢の限界である。
レブリック様ももう十六歳…いえ今年で十七歳だ。きっとあの頃よりも精錬された美しくも格好いい殿方になっているだろう。
わたしも準成人式が控えているしその後は夜会にも参加できる。
あ〜っ早く友達に自慢したい!周りから羨望の眼差しで見られたい!
お近づきになりたい女達に群がられ困ってるレブリック様がわたしに見られたことに気づいて女達を蹴散らしながらわたしの前で膝をつき『僕にはあなただけだ!どうか捨てないでくれ!』と許しを請わせたい!
そしたらわたしはこう言うの。
『わたしにとってもあなただけですわ。だからどうか他の女性に目移りしないでくださいませ』
『ああ、勿論だとも。僕のこの美貌に群がる浅い女共なんてどうでもいい。一番大切なのは僕の内面を熟知しているブリジットだけだ』
『まぁ』
そうして二人は手を取り合いダンスをするの。誰もが初々しくもお似合いな二人に見惚れ、微笑み、拍手を送るのよ。
『とても息ぴったりだわ。きっといい夫婦になるでしょう』ってね。
レブリック様に相手にされなかった令嬢達はハンカチを噛み締めるしかないの。フフッ。
美しく成長したレブリック様なら絶対それができるのに!ああ!早く帰ってきて!わたしのレブリック様!
「―――え?」
見えたものが理解できなくて思わず聞き返した。
「だからあそこで殿下にしなだれかかっている下品な女がレブリックなの」
両側に同じ顔…と言っても性別が違うので似てるのはパーツくらいだがその双子の片方、女性のほうが涙ながらに語った。
レブリックは長年わたしを謀ってきたと。留学なんて真っ赤な嘘。
自慢の女顔を活かして女装し第二王子に侍って婚約者のコールスマン侯爵令嬢との婚約を壊そうとしているらしい。
「なんと恐ろしいことを…!止めなくてよろしいのですか?!」
王家に歯向かうなんて!レブリック様の婚約者としてわたしが一言言って止めてまいります!と踏み出そうとしたが双子は慌てて引き留めた。
第二王子もレブリックが女装だとわかっているからあんなふしだらなことをしているらしい。
「ですが、コールスマン侯爵令嬢に失礼では」
「第二王子殿下は婚約者が相当お嫌いらしい。破局までもう秒読み段階にきているんだ」
「ええっ?!」
驚くわたしに双子は静かに!と窘めてきたが驚かないはずがない。
第二王子、コールスマン侯爵令嬢は最終学年で今年卒業される。その後すぐに結婚されるはずだ。
ちゃんとお姿を見たのは学園に入ってからだったが不仲説はブリジットの耳にも届いてはいた。
けれど王家との婚約だ。おいそれと解消なんてできるはずがない。
その原因がレブリック様にあると聞いて顔面蒼白になった。
彼女の噂も入園当初から聞いていた。一年の頃から第二王子に侍り淑女らしからぬ距離で話し、不適切な接触もしている。
名前はレプリカと言って家名はないらしい。平民らしいが特待生枠にはおらず授業は他の貴族と一緒に受けているらしい。
授業は選択によっては平民と机を並べることもあるのでおかしくはないが家の名前がわからないのはとても不可解だ。
情報通の学友が言うには下位貴族の庶子なのでは?とのことだった。庶子だから家名を名乗らせてもらえないのでは?と。
それがまさかレブリック様だったなんて。
家に帰ってからもショックを引き摺り食欲も失せて三日間休んでしまった。
四日目は母に強制的に送り出されたけれどそうでなければずっとベッドの中で泣いていただろう。
だって信じられる?あれから三年も経ったのにレブリック様は全然変わってないのよ?!
たしかに美しいままだけど、十七歳の男性が美少女のような顔立ちのままなんてことある?
あれじゃ並んで歩いても女同士が歩いてるようにしか見られないじゃない!
違うの!わたしは素敵な男性に成長したレブリック様を侍らせながらエスコートされたかったの!!
それからはわたしの生活は灰色になってしまったわ。だって婚約者が女装癖持ちで王家の婚約を壊そうとして策謀してる犯罪者なんですもの。
あまりにもショックで悍ましくてレブリック様からプレゼントされた品々を全部処分したわ。
両親にも正直に話して婚約を解消してほしいと伝えたけど許してはもらえなかった。
あんな危険な人と婚約していたらこちらにまで被害が及ぶ。というか隠しもせず堂々と女装して第二王子にしなだれかかるなんてどうかしている。
しかもコールスマン侯爵令嬢との婚約を壊そうとしているのだ。本当にそうなった時被害は彼本人だけに留まらないだろう。
それなのに『時期を見てクヴェルテュール伯爵に相談しよう』なんて悠長なことを言っている。そんな時間はないというのに。
「ブリジット。あなたレブリック様に好かれているととあんなにも自慢していたのにそこまで心変わりしてしまったの?
側近候補から落ちたという噂も聞かないわ。もしかしたら何か事情があるかもしれないわよ」
「だったらお母様はお父様に女装癖があっても許せるというの?
女装した姿で王家の方にしなだれかかっても事情があるなんて言えるの?わたしはとても恥ずかしかったわ!」
あんなのが婚約者だなんて、それを喜んでいた自分が許せない。「せめて女装していることに気づいたと連絡して隠していた理由を聞いてからでも遅くないのでは?」と言われたが絶対に嫌だと思った。
それじゃまるでわたしがレブリック様に縋ってるみたいじゃない!
それはダメよ!ダメダメ!レブリック様は婿入りするんだからちゃんと身の程をわからせないといけないの。
甘やかせば自分の美貌に惚れたから何をしても大丈夫だってきっと調子に乗るもの!
話が通じない両親に業を煮やしたわたしはコールスマン侯爵令嬢に突撃をすることにした。
レブリック様の名前を出した時とても恐ろしい顔をしたけど婚約破棄したいと言ったら笑顔で応援してくれた。
そして婚約破棄を告げる舞台も用意してくださった。沢山の生徒がいる中で宣言するのはとても勇気が必要だったわ。
感情が昂ぶって涙を流せば周りの方々に慰めてももらえた。
スッキリはまったくしなかったけど胸につかえたシコリは小さくなったと思う。
わたしは婚約者に騙され酷い仕打ちにずっと耐えてきたのだから。
それにこれはレブリック様だけではなくわたしにも、わたしの家族にも被害が及ぶもの。わたしに恥をかかせたことを悔やむがいいわ。
それにしてもあの真っ青な顔、今思い出しても笑えるわね。自分で招いたことでしょうに。
少女のような見た目にはガッカリしたけど泣いて縋ってわたしに服従を誓うなら婚約を続けてあげてもいいかもしれないわね。
どうせ婚約破棄はできないのだもの。これくらいの仕返しはして当然よ。
そう思っていたのに後日レブリック様と婚約が解消となり驚愕した。
「正確には婚約者の入れ替えだ。ブリジット。レブリック殿に婚約破棄を宣言した後カストル・クヴェルテュール殿の婚約の申し出を受けたそうだな」
「え?………いえ、それはパーティーのエスコートの話で婚約の話では」
そこまで聞いてあれ?と思った。カストルはレブリック様が女装していると教えてくれた双子の片割れだが家名までは知らなかった。
そして今の今までレブリック様に兄姉がいることを忘れていた。というか顔をまったく覚えていなかった。
彫りが深くそこそこ整ってはいるが顎が割れてるし眉毛も太く目つきも悪い。
ブリジットの中では醜男の部類だった。
多分一度くらいは会ってると思うがこんな醜男がレブリック様の兄弟だなんて信じられず、レブリック様は婿入りするからお付き合いも最低限にしようと思っていたから記憶から綺麗に排除されていた。
「先方はブリジットが婚約者の挿げ替えを許可したからレブリック殿を外したと言っている。
こちらとしても婚約が継続されるならお前の疵も浅くすむし家としても体面は一応保たれるだろう」
「え、嫌です!レブリック様以外の婚約者なんて!」
せめてレブリック様並に格好いい人じゃないと友達に自慢できない。
醜男なんて嫌です!と訴えたが衆人環視の中で婚約破棄を宣言したことが醜聞となっている今は下手に動かないほうがいいと言われ唇を噛んだ。
「なんで婚約者の挿げ替えなんて嘘をついたの?!」
カストルを捕まえ裏庭で文句を言うと彼は「むしろ感謝してほしいね」と笑った。
彼の話によればレブリック様はわたしに婚約破棄を言い渡されたことが余程堪えたらしく自室の隅で一人泣いていたらしい。
「嘘よ。彼はいつもどおり第二王子殿下の隣でニコニコ侍ってたわ」
「あれはコールスマン侯爵令嬢を煽るための作戦だ。婚約を壊すためにアルペナを真似て淑女の真似事までできるようになったんだよ」
「意味がわからないわ。なんでそんなことを…相手は侯爵令嬢よ?それに王家の婚約に口を出すなんて家が没落してもおかしくないのに」
「さぁ。噂では第二王子殿下はレブリックにご執心だからな」
「でも彼は男よ?!」
「殿下は愛に性別は関係ないんじゃないか?そうなると殿下はクヴェルテュール伯爵家に婿入りするかもしれない。
俺は跡取りだけど殿下が入るなら後継者の立場を差し出さなくちゃならない。そうなると行き場がなくなる。そうなる前にブリジットに救ってほしいんだ」
「わたしは、あなたみたいな人は嫌よ」
「けどエスコートの申し出も婚約者の挿げ替えも受けてくれただろう?」
「エスコートだけよ!それにエスコートを他の男にしてもらえばレブリック様も自分の愚かさに気づいて女装なんてバカなことをやめてくれると思って…」
「プッ」
「何がおかしいのよ」
「いや?………レブリックは間抜けだなと思ってな。こんな純真でまっすぐなご令嬢を無碍にして女装に走るなんて本当、バカとしかいいようがないなって思ってな」
その言葉に引っ掛かりを覚えたがどうでもいいかと流した。だってこの男とは今度のパーティーだけの付き合いだもの。
「でもブリジットの言うように俺にエスコートされてるところを見たらレブリックはもっと後悔するかもなぁ。
婚約したって言ったら泣いて女装もやめてくれるかも?」
本当に女装をやめてくれるならそれも悪くないかも、と思ってしまった。だってわたしはとても傷ついたのだもの。
それに家の事情でカストルに移動できたならレブリックに戻してもうことだってできるはず。
そしてくだらない女装を二度としないと、わたしを裏切らないと約束させるの。
必要なら第二王子にも文句を言ってやるわ。
婚約を解消したいならレブリックを利用せずわたしのように正々堂々と婚約解消を宣言なさいませ!ってね。
そうすればコールスマン侯爵令嬢も自分の足りないところや不出来なところに気がつき直してくださるはずだわ。
殿下も見せつけるようにレブリックを利用したり暴言を吐かずに二人でちゃんと話し合うべきなのよ。
レブリック様はわたしのものなんだから邪魔しないでほしいわ。王家は何をしているのかしら。
「ねぇ。なんで婚約したのにドレスの一着も贈ってくれなかったの?わたしに恥をかかせるつもり?」
パーティー当日待ち合わせの場所に行けば着飾ったカストルとアルペナがいて勇み足で向かい睨みあげた。
「そう怖い顔するなよ。それならレブリックから沢山貰ってるだろう?」
「はぁ?レブリック様とは婚約解消したから全部処分したに決まってるじゃない!」
再婚約したらまた毎月プレゼントを貰うつもりだけどここで言う必要はない。それとこれとは別だ。
一応は仮婚約してあげたのだから婚約者に贈り物をするのは当然でしょう?
なんでわたしがあなたの色を自分で買って身につけなきゃならないのよ!
婿入りするんだからそっちが喜んでドレスやアクセサリー一式をプレゼントするのが当然じゃない!
「えっ嘘!全部処分したの?あのレースのリボンも?だったらわたくしにくれればよかったのにぃ」
聞いていたアルペナが「勿体ないことをするわね〜」と笑った。人のものを欲しがるなんて意地汚いわね。
「レブリックってばいつの間にかレースを編めるようになってたのよね。ププッ男なのにレースが編めるのよ?笑えるでしょう?」
そこまでして女性になりきりたいとかウケる、とアルペナは笑っていたがブリジットは血の気が引いた顔になった。
プレゼントの中に美しいレースのリボンがあった。
ひとつもズレがなく真っ直ぐで幾何学模様はわたしも侍女もそして母も見惚れた。
お茶会に着けて行けば令嬢達から羨ましがられた。その家の夫人にも話し掛けられレブリックからのプレゼントだと答えたら『その方は素晴らしい目を持っているわね』と褒められた。
その後レースは有名になり今ではなかなか手に入らない入手困難な人気レースになっている。
わたしはそのレースを最初に身に着けた第一人者になれたのだ。
女装癖を知る前にレブリック様に『あのレースのリボンを色違いで欲しい』と言ったら毎回別の色で贈ってくださった。
あの頃にはなかなか手に入らなくなっていたのに。普通に買うとしても毎回買うには学生の身分では難しいくらい高価だったのに。
なんでそんなことを忘れていたのだろう。
「無理だよ。だって家に金ないし。そういうのは親が買ってくれるもんだろ?」
強請るなら親にしてくれよ。と笑ったカストルにイラッとしたがレブリック様がそこまでしてわたしにプレゼントしてくれてたことに今更やってきた後悔のほうが大きかった。
頭に血が昇って全部汚らわしい!って処分したけどあのレースもブローチもあれもこれも売ればそれなりの金額になっていた。買えばもっとするだろう。
わたしはレブリック様に愛されていたのになんてことをしてしまったのだろう。そんな後悔が襲った。
だけど会場入りしてレブリック様を見た時謝らなきゃ、という気持ちが消えてしまった。
壁際に一人ポツンと立っているレブリック様はそれはそれは美しかった。
いつもの華やかでいかにもお人形さんみたいなドレスではなかったけど真っ赤なドレスは一輪の薔薇みたいで見惚れてしまった。
けれど我に返ったら急に恥ずかしくなった。紛い物の彼に見惚れるなんて。女性の自分が男に負けたみたいで悔しくなった。
女装してるくせに!男のくせに!騙してたくせに!許せない!許せない!許せない!!
「ごきげんよう。レプリカ様。このようなパーティーでも女装とは怖いもの知らずですわね。気色悪い」
カストルが茶化すようにレプリカちゃん呼びしたのでわたしも乗ってやった。そしたらレブリック様がショックを受け真っ青になった。
それを見て一瞬心が痛んだけどわたしのほうがもっと傷ついていた。もっと悲しかった。だからまだ許してあげないと鼻を鳴らした。
女顔でも男なのだからスーツを着ればいいだけなのだ。
それをドレスのほうが似合うからとそっちを着るなんて女性をバカにしている。レブリック様はわたしをバカにしているんだわ。
ならしっかり灸をすえてやらないといけないわ。彼は入婿なのだから。彼はわたしに傅かなくてはダメなのよ。
「わたしの前から消えてくれるならなんでもいいですわ」
だから心にもないことを言ってレブリック様を傷つけた。あなたにはわたししかいないのよと知らしめるために。
これが終わったらお父様に言って婚約者をレブリック様に戻してもらいましょう。王家の婚約を壊した彼を受け入れてくれる人なんていないもの。
クヴェルテュール伯爵が女装してる上にレブリック様のやらかしを放置してるのはきっと事情があるのだわ。
側近候補を外されてないと言うならきっと王家が絡んでるはず。
ならもし第二王子とコールスマン侯爵令嬢の婚約が破談になってもレブリック様は咎められないかもしれない。
社交界に何年か出入りを禁止されるかもしれないけど子爵家だからそこまで被害はないと思う。
それにレブリック様にはあの美貌とレースがある。もしかしたらもっとできる何かを持ってるかもしれない。
レブリック様が愛しいわたしのために編んだ一点もののレースでわたしが美しく着飾ってお茶会やパーティーに出るの!
きっとみんな羨ましがるはずだわ!
豪華なアクセサリーを買い与えるんじゃなくて自ら作ったものを妻にプレゼントするなんて素敵じゃない?!
しかも高位貴族夫人が欲しがるようなブランドものよ。
あんな美しいのに素晴らしいレースまで作れるレブリック様を寛容に許して伴侶にしたわたし……うん。きっと演劇になるほど有名夫婦になるに違いないわ!!
その予想が当たるかのように国王様がパーティーの開始宣言と共にレブリック様を呼び出し、お褒めの言葉を授けた。
そうよ!そうなのよ!レブリック様はそういう御方なのよ!
だけど遅れて国王様の言葉に首を傾げた。研究?仮初めの姿??
「そなたの願いは元の体に戻りたいとのことだが合っているか?」
「はい。合っています」
元の体???え?と言葉を飲み込めないでいると一人の長身の男性がゴブレットを盆に乗せてレブリック様に近づいた。
その男性は金髪で細身、髪は長く二つに分けて毛先の辺りで広がらないように紐で括られていた。瞳は眼鏡で隠れてよく見えないが緋色に見える。
王族や高位貴族に多い色だ。年齢は二十代だろうか?
こちらも美形で女性陣が見惚れた。そしてレブリック様と並ぶと更に神々しさが増しこう言ってはなんだが王家が霞むほどだった。
しかしそんな眼福な光景もレブリック様の変わり果てた姿で阿鼻叫喚となった。正確にはコールスマン侯爵令嬢とブリジットがだ。
「ちょっとカストル様これはどういうことなの?!」
まさかまさかまたわたしを騙していたの?!と目を吊り上げたが見た場所にカストルはいなかった。
それどころかパーティーが終わるまで彼もレブリック様も戻って来なかった。
読んでいただきありがとうございます。




